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「アウトランド:異界と女優と魔女と剣とホムンクルスと魔王」  作者: 猫夢アトニマス


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12/13

11-2・異界から異世界への誘い

前回までのあらすじ。

 魔王の庭で古いRPGゲームを攻略するような感覚に戸惑うも、

進化する魔法と共に歩みは止めず、

原田は1人愛里たちに魔王の庭から逃げろと伝える術がなく行き詰まり、

異界のボンの塞がれた目を開こうとする仲間たちだが、

目には生体爆弾の安全装置が仕込まれておりボンは、

危険を知らせる術がなく逃げ出し、

ノオミは人の形は成して居なかったが生き永らえており、

下僕のトオビンの手で組成装置に入れられ完全体に成ろうとしていた。

「腕に蛇は居ますか?」

 原田が聞くと、

「聞いた所によると私の精神を解き放つ時、

一緒に消えたって言われたし、

居ないと思います。

原田さんと会って話せないのが残念ですが、

出来れば常に同行して記録を納めたいのです」

 角に機材の詰まったダッフルバッグが置かれ、

VIP待遇の豪華な病院の個室で話している小春。

「それは危険すぎます。

この蛇は魔物を呼び寄せます。

妻にきちんと同意を得る間もなく襲われて…

無理に納得させてる状態で、

今、彼ら救世主は居ません。

何が起こってもどうにもなりません。

実体の無い物にどんな殺傷兵器も対処出来ない…

見えない敵には…」

「実体化さえしてくれたら

あなた達自衛隊の出番…

それでこれから、

どうされるつもりなんですか?」

「今居るビジホからイド君と魔王様、

他にも誰かが反応してくれるまで思念を送り続けます」

「あぁ、なんでその能力が私にも無いのか、

一切何も覚えてないのですが、

遠い過去に私も魔法に触れた事があるとも教えられたし、

素養はあるはずなんです」

 個室をイライラと歩き回り、

タバコが吸いたいような手つきをする小春。

「…あの3人には初めから関わる人間が、

魔法か何かに関与してると、

分かっているのかもしれません。

運命の糸を辿ってるみたいな…

詩的過ぎかな」

「原田さんの2匹の使役たちの話も凄いです…

GPSは分かるようにしておきます

そちらも設定を…

そして今は何も起きない事だけ祈ってます。

連絡はいつでも、

何時でも本当にお気を付けて」

「話せて良かった。

1人でも仲間が居ると居ないとでは…

はい、ありがとう」

 会話を終えた2人はそっと携帯をテーブルに置き、

「(恐ろし過ぎる魔女の宿命…

救世主が一変し悪の権化…

人類最大の敵が愛里ちゃんに?!

ぁぁああもうこれ以上やめてーまた殻に閉じこもりそう…)」

 小春は布団を頭から被りふて寝するしかなかった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「(絶望の赤い玉座…

願い事を叶える生きたままの私の心臓…)」

ふぅううー

  原田もまんじりとも出来ず深く深く息を吸い、

深く深く深く吐き坐禅を組み思念を発信していった。

『私は原田。

あなたと同じ能力者。

魔物から世界を守る仲間を探している。

この声に何か感じたら思念を送り返して。

私は原田あなたと同じ能力者……

ナナ、ハチ元気でやってるか?

お前たちと離れたのは初めてで、

なんか心に穴がぽっかり…

私は結局お前らに守られ

ずっと癒やされていたんだと、

つくづく感じる…ぞ』

 原田は二匹の狛犬に思いを馳せてしまい、

いつのまにか寝落ちしてしまうと、

シュオンシュオンシュォオオオオーーン…。

 部屋の狭い玄関スペースに

どす黒い渦が湧き起こり、

小春の部屋には蛇がたくさんの花を咲かせ始め、

異界からの魔は

2ヵ所同時に発生しようとしている。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 トオビン家の私設警護隊は純然たる戦闘集団。

身寄りがなくグラッセル家に里子に出された子や養子に迎え入れられ、

子供の頃から戦闘訓練され当家の者だけが使える兵隊たち。

顔を見るとまだ幼く見える者も居るが

目はギラギラしていて、

近年ろくな命令もなく屋敷の小間使な彼らは血に飢えそれらは今、

ラストスタンドのキャンプを包囲すると

暫く様子を見て皆がホムンクルスを追い出払った好機に、

魔法使いだと調査済みの男を、

横の手下1人に俺に続けと指で指示する指揮官。

「な、なんだーグワーッ」

 不意打ちに驚くブレインは

背後から猿轡さるぐつわされ魔法詠唱を封じられると、

それでも抗い腰のポーチに手を、

あの毒瓶に伸ばそうとするが、

手を背後にねじ上げた兵士が抜いたショートソードが

振りかざされ、

いきなり刺されそうになっていた。

「止めろ!

命令に無い事をするな、

こいつらは貴重な素材だ」

 挙げられたショートソードを抑える、

13名の兵隊のうち1人だけ

着てる鎧装束の形や色の違う指揮官に言われ、

「ぅ…も、申し訳ありませんつい」

 剣を鞘に収める若い兵士。

「暗視の2人は囮役2人と伴いカジキを探せ。

奴が1番厄介だが捕獲すれば

他の連中は簡単に確保できる。

一兵卒はキャンプにある物資から危険な物と

使えそうな物を分けておけ。

それと魔法使いのポーチは厳重に保管だ。

何か使おうとしたから危険な物が入ってるはず。

残りは~」

 指揮官は他にも諸々の指示をし、

統率が取れ静かに動き出す兵士たち、

ブレインは兵士たちが乗って来た馬を

隠すように置かれた

森の端に連れて行かれ

木に縄できつく縛られ、

身動きが取れない。


「ぐぅううううううるるるるるー」

「ボムちゃんどうしたの?

怖かったのならごめんね。

一緒に帰りましょーねー」

 コハコが木の上で隠れるようなボムを見つけていた。

「これどこから持って来たんだーちゃんと返すから帰ろうぜ~」

 カタナを持ち振りながら木をゆっくりと登り

注意を引くロッグス。

「ほら兎取って来たぞ腹減っただろう?

まだ生きてるのも居るからお前のペットにどうだ?

可愛いぞー飽きたら食える」

 ガウの持つ刈った兎数匹のうち一匹だけが

まだ生きておりバタついている。

「ここに居たかーふぅ~

手間かけさせるな。

さっさと降りてこいボム!」

 ヤモトも息を切らしやって来て説得するが、

「がぅううううううう!」

 ずっと唸り続けているボム。

「どうしたの?

なんでご機嫌斜めなのー

目から糸抜いたの怒ってるんだよな?

すまん本当にすまないー悪かったけど

皆の善意なんだぞ?

まだもう片方も抜かないと、

お目々はちゃんと見えませんよーてかお前、

右目はどうだ見えてるか?

いろいろ調べたいからさーおいで早くおいで、

さーここへ」

 ヤモトも困り顔で手を差し伸べ、

抱き止めるから飛べと誘っている。

「カジキはまだか?

奴が居ないと降りて来ないかもよ。

俺先に兎捌いてご飯の仕込みしとくよ。

じゃーがんばってー」

 こんなに人は要らないだろうとガウはさっさと帰って行き、

「まぁいい。

久しぶりの兎だからシチューがいいぞー」

 聞こえるように大声のヤモトは、

「さぁボムくん帰ろうねー

俺たちお腹が空いてきてるんだ。

お腹が空くとイライラするし、

きつい事言いそうだけど

君にも美味しい兎がまってるから」

 説得を続けるが、

「がんばれーヤモトー」

「リーダーとしてのふんばりドコロだぞー」

 コハコもロッグスもヤモトの様子を

太い木の枝に2人座って見ている。

「ご両人、捕まえて降りて来てくれないか?」

「怖いことやらすな」

 ロッグスが言う。

「ここでドカンとかやだもん」

 コハコがそう言うと、

「もっと優しく丁重に扱えって

ボンちゃんがぁー言ってます。

なんとなくそう感じますぞー」

 ロッグスに言われ、

ヤモトは2人に暗に抗議されてるのだと分かった。

「丁寧に扱ってるだろー虐めたりは絶対してないけど、

こいつ怖いし人間じゃないんだってー

怖くないのかよーあんたら」

 ヤモトが言うと、

「怖くない事はないけど、

ヤモトーよーく考えてー」

 嫁が言うと、

「そうだそうだーもっと考えろー」

 擁護する旦那。

「なっなんだってー何言ってる!

ずっと考えてるんだ俺はずっとずっとでも

お先真っ暗じゃん…

これ以上何を考えれば」

 ヤモトが言うと、

「そんな事皆知ってる。

それはそれとして、

なぜボンがここに居るのか答えられる?」

 コハコが続ける。

「お前らが連れて来ちゃったからだろ無理やり」

 ヤモトが思ってることを言ったまでだが、

「ブブー」

 口を尖らせロッグスのブーイング。

「はぁ何も判ってませんねーボンちゃんは、

自分からこのパーティーに付いて来てるんだよー」

 コハコが言う、

「始めはただの木偶人形。

でも今は?」

 ロッグスが言い、

「逃げ出して木の上で怒ってるかもしれない人造人間」

 ヤモトは冗談とかではなく素でそう話したが、

「怒ってるかどうかは判らないけど…

今は自由なのに私たちから離れないでしょ?

ラストスタンドが心地よいからだよ…」

 コハコは答えた。

「そーそーボムはもうわしらの立派な仲間なんだよ」

 ロッグスもそう思っていたらしかった。

「だから最終兵器なんて言わないで!

仲間を破滅させないでー」

 コハコの思いが静寂に染み渡って行く。

「破滅…ぅうそうか…

分かる君らの気持ちはでも…

やっぱりそいつは歩く爆弾。

爆破のさせ方さえ分かれば

ノオミだろうが何だろうが

迎え討って壊滅させられる事に変わりない…

ていうか俺の一存で

何かを強制しようなどと思ってないし、

やらない。

リーダーとか誰かに代わってもらっていい、

最悪抜けろと言われても

お前らがそう思うなら従うでも…

今は絶対抜けない!

お前たちと乗り越えないといけない試練なんだ!

チャンスはまだあると信じてるし、

頭の片隅に小さな光がちょびっと見えてる…」

 ヤモトの言葉に感動しているコハコ。

ドンッ!

 ロッグスは感動のあまりバランスを崩し

地面に落ちてしまっていた。

「うんうん仲間だもん、

色々言い合ってなんぼだよね。

でもボンちゃんと会話が成り立ったら

歩く爆弾発言は止めてくれる?」

「……コハさんそれは…

まさかボンから爆弾を抜く事も模索するって事か?

おいおいそれはさすがに無茶…

ノオミの範疇だぞ…」

「うん分かってる…

でもね最期に1つだけ…

この子には幾らかでも人が混じってて

本当にただの人間の子供なの…

私の心がそう言っているの」

 ボンを正式な仲間として認めさせたいコハコと

ヤモトの確執が目に見え始め、

「ガウルルルルルル!

『ダメだ僕の残りの目に触るな

ここが爆発の第一段階安全装置なんだ!

ヤメロー』」

 今の状態は彼らにとってボンは、

ただ怒ってるとしか見えてないが、

心の中で警告を発しているが誰にも届かず、

『ま、魔王様聞いて下さい!

僕を今だけ原田さんの下へ送って下さい。

実体として異世界へ行かせてください!

彼とならまともに話し合えます。

精神の魔王様どうか僕の声を聞いてください!』

 ボムことイドは精神を病んだ魔王様に必死で願っていた。

その瞳に仕込まれた装置をメンバーにも誰にも

知られてはならないからだ。

ここから遠く離れ逃げる事も出来たが、

離れても一緒に居ても彼らを思う気持ちが同じなら、

メンバーたちの心の底にある優しい感情を持つ人々を、

なんとかして助けたいと踏み留まらせていたのだ。

『僕の目から装置を外せる人が

あちらの世界に必ず居るはずです。

魔王様お願いです。

声を聞いて!』

 イドの声は届かない。

「まぁとにかくボムくん。

そこに居たいなら居なさい俺もそこ行くよいいかな?

あーちょっと君たち二人きりにしてくれ。

ありがとう」

 ヤモトは木に登ると、

「あいよ」

「仲良くなってね」

 夫婦はそそくさとその場を後にした。


「(な、なんだあいつら!)」

 カジキは木々を飛び交いながら前方に、

黒装束で剣を携えている者が2人森を隠れ歩く姿を見つけ、

「(安全確保し合って移動してる。

これは手練れだついに追手が?!)」

 その動きが修練を積んだ者だと直感し、

「(1人なら強襲出来るが…

奴を先に麻痺矢でいけるか?)」

プッ!

 暫く岩場に身を隠したように様子を伺っている1人を、

吹き矢に仕込んだ麻痺矢で瞬間硬直させると、

その様子に助けに向かったもう一人を、

高所から飛び付き羽交い締めに

地面に押し倒し刃を喉元に当て、

「何者だ?!」

 聞こうとしたが背後からの新手の2人に

見事な連携プレイで取り押さえられてしまっていた。

「くっそーお前ら何もんだーノオミの手下か?!」

「ノオミ様と言え」

「追手かー他の仲間はどうした?

殺したのか!」

「お前ら全員素材ヒヒヒ」

「お前もそうなるけどなグフフッ」

「痺れ薬すごい威力だな、

あいつ連れて行くのは後だ」

 痺れ倒れてる男は放おって置かれ、

カジキは逃亡防止の為に作られた

金属製の枷で首と手足を繋がれ、

奴隷か罪人のように歩かされて行くと、

ブレインと同じ場所で放されていた。

「まだ2人。望みはある…」

 カジキはブレインに言うと、

彼は頷き袖に咄嗟に隠したボールペンを、

カジキに頑張って体制を変え渡し、

幸いここに見張りはおらず、

「これはなんだ?」

 現物を触る事しか出来ずブレインの口も塞がれ、

何も分からなかったが

先端が鋭利だと分かったが、

「先端はさほど鋭利ではなく…丸い?

これは武器ではない…

なんでもいいありがとう」

 袖中にある秘密のポケットになんとか仕舞い込んでいた。


 ガウがキャンプに近づくと、

火力の有り過ぎる焚き火に真っ先に目が行き、

「キャンプファイヤーかよ。

ブレインはどこだ…

あれ?」

 そして何かがおかしい事に気づき、

「あれあれあれ~

生きた兎が、

出来の悪い木の人形になってる~

なんだこれー」

ガンッ!

 そう思っていると後頭部を殴打され

気絶させられたガウ。

「こいつらちょろ過ぎるこれが

名うてのダンジョンハンター?

ド素人集団だなブハハハ」

 そして確保人置き場は3名となり、

「まだまだまだーあと3名残ってるぞー」

 カジキの空元気。

ブレインは額から血を流し拘束されたガウを、

痛々しそうに見つめ安否を心配していた。


「他の連中はまだ帰って来ないのか?

居場所の特定もまだなのか!

お前らそれでも手練れか

トオビン様に申し訳が立たない!」

 指揮官は苛立ち自ら捜索に出ると、

まずガウがやって来た方角へ

ほぼ全員で進んで行った。


「あぁあああああああー

メット忘れたー

わわわわ~~

戻ります~

すぐ戻って来ます~」

 ロッグスは頭を触るとそれは無かった。

「旦那さまーもういいんじゃないです?

その秘密」

「えぇええそんな事言わないで~奥さん。

ずっと被ってるから

無いと気になり過ぎて

風邪引いちまうよー」

 また泣いているロッグス。

「まったくなんでそんな賭けやったのかですねー」

 奥さんに言われ、

「男同士の賭けに理由なんか無いです。

わしはヤモトに負けたから

罰の入れ墨をここに入れたでも、

相当酔っ払ってたけど…」

 ロッグスは引き返そうとしたが

コハコが自分の兜を彼に差し出し、

「とりあえずこれ使ってー」

 額にキスされ兜を被せられたロッグスは嬉しくて、

奥さんと熱いハグを交わすと、

周りに黒い壁がそそり立ち、

ギラつく刃が2人を中心に

360度方向から突き出されていた。

「あぁあああああなんだこいつらー

ノオミの手下?!」

「ノオミ様だ!」

 回りを取り囲まれてしまい2人は

すぐ両手を上げ降参し、

ロッグスは瞬間メットの角を握り

反撃のチャンスを伺おうとしたが、

コハコにたしなめられ

そっとその手を戻し上げ、

拘束されると2人は引き離されるように歩かされ、

残るはヤモトとボムだけとなっていた。


「なぁおいお前人間なの?

人造だけど人間なの?

そんなやばい物仕込まれて気がおかしくならないの?

コハさんはお前をとても気にしてるけど、

俺はどうも即物的な人間で、

お前みたいなのも初めてだから悪く思うなよ?

毛嫌いって分かるか?

誰かを特に好きになれない事なんだが、

これやっていると当然当人からも、

この場合お前に思いっきり嫌われるのだよ。

感情の作用反作用みたいなもんだ…

作用反作用って分かる?

テコの原理は?

んんん~俺何言ってんだ…

お前その耳ちゃんと機能してるのか?

もうハテナマークだらけでおかしくなりそうだよ。

コハさんが言う知性の目覚め、

会話が出来たら本当の不仲になる事もしかりだが、

話せないペットでも懐かれなくても可愛いし、

懐かれたらもっと可愛い。

俺はお前をペットにとか

全然そんな事は考えてないけど…

仲間にするかどうかの幾つかの決定的事項を、

ひねり出そうとここに居るのだよ。

分かってくれた?」

「ガウルルルルルー『敵だ逃げろ!』」

 先に気づいたボムが一際唸り、

心で叫んでいた。

ガサッ

「なっ?なに!!」

 茂みの奥から複数の黒装束の輩、

「おい降りて来い。

抵抗するなよ?分かるな?」

 ロッグスとコハコが彼らの前に押しやられると、

喉元にナイフ当てられており指揮官が言うと、

「(今は逃げろ!)」

 コハコもロッグスもその目は

しっかりとヤモトを見つめそう語っていたが、

シュシュシュシュルーン

 奇妙な軽やかな音をヤモトは確かに聞いたような気がしていた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ゴトンゴトンゴトンガタンゴトンガタンゴトンゴトンコ゚トン

 低く心地よい振動は音となり一定のリズムを刻み、

「うわぁあああああああああああ!」

「なななななんだー」

「ぎゃーーーー」

「なんなんだこいつらー」

 午後3時過ぎのの車両、

乗客はそんなに多くは無かったが、

それでもその車両に居合わせた人々は驚き、

ラストスタンドのメンバーたちを一斉に

携帯で写し出していた。

「なんなんだここは!

お前かお前が幻覚を見せてるのか?」

 ヤモトはボムを問い詰めたが、

ホムンクルスは唸る事を止め、

いつかの棒立ちに戻ってしまっていた。

「ヤモトーここどこー変な所来たね~

なんかこれ動いてる?」

 ガウが言い、

「おい縄が失くなってるんだ。

動けるんだここがあの世か?」

 ブレインが言い、

「おぉおおおお全員居るのか?」

 ヤモトは興奮し、

「分からん何も分からんが、

さっきからこいつら変な板こっち向けてなんかしてる」

 特にドワーフ夫妻へ向けられる熱視線。

「旦那さま~外見て見て~

風景が飛ぶように流れて行きますよ~」

 コハコが言うと、

「おぉおおー直線だらけの建物郡と、

うぉおおおおあれはなんだ!

あの空を突き抜けそうな、

でっかい塔はぁあああ~~~」

 ロッグスは東京タワーにひっくり返りそうに驚き、

「わぁああああすごーぃですー」

 コハコも真っ赤な塔に見惚れていると、

「あ。これ」

 なぜか持っている兜を

被って無いコハコに渡すヤモト。

「おぉおおそれわしの兜だよ~

ありがとーでは早速」

 被ってる兜を嫁に被せ、

彼女のを貰うとそそくさと被り、

「ママ大好き」

 超絶隠している頭頂部のツルッパゲ部分への入れ墨の文言を、

ヤモトに言われてしまい、

「言うなゴラ~~~~!!」

 皆に見られてしまい顔は真っ赤に彼は憤慨していたが、

「良いじゃん何の問題が?」

 ガウに言われ、

「でも、本当に入れるとは思ってなかったんだよな」

 つり革に捕まっているヤモトが言うと、

「プッ」

 ブレインは文言に吹き出しそうになっていた。

「うんうん~」

 コハコは座席に

窓に向かって胡座をかき、

窓にもたれ流れる風景を見ていると、

ロッグスも横に座り同じ格好の2人のその様子に、

「きゃーかわぃいいいい」

「なんだこれ人形?」

カシャカシャカシャカシャカシャカシャ

 相当数のシャッターは押され、

動画に納められていく。

「前の車両ですごいイベント始まったよ?」

「え?なになに?」

「急げ急げー」

 車内で歓声があがっていき、

異変に気づいた前後車両の客たちでごった返しになっていき、

物見客は煩わしかったが、

彼らは武器らしい武器は携行しておらず、

敵対心などは皆無の野次馬だと簡単に分かり、

着てる装束は無防備に見え生地は薄く、

色はそれぞにカラフルで清潔、

人としての栄養は行き渡っているようで、

肌の色艶もよく

貧相で下賎な輩は1人として居なかったが、

凄まじく顔色が悪く

髪がトゲトゲしく尖り、

着てる黒い服や腕輪から

小さな突起のような棘が生えた連中を魔物だと、

剣で討伐したい衝動に駆られた

ヤモトだったが、

煩いだけで無害な連中しか居ないこの場で、

剣を抜き蹴散らすことも出来ず

じっとしていると、

「(ここの連中目が茶色だ…嘘ぉまじかょ…)」

 ずっとあちらの世界では異端だと思われていた自分と、

同じ目だらけの彼らに驚きを隠せなかった。

「(ここが東の国…)」

 改めて回りの人々を見つめるヤモトだった。

「この車内吊り広告とコラボイベントですよねー?

ファンタジー世界への誘い展の、

僕も絶対行こうと思ってるんで楽しみです」

 車内の中吊りは全て

ファンタジー展覧会の広告になっていて、

「突発車内イベントとかすごいっすねー。

よく許可取れましたねー

お付のカメラマンとかどこに居るの?」

 突然この世界へやって来た彼らを

コスプレイヤーだと思っていた。

「動画アップしていいですか?」

「すげすげーライブ始めたらすげー

回転してるーうひょー」

 気さくに色んなやつらが声をかけてきて、

その吊り広告には

異界の自分らの国にある建物かと見紛える物が

メインビジュアルとして使われ、

なんとなく誇らしくもあった。

「まるで平和だ…

この軽快に動く箱?

この振動音も心地良い。

俺らこれからどうなんのヤモト。

で、ここどこ?」

 ガウに聞かれたが、

「…分かる訳ねーだろ。

だがそろそろ広いとこ行きたいぞ、

人が多すぎてくくく息苦しいぃいいい」

「魔法で壁に穴開けて飛び出るか?」

 ブレインの人酔いした目が、

左手に炎を湧き上がらせた。

「あぁああああダメダメダメーうぁあああちちちちち!」

 傍で見ていた汗だくの叔父さんが

炎を咄嗟に押さえてしまい、

「あ。ここで撃つなと?

だけどあんたダメだよ炎に直接触れたら、

子供でも分かる。大丈夫か?」

 ブレインはその手に

凍り魔法で火傷を癒やしてあげたが、

懐に忍ばせていたタバコを1本抜くと、

いきなり喫煙しはじめた。

すぅ~プカーすぅ~ふぅううううう~

 鼻からモクモク出る煙。

「ふぅーふぅーふぅー焦ったー

言葉はまるで分からないが、

癒やしてくれてありがとう…

うわぁあああああ!!!

それもダメ!」

ハァハァハァハァ

「色々身が持たない…」

 叔父さんは咥えタバコを奪い取り足でもみ消し、

怪訝な顔をする周りの人らにひたすら平謝りしている。

「あーまた怒られた。

ここでは吸うなって事か」

 ブレインはいろいろ納得し、

ラストスタンドのメンバーのうち居ないのはカジキだけ。

他は全員この異世界の電車内に立ちすくんでいたが、

イドはずっと精神のいかれた魔王様と話していた。

『魔王様ここはどこですか?

ちょっと困ってます』

『原田とやらの居場所探してたら、

動く箱が目の前に飛び込んで来て、

注意が逸れてしまったがあとは当人と話せ。

またなんかあったら心臓持って来いじゃなー』

 原田は魔王様の強烈な言葉に惑わされていて、

【心臓は願う本人の物が1番だが別になんでも構わない】

 肝心な部分を聞き飛ばしていたのだ。

悩まずとも魔王は初めからそう教えていると、

漏らさず聞いていたイドは、

ガウの生きた兎を拝借し魔王様に捧げていたのだ。

そう、そして心臓が調達できると分かった今、

魔王の庭の3人を謎の最下層へ送る事も可能になったのだが、

そのステージは精神のいかれた魔王様のただの考察であり妄想。

もし存在しなければ3人は虚無の彼方へ消えてしまうだろう…。

『あぁ原田さんそこに居たんですね。

良かった』

『はっ?あぁあああああイド君が目の前に居る!

戻って来たんだねでも、

それどころじゃないんだ渦が部屋に現れたんだ。

私は逃げてる最中ここに飛ばされて、

彼ら見た時ピンっと来たんだ。

ラストスタンドだーって』

『整理させて下さい。

あなたの言うその渦や敵とはなんですか?

何に襲われているんですか?

言葉ではなく思いを描いて』

 その時原田の携帯が鳴り、

「あぁ小春さんえぇええそっちにも異変が、

すぐ逃げて!

いや違う。

それはきっとまたあなたを助けてくれるはず。

そう思うしか…今、こちらでも

とてつもない事が起きていて

ネットで「車内異変」などで急上昇中の動画見て下さい。

異界の住人たちが、

こっちの世界で実体化してるんです。

次の駅で降りようと思ってます。

また連絡を入れます」

 携帯を切ろうとすると、

「原田さん自身がライブ配信して。

私はそれを追いかけます」

「危険です。そこに居て下さい」

 説得する原田だったが、

「あんな光景2度と見たくない…

あなたになら分かりますよね?」

 携帯は切れていた。

『イド君今小春さんからも部屋が花まみれだと連絡が、

ついに2箇所で魔物の攻撃が発生する!

愛里さんたちは居ないんだ。

あちらの人に愛里さんたちと

接触してくれるような人は居ないか?

今居る場所から逃げろと伝えて欲しいんだ』

『1人だけこちらに来れなかった者がいますが、

ごめんなさい。

会話は不可能なのです』

『あぁ終わる、

世界が終わるナナとハチも居ない奥さんも危ない!!

あぁあああぁあああああ!!!』

『原田さんその焚き火にあたって、

5数秒目を閉じて』

 パニックに成りかける原田の心に火を灯し導くイド。

『はぁはぁはぁ…

あぁごめん狼狽うろたえてしまった』

 イドが心の中に作った焚き火に触れ

落ち着きを取り戻す原田だったが、

その様子を注意深く見ていたドワーフ夫婦以外の3人、

「(俺らの中央に割って入ってるような

この人なんか目が必死、

俺らの味方?)」

 ボムと見つめ合っている叔父さんを

見てヤモトは思い、

「(棒立ちだったボムの身振り手振りが復活してる)」

 ガウが思うと、

「(もしやこの2人…魔法で会話してる??)」

 ブレインはそう感じていたが、

「(こちらの世界の何もかもが意味不明。

助けられた事には感謝しか無いがカジキは居ない…

なぜこちらの世界に飛ばされた??

透明の小さな管で暗殺道具を作ってしまう世界なのかここは…

むむむむぅ)」

 とてつもない不安に苛まれはじめていたが、

コハのコメカミの花が大きくなり、

原田の腕から蔦蛇が伸びはじめた。

「来る!敵が来る!!

イド君、敵を見破ってくれー」

『なんとか頑張ってみます!』

グギャガガガガガガガアァアア

 車両がガクンと揺れ一気に空へ舞い上がり、

前後の車両から引き千切られ、

連結部分から人々が振り落とされていく!

「あぁあああああああ!」

「ギャアアアアアアアアアー」

「うわぁあああああああ!!」

「しぬぅうううう」

 誰もが一様に死に直面した瞬間、

「レビテート!」

 ブレインは咄嗟に広範囲に魔法を唱えると、

車両の連結部から

はじき出される人たちをフワフワと浮かせ、

車両その物もゆっくりと降下させていく。

「な、なんだあれー!!」

 そしてガウが気づき、

「気色悪い渦に化け物が居る!」

 ヤモトはそれを視認し、

「わぁああなんかおっそろしいのが居ますよー」

「なんじゃなんじゃあれはなんじゃー!!」

 コハコとロッグスは安全装置が外れてしまい、

開け放たれているドアが

車両が傾き回転し天井に穴となっている所から、

フワリ外へ出ると、

ロッグスも他の連中も皆、

もっと良く見ようと、

車両の外へ出て暴れ回る、

顔が2つあり、

一方は目だらけ、

もう一方は口だらけの

化け物猿を見ている。

この物語は下記noteで先行掲載しています。

小説はこれしかありませんが他には短い物語やパロディなど多々ありますので良かったらどうぞ。

note猫夢アトニマス

https://note.com/clear_swift8618

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