第十四話 リオン
「ぅ”-・・」
しびれた体の痛みに私は意識を覚醒させた。
「おいっ、大丈夫か?」
ぶれた視界に入り込んだのは私を助けに入った彼だ。
「・・でん、か・・?」
吐き気のする喉を抑えながら私は首をかしげた。
「・・俺が見えるなら大丈夫のようだな。
お前、俺のせいで絡まれたんだろ?」
「・・。さぁ、しらない」
辛そうに歪む殿下の眼を見たら、そう嘘をつくしかなかったと思う。
まぁ、憶測に近いことだけど、十中八九当たってるだろうから。
「・・嘘をつくな、正直に言え。お前らしくもない・・
俺の所為なんだろ!?」
そう聞かれて、はぁーっとため息をついてから
「はい、殿下の所為です」
はっきり頷いてやった。
「・・・。・・悪かった・ッ」
彼は一瞬あっけに取られた顔をして、
その後すぐに自分の非を認めたーー
ーー・・・ん?
彼に非はないか。
いや、でもー・・彼の所為とも言えるー・・
「謝罪アリガトウゴザイマス。
・・でも、私との関係は切らないんですか?」
「・・棒読みだな、お前。
ーー当たり前だろ。
それにあいつらはもうお前に手出しはしないからな」
「・・へぇ、勝手に何か言ったのですね、彼女達に」
私の非難の視線と呟きに、
「俺もあの時はさすがにキレる。
そこまで・・セラフィは、俺を冷酷非道な人間だと思ってるのか?」
彼は真剣な物言いで私に尋ねて返してきた。
・・すーごく冷酷で孤高な方だとは思うけど。
「非道ってほどじゃないですが、
ーー冷酷で時には残酷すぎると思います。」
私ははっきりと容赦なくいってやった。
「・・・。容赦ないな、お前は。」
彼は辛そうに顔をゆがめた。
まるで私の言葉に大いに傷ついたようなー・・。
自嘲した笑みを彼は浮かべたのだった。
「・・・・?」
「だが、お前が無事でよかった。
吐血多量でお前は死にかけていたが
とりあえず助かったしな」
吐血・・。そうか、あの煙の所為でー・・
「あの煙ー・・」
「は?・・あぁ、アレな・・、
俺もよくは知らないが。
あいつらに聞いても手紙つきで靴箱に入っていたといってた。
嫌いな奴に使えと書いてあったらしい」
「・・名前とかはー・・書いてはなかったんですか」
「名前・・、いや、名前はない。
ただー、雲が渦巻いたようなマークは印してあった」
彼は思い出すかのように呟いた。
・・雲が渦巻いたマーク・・・!
「!」
わ、たしは、心当たりがあった。
転生前の時代にー・・っ
「今は深く考えるな、しっかり休め。
明日、お前は体調不良でも学園に行くだろう?どうせ」
殿下は諦めたようにだめもとで深く考えようとする私を諌めた。
「殿下に言われなくとも療養しますよ、今日は」
自分でも・・-、この煙の怖さは知っているから。
「・・・。
また来る、しっかりやすめよ」
彼はそういうなり部屋から出て行ってしまった。
今気づいたがここは、城での私の部屋だった。
その日、私はしっかり休養を取った。
翌日、いまだに目眩はするし、咳も出るけれど吐血は免れるようになった。
学園に向かって、城を出れば、すぐ隣に殿下が現れた。
「おい、独りで行くな」
この人ー・・今、独りって言ったよ、独りって。
「何故?」
私は彼などに目もくれず問いかければ、
彼はすたすたと私の隣で歩き続け、
「昨日、一人でお前がいたから、襲撃受けて独り動けなかったんだろ。
俺がいれば皆は手出ししない、できるはずがない」
彼は自信があるかのように強く言い切った。
「・・何故?」
謎だ、いくら殿下という肩書きを持つ彼がいたとしても
するやつはけしかけてくるだろう。
なのになんだ、この確信めいた言いようは。
「俺の権力で彼等を退学にでもできるからだ。
そもそも誰かを意味なく侮蔑するのは人間としておかしいからな」
「・・・」
このごろ、彼はよく話す気がする。
特に、この俺様様な言い方と上から目線は頭にくる。
・・私が来てこうも変わった人間は彼が初めてかもしれない。
そうこうしてるうちに学園についた。
靴箱で靴を変えようと中を開けたとき、
・・カサッ
中で紙の音がした。
「・・・」
そこには、二つ折りした紙が一枚。
私はそれを開いた。
【王子から離れやがれ、このクソヤロウ】
「・・。
(殿下、手は出してこなかったね、貴方の言うとおりだ。)」
すばやく閉じて、制服のポケットに入れておいた。
「・・?何してる、早く行くぞ、セラフィ」
「・・わかりました」
目の前に彼がいたが、どうやら気づかなかったみたいだ。
その後彼と共に教室に入った。
そしてホームルームの時間。
いつもは読書などする時間なのだがー・・、今日は違った。
先生が入ってた時、廊下側から異様な・・いや懐かしい気配を感じたのだ。
「今日は、またもや編入生徒を紹介しますよ~、
ほら、はいっておいでー~」
先生の陽気な声に促され、ガラリと扉を開けてその気配は入ってきた。
「・・!!」
私は目を瞬いた。
額に迷彩柄のハチマキに、ツンツンした黒髪。
彼の瞳は純粋な黒に濃いグレーがかかった不思議な色合いだった。
・・そう、オトコだった。
「えーと、この子がつい先日入学を許可した、
遠野 イクト 君でーす、ホラ、挨拶挨拶^」
先生の声に彼は教卓の正面に立ち、みんなに顔を向け、
強い意志を持つ瞳で、
「俺は遠野・・イクト だ。
まぁ、・・よろしく頼む」
そう言った。
だがー・・なんだか腑に落ちなかった。
何故、彼は来た?何故ー・・?
「じゃあ、席はー・・、ラピスさんの隣だね。
あー、あの一番後ろの席だよ、廊下側のね」
彼は先生の言葉に頷いた。
ラピス・・という人はあの、栗色髪のおさげの女の子だ。
殿下と私が真ん中の一番後ろだからー・・私の左隣・・になる。
彼が席に着こうと歩き始めた。
カツンカツンカツー・・
席に彼が座る前、私を見て、小さくぼやいた、
「リオン、やっとみつけたぜ・・-」
「・・・!」
私はその言葉を聴いて硬直せずにはいられなかった。
イクト、は、その後何事もなかったようにラピスさんの隣に座ったのだった。
新キャラとうじょー!!
そしてごめんなさいっ!長い間更新できず・・!
次回も頑張りますッ




