表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「アウトランド:異界と女優と魔女と剣とホムンクルスと魔王」  作者: 猫夢アトニマス


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/13

8・オイシイエサノジカン…ノオミ死す!

前回までのあらすじ

 魔法の実地調査をするノオミ。

そこへ現れる若返りを果たした義理の父トオビン。

父は娘の圧倒的な能力に今や下僕となり、

仲間の死がノオミとイーガンの仕業だと知った猫目のカジキは

毒で自殺を謀るイーガンに留めを刺し、

ヤモトたちは危険過ぎるノオミから逃れようと

一路地上へ戻って行くが、

なんとガウが危険極まりない爆弾生命体。

ホムンクルスのテンをさらって来ていた。

 ブゥウウウウウウウウン~~

「うわぁあああああああああああ。

なんだこれ~

止めて止めて止めて~~

ぎゃあああああああ!!!」

 外からは中が見通せないくらい黒く小さな物が

小春の乗るタクシーに湧きまくっていた。

まだ心の中に何かが現れたのかと、

気も狂わんばかりの小春は、

車の往来の激しい場所で

止まる事の出来ない運転手をまたビビらすと、

数分後やっと横断歩道で止まった車から転げるように降り、

「おいどうなってんだこの車!

凄まじいハエがーぁ…」

 怒鳴ろうとしたがよくよく見た車内は至って普通で、

ハエの一匹も飛んではおらず、

「ふ、ふざけんなこの馬鹿女!

きっちり請求するし、

あんたの事大問題にするからなー!」

 ドライバーは捨て台詞を吐くと

信号の切り替わりで仕方なく発進して行った。

「ハハハ…まだなんかおかしいみたい私」

ブーン 

 そしてまた飛ぶハエにうんざりな小春は、

「どうせ幻影…」

 顔の前を飛ぶ虫を払い、

ジロジロ見ていく人の目も気にせず路肩に座り込んでいたが、

そのハエは3匹となり、

彼女に見せつけるような信じられない動きで、

1匹の上に2匹が乗り、

3匹で1つとなったハエは中空を回転するという曲芸を見せ始めた。

「あああああああああぁ合図だ。

これは合図なんだハエさん連れて行ってお願い!」

 ハエは付いて来いとでも言うように

小春の鼻先30cmを飛んでいたが、

いつのまにかアゲハ蝶となりユラユラ飛翔する、

見落としがちな虫を必死で追いかける小春。

「うわっーーー!」

 そして蝶は巨大な特撮ヒーロになり、

小春の腰が抜けそうに驚かせていた。


『こんな事もできるんだ』

 栗山の思念。

『何やったんだ?』

 波多野のが聞く。

『蝶を巨大ヒーロに変えた』

『あほか!』

『遊んじゃだめー!』

 愛里の思念。

『ご、ごめんなさい。

でも試してみないと何も分からなくて』

 ペコペコ謝ってる栗山。

『…分かるけど大げさなのは小春さんに怪我でもさせたら。

節度守って』

 愛里の思念。

『ですね、じゃ私も少し練習を』

 念じる波多野。


「あぁ…嘘ぉやだーキャー」

 目の前に小春が1番好きなイケメン俳優が現れ、

小春の手を引こうとしている。

「あー…

むむむぅ…

てか遊ばれてる…

心を読むなー」

 口を尖らせ、

「あのーもしもし?

聞こえてます?

ちょっとあなたたち聞こえてるなら

私のお腹の中の中まで読まないでね?

それすっごい駄目だから」

 自分の正当性をアピールする小春だった。


『あ、なんか怒らせた』

 波多野が言う。

『駄目ですってば、

相手の心の奥の奥は読まないように、

蓋して来ますからね』

 愛里は念じ

彼女の心に自分たちが読めなくなる底の底に扉を作り

そっと閉じると、

「あなたが心の中の人…」

 愛里はそのままの姿で出現していた。

「どこへ向かっているの?」

 愛里は彼女の少し前を歩き

幾つかバス停の路線図を見ては、

ここではないとやっと見つけたバスに彼女を乗せると、

高級住宅地界隈で下ろし、

有名な公園を抜けた場所。

「ここ?」

 お屋敷町で近くに鎮守の森も有り静かな町並みの一角、

築100年は超えてると思われる重厚な作りの

「美人荘」と書かれた表札のある家屋。

中へ入って行くと

全ての木材が長年の掃除の賜物なのか

ピカピカに黒光りし真ん中に廊下、

左右に振り分けられた部屋があり、

歩くとミシミシギシギシと音を立て、愛里の立ち止まった部屋は三号室。小春は扉を開けてみるが当然鍵がかかっていて、

その三号室と書かれたプレートの裏に

鍵が隠されていると指で示す愛里。

「あなたの部屋なのね?」

 ガラガラガラ

 鍵を開け引き戸が引かれ中へ入ると

部屋は奥にもあり襖が開いたままでベッドが見えている。

「ここで待てってことだね分かった。

ん~ここお風呂…

とか有るのかな?

シャワーでもあ、

消えちゃった…

ごめんね本当に後でちゃんとお返しするから

服借りる」

 小春は衣装ダンスを開け物色し始めると、

映画の大きな宣伝ポスターが額装され立てかけられていて、

写る俳優たちをじっくり見ると、

「あーーーー会った事ある!

番組で呼んだあの新人女優…鞠愛里!

そうだこの子!!

本当なの?

えぇええええ」

 小春は意外過ぎる人物に目をくるくるさせている。


『案内終了…ふぅ。

今後はお腹の底は見えないようにしました…』

『スイマセン…はぃ』

 栗山の思念。

『自制に励みます』

 波多野の思念。

『しかし、すごい古式ゆかしいお屋敷で、

愛里さんにとても似合ってますね~』

 栗山の思念。

『ここ知ってるよ~なんか先代の遺言で絶対売れないってテレビで見たような』

 波多野の思念。

『その子供らが私の事務所の社長。

持ち家なんです』

 愛里の思念。

『へ~資産家だ。

住まわせて貰っているんだ。

まさかここにたった1人?』

 栗山の思念。

『うん。

他にも数名同じ事務所の子たちが居ますよ』

 愛里の思念。

『女子寮でいいんですよね…

男子禁制ですよね!!』

 とても気になる栗山くん。

『ですよぉ(あの人はどっちなんだろ…)』

 愛里の返答に、

栗山には聞けない箇所があった。

『やっと目的地がはっきりしました…』

ふぅ~

 波多野は椅子に深く座り直し息を深く吐き、

ずっ~と押し黙ったままの3人客。

助手席の厳つい男も、

バックミラー越しの2人も、

なんかニヤついたり、

怒りかけたり、

唐突に歯を見せ笑ったり、

その表情と微妙な手の動きで会話しているように見える、

まるでパントマイマー。

不可思議な印象を持っていた運転手だったが、

『運転手さん!』

『運転手さーん!』

 波多野と栗山は思念を同時にぶつけてしまい、

「わぁ!」

 意味不明の衝撃を感じ

驚いて急に切ってしまったハンドルを

元に戻そとう焦る運転手。

「運転手さん港区、

白銀台の亜理砂川公園に向かってください」

「ん~あっはい!」

 愛里の唐突な指示にも焦っていた。

『普通の人に飛ばしちゃだめー!』

 本気で怒る愛里。

『あーーーすいません』

 栗山の思念。

『ごめんなさいこれ慣れすぎると怖いね……

うわぁあああ』

 そして加算されていく料金に

波多野は目を瞑って耐えるしかなかった。


▼場面は異界に戻る

 朝の清掃係の馬車に乗せてもらい

ロッグスとコハコの経営する宿へやっと到着した一行。

部屋はあると1人1部屋ずつ充てがわれ、

束の間思い思いの時間を過ごし、

ロッグスとコハコは自分たちの居間、

宿とは切り離された

プライベートな自室の暖炉で酒を飲み温まっている。

「ダンジョンまで追いかけて行ってごめんね…」

 コハコが言い、

「いやワシもこの仕事引き受けた事すごく後悔してて、

報酬があまりにも凄くてつい嘘を…

ごめんでもまさかこんな大事になるなんて…

ノオミはテンを捜索しに地上へ出てくるはずだよ…」

 ロッグスが話した。

「うん…

でも私がダンジョンへ行ったのには

もう一つとっても伝えたい理由があって…」

「え?何!なにかあったの。

伝えたいことって何!!」

 嫁の両肩を掴み真剣な眼差しのロッグスだったが、

その手を取りコハコは自分のお腹へ充てがった。

「あっ…ぁああぁあ…」

「えへ」

「まままさか」

 こくり頷くコハコ。

「だぁあああああ~

俺の子ぉおおおお~

でかした奥さん!

ありがとうありがとうありがとぉおおおおぉお

ヒャッハ~」

 飛んで喜びまわるロッグスは、

コハコをそーっとお姫様抱っこすると

そーっとそーっと左右に揺らしキスすると、

ギュウと抱きしめそーっと降ろすと

コハコの服がめくれお腹が見えている。

「あぁコハコさん!…

ノオミに触られたって言ったよね。

これは…?」

「あぁなななな何これ!!

今知りましたっ。

怖いよ旦那さまぁ~

唾で消えない?」

 コハコは必死に唾で消そうとするが無理で、

ロッグスは紙と鉛筆を持って来てそれを書き写した。

「奥さんはここに居て仲間と話してくる…

脱退の話も」

「とても嬉しい…けど…」

「家族は一緒に居ないと駄目なんだ。

それに後方支援なら出来る、

仲間である事には変わりないし

何よりこの事を相談しないと…」

「あたしも一緒に…」

「ごめん。

それは……いや、

あぁうん来て隣に居て…

ワシや皆の話すこときちんと聞いていて欲しい」

「怖いよコハコ怖くなってきたよ…」

「しっかりワシが付いてる仲間も居る!」

 暫く悩んだロッグスの真顔に、

コハコもこれから起こる事に覚悟を決めていた。


カンカンカーン

 ロッグスは酒場で全員集合の鐘を鳴らすと、

1番大きな長テーブルの上座にドンッと座り、

コハコは背後に立っている。

「どうした?」

 カジキはずっと居酒屋でナイフの手入れをしていて

1番に席に着き、

「呼ばれたのかな?」

 とんがり帽のナイトキャップで、

部屋着姿で現れたブレイン。

「風呂入ろうとしててこんな格好で失礼」

 急いで飛んできたヤモトは下着姿で、

頭の上の手ぬぐいに気づき、

さっと降ろし席に着いた。

『なんか変…』

 普段あまり見ない真剣なロッグスの顔にガウは思っていた。

「急に呼んですまない。

まずおめでたい話がある。

わしと奥さんとの間に子供が出来た」

「おぉおおおおお、

めでて~

ふたりと赤ん坊にかんぱ~ぃ」

 カジキが立ち上がり皆に酒を注いで回り、

「やったなーおふたり。

男?女?名前は?

まだ早いか~

おめでとー」

 テーブルのコップをふたりに掲げ飲み干すブレイン。

「ロッグス、

コハコさんおめでとうございます。

こんな事態でなんという幸せな報告。

おめでとうおめでとうおめでとう」

 ヤモトは涙ぐみワインを一気飲みし、

「えぐえぐえぐえぐえぐえぐえぐえぐぅうう」

 ガウは号泣し

おめでとうと言っているらしい。

「ありがとう。

ありがとう。ありがとう。

みんなの祝福が何よりも嬉しい、

嬉しいんだ」

「ありがとうね皆んな、

元気な赤ちゃん産んで命を育むよ」

「コハコさん本当におめでとう。

はやく赤ちゃんの顔見たいよ」

 ヤモトが言うと、

そこから暫くロッグスは何も言わず目を瞑ったままで

感動に浸っていると思われたが、

「…でも言わないといけな事が」

 ロッグスは話し始めた。

「あぁ脱退の話しか?」

 ヤモトが言う。

「うんうん分かってるよ、いいよ?

問題なし。

メンバーもとりあえず2人も増えたし、

ロッグスは奥さんと子供を宿を守って」

 ガウが言い。

「そうだったなー本来はこれ

ラストス・タンドの解散式だ。

俺の仲間もここに居れば一緒に…

くっ…」

 目頭を熱くするカジキ。

「俺はラスト・スタンドのメンバーに

入れてもらえて大変ありがたく光栄に思っているし

正式加入だから、

とりあえずとかは止めてくれ」

 ブレインの思いに手で謝るガウ。

「…違う」

 ボソリとこぼすロッグス。

「ん?」

「違うって何が?」

「おい、

おいどうしたってんだよ」

「……くぅ…」

 ロッグスは声に詰まり話せなくなっている。

「感動して感極まっているのかよ?」

「なんだなんなんだよ」

「ご懐妊の報告と念願の脱退だろー

まぁ色々有りすぎたからな…」

 カジキが言う。

「これを見てくれ」

 様子がおかしいロッグスが

部屋で書き写した物をテーブルに置いていた。

「っ何?」

「2249とは」

「何の番号?」

「奥さんの腹にこれが…」

 きちんと説明し始めるロッグス。

「腹にタトゥー?

珍しくもなんともないが…」

 カジキは言うが、

「ノオミと会ってしまった奥さん。

そして懐妊を知られ、

奴はコハコさんの腹に魔法の烙印を押して行った。

印の番号は恐らくそう言う事だ」

「!!」

「通し番号…」

「2249番目の…」

皆一様にショックを受け

顔を青ざめさせている。

「あぁなんてこった。

あの噂は…

いやかなりきちぃ噂だから…

当人の前では」

 カジキがワインの入ったコップを回しながら言う。

「いやいいんだ。

だから奥さんもここに居る。

嘘や騙しは駄目だ通用しない。

奴から身を守るには皆んなの意見と

奥さんの自覚が大切だから…」

 悲痛な顔の奥さんを必死に支えるロッグス。

「ノオミはホムンクルスを豚から作ってると言ったが、

王宮産婦人科の助産婦らの話だと

新生児の死亡がやたら多い時期があって、

子供の墓荒らしが横行したり、

乳児の誘拐事件も…

奴の仕業だともっぱらの噂」

 カジキは俯いたまま話している。

「なんと言う…」

「本当なのか?」

「まさか赤ちゃんを、

酷すぎる!」

「ノオミの残虐性と人造生命体…

俺は見たぞ?

ダンジョンにホムンクルス製造機械のような物を

持ち込むのを緑の液体が数本揺れていた」

 カジキは顔を上げた。

「ホムンクルスも大量に作って

王宮を圧倒的に支配する気なんだ…」

 ブレインが言う。

「だからコハコさんをどう守れば…

わし1人では…

頼む奥さんと子供を守ってくれお願いだ皆!」

 ロッグスとコハコは頭を必死に下げている。

「だがなアレを誘拐し、

烙印を押した物が目の前から消えたのに今だ追手が来ない…

テンにも烙印にも位置を知らせる何かは

仕込まれて無いと言う事か…

ぬぅ」

 カジキは腕組し思案している。

「ノオミは瞬間移動の魔法を習得している…

いつでも来れるはずだが、

そこまで簡単に唱えられる物では無いのかもしれないぞ?

よほどイメージしてないと

岩の中に出てタヒ亡とか…

もしくはありがち過ぎるスクロール切れ…

笑えるがね」

 ブレインが言う。

「あんなぬかりの無い奴がまさかとは思うが、

俺たちはそのまさかを突いたのかも知れない…

奇跡を信じるのは危険過ぎるが…

考えろもっと

俺らはダンジョン・ハンター!

なんでもやって来たから今がある。

考えろ、

考えろ…」

 ヤモトが言うと、

ブッブッブッブッブッブッブッブブッブーン

「な、なんだ!!」

シャキーン

 断続的な音が鳴り出し皆の武器が抜かれていた。

「あれ!あれが」

 真っ先に気づいたのはコハコ。

音はテンの生命維持装置からで、

皆は酒場の隅に置かれてるテンの回りに集まると

じっくり背負い型の維持装置と

テンの繋がりを調べ始めた。

「防護カバーの付いたスイッチ類、

おそらくこれがメインレバー…

思ったほど複雑ではない…

だからと言って何一つ判らんが」

 触るに触れず触らぬよう指で示していくブレイン。

「これが給餌カプセル。

これにご飯入れて食べさせる…

単純なご飯製造装置?」

 取り外し可能に見える

透明な筒を見ながらガウが言う。

「いや、

空気もろ過して供給してるはず、

このホースがそうだから」

 装置に網目状の箇所があり中に小さくて、

たくさん羽の付いた物が

くるくる回っているのが見えている。

「空気も…

こいつ虚弱体質ですぐ風邪引くとかかな?

装置とテンを切り離せばすぐ逝っちゃいそう…」

「その通りだよきっと…

だが絶対に忘れるなよ?

これの本質を…」

 ヤモトはガウに認識を改めろと諭した。

「うん…

迂闊なことは出来ませぬぬぬぬぅ。

これなんだろうね…」

 ガウはふいに装置の側面に折り畳まれているチューブを

じっくり観察すると、

「…でかい注射?

何かを吸うとか…」

 先端は鋭利な金属のようで

専用ホルダーに押し込まれていて、

「本当だ…」

 ブレインもじっくり見ていた。

「どうしよう弱りきってしまうよ。

早く餌あげないと」

 コハコさんはまだテンの事を

子供の様に見ているのかどこか優しい。

「これ外してみる…」

 ヤモトは3個あるうちの1つのカプセルを慎重に外すと、

皆はおののいてはいたが、

中にこびり着いている残留物を調べようとする彼が、

それの蓋を開け匂いを嗅ぐまでをじっと見守っていた。

「どう?」

 コハコは聞いた。

「野菜?

香りのきついニジンとマネギ…

他は…

カジキお前の獣の鼻で」

 ヤモトが差し出すと、

「獣って言うな…

うげぇ俺の大嫌いな野菜の匂いがする!

お前の言う通りの物だと思うぞ。

うげええええ」

 思わず顔を背けそれ以上嗅ぐことを拒否するカジキ。

「この3本の入れ物は

食材別の専用容器なのかも」

 コハコも容器を外し中を匂っている。

「これ生肉だねきっと。

これは、

なんだろう特殊な薬剤、

特別な栄養素が必要ならお手上げだけど。

とりあえず食材庫にある野菜と干し肉で

ドロドロスープ作って…

ついでにうちらのご飯も作り置き」

 テキパキと食材を用意するコハコは

カマドの大鍋に水を入れ、

出汁用にあらかじめ前処理し乾燥させたぶつ切り骨たちを

大鍋に放り、

火はブレインに点けてもらうと轟々と燃え、

大きな包丁を軽々と扱い赤、青、黄の野菜、

干し肉も細かく切っていく。

シュンシュンと鍋から湯気が立ちだすと切った食材を入れ、

シンプルなスープが出来上がっていき、

もう一つ鍋を小さいのを用意すると

作っているスープを分け入れていき、

初めの鍋にだけ味付けに塩、

スパイス、ワインで味を整え完成で、

もう一つは更に煮込ませ最後に悩んだ挙げ句、

羊の血を凝固させた物を数個入れそして数時間後、

ある程度冷やしたテンのご飯が出来上がっていた。

「ドキドキ…」

 コハコは全てが溶けたような

ドロドロスープをカプセルに入れ蓋をすると、

「お願い…」

 ヤモトに手渡していた。

「うん…1日に1回でも大変な作業だな、

せめて口から食べてくれたら…」

「赤ん坊なんてそんなもんだから。

あんたも手間暇かけて育てられた。

皆んなそうだよ」

 コハコは言い、

テンの服の腹あたりを脱がせて蓋を見つけ、

ヤモトは恐る恐る突起に手をかけそこを開いた。

「頼む!(食べてくれ)」

「(お前にタヒなれでもしたら

最悪な報復が来そうだ…)」

「(味無いけどまぁ子供向けだから…

んんん~

お前本当に子供なのか?)」

 皆んな真剣に祈り、

カプセルがぐいと押し込まれると、

ギュルッ

 カプセルのスープは一気に空になった。

「おっ!」

「おぉおおおお」

「食べたのか?」

「お腹空いてたんだろうか?」

「あぁこれで1つ問題が消えた…」

 ブレインは言ったが、

「いゃ駄目だ次の餌やりまで様子見ないと1日に1回、

長いぞ今から24時間…だ」

 ヤモトが言い、

「そ、そうだね。

何があるとも判らないからね。

じゃーあたしから見守るよいいよね?

ダーリン」

「えぇえええーうん。

でもわしも一緒に。

あそこは冷えるから毛布持って行く」

「うん。ありがと」


 テンを地下の穴蔵、

物置き兼ワインセラーへ連れて行き寝ずの番が始まり、

寝台など無いただの岩や土がむき出しの洞窟。

最奥の広がった箇所に

たくさんの稾を敷き毛布に包まり暖を取り、

「この子は何を考えているんだろうね?」

 まだ暖かいお茶をすするふたり。

「駄目!アレにはあれとか、

こいつとか言わないと、

コハコさんは優しすぎる…」

「ごめんなさい」

「怒ってごめん」

「でも2249が個体数なら…」

「あー駄目それもだめー

そんな事考えてもだめだめだめー。

ワシが嘘ついたのが1番駄目だから、

あなたはわしの宝物だから子供もあなたも絶対にっ守るから!」

「うんうんダーリン」

「さて何事も起きませんようにじっと観察」


 ロッグスは彼女をしっかり抱き寄せ

2人でしっかりテンを観察していると、

コハコはうとうとしてしまいやがてロッグスは本気で寝てしまい、

目の冴えてしまったコハコはテンをずっと見つめている。

「あいつはお前の話をする時ちょっと

嬉しそうだった…

あれは嘘じゃないと思う…」

グググゥ…スピー

 眠気に負けてしまったコハコ。

ロッグスの寝相はすごく2メートル先に転がっている。

「コハコさん代わるよ」

 ヤモトがやって来ていた。

「あ、うん。」

「なんかあった?」

「いやなんにも無い。

このまま何も無いといいね…

ダーリン起きてー」

「おいおいどこで寝てるんだ寝ずの番なんだぞ。

起きろ」

 ヤモトがロッグスを起こしにかかったその時だった。

ブゥウウウン…シュシュシューン

「馬鹿な奴ら…

テンを攫ってどうする気だったんだ?

言ったよなそれは最上級魔法爆弾なんだぞ?

あとお前の腹の子には、

もっと素晴らしい生命として生まれ変わらせる予定だったが…

もう要らない。

ギャハハハハハハハハハハ。

10秒やるから逃げてみろ…

無理だろけどな。

さぁテン帰るよ向かえに来たよ~」

 テンの傍らにノオミが出現し2人は凍りついた。

「いーち、にー、さ~~~~~ん」

 ヤモトはコハコを庇い

ノオミを睨み付ける事しかできず、

剣は抜こうにも所持してはいなかった。

「ししししっしぃいいー、

ごぉおおおおおおおおおおおおお…

ふふっ何の魔法で逝きたいかな~

火、水、雷、土なんでもあるぞ~」

 ノオミは両手をグネグネ動かしながら2人を威圧し、

右手で拳を握る。

「ファイヤー・ボール。火の魔法」

 人差し指を上げ唱える。

「フリーズ・ケイオス。水の魔法」

 中指を上げ唱える。

「プラズマ・アロー。雷の魔法」

 薬指を上げ唱える。 

「メテオ・シャワー。大地の魔法」

 そして小指を上げ魔法を唱えると

4本の指先にそれぞれの魔法が小さく灯りだす。

「全部撃っていいか?

きゅううううううううううう」

「や、やめろぉおおおおお」

 誰かが叫んだ。

「あん?!」

 ノオミは振り向くと、

ロッグスが維持装置から無理やり取り出した、

先端が鋭利なチューブをテンのガラスメットの下、

首の辺りに押し当て、

口に繋がるホースも抜こうとしている。

「消えろくそ女!」

 ロッグスは最後の賭けに出ていた。

ノオミが言ったテンを迎えに来たが本当の話ならノオミはきっと…。

「あぁああああああああああああ、

止めろ止めてくれあぁテンに手出しはしないでお願い。

お願いだから、

だから止めて乱暴にしないでーーー!

私の子~~~テン…

ギャハハハハハハハ。

命乞いするとでも?今、

そいつの上位互換高性能生命体を8体も作っている最中。

出来損ないなどいらん。

ではそういう事でぇ。

じゅううううううううううううー!!」

 指先の魔法が大きくなり

4っつが重なり始め洞窟内に光が、

回りが何も見えなくなり、

ロッグスは妻と一緒に居たいと駆け出し、

テンをノオミに投げ付けホースが口から抜けたテンは、

「ガウルルルルルッル(オイシイゴハンノジカン)」

 ノオミの首に齧りついた。

「うぎゃああああああああああ、

止めろテーン!!

今言ったのは全部嘘!

あいつらを騙して油断させようと、

本当に迎えに来たんだよぉー

お前は私の全て、

愛その物なんだーーー

止めて止めてママが悪かったお願いだよ~

お前が本当の名を思い出させるまで、

お前が居なくなったら私はぁああああー

グガアアアアアアア」

 首の頸動脈を切られ、

大量の血が吹き出すのを必死で押さえているノオミ。

魔法の光は一瞬で消え、

その場に溢れる血溜まりの中で

動かなくなった女錬金術師。

「あぁあああああダーリーン!」

「奥さん!」

 ロッグスはコハコの手を引き、

ヤモトは壁にかかっていた火の灯っているランプを

ノオミに向け叩きつけた。

ガシャン…ゴゥウ!

 ランプの油が散った洞窟に火が回り始め、

藁や毛布に引火し、

ワイン棚も燃やしてゆく。

「逃げろ逃げろ逃げろ!」

 ヤモトも一瞬たりともここに居たくないと走り、

「グガガガガガガガガー!」

 テンは遂に解き放たれ、

獣のように炎の中で遠吠えのように唸り3人は今、

地上へ飛び出ていた。


ズガガガーンッドッドーン!!

 地下の洞窟から表に繋がる、

3人が飛び出てきた扉が弾け飛び、

猛烈な煙と炎が吹き出し家屋は大きく揺れ、

ヤモトが放った火はロッグスが護身の為に持ち込んだ

タスキ型ベルトに装着された

小型手榴弾6個の耐久温度を超えた熱により暴発し、

カンカンカンカンカーン

 もう一度鳴らされる酒場の鐘が

これ以上無く激しく叩かれ、

寝ていた連中が飛び起きて来た。

「すぐここを立つ大至急だ!」

 頭の回っていない彼らだったが、

ヤモトたちの様子に血相を変え旅支度を整えると、

馬車の2台目が必要になり、

1台に無理やり乗り込み街へ向かい、

カジキの信用度で後金で済ませ

もう一台と馬を購入したが、

カジキは真剣に悩んでいた。

それはノオミの遺体の確認だが、

悩みに悩んだ挙げ句、

『もし遺体が無かったら…』

 恐怖にかられ足を向けることは出来なかったのだ。


 2台の馬車は町外れまで、

東か西への道標のある分岐路へ来ていた。

「どっちへ行くんだー?」

 もう一台の手綱を持つブレインの大きな声。

「遠くだとにかく一刻も早く遠くへ」

 ヤモトが答える。

「どこだよー」

 ロッグスが聞く。

「ひ、東だ!」

 ヤモトは答え。

「おぉーついに東へ」

 伝説の東の国をずっと夢見ているガウ。

「喜ぶなそんな所まで行けるかー

大陸移動なんかできねー

大変過ぎるだろ…

ぶつぶつぶつ…

宛なんかないぞ…」

 手綱を操るヤモトは途方に暮れていた。

「でさ俺どうしたらいいんだー?」

 カジキの声。

「ん…あー養子にしろー駄目だ人間じゃないからな」

 ブレインが言う。

「その子には本当に注視してくださいねー

カジキさん」

 コハコが言うと、

「だ、誰かこいつを捨ててきてくれ~」

 必死にソレを引き離そうとするが、

くねくね動き回り離せず本当に嫌な顔のカジキ。

「俺そいつが唸るの聞いて、

山猫だって思ったよ猫同士って事か?」

 ブレインが話している。

「牙見たらもう豚じゃないのは確実」

 ガウが言う。

「ガルルルルルルル」

 テンだった。

テンは付いて来てしまい、

いきなり猫族のカジキに懐き、

そして不思議な事がもう1つ起こっていた。

「またお花が咲きました」

 コハコのコメカミの花が復活し、

「奥さん可愛いです~」

 ロッグスの妻を見る目はいつもハートマーク。

「実はな…

俺もなんだ、

俺あそこの水ガブガブ飲んだのよ?

腹壊すかなと思ってたが、

これだ…」

 カジキの左腕に

コハコの花と同様のハイブリッド生物が

螺旋状のバングルのように絡まっている。

「それ痛みとかは?」

 ブレインが聞いている。

「痛みとかない、

逆に元々あったのかってくらいしっくり。

これはなんなんだ…」

「兆しだ」

 ヤモトの大声。

「兆し?」

 ブレインが聞き返す。

「その植物は守ってくれるんだ当人を、

これはもう確実にだ」

 ヤモトは答え、

「そうそう、

いいなー俺も欲しい。

と言うより全員にもあればな。

またあそこに戻ろうとは思わないけど」

 ガウはコハコの花を見ていると、

「でも、

維持装置壊れちゃったなぁ

大丈夫かなぁアレ」

 コハコが言い、

「いやアレは逆に奴を押さえていた物だって思ってるよ。

出来損ないらしいから」

 ガウが言うと、

「グワアアアアアアアアァアアアア!」

 テンは怒ったのか馬車を飛び出そうとし、

「止めろ!」

 カジキに押さえられていたが不服そうに馬車の外、

幌の上に登り遠くを見つめている。

そして時間だけが過ぎ、

「宿もったいなかったな…」

 ヤモトが申し無さそうに言い、

「いやいいのよ路銀に出来たからそれに、

ノオミの遺体のある家になんか居られないし、

奴の残党にでも国乗っ取られたら宿も糞も無い…」

「2人が居ればそこが愛の巣だよね~

ダーリーン」

 ロッグスとコハコは

街へ寄ったついでに知り合いのドワーフに

宿を売り払ってしまっていた。

「ノオミはタヒんだと思う?」

 そして改めてコハコは皆に聞いていた。

「思う!」

「…思うよ?」

「喉切られたんだろ?

出血タヒだぜ?俺がトドメを刺したかったがね…」

 カジキは幌上のテンの影を見ている。

「俺が見て確実にタヒんだか見てくれば良かったと後悔してる…が

状況判断なら奴はもうこの世に居ない…」

 ブレインが言い。

「ガルルルルルル」

 テンは幌の上で唸り、

「カジキさーん。

カジキーさーん聞こえますかー?」

 コハコが声をかけている。

「なんだーコハコさん」

 カジキは答える。

「テンに本当の名前を、

いつでも答えるまで聞き出して~」

「えー名前って、

こいつに本当の名前があるのかよー?」

「もし何か言葉が出てきたら、

知性が芽生えた証だと思うのでーすー」

「ガゥルルルルルルル」

 ずっと唸ってるテン。

「でも俺は処分したほうが良いと思う…

こいつ人殺しだぜー?

相手がノオミで良かっただけで」

 カジキが言うとブレインも頷いてはいたが、

「魔法爆弾生命体をどう処分する?」

 本質は常に揺るがず、

「ぐぅうううう…ワンチャンこいつの知性、

良心に賭けるしかないって事か?」

 カジキはとんでもない者に懐かれ相当凹んでいる。

「本当なの?」

「テンに知性って…」

 ロッグスやガウが聞くと、

「ノオミが死に際に言ったの、

テンの事を私の愛の全て、

そして本当の名前はって…だから」

 コハコの僅かな希望。

「くっ…名前、

名前なんかどうでもいい…だが、

テンはどうも頂けない…

俺の趣味じゃねぇ…

爆弾だからドカーン、

ドドーン、

ボボーン、

ボムッ!」

「なんだお前、

凄腕ダンジョン・ハンター猫目のカジキ。

だがその実態は、

悲しいほどセンス無し。

クククク」

 ブレインの肩が震え笑いを堪えている。

「俺の舎弟だからなんでもいいんだよ。

ボン!

ボンでどうだ?

お前は今からボンで決定だ!」

 カジキは1人悦に入り、

テンは改名されボンになった。

「みなさーん一

路東へ向かっております~

知り合いのいる人お知らせ下さい~

お泊りできる仲良しのお友達、

遠いご親戚などなど、

なんでもオーケー。

俺たちついに根無し草~イェーィ!」

 ヤモトのいつもの軽口で、

2台の馬車は悪路を駆け東へ突き進む。

ノオミがタヒんだなど誰1人思ってはおらず、

快晴の空の背後から巨大な真っ黒い雲がぐんぐんと広がり、

追い立てられてると感じていた。 


 つづく

*「」内のセリフが()の中の場合は心の声になります。

*『』この会話は思念波、テレパシーになります。

この物語は下記noteで先行掲載しています。

小説はこれしかありませんが他には

短い物語やパロディなど多々ありますので良かったらどうぞ。

note猫夢アトニマス

https://note.com/clear_swift8618

*面白かったらぜひスキやチップで応援を宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ