9・災の中心。異界へ
前回までのあらすじ
全てを打ち明け被爆地帯への侵入の手助けを求めようと、
小春と会うため都内に戻る愛里たち。
思念に弄ばれ憤慨する小春だったが愛里の住居
「美人荘」で待つことになり、
一方異界ではテンの生命維持が問題となり
カジキの知るホムンクルスへの不穏な噂が皆を恐怖させ。
ノオミは遂にテンを取り戻しに
ロッグスとコハコの前に現れたが、
最愛の出来損ないに首を頸動脈を齧られ、
爆弾で吹き飛んだが、
1人として用意周到な自称魔王の死など
信じている者はいなかった。
「毎度あり~またどうぞご贔屓に」
カードで払うと運転手は大いに喜び走り去り、
波多野はその凄い支払い額に肩をがっくり落とし
愛里の後ろからトボトボ着いて行くと、
栗山の背にぶつかりそうになりそこを仰ぐと「
美人荘」がそこにあった。
「着いたのね」
波多野が言う。
「じゃー早速ご対面」
栗山の元気な声。
「あー駄目です。男子禁制」
愛里は2人を制し、
「そのベンチで待ってて」
言われ2人はベンチに腰掛け待つ事となり、
「愛里さまのお部屋…」
なんか落胆してる栗山。
「お前は愛里さんのガーディアンだが男。
男はここぞと言う時、
我慢するのが男なんだぞ?」
波多野の弁。
「はいはい…でも、
2人の会話気になるよ?」
栗山が言い、
「ノックしろよ」
波多野は答えた。
「だったね」
コンコン
栗山は愛里の心に話せるかサインを送った。
『聞いていてくださいというか、
ここに思念体で来て』
『あーその手が』
波多野は膝をポンッと打った。
『ぽぽぽぽ』
栗山は女性の部屋へ入った経験がほぼなく
それは幼稚園、小学校、中学校止まりで、
女性とは言えない子供時代の話しばかり。
それがきちんとした女性、
最愛の愛里の部屋で高揚している。
『入る前から赤面してんじゃねー』
波多野に気持ち悪がられていた。
愛里の服を着てソファに座っている小春は、
サイズが合わず何か
パッツンパッツンに見えている。
「こ、こんにちは…
あーなんていうかちょっとド緊張してます。
テレビのアンカーウーマンで百戦錬磨のはずの私、
違うな緊張じゃないずっと恐ろしくて震えてる…ます」
「うんうん…
でももっと凄い話になります覚悟して欲しい。
あーあと実は小春さんと会うの私2度目です。
誰だか分かりますか?」
「うん。
そのポスターで改めて気づいた。
どうしてあなたが…
超能力者だったの?!
ほら見て手がこんなに」
震えを見せる小春。
「息をふかーーーく吸ってー
止めてー止めてー止めてー
ゆーーーーっくり吐いて
お腹が背中に付くような感じで
少し繰り返すと落ち着きます」
愛里は彼女の手を取り
落ち着く呼吸法を教えているが、
『スーーーーハーーーーースーー』
『スハーースハー』
波多野と栗山も真似している。
「ここに居るのが栗山さんと、
テレビとかで有名な霊能者の波多野さん。
栗山さんはADの人ですあなたの局の」
「あぁ見えるそこに座ってるのが見える~
さっき私で遊んでた人?もう2度とやらないで!」
『ごめんなさい』
『すいませんでした。
僕らもいきなりこうなって何も慣れて無くて』
2人の声は届かないので、
頭を下げまくっている。
「その事は大丈夫もう2度と無いので安心して下さい。
はい私にはその力が元々あって
それが唐突に開花しました。
理由は魔物に襲われたからです。
そしてもっと強い魔女が現れて助けてくれました…」
「魔女!!あなた魔女なの?!」
「魔法使いでもいいですけどなんでも」
愛里は答えた。
「そそそその力であの学校を
ついでに倒壊させた?」
「実質そう言う事になりますけど、
実際には魔物の攻撃でです」
「助けてくれて本当に感謝してるの、
だから力に成りたいと思ったけど私魔法とか無理、
でもあなた達のこと独占スクープにしたいけど
応じてくれないかな無理かな?」
『あははは何言ってんだこの人。
美人だけど、
愛里さんの次に』
栗山の思念。
『誰にも見えない魔物退治に
スクープとか無理だよムリムリ』
波多野の思念。
「小春さん!
スクープしても見る人が居なくなる世界を想像してください。
人々が地上から居なくなった廃墟。
私たち気づきのある者だけで、
恐ろしい事が起こり続けるのを
阻止しないといけないんです」
「………うん。
あんな地獄2度と見たくない…うん」
「小春さんのあの事故現場にはまだ
浄化出来ない化け物が居るんです。
私たちはどうしてもそこへ行って
肌でリアルに感じる必要があって、
魔物を倒さないといけないんです!」
「私にそこへの道を作れと?」
「はい」
『です!』
『うん!』
「放射能出てるって…
3kmくらい封鎖されてるはず…でも、
分かった助けて貰ったお礼もする服も洗って返す。
知り合いの同期が校舎の事件でタヒんだんだ、
まさかこんな事だったなんて…
だからなんでも協力するよ」
「もしかしてあのディレクターさんと?」
「そう、
そしたら次に私のテレビクルーも…
あぁもう私うぅうう」
思い出し泣いてしまう小春の背を
さすってあげる愛里は、
「泣かないで
私たちはどうしたら良いですか?」
すぐにでも動きたくて焦っている。
「ちょっとしたパイプに電話する。
私の色香がまだ通じれば」
気合を入れると、
パッツンパッツンの服の前が揺れる。
『あー色香とか大人の世界は
愛里さんにはダメだよー』
栗山は見て良いのか悪いのか分からず、
顔に当てた手指の隙間から愛里の様子を見ている。
『誰でも皆等しく
大人の階段登るんだよ栗山くん。
君も』
『あーうー』
「はいご無沙汰しております。
実は…あの、
はい今ですか?
今日は~ニュースご覧になられてますよね?
え?知らないあらまー防衛大臣ともあろうお方が…
(何も防衛してない大臣…)」
『ッボボボ防衛大臣!』
栗山の思念。
『お大臣さまの鼻の下は今
ノビノビ生き生きビロ~ンってか?』
波多野の親父思念。
『うわーなんかすごい会話~
演技の幅が広がります』
本気でそう思って見ている愛里。
「空から見るだけなら、
自衛隊の調査ヘリに乗れる。
地上からは無理…
どうする?あーちなみに私のTVクルーとしてね」
小春は携帯を切りながら話している。
「わ、分かりました」
愛里は言い、
「一緒にまず局行ってお着替えしてから~の、
んーみんなある程度変装しないと駄目だと思うから…
でもその前にまた電話」
キビキビした大人な小春に憧れ目線の愛里。
「あーはい!」
愛里は元気よく答えていた。
『自衛隊のヘリ!
1度乗ってみたかった』
『ぼぼ僕、
高所苦手…あ、
ばあちゃん助けてくれないかな…
ナムナムナ』
表のベンチの波多野は
栗山にまず催眠術をかけた。
「ん?」
何度かかけ直すが、
「んんんあぁあああああ!」
素っ頓狂な声を出し
通りすがりの人を驚かせた波多野。
『駄目だお前、
頭が活性化し過ぎててもう、
依り代に出来ない…
うわわわこれはまずい。
あわわわわ』
慌てふためいている波多野。
「ばーちゃん?
俺が依り代??」
何も覚えてない栗山。
「おまえー今どこに居るー
病院からの連絡で逃げたって馬鹿なのかお前は~
あーあとタクシー会社からクレーム、
タクシー代請求されてすごい怒らたぞ!
どーいう事なんだーそれで何?
んんんぁあああ?
ほ、本当か?あー緊急会議でお前休職扱いにしたが…
うんむむむ。
そー言うことなら手配するが、
きっちり撮って来いよ?
ただし、
お前は画面に出れない以上!」
局長と話していた小春は
小言とお墨付きを貰い、
「局から中継車出るから
そこに全部用意してくれるって。
とりあえず新宿へ行って
駅ビルの近くのヘリに乗る」
ガララッ
部屋の扉が開き、
「あーーーー愛里ちゃん!
声がするから来てみたら、
あなた会社の人から捜索命令出てるのよ?
携帯ないの?すごい心配されてる、
まず社長に連絡を入れなっさい!
それで体はなんともないの…
んんんん~!
あれあれあれれれれれ
ニュースキャスターの蜜米さん?!」
すごく体が大きく
筋肉の塊のような男が突然現れていた。
「どどど、
どうも始めまして、
そうそう急な取材でお邪魔してます…
でもちょっと急いでるので外で
インタビュー彼女借りますねー」
愛里は小春に手を引かれ
逃げるように部屋を出る2人。
『うわー男~どういう事ですー
ものすごいマッチョメン!』
驚きを隠せないお冠な栗山くん。
『今の人は~管理人さん。
女だけは危険でしょ?
だからそれにあの人、
心は女のおかまさん~』
愛里の説明に、
『あーなるほど、
そっち系の理解しましたー
それは安心です』
安堵の栗山。
「やばいよヤバイって僕無理
ヘリとか絶対」
波多野はベンチでブルブル震えていて、
「波多野さん!
立ってお願いです。
『頑張って波多野さんあなたが居ないと
倒せても浄化できない。
同じ事の繰り返しに…』」
屋敷から飛び出してくる愛里に煽られたが
立ち上がることすら無理なようで、
「まさか強面なおっさんにこんな弱点が…」
「冗談とかじゃないんだ昔からトラウマが…」
『治せるけど?』
「神が居たーー!
頼む早く優しくお願い」
『これで実績が2回に、任せろ』
「あぁ良かった本当に」
愛里もホッと胸を撫で下ろすが、
「時間がないのよ何してるの」
分からない小春が急かす。
「ちょっとあんたたち
そんな逃げるように行かなくても、
お茶くらい…あら?」
出て来たマッチョメンは
ベンチの人物に釘付けになっている。
『あら~イイ男ぉ!!』
その恋のような思念を強烈に感じたのは波多野。
さらに顔を蒼くし、
「あー行く行く行きまーす」
突然の恐怖に怯えまた震え出している。
「おいおっさんじっとしてろ」
「栗山くん走りながら頼む」
「あなたーお名前は~
あー逃げないでぇ~」
追いかけ気味の管理人から
すっ飛んで逃げる波多野だった。
波多野はまたタクシー代金を
今回は経費で落ちるそうなので安心してカードで払い。
新宿へ着くと指定の場所に局の車が止まり、
さっき話していた小春の数段上の上司であり
番組を統括する管理職、
統括局長自ら現場に来ていて、
「同僚があんな形になって大変だと思うがきばってくれ。
自衛隊機に入れるなどほぼ無い
これは国防問題なんだ。
だからニュースソースとしては非公開だが
俺が自らリークする。
お咎めも俺が受けるから行って来い!」
局長は自分の胸をドンッと叩いた。
「ありがとうございます」
「それでそいつら何なの?」
局長の不思議顔。
「自衛隊の秘匿中の秘密の超能力者部隊。
この人らに私は見出されてしまったんです。
だから防衛大臣も動きました!」
「…うっそ、そうか。
そうなのか自衛隊に秘密部隊…
行って来い!」
『秘密部隊かっくぃ~』
『凄いこと信じさせてる。
笑っちゃう』
『高所は平気に?』
『あぁなんともない
逆に早く乗りたくてワクワクしてる』
『波多野さんの生存本能を削りました?』
『はい!』*これは愛里にしか聞こえていない*
『あぁーやり過ぎ厳禁ですよ?』
スタッフはカメラ機材をヘリに乗せ、
4人はヘルメットや、
ライフジャケットを着せられヘリに乗り込んで行くと、
2発のプロペラの回る轟音と共に
ふわり浮き上がる大型軍用ヘリ。
自衛隊機の中は隊員が計器を見て
空気中のデーターを既に取り始め、
専門用語がマイク越しに飛び交っている。
その中で主パイロットが小春にマイクで、
「で、目的地上空に付いたら
教えるでいいんですか?」
「はいそれでお願いします」
カメラマン役も自らやっている小春はすぐに、
外を写し始めていた。
「了解。到着まで10分。
滞空時間は3分です。
揺れに注意してください」
急激な方向転換をするヘリ、
必死で椅子の安全ベルトや取っ手に捕まる彼ら。
「ヒャッハー」
波多野はさっきとはうって変わり
とても楽しんでいるようで、
「もう見えてきます」
パイロットに言われ
地上を写す小春はすぐにその変化に気づいた。
「何よあれ?!」
「あぁあああああ!!」
「色が…」
窓の外を見る3人は
クレーターのようになっている場所の色が
他と違うのを認識している。
「花だ!」
「あれ全部…」
被災地には花が、
あの植物が咲き乱れ、
異様な蒼黒い色に染まっていて、
まるで恐怖の生まれるブラックホールだと皆一様に恐怖し、
マイクからは放射能の濃度の変化が逐一報告されていたが、
「消えました!
もう消えてしまったようです…
今は安全です」
驚きの内容が漏れ聞こえ、
『花が食べてくれた…』
『うん』
『放射能が無いなら』
「小春さん降りたいです!」
愛里は小春にマイク越しに話した。
「えぇ?!
わ、分かった。
隊長さん近場に降りれないですか?」
「命令にありません。
これにて帰投します」
ヘリは高度を上げ離脱を開始すると、
クレーターの中央で災の中心が赤黒い渦が巨大化していき、
花々を燃やし散らし始めている。
『飛びなさい…
私はもうあなたたちと話すことは限界…
消える…
だから飛んで。
安心して念じなさい、
愛里あなたは魔女。
力を想いなさい』
小春だ小春が栗山の代わりに
曾祖母さんの依り代になっていた。
ゴォオオオオオオォオオー
愛里は意を決し、
ヘリのドアのロックを外し風が巻き起こる中飛んだ。
ブワッ!
『隊員さんたちの記憶を操作してください!』
愛里は指示する。
『はい』
栗山は破綻が起きないよう彼らの記憶を弄り、
『うぉおおおおー
パラシュート無しだぜー
お前ら待ってろよー
浄化するからなー』
波多野は歯をむき出しに笑っていると、
地上から破壊され散り散りになっている蔦が
3人に飛び付くように絡まっていき、
防御網のようになっていく。
『すげえええええぇー僕らすげーーーーーー』
波多野の目は逝ってしまい、
『いけぇええええええ!』
栗山も大興奮している。
『これでショックに耐えられる?!』
地上まであと数十メートル、
渦の中からあの魔物がもう一度姿を現し始めている。
そして愛里はその魔物の正体を知ってしまった。
『マ、マネージャーさん!
Bちゃん!
ディレクターさん!
ADさん!
あぁああああああなんて事を!』
怒りで体の全部が、
目が燃えるように赤く染まる愛里。
『命を粗末にする地獄の死者に容赦はしない!
あんたらの無念晴らすからなー!』
波多野の前口上が炸裂し、
「絶対零度のナイフたち」
愛里は訳も分からずその言葉を口にすると、
氷のナイフが次々に発射され繋ぐ鎖を断ち切っていき、
フワリ地上に降り立つ3人。
彼らを保護していた蛇は縮まり
彼らの左腕から伸びているらしくグネグネ動き、
鎖の呪縛から解放されかけた魔物は
自分の真実に気づき身悶え
自らの恐怖でクレーターの外へ出ようともがき、
再び街に壊滅的な破壊を引き起こしていくだが、
渦から次々に繰り出される鎖りに再び捕らえられ、
今飛び出てきた何本もの鎖の先端には鎌のような刃があり、
直接愛里たちを襲いはじめた。
『向こうの奴ら、
俺らを認識したーーー!!
敵が誰だか分かったみたいだー
うわぁああああ』
ブンブン飛んでくる鎖鎌を必死に避ける3人。
『やべー強力になってる。
愛里さんなんとか踏ん張ってアイラさんは!!』
『あぁああ呼びかけに応じません、
力の遺失を感じます!
何かあったみたい。
私に魔法は分からない!』
先端が刀のような物、
ハンマーのような物、
三叉の鉾みたいな鎖が遅い来る!
『持ちこたえられない!』
『イテーーーータヒぬーーー』
彼らを防御する蔦も耐えきれずバシバシ切られていき、
体はあちこち切られ血しぶきが舞う。
『想いなさい…
魔女の力は想いの強さ。
さようなら愛里…』
ヘリは帰投するはずがまだ旋回を続けており、
小春は意識は無くしたまま曾祖母さんの最後の言葉を伝え、
カメラは抱えたままで地上の様子を撮っている。
『おもう…想う…想像するの、
いつか見た宇宙の謎!』
「ダークマター!」
愛里は真っ黒い球体を出現させて行く、
「波多野聞いてー」
瞬間アイラが現れ、
「栗山の怪我直したらなんかすっごい調子おかしい、
栗山何なのーやばいやばいやばいよーごめんもう限界~!!」
髪は元に戻る愛里。
『だめだー
アイラさん一瞬来たけど
消えたぁあああああ』
ビビリまくる波多野に、
『どうして!
あぁ消えちゃう…』
愛里は唱えた謎の魔法も中途半端に消失させてしまい、
「グギャガガガガガグガァアアアアアアアア」
魔物のてっぺんの口から咆哮と共に放たれる
マグマに包まれたような岩石。
幾つも幾つも飛ばし、
周りの建物が破壊されていく。
『ダメー私にはどうしようも出来ない』
『愛里さん今は引こう、逃げるんだ!!』
『どこかで立て直そう、
そしてもう一度』
『いゃあああああああああ!!!』
愛里はパニックに陥ってしまい赤い光は弱まり、
栗山は咄嗟に彼女の心に触れようとしたが、
心は閉ざされ入る事は出来ず、
『どうすればいいんだよぉー』
栗山もパニックになりかけていたその時、
なんと2匹の狛犬の様な魔物が突然出現し、
「ガウルルルルル」
「グガガガガガガガッガ」
1匹は魔物の首に噛み付き、
もう1匹は下腹部へ攻撃を始め足止めを試みているようだった。
『愛里さん見て!
あれを、しっかり目を開いてー』
『愛里さん!!』
頭を抱えうずくまる愛里の傍で傷を癒やし、
魔法の力を与え続ける栗山。
『まさかあれか?』
波多野が見る先にヘリが帰投するはずだったヘリが、
旋回している。
『能力者が居るんだ?!』
栗山と波多野は
愛里を守りながら比較的安全そうなビルの影に隠れ、
その様子を見守り、
『誰?どこにいるの返事して!』
強い思念を辺りにばら撒く愛里。
『逃げてください。
こんな事するの初めてに近いもっと遠くへ!』
『自衛隊の人?』
『気になって本気が出せない早くそこから』
『あとで必ず話せますね!』
『わ分かりました!
こいつらどうしたら倒せるんですか?』
『裏側にある渦から伸びた鎖を切って!
そしたら魔物は霊能者さんが浄化します。
倒すだけでは意味が無いです』
『分かりました。
二匹で背後の鎖に総攻撃開始します』
二匹は誰かに命じられるまま
鎖を引きちぎって行く。
バシバシ切られていく鎖、
新たに伸び魔物を取り込もうとする鎖、
先端が武器になった鎖は宙を飛び交い、
狛犬の体を痛めつけパックリ開く傷から血がほとばしっている。
『危ないー』
栗山は離れた場所から2匹に力を与え、
傷は見る見る癒えていくが、
攻撃の激化によりイタチごっこが始まり
治る傷の上からまた切られ、
狛犬たちの顔に激痛が走るのが分かる。
『こんな事するの子どもの頃以来で、
本格的にこの2匹を操った経験はありません。
2匹の命は私と連動してるかもしれません。
さっきから体が猛烈に痛い!
ダークマターってなんだったんですか…
もう一度唱えられませんか?
仲間の意識もこれ以上止められない!』
狛犬の動きも鈍くなり、
魔物に抱え上げられると地面に叩きつけられ、
ここぞとばかりに魔物と鎖武器が2匹を襲い、
頭上のヘリにも鋭利な武器が舞い上がって行く。
『あぁあああやはり隊員の誰かだ。
察知したんだこいつら!!』
波多野はそれを見ている。
『あぁ愛里さん!』
栗山は必死に2匹が殺られるのを直し、
空の誰かも治そうと必死だったが、
『あ、やべ…』
恐ろしいほどの汗をかき
栗山の意識も遠のいた。
「ダークマターと
ダークエネルギー2つの力をここに!」
愛里の体が再び赤く染まりそして青に変わり、
白く輝いた時、
シュガガガガガガーングギィイイイイイイン!!
真っ黒い球体は透明になり残像を残すように
魔物や渦を包むと、
グチャ…
球体の内側の壁に何かの圧力が加わり一瞬で潰れ、
血まみれの肉痕になり、
中央から出現する雷の渦は
白いプラズマの塊に変化し渦の中へ侵入して行った。
グッギン!
「グギィガガガガガガガガガ…グェーー」
どこかから聞こえる何者かの悲痛な叫びはすぐに消えた。
『ハァハァハァ…』
『やった…』
『あとはお願い…します。
ハァハァ…』
疲れ果てている愛里を栗山はベンチに座らせ、
波多野は呪文を唱え印を力強く中空に描いていく。
『…魂よあるべき場所へ戻り、
永遠の安らぎを求めよ…
カーーーーーーッ』
血みどろの飛び散った肉塊が
次々にこの世から消えていき、
血溜まりも一緒に消滅していく。
残っていた植物も今はどこにも見えなくなっていた。
『終わった…』
険しい顔のままの愛里。
『こんなの続けられない…』
波多野の表情も暗く。
『お、俺もやばかった…
いつまでもあると思うな若さ。
みたいな感じに…』
栗山も同じだった。
『そちらは大丈夫でしたか?』
頭を押さえながら愛里が言う。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
*現代編:主要登場人物*
名前:原田 智也
職業:陸上自衛隊:2等陸尉(ヘリコプター操縦士)
能力:魔物(妖怪?)の狛犬2匹を召喚し使役に出来る。
年齢:52歳
両親と若くして死別し祖父、祖母に育てられ、
その能力を封印されてきた真面目人間で既婚者。
他人の心を操る能力者だと自負はあったが
実は幼少期から見ていた魔物のような狛犬を
使役にするのが本来の力だが、
実は人も魔物と同じで簡単に操れたりする。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『ありがとうございました。
体の痛みも消え現在基地へ帰投中です。
申し遅れました私は原田智也。
ご覧の通り陸自の隊員さきほどのヘリの副操縦士ですが、
あなたたちはいったい何者なんですか…
でも決して悪い人たちではないのは分かります。
私の真の能力が覚醒したのも
あなたたちのお陰…』
原田は丁寧な口調で
とても真面目そうな叔父さん。
『こちらこそありがとうございます。
原田さんが居なかったら3人ともタヒんでました…
今の犬はあなたの力ですよね?』
愛里が聞いている。
『はい。
あれは子供の頃からずっと見てました。
何をする訳でもなくふと気づくと近くに居るんです…でも、
育ての親に居ないと思えと言われ続け、
意識下で見えなくしてましたが、
やっと分かりました。
この時の為の力だったって』
『あーあの、
今からするとんでもない話を聞いてもらえますか?』
愛里の神妙な顔。
『覚悟はもう出来てますが…』
原田が言う。
『上空から見た蒼黒いのが
蔓延ってるのを見ましたよね?』
『はい。
とても不気味でした…』
『あれは異界からの植物、
実際には蛇なんですが、
放射能を消したのもあの植物なんですきっと』
『おぉなんという奇跡の生物、
どこかで捕まえられませんか?』
原田が聞くと、
『左上腕部に巻き付いてると思いますよー』
栗山が答えた。
『おぉこれは何かが巻き付いてる。
これが蛇?
いやこれは奥さんにも誰にも見せられない…』
『その蛇、
危ない時に大活躍してくれます。
過信するのは良くないですが、
反射神経はマッハです』
『そ、そんなにそれは心強いですが、
これはやはり誰にも秘密ですかね?』
『うん。
ただのモルモットにされると思います。
国の機関ならなおさら』
波多野が言う。
『理解しました。了解です』
『でですね、
すごい蛇なんですけど助けるのと同時に
魔物も引き寄せているんです…』
愛里が説明している。
『えぇど、
どういう事なんでしょう?
なぜ…』
『今回の魔物登場で分かったんです。
私たちはあの魔物の生まれる所へ行って
根本を断てと言われているんです』
愛里に言われ、
『あぁ…そんな…』
原田の震え声。
『もうそれしか…』
栗山が言い、
『あぁ。
こんな事続けてられない』
波多野も同意見だった。
『原田さんあなたにも来て欲しい。
一緒に仲間になって戦って欲しい…』
愛里の思いに、
『どういう形の旅路なのか想像も出来ません、
もっと詳細が分かれば良いのですが
ー私には妻が居て残して行けません。
1人息子も結婚し孫の顔もそろそろ…
だから今は申し訳ありませんノーです。
でもこの縁を切ることはあり得ません、
こんなジジィになって出来た仲間。
テレパシーもいつでも歓迎です。
こんな凄い能力、
妻にもあれば寂しい思いさせなくて済みますかね…
あぁ失礼しました軽率な発言。
ハハ』
『原田さんの気持ち痛いほど分かります。
無理強いなどしません、
また犬のお願いをすると思います。
その時は力に』
『もちろんです!
では原田2等陸尉、
基地へ帰投します。
同僚の意識も適度に弄って元に戻します。
ではくれぐれもお気を付けて』
ヘリはかなり前からこの空域から離れ、
数十キロ先を飛んでいたが、
思念のやり取りに距離はまるで関係なく、
常に隣に居るような感覚で意思の疎通が出来ていた。
『さぁ3匹目が来てからが
本当の闘いの始まりです…』
栗山が言う。
『覚悟は宜しいか?』
波多野が言う。
『…お風呂入りたい。
私悩むとお風呂に入りたくなる癖が…』
みんなの格好はボロボロで薄汚れていて、
破けたりほつれたりで、
とても街を歩ける格好ではなくなっていたが、
『原田さんの能力は
基本人も魔物も同じで簡単…覚えちゃった』
栗山が言うと、
『えぇ?』
愛里の不思議顔。
『犬を出せるのか?
あぁなるほどこっちね』
波多野は自分たちの服装が
クリーニング済みみたいに綺麗になるのが分かり、
『他人の目を誤魔化してるんだな?』
『うん』
『すごい。
衣装代ゼロ円で済む~
私も覚えよう』
『あーってかですね。
瞬間移動、
テレポーテーションなるものを覚えて貰えると…
私の財布にも大変優しく』
波多野の切なる思い。
『テレポーテーション?』
愛里がその言葉を発してしまうと、
『おわーーーっ』
波多野はただ1人美人荘の大浴場へ飛ばされ、
マッチョメンの大きな背中が湯船に見えている。
チャプン。
『ぎぁ…愛里さーん戻して~』
その男が振り向かないよう懇願する波多野。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「誰だ?!」
管理人は気配を感じ振り向いたが、
そこには誰も居なかった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『勘弁してー』
戻って来た波多野の第一声。
愛里は覚えたての瞬間移動能力で、
彼らをそれぞれの住居に送り戦士たちの休息となり、
自宅で束の間の人間らしさを取り戻す事になったが、
3匹目の魔物がいつ現れるのか戦々恐々としながらも、
その時を待ち愛里は今、風呂で考え事をし、
ブクブクブクブク…
『そして私たちは蛇に選ばれ災の中心へ…
監督の指示は…臨機応変なアドリブで…』
湯の中に頭まで浸かっていった。
つづく
*「」内のセリフが()の中の場合は心の声になります。
*『』この会話は思念波、テレパシーになります。
この物語は下記noteで先行掲載しています。
小説はこれしかありませんが他には
短い物語やパロディなど多々ありますので良かったらどうぞ。
note猫夢アトニマス
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