第十五話 遠野のイクト
イクトの過去編でーす
「リオン、やっとみつけたぜ・・-」
かつてこの俺を信じ込ませた、俺の憧れであった仲間に小さく呟いた。
感動と怒りを込めた言葉で。
俺がここへ来た目的は二つ。
一つは、リオンとの再会。
もう一つは、裏切り者の討伐。
リオンも遠野での俺の唯一の友だったー・・、
俺のココロを傾けさせた唯一の女だった。
だが、俺の前から消えた。
何も言わず遠野から出て行ったのだ。
その光景が今でも鮮明に覚えている。
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俺の妖怪鼬一族は、一つの組頭の下の傘下にある一族だった。
遠野組の、な。
他にもいろいろな一族がいる。
その中で、俺は日々、林を駆け抜けては修行に精を出していた。
仲間と呼べる相手も数多くいるが、
すべて自分の身を委ねてもいいと思える相手はいなかった。
だが、・・そんなときだ、彼女が現れたのは。
遠野の結界が阻むことのない川底から流れてきたであろう、
彼女は川に流れ、川原に倒れていた。
「おいっ!大丈夫かッ!!」
ズザザザザザアァアー・・!!
崖を勢いよく降りて俺は駆け寄った。
「オイッ!!ーーッ!?」
すぐに抱き寄せ彼女を見ると、
彼女の姿ー・・見ていられぬほどにボロボロだった。
川から流れてきた所為か、身体全身打撲傷。
他にも刀で切られたかのように深い傷から、
-・・烙印のように刻まれた狐という字が額に浮かび上がるかのように見えた。
「ー・・。(狐・・・)」
狐という字に俺は嫌悪感を抱いた。
なぜなら、狐は鼬の敵でもあるからだ。
しかし、・・ボロボロな女を見つけてしまったからには見捨てるわけにもいかない。
俺は彼女を自分の住処へと運んだのだった。
「--っ、・・っぅ”・・・ッ」
息するのも辛そうなうめき声。
彼女を着替えさせ介抱しながらそう思った。
彼女の治療は数日にわたって続いた。
それほどひどいものだったんだ。
「ぅ”ぅぁっ・・ぅ!・・ぁっ・・あぁ”ッ!」
熱にうなされ、悲痛な声を上げることもあった。
そしてー・・その時々に狐に変化することもあったのだ。
「クゥー・・”・・ッゥ”・・クグ・・・ッ”」
包帯が巻かれた四脚、薄らと開けた目も蛇のような蛇眼、
汗が粒のように流れ落ち、毛並みにはつやがない・・
苦痛に満ちた表情で歯を食いしばり呻くー・・狐の彼女。
「落ち着けッ!」
そのたびに俺は彼女を助けなければという気持ちになった。
しばし、そういった時を重ね、ようやく彼女が人の姿で意識を取り戻したのは
彼女を見つけてから十日ほど経った春の涼しい風が吹くの日だ。
「んーー」
彼女は眼を開けた。
そしてー・・
「こ、こは・・」
むくりと彼女は上半身を起き上がらせる。
銀に輝く長い髪がゆらりとなびいた。
「目が・・覚めたか」
彼女の開いた瞳を見て俺は呟き、彼女を見据えた。
少しくすんだ金に近い色をした瞳だった。
「・・あなたはー・・?」
「・・俺は鼬のイクト。
お前は?」
「リオン、・・イシ使いのリオン。
・・ここは・・どこなの?」
彼女は俺の眼を捕らえて離さなかった。
俺を、俺だけを見据えて答えを待っているのだ。
「ここは、俺の、住処だ。
リオン、お前よかったな?
俺がお前を見つけなかったら、お前死んでたぞ?」
「えー・・?」
「川原で倒れてたんだ。
ずぶぬれでしかも体中傷だらけ。
よく耐えたな、今まで苦しかったろ?」
しっかり休んで元気になるまでここにいていいからな^
俺がそう付け加えて言ってやると、
「ありがとう・・・。・・-そっか、
私、にげ、きれた、・・のか・・」
彼女は何かに安心したかのように呟いた。
無論、それは俺の言葉というわけではなくて・・何か、別のー・・。
俺はそのことが気になって思わずー・・
「・・逃げ切れた?・・なにに、だ?」
そう聞いてしまった。
ハッ!
となるがもうおそい・・。
「そ、・・れ・・は・・ぁ”、・・
ッ”・・・--ッ~~~~~~~~”」
彼女は、何か思い出したかのように
強いた顔になった。何かを追い払うように身体を横に振る。
「おいっ!?」
俺は、彼女の背に腕を回し、彼女を抑えた。
「ッ~~~~!!
だ、だめっーー!!」
彼女は俺の胸板を思いっきり力強く突き飛ばした。
「っーー!?」
その勢いで彼女から腕が放されたが、
俺は、・・彼女に拒絶されたことが何よりも傷ついた。
「・・ッハァ、・・ハァ・・、
ゴ、ゴメン・・なさぃ・・、
わ、たし・・っ、・・オトコのヒト・・、ダメなの・・。
ふ、れられると・・、どうしてもー・・。」
彼女はぶるぶると体を震わせ、自分を抱いた。
声も・・すごく震え、今にも泣きそうな声でいったー・・。
「・・あ、あぁ・・、俺も悪かった。
怖い思い、させてー・・。」
こればかりは俺も素直に謝った。
それから、彼女を落ち着かせた後、長老様に会わせ、
俺の仲間にも会わせ、そして住処に戻った。
仲間がリオンに前触れもなくいきなり触れたとき、
彼女は俺以上に拒絶し叫んだ。
そのとき、リオンの身体が不安定になって、
おもわず俺が受け止めたとき、リオンはー・・
ーー俺に抱きついてきた。
「・・!!」
リオンの冷たい白い肌が、腕や胸元に当たる。
だが、リオンは俺を拒みはしなかった。
・・後で聞けば、服越しにでもオトコはダメだと。
だが、俺なら、素の肌でも大丈夫だと、怖くないと言ってくれた。
むしろ、素肌じゃないと恐いそうだ。
俺だけー・・なんだ。
俺は腕の中にいるリオンを眠らせた。
そして、仲間にこういったのだ、
「ルト、リオンはどうやら男性不振のようだ。
過去に、なにかあったらしい。悪いな。」
「あ、・・あぁ。いや、俺も悪かったが。
だが、お前はオトコなのに良く平気だな?
お前だけ、そんな可愛い子、触るなんて・ー」
俺の仲間、リオンを怖がらせた張本人は口を尖らせた。
「俺がコイツを助けたからじゃないか?
コイツはそれで俺を頼ってんだよ。
気にするな」
俺はそう言うなり彼女を抱きかかえて
住処に戻ったのだ。
それからー・・、彼女は何かと手伝うようになり、
この里の雑用ばかりに精を出していた。
いつも俺の住処に帰るのは夕方を過ぎてからだ。
しばらくはー・・暗くなる前までに帰ってきたが、
ある日を境に真夜中に帰ってくるようになった。
その日は・-、仲間が、狐だ狐だ!!と騒いだ日でもあった。
リオンが帰るのが遅いと、気にかけながら
長老様の屋敷・・本家に向かっていながら、狐が出たと騒ぐ集団に会った。
「狐だー!!狐が出たぞー・・!!」
「何ッ!?」
狐?・・まさかー・・っ!
この里は本来野生でも狐はいないはずなのだ。
だが、出たということは、皆は不吉の象徴だと疑わないだろう。
しかし俺は、リオンだと思った。
なにせ、彼女が狐に無意識に変化したのをこの目にしてるのだから。
俺はリオンの雑用場周辺を急いで駆け回った。
ザザッ!
そんな音が近くの茂みに聞こえたとき、俺は、
「リオン、・・か?」
と呟くように茂みに声をかける。
ゆっくりと茂みを掻き分けると、
草むらに隠れるように伏せている一匹の狐がいた。
「クゥゥウウ・・・ッ”」
こちらを見据えて警戒してる。
戸惑ってるようにも見えた。
「リ、オン・・、
おめー、弱ってるのか・・、その姿。」
俺は狐に手を差し伸べる。
「・・!」
ピクッ”
俺の手が狐のフサッとした毛並みに触れた。
やはり、リオンなのだ、この狐は。
逃げはしない、俺だから、逃げることなどできないのだ。
「・・帰るぞ、リオン」
俺はリオンが恐がらないようそっと抱き上げ
マフラーに包む。
「クゥウゥー・・ン」
そうして俺たちは住処へと戻ったのだ。
その日、彼女は、人の姿へと戻り、少し話してくれた。
「・・私、
この額の文字・・が出てるように、
呪われてるの。」
「・・呪、か」
「そう、呪・・。
狐にされてしまう、・・・・呪縛の呪。
だから、魔力で制御できないときは狐になってしまうの。」
リオンはそれだけしか話してはくれなかった。
それ以上過去に触れるとリオンが壊れてしまいそうだから
俺も追求はしなかった。
ルト達に会わせた時は狐の文字を隠すように額宛のバンダナをしてもらっていたから
ばれはしなかったが。
それから、俺は狐の件以外のことを長老に報告した。
遅くなってすみません。
ほんとーにすみません。
これからもむりそうですが頑張っていくので気長にオネガイシマス




