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「アウトランド:異界と女優と魔女と剣とホムンクルスと魔王」  作者: 猫夢アトニマス


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3/13

3・魔王誕生

*主人公たち

人間:ヤモト(リーダー)

ドワーフ:ロッグス

森エルフ:ガウ

「ラスト・スタンド」という名称の

 パーティーメンバーの3人でもある。 

====================

*主要登場人物

猫族:カジキ(猫目とも呼ばれる)ヤモトと反目し合っている。

半エルフ:ノオミ 下記の10を作った王宮付き女錬金術師。

ホムンクルス:10(テン)意思のない子どものような人造生命体。

====================

*あらすじ

 庭の全容解明と真の脅威である魔王が存在した場合

それを討伐の命を受け、

前人未踏の謎の「魔王の庭」探索に赴いた総勢13名のパーティ。

中でも要人となる錬金術師とテンというホムンクルスを護衛しつつ闇の階段をどこまでも降りて行く。

 パーティーは真っ直ぐ下方に伸びた真っ暗な階段を

蟻の行列のようにぞろぞろと降りて行き、

数え役が3千段目と言い放った時、

「疲れた…

次~誰か数えてくれ…」

 最後尾の誰かが言うと、

「分かった俺が継ぐ、

3千と1段目…」

 最後尾から2人手前の奴が答えた。

「緩やかな段差で楽だが

キャンプを張れる平坦な場所はない…

なんだってこんな糞階段作った…」

 全てが石造りの階段は大人ひとりが通れるくらいの幅しかなく、

人が行き交う事を想定していない作りで、

壁には蝋燭を灯す凹みが定間隔に作られていて

豪華な蝋台が備えてあったが煤も蝋のカスも見当たらず、

蝋台として機能した事はないようだった。

最後尾を守る3人組パーティは

その窪みに薄くキラキラとした金属片を

パンくず代わりに置いていたが、

「カジキのリーダー。

目印を階段に置く意味ないんで一旦止めまーす。

一直線で迷うとか無いっすよ」

「3千と156段目…」

「了解したー」

 前方からカジキの声。

「あんたら平気か休みたいなら言ってくれ…

と言うよりなんて呼べばいいんだ名前は?」

「教えてもらってないよな俺ら」

「そうそう、

その子の名も…」

「あの爺さんなんか気もそぞろで焦ってなかった?」

「ボケてんだろ?」

「…私は平気だ。

この子は見た目ほどか弱くはない寧ろ逆だが、

この生命維持装置が肝心なのだ…

背負った精密機器は破損厳禁!

マスクやホースも外れでもしたら計画は頓挫する…

どころではない…

皆が死ぬ…

休みたいならお前ら次第で良いが

最深部までの全容が分かるのは早ければ早いほうが…

私たちの名は…

そうだな長頭老人の手落ちだ。

あの王宮付き魔法科学最高顧問もナーバスに?

まさか言い忘れるとは…

クククック……」

 引き笑いがダンジョンに響いている。

「ノオミだ。

ノオミ・グラッセル。

そしてこれに名は無い…

強いて言うならただの10」

「テン…数字か?」

「10体目でようやく出来上がったとかか?」

「…私は試験管で生命兵器体を作れと命を受け、

タヒんだ前任の後を引き継ぎ研究に没頭し10年…

だからテン…」

「(この女けっこうよく喋りよる…)」

「(陰気な感じだが自己肯定感だけは人一倍…

自分語りが大好きな科学者にありがちな…)」

「…もしかしてこの仕事恐ろしく楽で、

ここは本当にただの地下庭園なのかもねぇ

(そんな場所で1番恐ろしいのが…こいつ10!)」

 メンバーの気持ちは階段を降りるだけの

作業と成りつつ有るこの状況に、 

拍子抜けの現場で女学者の話は物珍しく

興味を掻き立てられていた。

「んで、10に意思はあるのか?

危険を察知すると避けるというような普通の反射神経は?」

 錬金術師たちの背後で松明を持つヤモトが聞いている。

「…これに意思などない

…危険感知に関しては獣並みだと体感した。

そもそもこれは豚の寄せ集め、

逃げるとなるとどこまでも逃げて

初期の段階では知能も低く苦労し過ぎた…

だから上の命令で今は目は見えなくなっている…」

 ヤモトはダンジョンに入る直前、

女とそれが防具の調整をしてる所を目撃し、

外套のフードを下げたガラスヘルメット越しのままではあったが、

それの顔を面と向かい見てしまい、

女が言うように

目は糸で縫われ潰されていると知っていた。

「みんなー足を止めろー少し休憩する~…

お前らなんか問題あるかー?

気づきはないか~~~」

 総リーダーカジキの声が長い階段空間に木霊する。

「休憩はいりま~す」

 ガウの声。

「あぁん?どうした?」

「なんだ何かあったか?」

「ドワーフは気付きはないか~

石の様子に変化は~~」

「あーいや、

入った時からずっと何も変わらんよ?

恐ろしいくらい何も無い…」

 ロッグスの声。

「三千段も降りて来たがどうにもおかしくないか…」

 辺りを掲げる松明でじっくり見ながらカジキは話す。

「まさかまさかまさか…

幻影魔法!」

「なんと愚かな

そんな初歩的な仕掛けに引っかかってるのか?」

「魔力使いは居ないもんで……」

「…パーティーの重要メンバーが居ないってどういう事…

片手落ちだろ」

「あいつら全員王宮警備に取られて

誰もこっちに回って来なかったんだよな…

その時点でこのクエスト中止だろ普通…

なんだって急に守りを固めた。

紛争や戦争の火種なんか無いぞ…」

「サーチの魔法誰か唱えられない?

スクロールならあるぜ。

古いから逆流するかもだけど」

 ガウの声。

「すまない…

私がこれをいきなり完成させたからだ。

この10が暴走したら王宮も危険なのだ…

だからこんなギリギリのパーティーが出来あがった。

謝って済めばいいんだが…?

すまない本当にクククッ…

クククッ…

ククッ」

 ノオミの低く笑う声も木霊し、

「あんた魔法は無理なの?」

 ロッグスが聞く。

「また謝罪…

すまない私は生命専門学者で

サーチ魔法の理論ならいくらでも説明出来るが、

実際に唱える感応力は無い…」

「そーですか失礼しました。

ならガウお前が唱えろ成功したらスターですよ」

「…失敗して逆流したらこの辺相当賑やかになるぞ。

まるでダンスホール!

ガウ様は踊りながら狩りをする本物のスター!いぇーぃ」

 小躍りするガウ。

「探す魔法から目印魔法に変わるってことか?

ほんとかよ」

「この目で見たから本当」

「ダンス…階段でダンスとか愉快すぎ…

七色の光が照り返りキラキラ煌めくステージで

俺は奥さんと踊る踊る踊る

実際にはダンスは上手く踊れないけど…ふふふ」

 ロッグスは髭を弄りながら愛する人を想いうっとりし、

「踊るように混成パーティは

魔王ステージを攻略しましたとさ。

めでてーなぁおい」

 ロッグスは調子に乗りそう締めくくると、

「ラスト・スタンドパーティー、

またもや快挙ですやりましたー」

 ガウが口を挟んだ。

「……おぃ

…お前ら

…静かに

…俺の力で先行って辺りを確認してくる。

Aのパーティは俺の合図がしたら速歩きでつづけ、

BのパーティーはAの合図で来い。

CとDはそのままの歩みでゴー。

ここがどこまで続いてるのか全容を調べ調べてくる…」

 カジキが言う。

「ほいほい客人前の2パーティは歩きを早めろ、

合図を聞き逃すなよ?

音がしたら後ろに伝えろいいなー?」

「りょーかいでーす…」

 ヤモトが答え、

ヤモトパーティは客人ふたりを挟みつつ歩く直接の護衛を担当していて

Cのパーティとなり、

前にロッグスとガウ、

背後に松明持ちのヤモトという布陣で進んでいる。

「しかしヤモト。

おまえマジでカジキの命令に自然に応対してるなぁ。

本当のおまえは帰って来るのか…」

 ロッグスが言う。

「俺は~いつでも~悪に飲まれる自信あり。

まぁ冗談だが俺は聖人ではない…

分かってるだろ?

とりあえず安心しておけ」

 ヤモトはそう答え、

「聖人様なら小汚いダンジョン生活なんかしてないよね~

ヤモトは貧乏暇無し人だね?

プププ」

 ガウの声。

「腹の底はカタナでいっぱいか?」

「カタナ!

カタナこそ俺の全て、

奴に取り入って信頼を得てないとダンジョンの隅々まで回れないだろ?…

カタナが有るのか無いのか

ここは鬼となり大人しく従順に…」

「お前らさっきからヒソヒソヒソヒソ何の話ししてる?

なんか大人し過ぎるんだよ

ラスト・スタンドさんたち…

ゼッタイなんか画策してるだろ?あ~ん~

甘噛みくらいでいいから一口噛ませろ~

カジキには秘密にするぞー?」

 最後尾のDパーティーリーダーの野次。

「そんな事ありませんよ?

私らどうせカジキ様に睨まれてるから、

大人しくおとなしく正しくクエストに尽力し

達成後の豪華報酬を夢見てるだけですっ

料理人のリーダー様~~

ほんとにそれだけなので妙な勘ぐりは勘弁してください」

 ヤモトは手揉みしながら答えている。

「(うわぁあああすげぇええええ。

ヤモちゃんすげぇええええ。

目的の為ならなんでもあり)」

 ガウは思わず出そうになる声を口を咄嗟に手で押さえ、

「(これはマジでカタナの奴隷…)」

 ロッグスは肩を上げ両手でピースマークを作るが

二本の指を伸ばしたり折ったりする動きを数回繰り返している。

「君らへの俺の信頼はいつまでも変わらない。

だから君らも俺の事をいつまでも信頼してくれると信じてる」

 ヤモトがふたりに言う。

「大丈夫。

俺たちはそのカタナが何なのか、

幾らで売れるのかだけに興味あるから

信頼も友情も金に換算出来るから平気」

 ロッグスが話し、

「うん!

貴族になれても金はもっと必要でしょう」

 ガウも同意していた。

「売るだと?おいおい何言ってる…

ババババッバッ馬鹿な…」

ピキピキピキ…

 コメカミの血管が真っ赤に浮き上がっているヤモト。

「カタナ?カタナってなんだ?」

 ノオミが割って入った。

「あーーーーなんだっけ?

カタナってなんでしょう~ヒューヒュー」

 吹けない口笛のガウ。

「えーっとあれです物凄い遠くを彼方、

カナタって言いますよね?

いやーそのあれなんだなんだっけカタナ?

カナタの聞き間違いでは?オホホ」

 ロッグスも取り繕っていたが、

「(いや待てよこれは好機…)

ノオミはカタナの事何か知らないか?

カタナって遠い東の地から

この領土に渡って来た一族が携えていた鋼の武器で、

腰に所持する物らしいんだ。

王宮のどこかに転がってたりしないか?

噂とか」

 ヤモトが説明すると、

「…伝説の東の地。

カタナとは手持ち武器いわゆる剣。

それをおまえは探しているのか…スマナイ。

謝ってばかりでスマナイ…

私は知らない…

そもそも興味も無い…

力で振るう物理武器などそのうち淘汰される、

今科学院では、

魔力を小型携行兵器に詰める物を開発してるそれでだ、

話は変わるがおまえを研究させてくれないか?

血も少し欲しい。

おまえの出自を研究してみたいのだ…」

 蒼黒い顔のノオミの目が輝き

怪しさが120%になっている。

「そうか何も知らないのか…

残念だけどしょうがない…研究?

そうだな帰れたらないつでも…」

 ヤモトが答えると、

「あとな【チルハナノビガク】って判るか?」

 ノオミにふいに聞かれ、

「ん~なんか東の言葉っぽい?

でも判らない…」

 ヤモトは答えた。


コーン…コーン…

 小石が落ちるような音がし、

これが意図的だと証明するため2回鳴らす。

これが合図。

先頭のAのパーティが早足に階段を降り、

カジキの声が届く所まで向かい、

そうしたら次はAパーティーが2回音を鳴らしBパーティを呼ぶ。

暫くの間これを繰り返し階段の踊り場や分岐路、

出口そのものを探すのだ。

そして進むAグループ。

そしてBグループも同じ思いにかられ始め、

それは降りても降りてもまるで先に進めない感覚だった。

「おぃこれ…」

「さっきから同じ…」

「やべー…」

「なんぞこれ!」

「無限回廊…」

 タヒの思いがそれぞれによぎり、

カジキは1人暗視を使い

階段の先へ先へ問題なく駆け降りたがどこまで行っても変化はなく、

次の蝋台の位置で振り返り、

「どう考えてもおかしい…」

 段上へ恐る恐る1段だけ戻ってみるとそこにあった答え。

上がると同時に蝋台に置かれた蝋燭に火が灯され、

突然の薄明かりだったが暗視の目に眩しく手で顔を覆った猫目。

「くそー!

この階段降りるんじゃなくて登るんだ…

なんてこったこんな子供騙し…」

 カジキは階段上方を見上げ、

「おーい後続聞こえてるかー?

階段の秘密が分かったぞ~~~

聞こえてるなら返事しろ~~~~

おーーーい………………」

 大きな声を張り上げたが

返事もなんらかの合図も無く静まり返っている階段…。

「…何も分からないが

音の聞こえない別位置に飛ばされてる?

仕掛けに気づかないと囚われたまま地獄行き。

どうする俺がただ戻って…

下手すると俺1人になる可能性も捨てきれない…」

 階段の仕掛けは分かったが、

今度はそれをどう他の皆に伝えるか考えあぐねているとその時、

ゴゴンガシャシャン…ググーン

 何かが動く音に驚き

その方向に目をやるとなんと、

「……うぉ!

誰かが本来の仕掛けを解きやがったのか?!」

 これまた豪華絢爛な扉がそこに出現していた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「明かりが点いた!」

 いきなり辺りが薄明かりに包まれていく。

「わわわわ~~いきなり天国かよ…」

「何ぞこれ!」

「とととと扉が~~~!」

「フフッ。

あーいやーなんかね長いけど悪意を感じない階段だなと、

罠とかじゃなくて

ただの遊びなのかなーなんて思いつつ

蝋台の窪み見ながら下ってたらさカジキだろ?

奴が置いてった金属片があったり無かったりしてね、

無いのはちょっとおかしいから

蝋燭台を握ってみたらレバーになってて…

ジャジャ~~~ン!

俺すごくね?」

 ヤモトだった。

「しょしょ正直凄い!

さすが俺らのリーダー」

 ガウの声、

「いやーこれは久方ぶりのクリティカルな快挙だな。

兜脱いだ思いだぜ!」

 ロッグスが言うと、

「(脱げよ!脱いでその頭の秘密を見せろー)」

 皆の総意が心で弾けていた。

「これが正しい扉……」

「入って大丈夫なんか…」

「先の2パーティーにどうやって知らせたら…?」

「ん~~

下の方からも同じ音したから大丈夫だと思う。

どっかですぐ会えるだろうよ。

ほら前のチビと金髪、

先生方を通してあげて」

「チビ!」

「金髪?!」

「運命の扉は地上では無くこっちが本物のようだな…」

 ノオミが言うと、

「へいへい。

サラサラヘアーが承りました~」

「わしはチビではない!

ドワーフの平均よりちょっと高いんじゃ~フンガー」

ギギギギギィイイ~

 両開きの扉を左右に別れた2人が開けてゆくと、

「ご苦労…」

 一応警戒しつつ1番にラスト・スタンドパーティーが突入すると、

次に最後尾のダンジョンハンターの3人も武器を手に

扇状に展開するように突入したがそこは、

蝋燭の明かりがあちこちに置かれ

仄かに明るい大空間。

草花も咲き蝶も飛び交う幻想の庭園。

「おぉこんな美しい庭園が地下に?

凄いな…まさに魔王の庭だ」

 最後に扉をくぐるノオミが言った。

「…あからさまな過ぎるなここ」

「これも罠。

あれも罠。

全部罠…だろ?

こんな植物見たこと無い…」

 誰かが草花に触ろうとしたが、

「止めとけ…」

 誰かに制されていた。

「本物の太陽と青い空があれば完璧…」

 ガウの声。

「おいヤモト

外周回って他の扉あるか見たほうが良くないか?

前のパーティーと合流しないと」

 料理人のリーダーが言う。

「んーとりあえず荷物下ろして焚き火!

腹も減ったし一旦休憩。

料理人の皆さんは食事の支度と先生たちの警護。

俺らは辺りの探索!」

「ほい!」

 ガウは腰のショートソード抜き差しし、

背中の矢筒に矢がきちんと入っているかを確かめ、

「おっしゃー行ったるぜ~

帰ったら温かい飯だ~!」

 ロッグスはハンマーを掲げ気合を入れている。

「じゃ行くか!」

「料理楽しみにしてるぜ!」

「行ってきやす」

 ラスト・スタンドの面々は

意気揚々と庭園の探索に出かけ、

「お客人はその辺に座ってて下さい。

テント立てたら中でお休み下さい今、

お茶沸かしますから」

 テキパキと動き出すDのメンバー。

「ありがとう」

 ノオミは答え、

Dパーティーの本質は料理人。

その腕前は生死を分ける探索に美味い飯は心の糧となり、

やる気を出させる精神の安定を担っているがそれは2次的なもので、

主たる能力は”毒”を生成すること。

眠り薬、

痺れ薬、

マンモスを倒せる程の致死毒、

果ては頭痛、

歯痛止めに用いる軽度の鎮痛薬、

作れないのは惚れ薬だけだといつも冗談の落ちにしているが、

簡単な外科手術なら施術出来る

通称メディシンマンやヒーラーとも呼ばれるが

ヤモトは彼らの逸話が好きで単に料理人と呼び、

その訳は彼らが人食い種族に拉致られたとき

この種族にとっての敵である別種族の◯◯で、

料理を作り開放されたという話を知っていたからだ。


パチパチパチン…

 火花が散っている。

辺りの暗がりで1番明るく燃える焚き火に簡易カマドが作られ、

鉄製の湯沸しポットがシュンシュン音を立て、

大きな鍋では干し肉と乾燥野菜の

ドロリとしたスープがかき混ぜられている。

リーダーは静かな客人に深皿を差し出し、

そこに出来立てスープの一杯目をオタマで掬い入れると、

小葱を手で千切りパラパラと入れている。

「…口に合う合わないは言わぬが花

…それでチーズはどうする?

あんたのリクエストの」

 料理人のリーダーが言うと、

「好き嫌いは無いだからありがとう。

とても美味しそうだ。

チーズは私ではなくこれのだ。

出しておいてくれありがとう」

 ノオミは早速食べ始め、

リーダーは様子を見ていたが感想などはなかった。

「…この子がチーズを喰うのか?」

 2杯目をよそおうとしているリーダー。

「特別な栄養素を持つ流動食にそのチーズを入れるんだ…

するとこれが喜ぶのだ…

フフフ…

このメーターが音を鳴らしたら1日に1回だけ与える。

そろそろだな…」

 下ろした生命維持装置の背後のメーター類を確認したノオミは、

皿にこびり着くように残るスープを、

硬いパンを粉々にし掃除するように食べ終わると

茶をごくりと飲みフゥッと息を吐いた。

パチンッ…

 火の粉があたりに舞う。

「学者とか言う生き物はもっと鼻っ柱高くてもっとこう

上から目線みたいなのが多いという

嫌な思いの実体験しか無いが、あんたはとても低姿勢…

そんな王宮付きの学者が居るとは…

あんた失礼だがもしかして貧民の出か?」

 リーダーが聞く。

「そうだ私は地頭が凄くてね…

それを認めてくれた人が金持ち貴族で学者なんだが

彼の養子に成れてそこから這い上がった…

だが子供だましな絵本とは違って右葉曲折有りの正真正銘の叩き上げ…

だから衣食住にはいっさい拘らない嗜好品も無い…

ただただ研究し成果を出したい一心で上り詰めた…」

「そうかあんたも大変な人生を…」

「そ、それでこいつの役目はなんなんだ?」

「俺たちは一生口外出来ないから全部知りたいんだ。

タヒんだら口外もクソもない…」

 料理人のメンバー2人はホムンクルスを見て言う。

「あぁ?

あぁ…構わないぞ…

私は私の功績を話すのはこの上なく気分が高揚するし

なんでももっと聞いてくれ

フッフッフッフフフフ~

何と言ってもこれは私の研究の集大成かつ最大の傑作。

魔法院が実証試験もせずと言うか、

実質無理だったんだが、

理論レポートだけで認めてしまった生命兵器!

私はこれを作るのに11年近く要し、

10の正体は太陽の再現。

今はもう誰も唱えられない強力無比な

古の大魔法を封じ込めに成功した!」

「えぇ太陽を…これに…」

 どうみても神々しい太陽とは真逆の10を見つめるメンバーたち。

「古の大魔法??」

「もしかしてばばばばば爆弾…」

「魔法の名はヌムクリア・ブレイスト」

 ノオミが言う。

「ん?なんて言ったんだ」

「なんか強そう」

「聞いたこともない魔法だな…」

「知らなくて当然だ。

私が古代魔法を復活させたのだから。

太陽がなぜ毎日毎日輝いているか、

煌煌と赤々と暖かく熱く降り注がれる日差し、

その秘密を再現できる魔法が込められている…」

「やややややっぱり爆弾だ…」

「そうだそこらの火薬の爆発物の何!億!倍!もある爆弾」

 説明に拍車のかかるノオミ。

「わわわそんなんが目の前に…」

 メンバーたちの喉がゴクリと鳴り

額から汗が滲んでいる。 

「…その魔法で魔王を…?」

「魔王って本当に居るのか?」

「あんたは知っているのではないかと俺らは思ってるんだが…

そういう事は?」

 料理人のリーダーが言う。

「いや何も情報は無い…

それはここの他のメンバーと一緒で知らされてなどいない…

居るのか居ないのかも判らない…」

「そ、そうなのか…」

「だがもし居てどうしようもない時はこれを使うしか…

クフフフフ」

 怪しく笑うノオミ。 

「実証実験…」

「その通りクフフッ」

 ニヤニヤ笑いは止まらぬままのノオミ。

「…でだ。

1人生きて帰った気が触れた爺さんの言葉に何か新情報は無いか?」

「飲むか?」

 1人がノオミに酒を注いできていた。

「ぉおありがとう酒は好きだ。

たまーに1人で嫌なこと忘れたくて飲む。

強くはないからすぐ寝るそして忘れる。

酒は心の糧…

そう頭のいかれた老人の言葉…

爺さんの言葉は常に書き取られているし

何度も読み返して頭に入ってるが

新しいものはもう何年も無いが、

いずれにしても私たちの探索次第だろう?

最深部に椅子があるなら爺さんは正しく、

魔王が目覚めていれば私たちの前に現れる可能性もある…

大いなる罠とやらはまさにさっきの階段や、

この庭園がそうなのかも知れない…」

「そ、そうだな…

俺らの仕事はまさにそれ…」

「でもよぉ…

あんたらのお守り役としてお…

俺たちは非力過ぎないか?

これ超上級クエストだよ…」

「太陽と一緒に行動とか足が震えるぜ?」

「いやそんな事は一切ない。

君たちの最大の役目は

私の魔法が人体に及ぼす影響を調べるための

屈強な冒険者サンプルでもある。

君たちはまさに選ばれし勇者なのだ…

私は学者だ研究のためのデーターならなんでも欲しい…

そして魔王が出現したら

私たち2人を守りつつ速やかにそれと対峙させ、

私と10とでそいつを吹き飛ばす!

遠くから安全に

アハハハハハハハ」

 ノオミは酔いが回り笑い上戸になっていた。

「しかしあんた心が大開放されてるだろ?

ここには王宮の上役は居ないし心の枷も一切無いからな、

だがサンプルとか聞こえはいいが

生死は問わないんだろう?」

「両方の検体が有ることが望ましい。

死んだ者もありがたく使わせてもらうし、

あの分厚い契約書ちゃんと読んでたら何を今さらだ。

あとな私がこんなに話すのはお前の言う通りで、

私はこのダンジョンへ入ってから本当に気分が良いんだ。

これぞまさに初めての私自身の解放だ!

ギャハハハハハハハハハハハハハハハ」

 気が狂ったように笑い出すノオミにギョッとする3人。

「あまりに嬉しくて気が変になってきてるかな?

生き残りの爺さんみたいになるのが私の運命なのかもな~

ギャハハハハハハハ~~

ゴホッゲホッイタタタタタ…」

 あまりに笑いすぎたのか

体を丸め腹の辺りを押さえているノオミ。

「あーゴホン…

でねなんでこんな気分が良いのかにはちゃんと訳があってね…

聞かせてやるからな?

ちょっと待て…」

 酒を口に含み飲みエイッと飲み干すと、

「魔法院の面々は

古代魔法のスクロール化にも成功した私にひれ伏すしかなかった。

だからあの長頭老人もナーバスに…

あれは私の力に怯えていたからだと思ってもらって構わない…」

「え?」

「な、なにを言ってる」

「スクロール?」

 この世界における魔法を写した巻物の事をスクロールと呼びそれは、

その魔法に特化した魔法使いが居なくても、

多少の感応力で誰でも唱えられると言う

超高額だが便利過ぎる魔法道具の一つ。

「…でもよく考えろ!

なぜこんな未踏のダンジョンを選んだか?

そこに一欠片の優しさを感じてくれる奴はいない?

ククククク…

まぁ単純に美しい王宮はそのまま貰い受けるとして、

実験はひっそりと地下が普通」

「ぁあああ…テロリストなのか…」

「たたたたた確かにこんな奴誰も相手に出来ない…」

「王宮に魔法使いが大集合…

そうか!

そういう事か!

お前のための防御柵じゃねーか!」

「しかも自分から未踏のダンジョンに入るなんて

王宮も渋々認めたんだろう?

馬鹿な自殺行為だ好きにさせろって…

だがまるで逆なんだお前にとってここは天国…

それは追手が誰も入って来れないからだ!!」

 凍りつくメンバーたち。

「頭いいですね私もあなたの考察もヒック…」

 ノオミの声。

「お、お前が魔王…」

 誰かが吐き捨てるように言うと、

「そうだろう?

君もそう思うだろう?

私は魔王なのだ何よりも美しい最上位魔法を再現させた

世界で唯一の女錬金術師!

魔王の称号は私にこそふさわしい。

クーックックッククック!!

飯は本当に美味かった。

明日も食べれる事を祈ろう…

私に祈れゴミ虫ども…」

「クッ…」

 苦悶の表情の3人。

ノオミの真実を知ってしまった料理人のメンバーは

一様に殺意を剥き出しに包丁を握りしめるリーダー、

すぐそこに置いてある毒瓶と剣を握りしめるメンバーふたり…。

「(今だ!)」

 彼らの緊張は一気に高まり

全身の筋肉は極限まで収縮させたバネになり、

ノオミに飛びかかろうとしたその瞬間…。

ピッピピピピ

「あ。時間だ」

 生命維持装置から音が鳴り10に餌を与える時間。

ノオミは後ろ手にスクロールをちらつかせている。

「古代魔法は幾らでも転写可能。

どれを喰らいたい?火、水、土、雷。

なんでもあるぞ?

私を料理しようなんて思うな…

恐ろしくまずいのはもう分かっただろ?」

 餌を与え始めたノオミ。

10の腹辺りの外套をめくり

体に埋められた蓋を開けるとそこは

直接胃に繋がっているようで、

そこに専用の栄養素の詰まった小さな缶を差し込むと…

プシュッと音がし缶を引き抜き蓋を元に戻す。

その行為を見せつけられている料理人たちはノオミの警告を無視し、

今にも飛びかかりそうな一触即発の雰囲気を醸し出していたが、

「そうそう君たち私の下僕にならないか?

こんな汚い場所うろつくゴミ虫みたいな人生から

一国一城の領主、

貴族を従える王に成りたくないか?

1人に1つの城…

私なら出来るぞ?」

「くうぅう…」

 言われてリーダーはどっと疲れたように座り直すと、

「…もっと若かったら

刺し違え覚悟で飛びかかってたかもな…

だが本物の魔王誕生に少し感動してる俺も居る…

傑作だぞあんた…

完璧な比類なき悪人…」

 あとのメンバーもリーダーに追随し

ゆっくりと剣を鞘に収めていく。

「…だがどうあんたを信用出来る?

この3人に危害を加えない証明と

その約束が真実だと実証してくれ…今すぐ…」

 強い眼差しでノオミを見つめるリーダ。

「ほらこのスクロールが証拠だ。

知っての通りこれは知識も経験も要らない。

ただ手に持って魔法名を唱えれば良い」

「な、なんの魔法だ…」

「ダスト・エクスプロージョン。

空間に舞う小さな塵が瞬時に連鎖爆発して

辺り一帯を本物の塵に変える古の大魔法のひとつ」

 ノオミが渡そうとするとリーダーの手は震えていた。

「そうだな。

あの奥辺りのずっと先をイメージして唱えろ」

「これもテストしてないんだろ?

失敗したら…」

「みんなタヒぬかもしれない、

助かるかもしれない。

だが私の理論では98%成功する」

「……あ、あんたは怖くないのか?」

「この10が出来た時とてつもなく嬉しくて嬉しくて

狂喜乱舞したが…

嬉し過ぎて幸せの反転作用なのか…

精神に楔を打たれたように引き裂かれた…

私もこれと大差ない事に気付かされたんだよ…

誰かの命令で動くだけの命…

生きているのかタヒんでいるのかすら分からなくなる感覚……

私の信用ならお前の手の中だ。

唱えろ」

「…判らない

…なぜこれを唱えると信用に繋がる?!

なぜゴミ虫の俺たちを手下にする」

 リーダーの震え声。

「強力な魔法でいつでも私を蒸発させることができる…

騙されたと思ったらいつでも唱えろ。

それにゴミ虫?

あぁそれなら王宮でのさばってる奴らの事を言ったまで、

私は万能の神ではない…

ゴミ虫討伐の魔王にも手下は必要だと思わないか?

そして魔王を虐げてきた王宮の奴ら滅ぼし、

あの豪勢な暮らしを我らの手に…だろう?」


ドグォオオオオオーーーーオン

「なななななななななな!」

「うわわわわわわぁああああ」

「ぐぁあああああ!」

 閃光が走るとすぐに爆音と爆風が押し寄せ、

立っていることは出来ず、

周りの建築物にしがみつき必死で堪えている3人。

「…なんだこりゃああああ!!!」

 爆心地だと思われる方を噴煙の中薄眼で見たヤモト。

「あぁ~ん?(この微かに漂うこの匂い…魔力…)」

 ガウが言い、

「キャンプでなんかあったんじゃ?!」

 ロッグスはずれ落ちそうな兜を必死で押さえている。

「いや方角が違う。

もっと遠い所だ」

 爆発が落ち着き辺りを見回すヤモト。

木々や花々から葉っぱの一枚も落ちておらず庭園に何も変化は無かった。

「しっかしたまげたよぉ…

扉も無いし…」

 ガウはカーブを描く外周の壁を見ながら進む方向に

扉が無いか遠目で見ている。

「どうする?」

 ロッグスがヤモトに言う。

「急いで戻ろう」


====================

*主要登場人物*

人間:イーガン(リーダー)

人間:グリンカ

人間:タオズ

「メディシンマン」と呼ばれるパーティーメンバーの3人でもある。

 植物に深い造詣がある毒のスペシャリストで、

料理人とも呼ばれ実際に料理メインで

ダンジョン攻略のパーティーに参加することも多く。

ナイフさばきは簡単な外科手術にも長けていて、

時に医師としても活躍する。

====================


 足早に戻る3人。

キャンプに辿り着き、

「おい今の大丈夫だったか?!」

 遠くから料理人のリーダを見つけたヤモトは

真っ先に声をかけていた。

「今のは凄かったな。

びっくりして腰が抜けたが特に何も無い平気だ。

特性スープ出来てるから喰ってくれ」

 料理人のリーダーイーガンは大鍋をかき混ぜながら答えた。

「原因はなんだと思う?」

「判らん…判る訳が無い…

後で調査するしか」

「だな。しかし美味そうな匂いだ」

 スープの入った皿を貰い適当な石に座るヤモト。

「あれチーズは?

チーズがないんだが」

 ガウが言う。

「あるが客人のリクエストだから出せない」

「そっそうか~我慢します…」

「ダンジョンだとこれだけが楽しみでな、

ありがたくいただくぜ。

そこの胡椒取ってくれ」

 ロッグスの声。

「それでなんか見つかったのか?」

 イーガンが言う。

「いやそそそ、れが、だな…」

 口にしたスープが熱く口の回らないヤモト。

「もう少し回らないと判りそうにないねぇ」

 ガウが答えた。

「そうか…

猫目たちも大丈夫だとは思うが…」

 イーガンが言い、

「そうだな。

爆発の影響が無いか戻っただけだから

今度は2人づつ交代で探索するか」

 ヤモトが話し、

「俺らのメンバーはすで仮眠してる。

こいつらをあとで起こして交代に回してくれ」

 イーガンが話した。

「了解。客人に問題は?」

 ヤモトが言う。

「今はあの要人テントで寝てる10も一緒に、

特に何も言うことはないが

10に餌やってるの見せられたぞ。

胃に直接開けた穴から特性流動食流し込んでたな…」

「胃に直接?口は無いも同然だしな…」

「あれ薄気味悪いから

テントにノオミが連れて行ってくれて良かったよ。

ハハハ」

「なぁところでここの草木って作り物だよな。

毒専門のお前らなら判るだろ?」

「最初はこんな場所にとは思ったが、

適当に1枚取って調べてみたら

光は蝋燭の明かりでも事足りる新種の植物で、

驚くほど堅牢で強い」

「魔法か?」

「んー単純に闇に強い品種改良な感じもするが…

ここの蝋燭の火は魔法だろうからなぁなんとも…」

「水は?

地面にたっぷり流れてるとか」

「…ちょっと掘ってみるか」

 イーガンーとヤモトたちは

近場の植え込みの地面を探ると、

シートのような土の代替え品が何層も敷かれそこに根が張り、

最後の層に水がたっぷりと流れていた。

「…見たこともない画期的な仕様

…すごいぞこれ、

この水が飲めれば水の心配は無くなるが…」

 イーガンは言いながら、

試薬の入った道具箱を開け

薬剤の小瓶やガラスの瓶を取り出している。

「どっかに畑とか放牧場もあって肉も取り放題!」

 ガウが言い、

「もしあったらここは…パラダイスか?」

 ロッグスが言い、

「勝手に取っていいならだが…

この庭、

管理者が絶対居る。

そうとしか思えない」

 ヤモトが言い、

「居るとすれば魔法使いの造園師。

敵か?

味方なはずないよな…」

 ロッグスは感慨深げに腕を組む。

「その造園師凄い天才だぞ

この技術地上に持って帰りたい!

持って帰れる物なら…」

 イーガンが話し、

小瓶でその水をすくい試薬を入れ込んでいる。

「造園師には普通仕えてる主人が居るよね?

警護員も召使も小作人も…

その主人が魔王…」

 ガウは言い、

ラスト・スタンドたちは

イーガンの一挙手一投足をまじまじと見ている。

「あぁこれは…ただの水!」

 小瓶を振り色の変化を見るイーガンが言うと、

「そうかやったな~

これでダンジョンの心配事が一個減った。

じゃ遠慮なく」

「待て!

このままの状態と、

沸騰させた物を1日置いたあとだ。

そこで何も問題がなければ飲用にする」

「おっとっと。

すんません私としたことが…」

 手で直接飲もうとしたロッグスだった。

「うっしゃ!

じゃそろそろ探索再開だな」

 ヤモトが膝をポンッと叩く。

「あ、ヤモト行くなら俺も、

ロッグスとイーガンは火の番と客人の護衛でいいよね?」

「構わんぞわしらも交代で寝るから」

「気を付けて…」

 イーガンは

出かけるふたりの背に声をかけていた。


「やはりどこかに仕掛けがあって

それを探せないと扉は出てこないのかなぁ?」

「その仕掛けはどこに…」

「さっきみたいにチャチャッと探してよ」

「なんかなんでも良いから

直感の働くきっかけがあれば…」

 ヤモトとガウはしばらく庭園外周を壁伝いに歩き、

怪しい所は無いか探していたが、

「ところでリーダー…」

「ん?」

「匂い。気付いた?」

「んん?」

 ヤモトは振り返り彼を見ると、

その目は真剣にこちらを見返していた。

「キャンプに魔法を放った後の微かな匂いが滞留してた…

爆風受けた時よりももっと強くて同じ匂い…俺、

顔に出さないよう必死だった…

イーガンは確実に知ってるし

隠そうとしてる嘘吐きだ!」

 ガウの鼻は敏感に

独特の匂いを嗅ぎ取っていたのだ。

「おいおいおい本当か、

滅多なこと言うなよ?

爆発が彼らの仕業?!

そんな馬鹿な…」

「…料理人たちにあんな魔法唱えられるはずないよね?

となると客人が深く関与してるのは明白…」

「クッ…

お前の鼻は信用に値するからな。

魔王とやり合う前に仲間だと思ってた奴らとやり合うのか…」

「たしかに面と向かって嘘は吐いてないけど、

伝えようはあったはず…

ダンジョン・ハンターしか知らない秘密の伝言方法だってある。

隠すのは仲間なんかじゃない!

そんな輩は誰でも敵になる…

教えてくれたのはヤモト。

あの爆発魔法はやばすぎる…

せめてもの抵抗でロッグスの爆弾使って逃げるしか…」

「それでロッグスには秘密のやり取りで伝えたか?」

「いあぁ…

あの人すぐ顔に出るから」

「あぁそうだな…しかし!

くぅうううう…

もしかしたらカジキが裏に居るのかもしれん!

もし、そうなら今度こそ徹底的に……しかし、

イーガンは俺たちを生かした…

飯に毒ならお手のもの…

水の調査は…

なんかワンチャンありそうな気もするぞ?

ギリギリまで奴らの意図を調べる…」

「俺はさっきの爆心地へ行って

同じ匂いがするか確認したい…」

 唐突に言い出すガウ。

「待て待て待て今はまだ扉が先。

敵を探すにはまず味方増やし…

仕方ないサーチのスクロールの話は本当か?」

「きっちり同じ事が再現できるかは謎」

「唱えていいぞ」

「あー責任転嫁は止めよう。

あとでブツブツ言うんだろ?

ロッグスが今以に俺をからかうポイントは増やしたくない。

あんたに任せるよ」

「あーいやそうじゃなくて、

まったく魔法に素養が無い俺だと無駄にしそう…

お前ならまだ…」

「……サーチング!」

 即座に唱えられたガウのサーチ・スクロール。

火花が起こり破裂したようなスクロールは

その中心に吸い込まれるように消滅し、

焦げた匂いが漂っている。

これは確実に失敗を意味していた。


ボーン!

スボボボボボボーン!

スッポンスッポンスッポンポ~~ン

ンチャカチャカチャカ

パッパッパッパッ~

ドンドンドンパフパフパフドーン

ピーヒャラピーヒャラララ~

ズンドコズドコズンドコズーン

 空中を飛び交うミラーボール、

地面から天井まで伸びる煌めくスポットライト、

音のなる奇妙な箱が幾つも現れ、

その一つ一つから人形が飛び出し踊っている。

「なななな…」

 開いた口が塞がらないヤモト。

「言った通りでしょ」

「…これ…宴会魔法だろ?」

 ヤモトはつんざく音に耳を塞ぎ、

眩しさに目を細め、

「ただの逆流魔法…

魔王の関係者も来そうだよね…

さすがだ敵も味方もおびき寄せる作戦…」

 ガウも長い耳を折りたたむように押さて言うと、

「ん~あああああ!!」

 ヤモトは焦っていた。

「あー考え無し…」

「うぁあああどっかに身を伏せて暫く監視!

考え無しとかと違うからな!

こんな凄まじいとは思わなかっただけだー急げ!!」

 この場から急いで茂みの中に隠れるヤモト。

「へいへい…」

 呆れ顔でついて行くガウ…

そしてこの音に釣られ、

何者かが登場しようとしているのを彼らはすぐに知ることとなる…。


 つづく

*「」内のセリフのが()の場合は心の声になります。

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