あえてこちらで
王国制式騎士団所属の騎士の下には、兵士が配属されている。
騎士は騎士団配属時「一代騎士」となるために準貴族の扱いだが、
兵士は配属されても叙爵を受けたりはせず、平民は平民である。
この二者は部隊の指揮官と実働員の違いがあり、扱いは異なる。
騎士となるのは口にするほど簡単ではないのだ。
まず、王立中央学院を卒業した満十五歳の成績優秀者である事。
その上で高難易度の入団試験に合格しなければならない。
入団試験に見事合格し、新たな騎士となれるのは半年に一度で、
大体多くて数十人というところ。十二ある騎士団に数人ずつ配属。
少ない場合は両手の指を少しはみ出すか、といった位。
そこには幸運は存在しない。実力をいかに出しえたかだ。
◆
「一代騎士」となる道筋は複数存在している。
これは準貴族の最下位の爵位でもあり、騎士の最下位でもある。
まず、王国制式騎士団への入団者。給金は相応に高い。
次に、有力貴族配下の騎士団入団者。給金は貴族家による。
また、一般貴族から任命された者もいる。大抵給金は控えめだ。
他には、王国に多大な貢献をした者にも与えられる事がある。
例えば芸術の分野で。産業の分野で。公務の分野で。
そして、王立中央学院在学中、半年に一度行われている剣術大会で、
優勝者と準優勝者、三位と四位の学生は一代騎士を与えられる。
こうして在学中に一代騎士となった場合、ほとんどの者は卒業後も、
王国制式騎士団か有力貴族配下の騎士団へ入団している。
そう、ほとんどの者は「騎士として」騎士団へ入団するのだ。
「兵士として」入団する者は滅多にいないのだ。
◆
その滅多にいない「兵士の一代騎士」がここにいる。
第十一騎士団に所属する新米女性兵士、コチア。
彼女はかつて学院の剣術大会で準優勝を成し遂げ、一代騎士である。
にも関わらず兵士として入団した。当然誰もが不思議がっている。
彼女は副伯爵家の三女であり、騎士とならずとも将来は暗くはない。
結婚だってある程度自由に出来る程度には実家も力を持っている。
家で虐げられているという話もなく、家族との関係は良好のはずだ。
腕を活かすにしても、実家の騎士になろうが揶揄する者はいまい。
制式騎士団への入団試験も彼女なら難なく通っていただろうに。
だがあえて兵士となった。ご丁寧に第十一騎士団を指定して。
基本的に第一から第十二までの騎士団に待遇などの差は存在しない。
騎士団長も副騎士団長も皆、優秀かつ高潔な者ばかりであるし、
特定の騎士団だけが家名などで贔屓されている、なんて事もない。
ゆえにコチアを良く知らぬ者は理由がさっぱり分からなかった。
実にもったいない、なぜこんな選択をしたのだろう、と。
◆
「まさか追って来られるとは思わなかった」
そうコチアに話しかけたのは、こちらも第十一騎士団新米の騎士。
この青年はコチアと同年である。いや。
王立中央学院時代、剣術大会でコチアに唯一土を付けた相手である。
実のところ、コチアは自分の剣術に少なからず自信を持っていた。
地元では幼少時より剣を握り、一般の兵士とも渡り合えていた。
成人したら絶対騎士になってやる、制式騎士団に入ってやる、と、
そればかりを考えていたところでの敗北であった。
もうじき卒業という段になっての勝ち逃げ。
一代騎士の位は戴いたものの、最後の最後で悔いが残ってしまった。
相手は自分同様に制式騎士団を目指すというが、入団してしまえば、
同じ騎士団に所属出来るかどうか分からない。再戦の機会がない。
何としても再戦したい。だったら相手が入団後、どこかを調べて、
そこへ兵士として入団すれば機会を得られるに違いない。
騎士と兵士は別枠で募集される。そこを突いて兵士となった。
彼は事あるごとにコチアから練習試合を申し込まれる事になる。
勝敗は勝ったり負けたりを繰り返す。
苦笑いをしつつも彼は応じている。こんな関係もなかなか面白い。
二人の間に恋愛感情はありません。
腕前の高め合いだけを意識しています。
学院の剣術大会は十一期、十二期のみ行われます。
大会の上位四名が卒業前に一代騎士となりますが、
既に一代騎士である学生は大会に出場出来ません。




