表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/15

第十一話 求めたい、純粋な優しさ

ルチル殿下視点で~す!

私はーー、いや、あたしは求めていた。

邪な考えを持つヒトから与えられる“見返りを求める優しさ”なんかじゃなく、

誠実でまっとうに生きるヒトからもらえる“純粋な優しさ”を。


******************************


「ーー次、ルチルさん、どうぞ」


そう呼ばれて私は椅子に向かう。

それから考えた。


兄上・・メラル殿下は、優しい。

心の底から無償の愛情を注いでくれる。

でも、それは兄妹だから。家族だから。


それだけでも良いと思えるようになったのは

兄様のクロセキ殿下と弟のアフィラの存在がより自分にとって大切なものになったから。


そう思いながら生活してたとき、呪い師セラフィは来た。


その人はーー私と似てる兄様を変えた。


兄様は、あたしと同じように優しさを求めてると、今まで思っていた。

でも、違うと思い知らされる。


兄様は優しさなんてものよりほかのものが欲しいのだと。

特に彼女から。


信頼、友情。

心を許してもらいたいと望んでいるようだった。


普段、全てを切り捨てる兄様を

変えた、この相手は、どんなヒトなのだろう?


「よろしく、・・オネガイシマス」


私はぺこりと頭を下げて椅子に座った。


正面切って、彼女の顔を盗み見る。


「こちらこそ^」


彼女は柔らかく微笑んでいた。

にっこりと笑う笑みとーー私を、いや、あたしを映す優しげな瞳。


相手から邪な考えなど読み取ることはできなかった。


ただ、--わかるのは、兄様と私と接する顔が違うことだ。


もっと、兄様に対しては冷たかった。

なんで、・・こんなに優しいの?


「では、今から呪いを始めますね^

ーー目を・・閉じてくださいといいたいところですが・・」


彼女は目を伏せて、戸惑いを見せた後、にっこり笑う。


まさに兄上や兄様に対しての態度とは打って変わって別人。

違うヒトを見ているようだ。


「貴方はクロセキ殿下と似ておられるので

やめておきます。

では、この水晶に手をかざしてはいただけないでしょうか?」


彼女はふわりと水晶を浮かした。


「はい。・・」


私はその通り手を水晶にかざした。


兄様と似てる・・気づくのが早い・・。

なんで・・かな。

あとでーー・・聞いてみよう。


そう思いながらも水晶に意識を傾け

集中すれば、黄金の筋が入ったような石が・・見えた。


それは月をリアルにかたどって、チェーンがついている。


「みえましたね?

それが貴方の対となる石です。」


彼女は水晶を元の場所に戻しながら

月をかたどった石を、ネックレスにと渡してきた。


「ルチルクォーツというんです。その宝石は。

針入り水晶とも言われていて、別名キューピッドストーンとも言われ

持ち主に幸運な恋愛と強運を運ぶ力を持ってます。

金運の石としても有名なんです^」


そう彼女は笑顔を絶やさず説明する。


宝石というわりにこの石はくすんでいた。

輝きを失っているよう。


「それにしても・・輝きが見られない・・」


おもわず私は呟いてしまった。


「そう、くすんでいます。

それが何故だかわかりますか?この濁りの意味を」


彼女はあたしを見て言った。

まるであたしが“私”を演じてるのがお見通しだというように。


・・濁り・・それは・・

あたしのこころがーー。


「・・それはあなたが自分を偽り

ヒトを信じようとしないから、なんです」


彼女は哀しそうに私の瞳を見つめる。


「・・」


貴方にあたしの何がわかるの。


おもわず見つめ返してしまった。


「貴方は、優しさを求めてる。

見返りを求める偽りの優しさばかりをもらって

心苦しいのはイヤだから。

それを切り捨てることも怖くてできないでいる。

誠実な優しさを見ても裏に何かがーーと疑ってしまう。」


「・・!!」


彼女の言っていることはすべて正しい。

なんで、見つめ合うだけでこんなにもわかってしまうの?


「さっき、セラフィさん、は・・兄様と私は似てると

いって、ました・・よね?・・なにを根拠にそんなことを?」


いつのまにか・・動揺した声を防ぎきれずたずねてしまった。


「貴方は偽りのある優しさも受け入れて

心のどこかで拒絶してた。

クロセキ殿下は偽りも誠実なものもすべて切り捨てる、

拒絶ではなく排除と言ったほうがいいかもしれない。

そうー・・殿下と、「私」と呼ぶ時の貴方は似てます。

同じようにひとを疑うことが先に来るから。」


彼女は兄様の名前を言うとき冷たくなった。

でも、最後には優しげな口調を取り戻す。


「・・そう、ですか」


私は呟いた。


本当にそれだけ?

他にも・・あるよね??


疑問が浮かびすぎてなにをきけばいいか分からない。


「・・おい、セラフィ。

それだけじゃ、ないだろう。

答えろ」


兄様が何故か苛立ちを抑えたような声を出す。

・・嫉妬?

そう思えるような苛立つ兄様のまなざしだった。


「・・もちろん、それだけじゃない。

あなた方には、確固たる違いがある。

だが、考え方が、メラル殿下やアフィラ殿下より、

ルチル殿下とクロセキ殿下は似ている。

同じ状況に立たされ、同じような考えを持ってしまった。

それが、似てしまった原因。

共感が持てるのはそういうことがあったから。

・・殿下、質問には答えました。

先を続けてもいいですよね」


最後の言葉に疑問符はついてなかった。


やはり・・兄様としゃべる彼女は冷たい。


そこに心を許す私とあたしがいた。


「・・質問しても

答えないだろうな、お前は。

いい、続けろ」


兄様はやはり妙に苛立っていた。

似てることに怒ったわけじゃ、ないと思う。

むしろ、共感できるのはうれしいといってるような

言葉もあった気がした。


「さて、話を戻しますね^

ルチル殿下・・、いや、ルチルちゃんは、

ーー貴方の本心は、どこにありますか?」


あたしの中にあった仮面が・・今の言葉で剥ぎ取られていくような

感覚に陥った。


「あ、わ、わたしの、本心?」


あたし・・と呼びそうになり慌ててしまう。


「敬語もやめてしまいますね^

ねぇ、ルチルちゃん、私には隠し事は通用しないよ?

自分の中だけに押し込むのは

けっしていいことじゃない。

身体にも悪いし、精神的にも、ね^」


彼女はゆっくり私の手を取って顔を近づけてくる。


「え?あ、あの・・あ、あたしーー」


思わず口走ってしまう。


「慌てない、慌てない^

心を素直に出して?どっかの誰かさんと

違って貴方は素直だから。

自分の中に押し込むのはやめてだしちゃおう?

私ならあげるから。貴方の一番欲しいもの」


「・・おぃ」


遠くで、ぴきっとこめかみに筋が入った

兄様の声がする。


彼女は当然無視して私の心を手繰り寄せようとする。


「ほ、しいのもの?

わ、たしが・・?ほしいもの・・??」


「ちがう、貴方の中の私じゃなくて

貴方の中のあたしの方のだよ。

私に仮面なんてつけなくていいんだよ?」


彼女は私の頭をなでなでする。

すごく気持ちよく感じた。


ふわふわしたあたたかいものが

ながれこむような・・。


そう、その瞬間、彼女が、

兄上や兄様、アフィラをはじく結界をつくった。


ヴァアアンッ


「な、なんだとーー」


「おいーーどういうことだーー」


「え!?ええ!?」


三人の声が徐々に小さくなって終いには聞こえなくなる。

完全に二人の世界になってしまった。


ルチルちゃん大慌て!!

このあと、どうなる!?どうなる!?

セラフィ、人格豹変!!

やばいよ?やばいよ?!さぁ、これからだ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ