2・【ギャル★ギャン】ガールスギャングな子供たち
*これは「アウトランド/1」の正式な続編で、
ライト系読み物ですがグロテスクシーンも混在してます*
ジャンル:ライトファンタジー小説、魔法世界に想いを馳せて。
イントロダクション:
もう随分と昔に廃校になってしまったこの中学校。
巨額の解体予算は付かず長年放置され荒れ放題になっていたが、
まだ活気に満ちていた頃一つの怪異の噂がが存在していたそれは、
3番棟東校舎の二階の一番の北側にある、
日当たりの悪いトイレで起こっていた。
罰として一ヶ月の間このトイレ掃除を拝命した女子三人組。
掃除の任期もあと少しというところで、
今日もせっせと放課後通い詰めていた。
「薄気味悪いよな~ここ。
なんか出るんちゃうって毎日思うんよ…」
「うむん激しく同じ意見だから、
さっさと掃除して帰りたいですぅ~今日も仕事に励みましょー口より手よ、手と身体を動かすの。
分かった?」
「しかしダルい掃除!掃除!掃除!
私ら3人特別命令を受けた便所清掃員~やってらんねーぜ!」
「…ねぇ今日も聞いてくれない?
花男さんの話しなんだけど?」
「やめて~その話し…花子じゃなくて、
花男?どっちでもいいけど似たような話ばかり…
うざいからやめろ~お前はガキか?
そんなの嘘に決まってるだろ?
いい加減にお止め」
「うん花男さん…
でも止めるごめんごめん。
ニャハハハ」
「どんな都市伝説なの?」
「うん。
それがね~花子さんよりもっと…」
「おいこら~~~~~口じゃない!
手でマップをこう持って床に全意識を集中しろー」
「分かりました親方~」
「ゴッシゴッシゴッシ水ぶっかけて流してまたゴシゴシゴシ」
「口より手と脚と身体全体を動かすのよ~さーみんな気張れ~ん?」
すると一人が4室ある個室の1番奥が使用中なのに気づいた。
「あらあらあらぁ」
「………ぁ使用中…」
「まさか…これはもしかして…」
「これはもしや上から水攻めしろとの啓示?」
「…ウヒウヒウヒヒヒィ~」
「ダメだって…
落とし穴ほったらたまたま来た校長落ちてめっちゃおかしかったけどぉ
捻挫して躓いて穴の中の飛び出た石に頭打って流血…
次また悪さしたら警察案件だって言われてるし、
平謝りの親も超絶怒ってるし一だから駄目!」
「うん…
これ見てよ親のガチ説教で庭の石畳に正座させられた時の脚の痣、
ほら見てよ治りかけだけどまだ点々と…」
「ひでーよな~お前の親悪魔?」
「…私も古い納屋に丸一日反省しろて閉じ込められた話ししたじゃん。
あれ続きがあって、
お腹空き過ぎて気づいたら目の前にお前らが居て、
質問です。
最悪の事態が発生しましたでも助けられるのは、
お前かこいつの2人の内1人だけ!
さーアナタはどっちを助ける?ってクイズ出してきて…」
「なんだそれ~まじかぁ~~~~~~で?」
「どっち選んだんだんだだん?」
「……………………」
床を見つめモップで掃除し始める娘。
「お~~~ぃ」
「答えろ~~~」
「………そ、そこは別のいいじゃん。
私の胸の中にひっそりとある物語と言うことで…」
「今はいい手は止めて、
口を動かそうぜ」
「さー答えをどうぞ~どっちよ。
どっちなんだよ」
自分ともう1人を指差し確認する娘に、
「ボソボソボソ…」
重い口を開く娘。
「聞こえねー」
「もっと大きな声で~~」
「私もタヒぬ…って言った…」
「!!!!!!!」
あまりの言葉の強さに絶句したあとの2人、
「うわぁあああああああああぁあああぁああああん!」
「ぐわぁああああああ~~~~~ん」
泣き出してしまい大きな泣き声はトイレ中に響き、
「うぇえええええええ~~~ん」
答えた方もワンテンポ遅れて泣きハグし合う3人の友情は更に美しく深まっていった。
「まさか君がそんな事…うぇ~~ん。
ぐずぐずぐず…ズビー」
涙に加え鼻水垂れまくっている。
「心が震えてつい涙がドバーーーーッって出た。
えぐえぐ…」
嗚咽混じりで何を言ってるのかよく聞こえない。
「うんうん。
そしたら腹の虫が恐ろしく鳴って我に返ったんよ。
あはは」
そう、こいつらは学校でも悪さばかりする不良とは行かないまでも、
おバカグループで自分たちをガールズギャング。
略してギャル★ギャンと自称していた。
「それでは宴もたけなわですが、
そろそろ本題に…はいここは一旦深呼吸で心穏やかに…すーーはーーーすーーー」
「はーーーーーっはい。
出ていってもらいましょう!」
「ふんぬっ!!」
鼻息で答えている娘。
「普通に出てもらうなんてつまらんよね…」
コンコン……
ノックしたが返事はなかった。
「んんん~入ってますかー居なくても返事して~」
「居ないのに返事あったら怖いじゃん」
「それこわーーーぃ」
「プッ。お前らまじアホだな~」
「アホでごめんなさい」
ドンドンドン!
強く叩くが反応は無く、
「誰も入ってないねこれ~」
ガチャガチャガチャガチャ
ドアノブを何度も回し、
「私たちちゃんと掃除しないと怒られるんです~」
ドンドンドンドンドン!
「鍵壊れてる?」
「昨日までは普通だったのに~」
「この個室だけ相当汚れてて掃除してないーとかなったらまた大目玉。
監督責任者の教師とか日に何回も会いたくない。
用務員さん探して来てもらうのも超だるい…むむぅ」
ガチャガチャガチャ…
押したり引いたりしてみたが、
鍵が空回りするような音がするだけで開かず、
一人が理科室へ駆け出すとあとの二人も追い、
彼女たちはそれぞれに椅子を持ち戻って来た。
「いいかーよく聞け!
いっせいのせいで同時に中を確認して降りて、
鍵を頑張って開ける。
ほんのちょっと怖いんで皆でいっせいにだ。
いいな!」
リーダー各の娘が言う。
「~狭いのに3人も入ったら身動き取れなさそうだけど、
楽しいぞきっと。
あはははは」
「花男さん居るかも~」
「それってどんな話しなのよ?」
「うんとねえっとね。
花子さんの従兄弟で、
花子さんが居ない時はこの花男が代わりに居てね、
開かない個室に無理やり入ろうとする子たちを食べちゃうんだって!」
「従兄弟だって誰が証明したんだ…?」
「そ・う・な・ん・だ………
くだらねぇええええええ」
「くだらなくてごめんんさい。
あはは」
「今と全く同じ状況じゃん。
じゃーその花男が居るか確認しないと!」
それぞれの椅子に上履きのまま上り、
「ほないくでー」
「準備おっけー」
「いっせいのせ!」
3人は個室の壁上に手をかけ、
身を乗り出すように覗いた。
「(ぎゃあ~~~~~~~~~!)」
「(あぁあああああああああああああああああああああぁあああ)」
「(………は…な…おぉおおおおおお……!!!!!!)」
叫びは息を飲み声にならず、
彼女たちは得体の知れない真っ黒い人の様な何かと対面し、
それが花男かどうかは別として卒倒してしまい、
その何かは少女たちを次々と中へ引きずり込み、
大きな口を開けるような振る舞いを見せたかと思うと、
1人づつガブガブと頭から、
肉や血や骨を噛み砕くハッキリとした咀嚼音を響かせそして、
数分後静まり返るトイレ。
キィイイイイイイイ…
ドアが開くと和式便器があるだけの普通のトイレに戻っていて、
黒い影も少女たちの痕跡を何一つ残さず消滅し、
彼女たちの消息はここで途絶え、
この日以降彼女たちを目撃した者は居ない…
だがよく考えてもらいたい、
この話が本当だと裏付けるには第三者の目がなければ成立せず…
確実な証言や証拠がなければただの寝物語だが、
これらは偶然にも見つかり真実であると決定付けられたのだ。
事象発生から数ヶ月後、
校内での盗撮が行われていたとする事件が発覚し、
警察はなんと校長を逮捕していた。
彼の書斎から無数に出てきたビデオテープの1本に、
その時の全容が収められていたのだ。
盗撮校長は事件発覚よりも以前、
理由は定かでは無いが精神をやられ気が触れてしまい、
病院暮らしをしており、
書斎の掃除に入った中学生の娘がテープを偶然見てしまい発覚しそして、
3人組のテープに映る、
凄い力で個室に引きづられる少女たち、
咀嚼音が響きドアが開くのだが、
映像には続きがあり1人の少女がまだ生きていて、
外へ出ようと壁に手を掛けもがいていた…
必死の形相が一瞬映ったが、
最後の望みは圧倒的な力に引き戻され、
それから2時間何も変化は無く日は陰り、
夜になるままにビデオは終わる。
このビデオは警察の威信を賭けた科学班の調査で、
CG等による偽物ではないと証明されてしまい、
校長は重要参考人だが聴取は不可能。
会話すら成り立たたず、
ビデオには一部始終が収められている怪異の、
類を見ない重大な証拠ではあったが、
校長が直接手を下していない事も証明していて、
この映像は関係者、
見た者たちの1人残らずを混乱させトラウマを植え付け、
体調を崩し休職する者、
視聴直後に拳銃で頭を撃ち抜こうとした者も居たが
仲間に制され事なきを得ていて、
校長もこれを見て気が触れたのだと言う見解は、
関係者全てが思う所だった…。
”人のような影が少女たちを飲むように喰い、
彼女たちの存在の証明、遺留品や暴行の痕跡、
血や肉や何一つ物証として残さず消滅”
この【3人組少女失踪事件】は、
人知を越えた事件だったが警察は、
犯人を校長であると逮捕に踏み切っていた。
精神を病んでいる事による責任能力の欠如で無罪放免は明白。
それを考慮したと言っても過言ではなく、
無念の少女たちの遺体は、
今もどこかで眠っているという物語は勝手に出来上がり、
無理やり解決に導いていた。
この事件について署内では絶対的な箝口令が敷かれたが、
人の口に戸は建てられず話はどこかからか漏れ、
あっと言う間に世間に広がっていった。
*過去の話から現実の時間に戻り話は続く*
「…そして校長は、
精神病棟に隔離されたまま死亡した…っと、
これがこの学校の怪異の元凶なんだって、
校長は本当に盗撮犯で、
当時の新聞とかテレビニュースになってる…その後、
この現場でとにかく謎の霊現象が頻発するんだって…」
艶のある髪がサラサラの、
のっぽな男が話している。
「これ都市伝説?
本当の事件じゃないの?
黒い影はともかくリアル過ぎ…
少女たちの遺体は未発見なんだよね?
なんとか核心に辿り着いて成仏させてあげたい…」
固太りなタンク型の司会の1人が話している。
「はいそこで我々は、
ここで起きる怪異が真実か否かを調査するため新人女優、
鞠愛里と、
新人タレントBちゃん。
そして私たち司会でお馴染み3人の計5名で、
このオドロオドロしい廃校へやって来ております。
2人はこの話しどう思う?」
イケメンで優しい瞳をした司会の1人がマイクを向けると、
「ど、どうでもいいから早く帰りたいでーす。
私怖いのNGなんだけど、
いつの間にか目隠しされ連れて来られて
マネージャー覚えてろよぉー。
これで2回目だおいこら出てこいや~」
泣きそうな顔で怒るタレントBちゃんに、
「Bちゃんのその時の様子が見たい方は、
ネットの特設チャンネルで公開中でーす。
アドレスはココらへんに出てる~」
テレビの画面の下辺りを指す司会者は次にマイクを愛里に向ける。
「私さっきから身体が重くて…頭も痛い……」
蒼ざめた顔の愛里。
「そう言えば愛里ちゃんは霊感があるってアンケートにあったけど本当?」
司会が質問すると、
「はい。
母かたの曾祖母さんが霊感強い人だったらしくてその血が私に…」
低い声で淡々と語る愛里、
彼らの背後にはライトで闇夜に浮かび上がる、
あのトイレがある辺りの壁を映し出している。
「今何か霊障のようなものがこの場所にあるとか無いとか分かるの?
でも、無理しないでいいからね!
ちゃんと強力な助っ人除霊師連れて来てるし、
何かあったらあの人がなんとかしてくれる!」
カメラは急に裏方たちを写し、
映ってはいけないとびっくりして逃げ惑うスタッフたちの中に、
大きな数珠を首に巻き袈裟に身を包んだ厳つい顔の除霊師がアップになり手を合わせ印を結んでいる。
「はい今夜は皆さんお待ちかねの”特番オカルトテレビ。
あの噂の怪異調査します夜!”は、
恐ろしい噂の絶えないこの廃校に突撃探索~~!
つづきはCMのあと!
チャンネルはそのまま!!」
カメラは3人の司会者のおどける姿を収め、
パンしながら2人の女性タレントの顔のアップを撮っている。
「はいカットー。
次の場所まで移動しまーす。
暗いので足元に気をつけてくださいねー」
行われているのは録画ロケ番組でCMの入り所を考慮し撮影され、
取りこぼしが無いようほぼ全行動が撮影され、
ディレクターの指示に従い、
トイレが映せる学校の裏手から校庭を抜け正面玄関まで、
大回りするしかない経路で向かい、
それぞれが持つ電灯の明かりはチラチラと地面や、
突然に唸るような動物の声、
奇妙な物音に一喜一憂し、
美少女タレントと売れっ子司会グループたちとの
怖怖としたやり取りは
笑いも誘いつつ玄関へ着くと扉は、
幾重にも巻かれた鎖とその中央に
垂れ下がる大きな南京錠で施錠されており、
「つ、遂に到着しました…が、
これはちょっとと言うか真面目にやらないとマジ災難が起こりそう?」
入口の厳重な雰囲気に圧倒され、
これは本物の”封印”なのだとタレントたちもスタッフも一様に息を飲んだ。
「どうですか?愛里ちゃん。
ココに邪悪な怨霊とか居ないよね?ね?ね?」
司会者の質問に、
「あ。さっきの場所より遥かに………
何も感じません。
身体が重いのも治りかけてきてますが…」
何かを考察するように慎重にに答える愛里。
「うわぁあああ怖いぃいいい帰らせてくださーぃいい」
ビビリキャラで人気になったBちゃんは特有のアニメ声で、
帰ろう帰ろうともがき隙あれば逃走を図るが、
司会たちに追われまくり結局は捕まり、
ディレクターもその調子でガンガン行ってと肩を揺らし笑っている。
「トイレあるさっきの場所の方がここよりやばかった?」
「はい。吸い込まれそうな凄まじい感覚がありました……」
「やはり何かあるんですねこの学校…」
「やばいよやばいよー除霊師さんご意見は?」
背の低いタンク型の司会が除霊師に言うと、
「初めからここのロケやらないほうが良いって言ってましたよね私?
煽ってないです。
善処するけど最悪な場合も想定してます。
愛里さんが霊的体質なのは分かります老婦人がずっと背後、
右肩上方から見守っておられます。
顔のここらへんに特徴的なホクロありますね」
ディレクターは除霊師に前に出てと指示しタレント側に並ばせ、
「わぁあああ写真でしか知らないけど、
あるんですここにちょっと大きなホクロ」
驚く愛里と2ショットに映っている。
「ひいばーちゃんもここに?
愛里ちゃんも心強いでしょう~」
愛里の背後の空間を手で探るような動きを見せる司会者たち。
「愛里ちゃんのひいおばーちゃん私も守って~」
Bちゃんが愛里と除霊師の間に割り込みグダっている。
そして一行はここから対角線上の先にある二階の奥の奥にあるトイレを目指し、
そもそもこの学校は子供がたくさん居た時代のマンモス校。
運動場も広々としていて3棟ある校舎と体育館、
目的地のトイレまでは棟を繋ぐ連絡通路を通るが、
その辺りから異様に建物の劣化が激しくなっていき、
暗い深夜に荒れ果てた屋内、
窓ガラスはあちこち割られ散乱。
体操着、
教科書、
図書館の本、
掃除用具、
机、
椅子、
ボコボコのロッカー、
大人な雑誌、
古いデザインのジュース紙パック。
何かの缶は潰れ錆が湧き、
真っ二つに割れた黒板など何もかもがあらゆる場所に散乱し、
外装が破壊された柱の中からいったい誰の仕業なのか、
金属製の細い棒が何本かは折れ曲がり飛び出している。
不良のたまり場にもなっていた時代も有り、
そこら中にスプレーの落書き、
恐ろしい文言が書かれているかと思えば下品な絵のオンパレード。
タレントもスタッフも慎重に進むが、
誰かが踏みつけたガラスの音に、
上げビビリまくるBちゃんの悲鳴にタレントたちはその度、
慄き、
除霊師の袖を背後から必至で握っているBちゃん。
「大丈夫。
大丈夫だからちょっと離れようか?
歩きづらいんよフフッ」
ちょっと嬉しそうに歯を見せている除霊師。
彼らはゆっくりと目的地へ近づくが、
「あ、また頭痛…イタタタタ…」
頭痛が再び痛みだした愛里だったが初めとはうって代わり、
「だ、大丈夫です!
私一皮向けたなんでも出来る実力派女優になるんです。
やり抜きます!
キリッ!」
この番組を試練として捉え、
好感度をあげようとしている愛里の凛々しい姿を捉えるカメラ、
Bちゃんも根性出せと言う司会たちのヤジに、
ますますBちゃんは除霊師にしがみつき進行不能状態。
バターン!!
その時どこからか衝撃音が響き渡り、
「きゃああああああああぁあああ!!」
「こわいぃいいいいいいい?」
彼らの心臓は止まりかけた。
「聞こえましたよね?
皆聞いたよね??」
「風?」
「どの辺から聞こえた?
あーやっぱあっち、
トイレの有る方…」
「やめてーーーーおしっこちびるっていうか…
私もう無理ぃいいいいいリタイヤ!
お家帰ります~」
Bちゃんは腰が抜けたように床に座り込みへ垂れてしまっている。
「ディレクター仕込みは止めよーよ。
そういうの無しでって充分会議したじゃんバレたら首が、
懲戒もんだよ~」
司会の一人が恨めしそうに話している。
「アホかそれは禁句だ馬鹿。
仕込みとか無いし絶対にやって無い!
はい今の文言はもちろんカットー」
「りょ了解なんですが…
ディレクターちょちょちょっとこれ聞いて貰えます?」
音声さんが録音機材を弄りながら、
「何よ何よ何なのよ…?」
渡されるヘッドフォンの片側だけを耳に当てるディレクターだったが、
………ブブブブブ…
「あぁこの音?…」
しっかり左右につけ直し目を閉じ聞き入っている。
「…分かります?
このノイズみたいなの、
この場所に来たら唐突に聞こえだして、
でもメーター見て下さい……」
「え?」
彼が見せる録音機材の音声メーターは反応を示さず、
針は1ミリも振れることはなかった。
「んんんんん~~…念仏?
みたいなの聞こえてるのに、
除霊師さんちょっちょっとこれ聞いて」
青ざめるディレクターはヘッドフォンを外し彼を呼ぶと、
「念仏って何~~~~ぅうううう??もういやだ~」
Bちゃんもワンセットに付いて来るが、
「…確かに何かの言葉の羅列みたいなの聞こえますね?でも、
私の霊感に触る感覚は皆無…
これはただの物理現象だと言ってます」
「てことは不具合?叩いたら直らない?」
「だぁああああ駄目です。
これ幾らするか知ってます?壊しでもしたらロケ中止…」
「冗談だ分かってる…
愛里ちゃんも聞いてみて。
かメラさんちゃんと撮ってる?
テープチェンジは?」
「あと数分」
カメラマンは答え、
「いい?
ちょっとボリューム上げますね」
機材を弄る音声さん。
「はい…」
回されたヘッドフォンを耳に当てる愛里だったが、
「…助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けてぇええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!」
その口から思いも寄らない言葉が波のように繰り返し発され、
絶叫に変わると泡を吹き倒れてしまい、
カメラはうずくまる愛里を克明に写していたが、
テープ残量が切れるサインも表示されている。
「おい大丈夫か!頭打ってないか?」
除霊師が声を上げる。
「怪我してないかマネージャーさん確認して~」
イケメン司会者はライトでその人を探す。
「男性陣は一切彼女に触れないでくださいね~
これは業界の鉄則です~」
ガタイの良い司会は愛里の傍らで警備員の真似事。
「うわうわうわぁあああ…」
どうしていいか分からずオロオロしてるのっぽの司会は、
とりあえずライトをで愛里を照らしている。
「愛里ちゃん大丈夫?」
寄り添い声をかける愛里のマネージャー。
ライトを持ち頭をあまり動かさぬよう怪我の有無を見たが、
血が滲んだ様子もなくホッとした表情で
汚れている彼女の口周りをハンカチで拭き取ってあげている。
「ロケバスに戻りましょうディレクター!」
女性ADの声。
「まずいぞまずいまずいぞこれ!
その辺の、
あーその板、
担架に出来ないか?ボロ過ぎて無理か…
あーなんてこったこんな不祥事。
やばいやばいこれお蔵か…
あーでもこれ厳しいな予算すごいのにこの不始末…」
起こってはいけない不祥事に、
あれやこれや考えすぎ自分を見失いつつある総責任者のディレクター。
「救急車は?
警察も呼びますか?ディレクター指示をください。
聞いてます?!」
また女ADの声。
「ぇえええええ~警察???
警察って?あー無い無い、
それは駄目だろ?」
ディレクターはその組織名にだけ敏感に反応している。
「あわわわわわわわわわ~
何があったの愛里ちゃん大丈夫?!
助けてって何?
私も助けて~~~~
ぎゃああああああ~~~」
パニックに陥ったBちゃん。
決死の形相で来た道に向かい駆け出し、
「あぁあ駄目だダメ~~~~!」
自分から離れたBちゃんに気づき除霊師は声を荒げ、
「戻れええええええ!」
ライトの光で追いきれず再び闇に衝撃音が響き渡る。
ドガーーーーン!
ドンガラガッシャン!
ガラガラガラ…ガコーン…コロコロコロ…
大きな何かが連鎖的に落ちて行く音。
「なんだーーーー!」
「何が起こった?!」
「今度は何だなんなんだよ!」
「え…?」
「えぇえええー」
「おおおおお落ちた…」
除霊師の震え声は最悪を覚悟した。
「えぇええええええええええええええええ!
ライト照らせ~~カメラ、
カメラ回せるか~!」
ディレクターの悲痛な叫び。
「テープチェンジ急ぎます」
テレビの要であるカメラマンだけは冷静に対処している。
「床に注意して!
二次被害のほうが遥かに危険!」
司会の誰かが叫ぶ。
愛里とマネージャー以外の全員で連絡通路の中ほどに戻ると、
来たときは絶対に無かった穴から
落ちたBちゃんを見てほぼ全員が腰を抜かし、
吐く者が続出しし、
Bちゃんを助けたい一心で狂ったように廊下を駆け出す女ADを
もう1人の男ADが抑えなだめ、
ディレクターは携帯で自ら警察を呼んでいる。
「はい今夜の…
届けも出してるオカルト番組のディレクターですはい…
マンモス校の…
で実は…
ロケ中に事故が起きて……
タレントさんなんですが…
はい………
救急車は………
不要です…」
震えて詰まる言葉を絞り出すディレクター。
話し終えるか終えないかの時、
毅然とした態度も力を無くし急に壁にへたれ込み泣き出すと嗚咽になり、
しきりと何かを呟いている…
そんな様子にカメラマンは、
「すいませーん。
マネージャーさん大丈夫ですか~」
残した2人にテープチェンジした暗視カメラを向けつつ気づかい始める。
「あ。はーい!」
「愛里さんの状況に変化ありますかー?」
「なんか穏やかに寝てる。そんな感じです」
互いの持つライトが交差している。
「起きる気配はー?」
「あ。試してみます…
愛里ちゃん起きれるーおーぃ意識戻って~」
マネージャーは愛里を揺すってみたり、
頬を軽く叩いたりしているが、
起きる様子の無さにその鼻先に手を伸ばし、
「……(あぁ良かった!)」
温かな息を指に感じている。
「簡単には起きないかもです…
あーそれでBさんは?」
「あーあの…それはですね…
結局警察呼んだんで誰かが対応しないとなので、
ADたちには大急ぎで水とか色々持たせてそっちに戻らせます!
少しだけそこで我慢して下さい…」
ガコーン…
また何かが落ちる音が響いた。
「…ここが現場検証されるはずなので、
あなたちの救援は本職に任せたいです。
何かあったら携帯で連絡を」
「はい!あ、あのーそれで(Bちゃんさん)
…わ、分かりました!」
マネージャーはカメラマンの話しぶりで大事故なのだと分かり、
Bちゃんは来るときには無かった穴から落ちて即死だった。
劣化の激しい部分に
圧力をかけてしまったBちゃんが
穴を開けたと想像したが最大の謎が1つ、
それはコンクリート製の床や壁には補強材が縦横に網のように仕込まれているが、
その補強材自体は壊れておらず穴はない、
コンクリの部分だけが剥がれ落ちていたのだ。
この網目を人が通ることは不可能。
加えて周囲にBちゃんの血痕も衣服の生地が破れて付着などの痕跡も無く、ただ魔法のようにすり抜けた…
もしそれを実証出来るとすれば激しく損壊した遺体。
彼女の身体は信じられないほど均一に壊れ、
その1つ1つは網目の穴を通ることが出来るはず…そう、
彼女はこの穴たちから落ちてタヒんだのだ。
男ADは道中を携帯で撮影している女ADと
自分の安全を確保しながら残した2人の元へ戻ろうとしている。
「ま、まさかこんな大事件が起こるなんて…
僕帰りたいですセンパイ。
遺体に恐ろしすぎて吐いちゃいました…」
「…私も足がずっとガクガクしてる…
でも仕事…
あと録画してるからね?
カメラマンがなぜ喋らないのか分かる?」
「…編集でカットされてる…?」
「プッ…あぁ…百点満点の回答だけどゴホンッ…
無自覚に話さないように…」
小さく吹き出してしまい不謹慎だと取り繕う女AD。
「あっ…ス、スイマセン…」
ゆっくりと進むしか無いADたちだったが、
「マネージャーさん今からそっち行きますね~。
水とか食事とか持って来ましたよ~毛布も」
やっと2階の連絡通路へ着くとライトをかざし声を上げる男AD、
その様子を黙々と取り続ける女ADだったが、
少し先に明かりは見えるものの返事はなかった。
「あれ…?」
「すぐそこ穴です気を付けて」
「うん」
2人はしばらく歩くと、
「えっ!」
「???」
うつ伏せのまま寝てるような身動きしないマネージャーを発見しビビってしまい、女ADは男ADに携帯を渡すと録れと即す。
「大丈夫ですか、マネージャーさん!」
女ADがマネージャーにコワゴワと手を伸ばそうとすると、
「セセセセセセンパイ!
居ません……
居ませんよぉおおおおお愛里さんが居ませんんんん~~~~~!!」
居るはずの愛里をカメラを回し探している男AD。
「起きて、
起きてください!
何があったんです?!」
彼女の身体を起こすとマネージャーの頭がそっくり無くなっていて、
その真下に穴が開いているのも見た。
「ぎゃああああああああああああ!!!」
驚きひっくり返った女ADは、
天井にも丸く開いた穴があるのも見つけ、
また新たな丸穴が幾つか開くのを目撃した瞬間、
ヒュンヒュン、グシャッ!
どこかから飛んできた謎の気弾で身体を真っ二つに裂かれ、
吹き出す血しぶきを浴びてしまった男ADはカメラを抱えパニックになり、
この場から逃げたい一心で先へ先へと無我夢中で走り本来の目的地、
あのトイレへ逃げ込もうとした。
ドゴーーーン!
しかし新たに襲い来る気弾の爆風で弾き飛ばされ、
正面の壁に叩き付けられたが、
一連の破壊行為に熱源は存在せず火柱も無い、
火薬特有の匂いも無ければ、
ミサイルなどの飛翔兵器なら飛んでくる音も無い、
奇妙な破壊現象は降って湧いたようにあちこちで起こり、
Bちゃんが落下した廊下の穴はこれだと思われ、
ロケバスに戻っていた他のスタッフたちは
渡り廊下にライトがちらつくのを見て
ADたちが彼らと接触したのだと安心していたのが、
唐突な戦争状態に唖然とし冷たい汗をだらだら流し、
今しがた到着し
パトカーから出てきた警官2名と話そうとした時にそれが起こり、
全員で身をかがめ
噴煙と共に飛んでくる瓦礫を避けようとカメラマンは、
「ディレクターここは危険だ逃げよう!
ディレクター!
起きて起きてくれよー」
ロケバスのタイヤ横で
うずくまる男を立たせようとしたが、
「ブツブツブツブツブツブツブツ…
ヒッ…
ブツブツブツブツ…
ヒッ…」
用をなさぬ人と成り果て、
壮絶な爆発現象に飲まれていく3棟の校舎が
ドミノ倒しのよう倒壊するのを見ながら、
「…死んだ
…お腹の中の子も…
奥さんになるはずだった可愛い人は赤ちゃんになる前の胎児と一緒に…
あははははははは」
出来ちゃった婚なため今はまだ2人だけの秘密だったが
Bちゃんと結婚する事にしていたディレクター、
彼は悲しみのあまり自暴自棄になり、
戦争に身を投じる兵士のように湧き起こる惨状に
自ら立ち向かい煤煙と瓦礫に飲まれて消え、
トイレ周りの外壁も崩れ始めると
中から眩しいほどに輝く光が出現し、
崩れ落ちる外壁や瓦礫は大小さまざまな影となり、
その隙間から漏れる光のコントラストは
この上もない程に美しく夜に映えている。
「あぁああああああああああ」
身体をすっぽりと覆うような瓦礫の中で
かろうじて難を逃れた男ADは
その様子を凝視していた。
「ヌムクリア・ブレイスト!」
ギュギュギュギュギュグォオオオオオン
聞き取れない謎の言葉が発されると、
急激に甘く焦げるような匂いが辺りに広がり、
雷の塊のようなエネルギー球が出現し巨大化していく。
「(わわわわわ~~~!!!)」
目の前で起こる未曾有の出来事にタヒを感じる男AD。
「うそぉ~
古い最上位魔法?…
なら相殺…
チルハナノビガク!」
そしてまた誰かの声がすると
男ADの身体じゅうの毛がピリピリして逆立ち、
彼の視界からは壁になり見えない先で閃光が発生し、
ギュウゥゥゥドグォオオオオオーン!
膨れ上がったエネルギー球を弾き飛ばしたようで、
四散したエネルギーの破片は
障害になる物全てを貫通し破壊。
光は光とぶつかり合い重なり更なる大きな光の渦となり、
男ADの視界を遮っていたトイレ周辺の壁が全て取り払われるとそこに、
「(あぁあああああ…嘘?!)」
すっくと立ち険しい表情を見せる愛里が居た。
「…アナタたちはここで命を奪われた子たちなの?
後ろに何かが隠れてるのも分かってる…
さっきから【なんとかの庭】ってイメージが出てくるけど何なの?
正体を現しなさい!
あなたたちはすぐに浄化してあげるから辛抱して。
なんとか背後の者から引き離すから…」
「いぁやあああああ!」
ゴォ!
「わたしたちをいじめないでぇええええ!!」
ゴウッ!
「こんなのいやぁああああ!!!」
ゴォオ!
少女のような者たちは真っ黒い瞳、
焦げて焼けただれた肌で何者かに抵抗しつつも逆らえず
助けを求め喘いでいた。
裏に潜む者は彼女たちの自分に対する怨念を利用し壮絶な力に変え、
獲物を襲う為の武器に変化させていたが、
愛里に発見され戦闘状態になり今、
その大きく裂けた口から発射された
轟々と燃え盛る巨大火球3発が愛里を襲う。
グゴォオオオオオオオー
「ダイヨンバンレイキ…」
青白く輝く霜の塊の壁を貼り巡らせ火球を跳ね返す愛里。
火球は散り散りになったが、
いつの間にかこのトイレを中心とした空間と、
普通の世界を分け隔てるエネルギー膜が張り巡らされており、
炎たちは内壁にぶち当たり跳ね回っては消えていく。
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*現代編:主要登場人物①*
名前:鞠 愛里
職業:女優(新人)
年齢:21歳
性格:温厚な天然
趣味:お菓子作り
霊能力者だった曾祖母さんの血が遺伝。
幽霊などは幼少から頻繁に目撃。
通りすがる人の死期を予知してしまい怖がられ、
他人とうまく馴染めず陰キャ道まっしぐらそして近年、
テレパシー能力が目覚めつつ有ると自覚。
名前:波多野 啓
職業:除霊師(呪術にも詳しい)
年齢:34歳
性格:兄貴肌
能力者として腕は超一流だが、
ギャランティーなどの金銭トラブルがあり、
テレビ業界から干されかけだが起死回生を狙っている。
強面だが面倒見はよく
慕っている者は多いが金は出さないドケチ。
名前:栗山 千空
職業:某テレビ局制作部AD(アシスタントディレクター:雑用係)
年齢:24歳
性格:普通人
大学卒業後就職に失敗。
友人の紹介で制作マンの世界へ。
怒鳴られるのが当たり前の激務に怒鳴られ続け、
自分の存在意義を無くしかけた時、
壮絶な物語に巻き込まれ無理と知りつつ愛里に惚れてしまう。
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「はぁはぁ…
はじめに過去の大魔法打っておけば倒せるって思ったんでしょう?
あたしはこの通りピンピンしてるぞ背後の奴、
いい加減その子たちを離せ!」
愛里が見つめているのは3人の少女が消失したあの地点、
栗山には認識出来なかったが、
彼女にはそこに確実に居る何者かに対し説得を試みている。
「(…き…君はいったい何者…)」
理性は追いつかなかったが、
何者かと戦っている事だけ理解した栗山。
愛里が何かを呟くたび伸びるしなやかな腕、
その指先から放たれる魔法のような閃光、
そして長い髪は宙を舞い揺れている。
「(あれ?彼女ショートカットだったのに伸びてる~…あぁでも綺麗……)」
彼女の美しさはこの上なく煌めき、
魔性の女優と言う言葉がピッタリだったが、
彼女はそれの上をいく本物の魔女だと驚愕する栗山。
「はたのさ~~~~ん手伝ってぇ~~!」
愛里が呼んでいる。
「はたの?
はたのさんぇええええわわわし?か!」
波多野は駐車場からその光景に目を奪われ逃げる事が出来ず、
一部始終を見ていて、
「なななななにを手伝う?…」
突然名を呼ばれ我に返り愛里を凝視すると何者かとだぶって見え、
印を切りながら集中するとあの曾祖母とはまるで違う別の、
実際に魔法を放っているのは、
長い髪をひるがえし立ち回るもう一人の存在のようだと分かった。
「~背後の奴と彼女たちを一瞬引き離すからあとは任せる!
彼女たちに正しき道、
有るべき所へ還してあげて、
あなたの力が必要なの!」
「あぁああ~そのぼんやりした影があの都市伝説の娘たち…
それを成仏させるってことだな?!」
波多野には霊的な対象がなんとなくしか見えず、
愛里のように詳細な姿、
性別まで見る力は無かった。
「同じかどうかは分からない。
この子たち魔物に魂喰われて
この世界をもっと喰らうための魔法兵器にされてる!」
「魔法の兵器…な、なんと酷い……
分かった合図をくれ!」
と言ってはみたが波多野の足はガクガクに震えている。
「ゼッタイレイドノヤイバ」
宙空に凍てつく冷気が霜になり結晶が作られると、
何本ものギザギザした真っ白い氷の槍が手から放たれその鎖、
異空間から伸び彼女たちを縛り操る何本もの赤黒い鎖たちを次々に破壊、
繋がれていた少女たちは糸の切れた操り人形のように倒れ、
背後の空間から次々と新しい鎖が伸び彼女たちに襲い来る。
「今!」
「ハァアアアアアアアア!
(その魂が生まれ出た場所へ、
呼び名の無い世界、
母の腹よりはるか以前の明るく白い始まりの世界!
私はあなたたちの名をここに唱え称賛する。
あなたたちの本当の名は…)」
身振りも大きく空中に印を切り一心不乱に祈る波多野。
生前の彼女たちの生き様を事前に調査し頭に叩き込んでおり、
彼女たち自身を呼び覚まし、
何にも打ち勝てる魂の名を叫んだ。
「ギャル★ギャン!カーーーーーッ!!!」
すると一瞬だった…。
「やった~!」
愛里は目を輝かせ、
3人の少女たちも異空間へ通じたような渦も消滅するのを見ていた。
「ハァハァハァ…
上手く行った…
これは自分としても快挙!ハァハァハァほんと良かった。
ありがとう愛里ちゃん…と、
あなたが居なかったらきっと無理だった…
あなたの圧倒的な強さで安心して力を出せた。
あなたの名前は?
愛里ちゃんを依り代にしてるあなたは?」
地面に片膝を付き能力以上の力を使ったようで、
肩で息をしている波多野は
上空から髪が突然伸びた愛里とその背後に影のように居る何かが、
フワフワと舞い降りて来るのを見ている。
「あー見えてた?
名は答えられないし言わない。
おじさんには分かるでしょ?
そうね~」
少し響くような普通ではない声の愛里は、
床にたまたま転がっていたボロボロのグラビア雑誌を拾い、
「この人誰?」
汚れを払うと指でなぞり波多野に渡した。
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*現代編:主要登場人物②*
名前:アイラ
日本人でもない。全てが謎で、
年格好は愛里とすごく似ている魔力の使い手。
愛里のショートカットとは反対にロングヘアー。
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「アイラって人みたいです…」
セクシーな外国人タレントで、
ジムで身体を鍛えている様子が収められている本だった。
「アイラとアイリ…良いね!
あたしの事はこれからアイラって呼んで。
うんうん」
「ぁありがとうアイリさん…
ところであなたに、
山のように質問が…」
「…時間ないと思うから早口で説明するね。
誰かがどこかにある魔王の巣を突付いて魔物たちが他の次元に進出しはじめ、
あたしはそもそも魔物を討伐する側の力の使い手。
愛里とはなぜか奇跡みたいに繋がっていて、
あたしが依り代にしたのではないよ?
強く引き寄せられた…
大きなほくろのおばあさんに…
(そしたらあたしの力が何倍にもなってて…恐ろしかった…。)」
「愛里の曾祖母さんだ!?」
波多野が目を丸くしていると
アザミは気絶したままの栗山に近づき、
「~さすがにこれは残せない……」
その握りしめてる携帯に触れ念を込め、
「あ…真帆の庭を探して…」
何かを伝えようとしたがアイラは消えてしまい、
「あ…っう~ん…」
ショートカットの愛里が床にぺたんと座り込み、
頭を押さえている。
「あぁ良かった愛里ちゃん…」
波多野は彼女を支えようとしたが、
突然栗山が飛び起き波多野を押しのけ愛里の手を強く握り大号泣。
「うわぁあああああ~愛里ちゃ~~~んん。
助かって良かった。
助けてくれてありがと~~
俺タヒんでもおかしくなかった…
それをあなたがあなたが~
ビェエエエエエン~エグエグエグエグ…ヒック」
涙と鼻水と嗚咽でぐちゃぐちゃになっている栗山。
波多野はどっと疲れてしまい安具楽をかき周りの景色をよくよく見ると、
深夜のマンモス校で起こった唐突過ぎる謎の戦いは、
せめぎ合う力同士の爆発に次ぐ爆破の災害で、
彼らが居る辺り以外全てを瓦礫に変え、
「……まずいまずいぞ?
考えろ、考えろ、考えろ俺!
とにかく愛里を連れてここを早く離れて…
どこかに身を隠すしか」
とめどなく考えが溢れたが、
波多野は何も出来ず呆然としていた。
つづく
*「」セリフ内に()がある場合は心の声となります。




