11-3・異界から異世界への誘い
前回までのあらすじ。
小春と原田の居る所に、
渦が沸き起こり始めていた。
トオビンの13名の兵隊たちはついに、
ラストスタンドのメンバーを捕縛していき
残るはヤモトとボンだけとなった時、
ボンの願いは魔王様への貢物として、
生きた兎の心臓で通じてしまい、
精神のいかれた魔王様の力により皆は、
カジキだけを残し、
現代の電車内へ飛ばされると
乗客たちには突発的な、
コスプレイベントだと思っていたが、
コハコや原田の蛇が動き出し、
線路の高架に渦が沸き起こり
2つ頭の化け猿が、
出現していた。
「あー何あれ!」
タクシーで駆けつけていた小春も
その様子に気づき、
空中に浮かんだ車両の屋根に
立っている人影を見て、
その様子をしっかり
ビデオカメラに納めようと、
必死で彼らをズームしていくと、
原田もそこに並んでいた。
『彼らが異界の住人たち!天の助け?英雄たち?本当の救世主?!』
そう思っていると、
『そうだと信じたい』
『まだ何も分かりませんが、
僕らには化け物が見えてます!』
イドも原田も
小春の思念に反応し答えていたが、
まだ一方通行のままで会話は不可能だった。
『そうか!なんとか倒せないですか?!』
イドの言葉は原田を歓喜させたが、
『僕はラストスタンドの彼らに
何一つ指示が出せません。
彼らがどう出るかは彼ら次第で、
原田さんに意思疎通をお願いするしか無いです。
それと今回は
僕の目を見て貰える医者を
探しに来たのが、
第一目的なのです』
『病気なのかい?』
『ある装置がここに入ってます』
左目を指さすイド。
『装置?』
『それが何かは今は言えません』
『目医者か…
分かったなんとかする』
『ありがとう』
そして今、
フワフワと着地した車両から
逃げ出す人々、
空から降りて来た者たちは、
狐に摘まれたような顔でそれぞれ避難して行き、
「どうする。やるか?!
なんかすごい血湧き肉躍る感じが
湧き上がってるんだ。
なんかこっち来てから体が変」
ヤモトが2本の剣を抜き、
「俺もだよ?
体がなんかチクチクするし、
ずっとくすぶってたから一緒にやりたいけど、
武器が無い!!」
ガウは装備品を取られたままの丸腰で、
「とりあえずこれ持っとけ」
ヤモトはガウにショートソードを渡していた。
「まぁ俺さまが居れば問題ないだろう。
さっきも炎出したらえらい火力で、
このレビテーションも、
こんな広範囲に出せるような
強力じゃないはずなのに…
異世界転移か何かが俺たちを変えたか?」
「うーん爆弾は無いし残念だ奥さんの盾になるよ」
ロッグスのたすき掛け皮ベルトに
いつもはあるはずの手榴弾は、
全て追手の兵士に奪われていた。
「ブレインあいつらいったい何なんだ。
おぞましすぎる…
あんなの誰か見た事あるか?」
ヤモトが言うと、
「ありませーん」
皆口を揃えて言い、
「あいつら多分もっと違う
地獄のような別世界から来てると思う。
心がねじ曲がってあんな醜悪な姿に…
精神魔法が効けば一発でヤレそうだが」
唱えだすブレイン。
化け物の根幹を探る魔法が、
奴らのどこか一点を明るく輝かせたら
そこが化け猿の中枢部である脳みそ。
「おいおい渦だ!
化け猿は渦の中の何かに支配されて
操られている。
脳にも凄まじい支配の鎖が
突き刺さっている。
支配を断ち切るしかないが
その後何が起こるか、
それで倒せるか分からん!」
ブレインの分析が終わると、
「動く箱の中ですぐ気づいたんだ。
ここの奴らと俺の目の色が同じだって…」
ヤモトが言うと、
「そうなんだよ俺も思った。
ヤモトの国?ってついに来れたーって」
ガウが言い、
「ほほぅここがお前のご先祖さまの」
ブレインが話し、
「そーなんだー」
「異世界にあったんかー
行ける訳が無い場所だったって事かー
お前のご先祖は
俺らの世界に迷い込んだ人なんだな?」
コハコとロッグスが言うと、
「きっと無関係ではないはず。
良い事したらカタナもらえっかな?」
言うが早いか駆け出したヤモト。
動きは軽やかで試しにジャンプしてみると、
元の世界で経験した事のない
跳躍距離を出し、
「ヒャハーすげぇえええええ」
歓喜し、
実質動けるのは2名だったが、
ブレインの魔法は化け猿へ直接攻撃を仕掛け、
敵対心を彼に集中させ、
ヤモトは安全としか言いようのない、
魔物の背後、
渦の前へするっと入り込み
鎖と魔物の繋がりを考察している。
「でかい鎖や小さい鎖が無数に伸びてる。
でかいのは体に巻き付き、
小さいのが体の中へ入っていっている…
だがこれは物理的な拘束では無い。
明らかに魔術の鎖そして、
この渦自体は特に有害な何かを
放ったりしてない…
あぁ嘘だろ人が居る!!」
渦の中を見ると遠くに、
何者かが歩く姿を目撃したヤモト。
「あれが支配者?!」
それは確実に人で数は3人、
男2人と1人は女。
「すごく美しい娘…」
ポーっとしながら、
恐る恐る渦に手を伸ばしてしまうヤモトに、
振り向きかけた女。
そして、
「怖いことすんな!」
「うぉっ!お前かよー」
「触っちゃダメ、
あっちへ引き摺られるぞ!!」
ガウがサポートに来てくれてすぐに、
渦の中から無数の鎖武器が飛び出し始め、
ブレインを襲い始めた。
「うわわわ危険な状態になってキター
とりあえず1本」
ヤモトは細い鎖めがけ一刀両断にすると、
ギンッ!
「斬れたー!」
簡単に斬れてしまい、
「魔術とはまるで違う匂いがする」
ガウは匂いを嗅ぎ鎖の組成を感じようとし、
ヤモトは鎖をバンバン切り刻んでいくが、
斬るたび伸びてくる鎖たち。
「埒が開かない!
ブレインの方は大丈夫か?」
ヤモトが聞くと、
「あぁー凄い事になってる。
嫁と旦那がすごーぃ事に!」
ヤモトから少し離れ
化け猿側の戦いに見入るガウは
夫婦が超怪力の能力に開花したのだと認識し、
線路を引き剥がしてはブン投げていたのだが、
やはり致命を与える事は出来ず、
鎖の攻撃を無限に喰らい
交わし続けてもどこかしら負傷し、
このままでは身が持たないはずだった。
『あぁこんな時に栗山さんの神の癒やしがあれば!』
ラストスタンドの戦いを物陰から見ている原田が思うと、
『神?まさかそんな力の人が?』
すぐイドが反応していた。
『居るんです。
このあたり一帯くらいすぐ癒やしてしまう力の持ち主が!』
『魔王の庭へ行った1人ですね?』
『だから3人を助けて!』
必死に願う原田。
『うむむむむぅ~1人は魔女…
1人は神の如き癒やし手』
イドも必死で考えている。
「ガウ夫婦をこっちへ寄こしてくれ鉄の棒持って、
一気に絶たないとこれ無理だー!」
「分かったー!」
ガウはヤモトよりスピードは勝り早く走り、
跳躍も大きくすぐに彼らの下へ着くと、
「お2人棒持って渦の方へ行ってー」
線路を剥がしているロッグスや、
大きく開いた分厚い花弁で、
鎖から防御するコハコに大声で呼びかけると、
「ブレインが心配だよー
私はここに残って彼を守るからダーリン!」
「うぅううううう分かったワシも頑張るぞい」
ロッグスは外した線路を3本担ぎ
ドタドタと走って行き、
「俺は大丈夫だー
魔力も切れないし大魔法ではないが、
威力も数段上がってるが一
こいつ一向にヘタる様子も無い、
化け物に吸収されてる感覚がやばい!」
魔法使いは自から報告し、
「鎖断ち切るからそれまで踏ん張ってー」
声援を送るガウ。
「頑張るぜ。12連プラズマボール!!」
グギャギャグギャギャギャギャギャアアアー
悲鳴を上げる化け猿だったが、
大きな傷や流血もほぼ無く、
魔法を吸い取りまくるスポンジのように見えていた。
「で俺はどうするべき…ぁ!」
ガウは足元の無尽蔵に見える武器を発見し、
「お2人加勢する!」
「あんがとー」
「頼むぜー」
そしてガウは
線路に敷き詰められている小石をツブテに、
マシンガンの様に放ち鎖武器を弾いていた。
そんな戦闘の様子を
最新のドローンが追いかけている。
姿のない何かを相手に
必死で戦っている彼らを終始撮影し、
小春もギリギリの場所から撮影していたが、
ドローン操縦士は別に居て、
それはあの初めの事件のカメラマンだった。
「信じられない。
あの時本当はこんな事が起こってたんですね!
魔物はセンサーカメラにも映らず
僕には何も見えないけど、
彼らはいっい何者なんですか?
小春さんとは繋がりが??」
「今は撮影に集中してーきっといつか、
そのうち敵も姿を現す!
それまで付き合ってくれるー?」
「いやしかし凄い。
まるで戦争だ…波多野さんの携帯にも
これが写ってたんでしょうね。
はい!
もちろん付き合わせて貰いますよ。
カメラマンやっててこんな凄いシーン撮れるなら、
地獄の果てまで!」
『もし私にも何かしらの力があるなら
花以外の何かも下さい。
誰にお願いすればいいの?
ねー神様か仏様~でも、
あの角兜の女の子。
私と同じ花に護ってもらえてるみたい。
私の花は直接取り付いてはいないけど…
何の差があるのかな…』
その時、
魔物を狩るブレイン側の3人に数個の瓦礫が降り注ぎ、
ガウの手に突然、
弓と矢入りの矢筒が出現し、
その青白く光る弓で、
即座に矢を3本同時に放ち破壊していた。
「なんだーこれ~」
驚いていると、
「おぉ上手くいった。
俺の精神魔法が進化して
具現化するマジックウェポンを、
皆の心に合わせて配った。
それで鎖を切りに行ってくれ!!」
ブレインの魔法が数ランクもアップし、
新しい魔法を習得していたのだ。
「うぉーありがてーこれどれくらい持つ?」
「すぐ行ってすぐ終わらせて!」
「分かった!!」
「私も行く?」
コハコが聞くと、
「行ってくれー!」
ブレインは答え、
「あーぃ」
コハコは怪力になったせいで、
以前はスキルでしか使えなかった
跳躍も普通に出来ると、
ピョンピョン飛んで行き、
突然の事だったがメンバーそれぞれに、
ガウにはロングボウ弓と無限矢、
ロッグスには両手斧が2本、
コハコには自分が隠れそうな
大きさの丸盾と片手ハンマー、
ヤモトにはカタナの大太刀と小太刀。
それらは一様に青白く輝き
驚くほど手に馴染んでいた。
「ななんだこれ!
使えって事かー?」
ヤモトが言うと、
「ヤモトーこれ罠じゃないよなー」
ロッグスは鉄材を地面に落とし
その武器に持ち替えていた。
「あーそれブレインの魔法。
すぐ消えるから早くー!」
「ウッシャーーーーー!!」
3人は武器をそれぞれに持ち、
ヤモトはジャンプ斬りを繰り返し、
ロッグスは両手斧を2本同時に振るい、
ガウはこちらを敵認定し襲い来る鎖武器を、
離れた位置から高威力の矢で、
粉々に破壊しそして、
出現する鎖がほぼ失くなった瞬間ついに膝を着く化け猿に、
ブレインの最大火力で放ったプラズマボールで
一部を蒸発させ吹き飛ばし、
渦は見る見る消えていくと、
「やったーついにやったぞぉおおお!」
仲間たちは喜びの声を上げていたが、
『駄目なんです…
操られていた魔物の魂を浄化しないと、
また復活するんです。
浄化の役目を持つ人も今は…』
『どうすれば?』
『今は引きましょう。
どこかに身を隠さないと…』
「原田さんこれ!」
するとその時、
小春が1本の武器を手に原田の下へ駆け寄り、
それを見せていた。
『それはブレインのマジックウェポン。
それが手にあるなら戦士!』
「小春さんそれは魔法の薙刀です。
もしかして魔物が見えてますか?!」
「はい!!」
「きっとあなたは留めを刺す人!」
『モンスタースレイヤー』
原田が言うとイドもそう思っていた。
「あぁああああはい!」
小春は走り
巨大で醜悪な化け猿まで駆け寄ると、
「私に誰かの代わりなんて務まらない、
何がなんだか判らないけど、
くそったれな化け物!
消えてしまえー!!」
自然に湧き上がる敵への憎悪が口を付き、
初めは分からなかった双頭猿の
白いブヨブヨした表皮に無数にある
模様の様に見えていた物を
まざまざと目にし、驚愕した。
「あぁあああああぁあああああああ
なんだこれは!」
小春は体中に鳥肌を立たせ、
震え上がり腰を抜かしそうなのを必死で堪え、
「こ、これがこいつの正体?!」
遠くからは小さな斑点、
模様のように見えていたそれは、
それぞれに独立した造形物が無数に作られていて、
体中を覆っていたのだ。
体の前面は人間の”鼻”だらけで、
背中側には人間の”耳”で埋め尽くされ、
その1つ1つには英字が刻印され、
個人の名前と備考までもが書かれていた。
そうこの化け猿は
人の顔パーツ専用の培養生命体。
だが、下腹部はどす黒く変容し裂けていて、
そこから内蔵をドロドロと滴らせている。
小春は、こいつは何らかの理由で
廃棄されたのだろうと直感し、
あまりのおぞましさに体中が震え、
とどめを刺すと言う勇気を奮い立たせ、
下半身に力を込め固定し、
ブレインの魔法で青白く光る部位は表面だけだったが
小春はその奥にある赤黒く見える塊を見つけ、
「気持ち悪いぃぃいいいいんじゃああああああ!!
成仏してくれー」
思いを声に薙刀を振るい、
心の底から湧き上がる憎悪と、
執念を晴らすように貫き抉っていた、
初めての武器に戸惑い、
力が入りすぎすっ転び、
屁垂れた状態になっていたが、
グガァアアアアアアアアーギャアアアアー
絶命の声と共に魔物は消滅し、
咲き始めた花々も消え始め、
小春の目覚めた能力は、
除霊する波多野の代わりに携える武器で留めを刺す、
戦士の役目のようだった。
「あぁ…終わった?終わったの?し、しんどい…
しんどい…しんどい…ハァハァハァ」
ドッと疲れが出て薙刀を持ち直し立ち上がる小春。
目の前にドローンが飛び一部始終を録画し、
魔法武器が消えると、
皆が小春の前に集まり、
戦士は戦士を労い留めを刺した者に祝福を与え、
喜びを分かち合うものなのだと、
「あんたがあの魔物を消し去ったんだ」
ヤモトが言うと、
「うん。すーって消えてったね」
ガウが話し、
「これはもう強力なメンバー候補!
ぜぇーひ入って欲しいていうかもう仲間!」
ブレインが話すと、
「もしかしてこの人、純エルフの子孫?
目は茶色だけど」
ロッグスが彼女を見て言い、
「同じ匂いがする~蛇花の香り。
あなたもそうなんですね~」
コハコは匂いを嗅ぎ分け、
小春には人懐っこい彼らが
喜んでいるのがとても嬉しくて涙ぐみ、
「今なら特別加入可能!
モンスターハンターになってしまった。
ラスト・スタンドへようこそ?」
言葉は当然理解出来なかったが、
ヤモトはそう言っていた。
『さーこれからが大変。
彼らもあなたも私も小春さんも全員が、
パッとここから居なくなる事が望ましいのです…
ありとあらゆる場所から、
テレビカメラや何もかもが
こちらに向けられてて、
ここから逃げないと
とんでもない騒動になります』
イドも原田もどうしようもないと
諦めモードに入っていると、
「出来ませんか?
全員透明になるとかそーいう魔法。
回りを見てあんな人だかり、
私たちは今度は彼らに追われる、
次の敵は彼らなのー!
お願い分かってー!」
小春は立ち上がり
必死に身振り手振りで訴えていると、
そんな事は初めから分かっていたようにヤモトは、
「すごい黒山の人だかり…
また大勢に絡まれてカシャカシャやられたら
たまったものじゃない。
なんとかしてくれブレイン」
ヤモトに言われ、
「インビジブル!」
すると彼らはパッと消えたが、
「ん~~透明か!
凄いなーこんな事まで出来るようになったのかー
でも、透明はまずい、
全員透明はかなりまずいよ
誰も何も見えなくなる。
全員その場から動くなよー
ブレイン。
次なんか唱えてみよぅー」
またリーダーに言われ、
「そうだな、
回りの意識から切り離すのがいいな。
こんな名称の魔法は無いから適当に」
何かを唱え始めると、
彼らは回りに居る人々の目から突然消えてしまい、
ざわめきが起こっていたが、
「あのね付いて来て、
私に付いて来て、
あー、わたしとーあっち、
あっちに行こうー」
小春はメンバー同士手を取らせると、
先頭のヤモトの手を引っ張り歩き出すと、
「あー付いて来いって言ってるかな?」
コハコが言うと、
皆理解したように歩き出していた。
「あー良かった小春さん大活躍ですね。
どこか良い所がありますか?」
汗だくの原田が小春に駆け寄り話すと、
「はい。
このまま私の別荘へ行こうかと、
避暑地だから魔物が来ても
街のような被害は少ないというか、
蛇を持つ3人は、
隔離したほうがいいのかもしれません…」
「それは私も考えてました。
3人?」
「あの角兜の女の子が花をここに」
小春はコメカミを指している。
「あぁドワーフの彼女も蛇を、
名前はコハコさん。
名前はもうバッチリ分かりましたから全員教えますね」
原田から全員の名を教わる小春は、
自分の使命を認識はしたが、
『こ、こんな事続けられる訳無い…恐ろしすぎる…』
まだまだ手足が震えるままに恐怖していた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
▼場面は異界へ戻り
「それで消えたと言うのか?」
トオビンは、
鋭意構築中のホムンクルス製造機の
置かれるテラスに設営した
テント内に急ごしらえの研究室を作り、
中で兵隊の指揮官と話している。
「はい。
忽然と我らの前からです。
後には奴らを縛っていた縄と
奪っておいた2~3の品。
これらが残りました」
指揮官は大事な物だと思われる物だけを、
書斎机の上に並べ提示していた。
「縄抜けして、
瞬間移動…馬鹿な…
瞬間移動の魔法など
この世に詠唱出来る者など居ない。
あるのはノオミのスクロールのみ。
精神魔法のその場で消えたように
見せかける幻影でもない。
お前たちはその魔法に対処出来るよう
訓練と合わせて
兜に遮蔽板が仕込まれている、
一兵卒ならまだ分かるだが全員と、
屈強な指揮官までもが惑わされるなどあり得ん。
じゃーなんだ…匂いは?
詠唱された異質な魔法の残り香は
残って無かったのか?」
「はい…
残念ながら我らが知る魔法とは
別の何かかもしれません…」
「それでこれらが戦利品と言う訳だな?
…これはなんだ。
精査は済んだのか?」
「薬瓶は劇薬で、
かゆみを発生させる
その場しのぎの撹乱用で、
あと問題は…
誰もこんな物を見た者はおらず困惑したままで、
申し訳ありません…
それで奴を自白魔法で追い込みましたが、
本当に何も知らないと判断しました。
消えた奴らの事も何も…」
「森にたまたま通りすがった
魔神のような力の何者かが奴らを助けた…
とでも?
わはははは。
そんな馬鹿な、
この世界での魔神はノオミだけだ!
しかし実際に事実として…
むぅうううう」
豪華な椅子に深々と座り直し
トオビンは深いため息を吐き、
それをじっくりと見つめていると、
指揮官は
配下の白衣の学者風の男に目配せすると、
白衣の男はボールペンを
幾つかのパーツに分解し、
机に並べ、
そして再び元の形に戻して見せた。
「おぉほぅ。
面白いおもしろいぞ
なんなんだこれはー。
益々訳が分からなくなった。
中の芯に黒いのがある、
これの成分は?」
「まるで不明です。
科学班にも特定出来ぬ物としか…
ですが、
毒性も無く先端は尖って見えますが、
武器では有りません」
指揮官が答えると、
トオビンは立ち上がり、
跪かされているカジキの下へ行き、
ボールペンからキャップを抜くと、
「お前がこの精巧に作られた、
我が国にも無い技術の工芸品の様なこれの事も、
仲間が消えた事も知らぬと言うのは
よーく理解したが、
困るのだ。
お前の全員をノオミの素材にすると約束したのだ。
だからなんでも良い思い出せ!」
「ぐぁっ!
うぐっぅーぎゃああー」
トオビンはカジキの体を、
ボールペンの先端でブスブス刺しはじめると、
「ん?」
その血の滲む傷跡に黒い跡が残る事に気づき、
書斎に置かれたメモ用紙に、
ボールペンを走らせた。
「…な、なんだこれは」
すると先端から黒い線が出現し
思うような形が描けてしまい、
「こ、こ、これは、
ただの筆記用具では無いのか?!
おい猫目言え、
これは私らの住む世界の物ではない!
お前みたいな毛むくじゃらは置いていかれ
あとの仲間は別の世界へ逃げた。
そうなんだな!!」
トオビンは、
ただの筆記用具の壮大な秘密を解き明かし喜び、
逃亡先にも目星を付けたが、
「だが行く方法は…」
謎は深まりイライラが募り、
カジキの右肩にボールペンを
「ぐがぁあああああああー!」
深々と刺し引き抜くと、
「連れいて行け!」
その筆記用具を恨めしい目で見るカジキは、
兵士に連行されて行った。
「これは魔法の所業ではない…
体に密着する縄が結われたままで残されている…
これは通常あり得ない事…
魔法の力とは異質なもっと強力な…
そして金属製の拘束具でがんじがらめの
猫人間だけが残った…
何か関係があるのか…」
そしてトオビンは、
ボールペンを引き出しにしまった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
▼場面は現代へ
ほぼ全てのメディアが、
緊急速報としてニュースにし、
新聞は号外を刷り配り、
数時間前に、
SNSでも話題をかっさらった。
謎のコスプレ集団の大立ち回り。
世界中から関連動画へのアクセスは凄まじく、
総ビュー数は回り続け、
2億回近くになっており、
警視庁の公式発表によると
「ラストスタンド」の面々は、
高火力重火器もしくは
それに類する物を装備した、
超過激派戦闘集団であり、
テロリストとして認定し、
広域捜査を開始していた。
「あぁ遂に来た…
私たちの顔や名前は?」
小春は携帯でニュースを見て話し、
「今の所彼らの事だけのようですが、
私の顔も小春さんも動画に写ってますから、
すぐ身バレします…
はぁ…
奥さんゴメン…」
原田はがっくりと項垂れたが、
すぐ顔を上げ、
「後ろから付いて来てるカメラマンさん。
あの人はこの状況に
平気な人なんですか?」
「撮ったのあんたの手柄で良いよと言う条件に
飛び付いて来たし、
マンモス校。
始まりの事件でカメラマンしてた当事者だし、
今は事件のせいでマスコミに追われ、
自宅待機だし、
プロ根性の塊だから平気?」
ロケバスを調達し運転する小春は答え、
背後からカメラマンの男が運転する、
ミニバンも追従しているが、
その背後からももう1台、
4WDの大型車両も
追従してるようにも見えていた。
「あぁなら仲間で良いんですね。
良かった」
「それでお医者さんはどうするんです…」
小春に聞かれ、
「なんとか部隊の懇意な医師に
頼むつもりだったんですが、
私が犯罪者の1人になったら…
自分の部隊に入る事さえ
困難になります…」
原田は答えに窮していた。
「そうですか…それで、
別荘まで数時間かかります。
この間に彼らと、
コミニュケーション取る方法考えましょう…
厳しいだろうけど」
「私はイド君とは思念で繋がれます。
でも普段のイド君は
ペットの様な状態で、
彼らと会話も
意思表示すら出来ませんが、
精神の中ではまるで
大人の様な振るまいと、
あちら側の世界の知識を持ってる人。
イド君が彼らと
話せるようになるかで未来が決まる…」
「大魔王様に願い事をするには、
心臓が必要なんですよね?
自身の…ふざけるなー!ですね…」
小春のコメカミに血管が浮きあがっていた。
『原田さん』
イドが話しかけてきた。
『はい』
『心臓は何でも良いんですよ?
持ち主が生きていれば、
私たちがこっちへ来れたのは、
生きた兎を差し出したからです』
『うぅ?兎?
でも、願いの主の物が1番効果的…
「でも別になんでもよい」
んんんんあぁああああああああ!!
そーかー自分の心臓の衝撃がでかすぎて、
聞いていたのに…
ありがとうイド君。
だったら鶏でも蛙でもいいのかな?』
『そうなりますが、
効き方に寄るとしたらここはせめて鶏?
蛙よりは』
「今、イド君から打開策の1つを
知らされました。
心臓は動物の物でもなんで良いと
分かりました。
これで魔王の庭の彼らを
管理人の層へ送れるけど…
ただの考察に願い事は…
出来ない…
ましてや自分の心臓など」
彼らが小春の避暑地である別荘に
逃げ込もうとしている時、
とある大学病院で奇跡が起こり始めていた。
「あのねーおばーちゃん」
「はい?」
「ステージ3だった癌がね、
すごいんよ消えてるんよ。
おばーちゃん何したの?
もうちょっと調べるけど。
寛解しとるんよ!」
耳の遠いお婆さんは医師に、
症状を告げられていた。
「んーー?
ご飯はさっき食べましたよ?
ひじきと、納豆と、
チーズの入った玉子焼きと、
味噌汁とごはん」
「すごいねーその年でご飯いっぱい食べたから
治ったのかなー
いやはやこれは奇跡だ」
医師はお婆さんの
スキャン映像を見ながら
人生に1度あるか無いかの出来事に困惑し、
原田の住まう団地で起きた災害で、
栗山の癒やしを浴びた人々の中に
深刻な病気を抱えてる者たちも居て、
福音を与えた栗山。
癌が消滅したお婆さんが1人。
いきなり骨折が治った者が1人。
重度の糖尿病患者の壊疽した足が
健康な状態に戻った者が1人。
傷ついた網膜が修復され
目が見えるようになった子供が1人。
その他、
あの場に居合わせ受けてしまった傷が
あっと言う間に治った者多数。
この一連の出来事は、
災害の日に見えた
光の奇跡。
と呼ばれ始め、
密やかに世間に拡散され始めていった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
▼場面は異界へ
「この暗闇ステージを突破したら、
さっきの神経衰弱の間に
行けるようになるのかな?」
栗山が言うと、
「枝葉みたいに別れていて、
一方通行のステージが次から次へとかも」
波多野は答え、
「次は扉が3個とかになって…」
愛里が言い、
「どんどん扉だらけに…」
闇のステージで次の1歩を進めた時、
「くっ!」
「はぁ…」
「きっついなぁ…」
彼らはまた入口に引き戻されていたが、
「ぁ?!」
唐突に背後を見つめる愛里。
「どうされました?」
「どうしたの愛里さん」
「今、誰かの視線を感じて…」
「えぇ!」
「どこどこどこ?」
異世界からこちらを見る
ヤモトの視線かどうかは謎だったが、
愛里は自分たち以外の
何者かの存在を察知し始めていた。
この物語は下記noteで先行掲載しています。
小説はこれしかありませんが他には短い物語やパロディなど多々ありますので良かったらどうぞ。
note猫夢アトニマス
https://note.com/clear_swift8618
*面白かったらぜひスキやチップで応援を宜しくお願いします。




