ゲート、解放
地獄のような鍛錬と魔族出現の報告を受け続けること数ヶ月、立派に成長した騎士団がついにその力を振るう時が来た!
本格的な魔族との戦いの行く末やいかに…!
あれから数ヶ月。
魔族とのいざこざが増えたおかげもあり、志願兵達が集結したおかげで騎士団は第一から第四までの一つ一つが国一つ分の戦闘能力を誇る集団となった。
ルーヴェリアの鬼のような鍛錬のおかげか、死ぬことを恐れない、だが生に執着心を持つ屈強なる兵士、いや騎士達が謁見の間に整列している。
その人数は全体で概ね8万。
各騎士団に歩兵、騎兵、魔術兵、救護班が揃っている。
各騎士団の前には、それぞれの騎士団長が立っており、国王の立ち上がる動作に合わせて、全員が膝をついた。
国王「帝国領で大規模なゲートの開放が確認された。進軍先はラシェクス小国。アルゼト小国と我が国サフラニアに救援要請があった。これを、第一騎士団に行ってもらいたい。
万が一の奇襲に備え、第二騎士団はネポス山、ケレテス山脈に駐屯し、奇襲をかけてくる魔族がいたら速やかに殲滅せよ。尚、第三、第四騎士団は我が国の防衛に専念。以上である」
騎士団長四人は更に頭を下げ声を揃えて応じる。
──拝命いたしました──
騎士団長を先頭に、玉座の間を去っていく騎士団達の背中は逞しく、頼り甲斐のある雰囲気を醸し出している。数年前とは比べ物にならないほど、彼らは強くなった。
国王は誇らしげにその背を見送る。
正門の前に整列した彼らの方を向き、アドニスとルーヴェリアは大まかな指示をあらかじめ出しておいた。
アドニス「これより、ケレテス山脈を超えてラシェクス小国の防衛戦へ向かう。ラシェクス小国軍正面から迎え撃ち、アルゼト小国軍が魔族を背後より挟撃、我々はその横っ腹から蹂躙する」
ルーヴェリア「駐屯地は山岳地帯の登頂部付近。戦線が確認できたなら、魔術師団による遠距離攻撃にて支援する」
それでは総員
ルーヴェリア・アドニス「進軍開始!!」
いち早く目的地に辿り着けるよう、一歩一歩確実に歩くのではなく、足を揃えて走り始める騎士達。
並大抵の人間ではなくなってしまったがために、このまま山越えして戦闘に入るくらい造作もない距離である。
ルーヴェリア「先駆けし戦況確認を行います。単騎行動となりますが私が死ぬことはありませんのでご安心を」
ルーヴェリアはアドニスにそう言葉を残すと、馬を降り、消え去ってしまった。
彼女の脚力は走らせた馬より速い。
アドニス「返答する前にいかないでほしいけどな…」
まあいいか、とルーヴェリアの馬の手綱も引きながら行軍を進める。
数分後、魔道具を通して彼女から戦況報告が届いた。
──現在ネポス山山頂より戦況確認中。戦線は膠着状態。敵は中型の魔獣が200程度、その他小型の下級魔族が800。小規模のため別働隊があると予測。捜索を開始します。
どうやらその規模なら問題ないだろう。
そもそも帝国領側からラシェクス小国に至るには、マイアコス大海に繋がる大きめの川を越える必要がある。魔術弾で一方的に防衛線を張れれば、防備は十分。合間に遠距離攻撃を入れれば戦線は膠着状態に持っていくことなど容易い。
気になるのは別働隊の存在だ。
ルーヴェリアより再び報告が入る。
──待機中のアルゼト小国軍が進軍開始、直後、ワイバーン300の群に足止めされている模様。別働隊は、そのワイバーンに加え食屍鬼が200程度と思われます。急ぎ別働隊を叩く必要があるため、ケレテス山脈を早々に突っ切ってください。
アドニス「みんな!少し速度上げてくれ、ちょっと急いでアルゼト小国軍に合流を急ぐぞ!」
騎士達は声を揃えて返事をすると、走る速度を上げていく。
山岳の傾斜など、撤退練習で登らされた砦より緩やかなものだ。造作もない。
普通なら最短でも丸一日はかかるが、数時間もあれば十分だ。
登頂部で一度足を止め、アドニスもその目で戦況を確認する。
アドニス「戦線はあれだな……よし魔導部隊、遠距離攻撃部隊はワイバーンを叩き落としてくれ!他部隊は僕と一緒に最速下山、魔族のどてっ腹に風穴空けるぞ!!」
魔導部隊は呪文の詠唱を始めた。
複数人で行われているもので、威力はかなり高いものになるだろう。
ワイバーンなら鱗もそこまで硬くはないので、これだけで撃墜、撃破までいけるはずだ。
弓兵達は矢を番え、先端に威力上昇の魔術を施す。
魔術の発動と同時に放つ算段だろう。
そして。
アドニス「突撃開始!!」
アドニスは歩兵と騎兵を率いて山岳から降って行き、戦線到着と同時に声を張り上げる。
アドニス「サフラニア王国第一騎士団!!これよりアルゼト小国軍の援護に回る!!」
突如として真横から現れた新手に、食屍鬼達は一瞬たじろぐも、すぐにこちらへ襲いかかってきた。
鋭い爪を振り上げ下ろしてくるも、騎士達は容易くそれを跳ね除け、胴を一刀両断にする。
アルゼト軍兵士「つ、強え…」
ワイバーンの中でも一際大きい個体が、馬から降りて食屍鬼を薙ぎ倒し始めたアドニスに狙いを定めた。急降下を始める直前。
アドニス「魔導防衛を上空に展開せよ!」
掛け声と同時にその場に居た騎士達が自分やアルゼト小国軍の上空に防衛魔術を展開する。
同時に、上空高くに大きく展開した魔法円から無数の光矢が放たれ、ワイバーン達を叩きのめしていった。
物理的な矢も、魔力が込められているおかげか魔術防衛をすり抜けて味方に当たることもない。
アドニスは積み上がる魔族の死骸を足場に、未だ落とされていないワイバーン達の首を切り落としていった。
ルーヴェリアから戦況報告が入る。
──敵別働隊壊滅。残党はアルゼト小国軍のみで対応可能と判断。ラシェクス方面へ進軍を。
アドニスは一つ頷くと騎士団に指示を出す。
アドニス「このままラシェクス小国軍を襲撃している魔族を討つ!行くぞ!」
待機させていた馬に乗り、即刻走らせる。
山岳内に待機中の魔導部隊、弓兵らには伝言を走らせた。
到着と同時に合図を送るため、速攻で魔導と弓により強襲をかけろ、とのことだ。
アルゼト兵(お、俺ら、行く意味あるかなこれ…)
食屍鬼1体に3人がかりがやっとの自分達は、騎士団の強さに圧倒されてしまい、彼らの背を見送ることしかできない。
それでも。
アルゼト将軍「我々は友好国の援護に向かうのだ!各位残党を処理しつつ、前進!!」
号令がかかり、騎士団に続いて進軍を開始した。
ラシェクス防衛戦線、マイアコス大海端小国側。
ラシェクス防衛隊長「魔導兵、弓兵、構え!」
号令に合わせて詠唱が始まる。
ラシェクス防衛隊長「放てええ!」
無数の矢、数多の光矢が前進してくる小物達を射止めていく。
渡川に苦労するような小型の魔獣は、泳いでいる間にそれで沈められていく。
しかし中型の魔獣は、矢を受けようがお構いなしに突っ込んできて渡川を始めた。
向こう岸では、盾を構えた歩兵達が槍を片手に待ち構えている。
ラシェクス防衛隊長「魔獣は首を落とすか心臓を狙え!一撃で沈めてやれ!」
兵士達が固唾を飲んで覚悟を決めた時、敵陣後方から爆炎が上がった。
アドニスが声の限りを尽くしてラシェクス防衛隊に伝える。
アドニス「サフラニア王国第一騎士団!!これより援護を開始する!!!」
いつぞやの鍛錬で魔獣とはこんなものだとルーヴェリアが幻影を見せてくれたおかげで、初対面でもそんなに印象が強いとは感じない。
確かに体は大きく、爪も牙も強靭ではあるが、防衛隊の攻撃で弱っている今は、アドニスでなくとも首を取ることは容易だ。
突出して切り込んでいくアドニスに続く騎兵隊が残党を悉く皆殺しにしていく。
そして中心部に辿り着いたアドニスが剣を高く掲げ、剣先から閃光を放った。
合図を確認したケレテス山脈に待機中の魔導部隊、弓兵は、魔法円を展開し各々の矢を放つ。
閃光の意図を汲んだ騎士達も、先ほどと同じように防衛魔術を行使して味方を守る。
あれだけいた魔族達が、彼らの登場であっという間にいなくなってしまった。
アルゼト小国の援護に入ってから交戦終了に至るまで、僅か1時間足らずで勝利を得た。
ルーヴェリアからも報告が入る。
──戦闘終了、犠牲者0。引き続き周囲の警戒を行います。
アドニスはふう、と息をつきながら剣を納める。
アドニス「みんなお疲れ様!敵増援部隊は無し、戦闘終了!僕らの勝利だ!」
初めて魔族と戦うにしては、中々良い結果であるだろう。
まあそれもそのはずだ、魔族なんて比にならない化け物を相手してきたのだから。
後から合流したアルゼト小国軍の将は、自分たちが到着した時にはすでに戦闘終了していたため、騎士団の圧倒的なまでの強さに言葉を失う。
将軍(初交戦…のはずだよな…)
と、そこへアドニスがやってきた。
アドニス「防衛戦及び援軍の派兵、お疲れ様です」
将軍「我々は大したことは…むしろ助けていただき感謝する」
二人は握手を交わすと、ラシェクス小国防衛隊が用意した舟で渡川し、彼らの陣へと招かれた。
防衛隊長「お二人とも、応援に来てくださり大変ありがとうございます。とても助かりました」
彼らは陣幕の中で軽く自己紹介をした後、今回の襲撃について話を聞くことになる。
ゲートの出現位置は未確認。
帝国領側から魔族の侵攻を偵察兵が確認をしたため、即座に防衛線を張ったとのことだった。
アドニス「ということは、我々サフラニアが懸念している通り、すでに帝国は魔族の手に落ちている可能性が高いですね」
将軍「数ヶ月前の魔族出現を確認した時からか、それよりもっと前なのか…少なくとも、防衛一方となるよりは、戦力のあるうちに攻め込むのも手かとは思われるがな…」
これに対して、防衛隊長は首を横に振る。
防衛隊長「帝国領に滞在する魔族の種類や、以前共有いただいた七将の動向が不明な以上、リスクを犯す必要もないかと。今は各国提携し、防衛に徹する方がいいかもしれません」
アドニス「そうだね。それに攻め込むとしたら、北西諸国は陸路になるけど、ラシェクス小国はマイアコス大海を抜ける必要がある。
荒れやすい上に水棲の魔族がいたら、流石に苦戦を強いられてしまいますから」
それもそうだ、と将軍は納得した。
アドニス「これから七日間ほど、帝国領前に駐屯し様子を見るつもりです。もし襲撃があった際は、ネポス山に駐屯している第二騎士団も駆けつける手筈ですので、ご安心ください」
防衛隊長は力強く頷いた。
防衛隊長「貴重な騎士団を二団派兵してくださるとは、大変有り難いことです。是非とも、よろしくお願いします」
将軍「こちらも出来うる限りの援護は行う。交戦になったら存分に暴れてくれたまえ」
こうして、第一騎士団はアルゼト小国とラシェクス小国の中間、帝国領前に陣幕を構えることとなった。
後方に控える魔導兵、弓兵はそのままケレテス山脈に駐屯。
先行していたルーヴェリアの部隊も彼女と合流を果たし、交代で巡回、魔族側の動向を逐一確認している。
ルーヴェリア「我々の位置は敵に探られぬよう、火など光の出るものの使用は控えるように。私は一度帰城し、陛下に戦況報告を行います。何かあれば魔道具を通じて私へ報告を」
騎士「承知しました」
背を伸ばして返事をする騎士を背に、山を駆け降りたところで空間移動の魔術を行使、玉座の間の扉前に現れると、警備兵に声をかける。
ルーヴェリア「第二騎士団長ルーヴェリア。戦況報告のため一時帰城しました。陛下に謁見願います」
兵士1「し、承知しました。少々お待ちください」
兵士2(今この人空間の割れ目みたいなところから出てこなかったか…?)
兵士1「陛下の了承を得られましたので、どうぞ中へ」
ルーヴェリア「ありがとうございます」
彼女は玉座の間へと消えていった。
兵士2「ルーヴェリア様さ、どこから出てきたように見えた…?」
兵士1「多分聞いたら首が飛ぶやつだ。空から降ってきたくらいにしとけ」
兵士2「…室内だけどな、ここ」
兵士1「…何も言うな…」
ルーヴェリアは宰相2人に囲まれた国王と王妃の前に跪く。
ルーヴェリア「第一騎士団長ルーヴェリア。戦線報告のため一時帰城いたしました」
国王「うむ、ご苦労である。戦果は」
ルーヴェリア「第一騎士団にて魔族の別働隊に襲撃されていたアルゼト小国軍を救援、そのままラシェクス小国防衛線へと進軍、勝利。犠牲者は居りません」
緊張した面持ちの4人の顔がぱっと晴れる。
王妃「初戦にしては上出来の戦果ですね。さすが、貴女が鍛えただけのことはあるわ」
宰相1「この状態が続くのが良いのですがな」
宰相2「縁起が悪いですぞ。攻勢に転じることができれば別ですがな」
やりとりを聞いたルーヴェリアが口を開く。
ルーヴェリア「襲撃はやはり帝国領側より行われており、帝国領での交戦跡は確認できなかったことから、恐らく魔族は帝国領に本拠地を置いているでしょう。攻め込むには地形が不利なうえ、どの程度の戦力が相手側に集っているのか不明な以上、現状維持が妥当かと」
そう、七将も数ヶ月前に遭遇したノクスだけとは限らない。
もし他の奴らも揃っているとしたら、攻め込んだ瞬間返り討ちに遭って無駄死にするだけだろう。
国王「では引き続き帝国領の動きを観察し、逐一報告を入れてほしい。こちらはヤヤ・テフヌト族領にヴィリディスとケインを派遣し、再同盟の交渉を行わせている。戦力はあればあるほど良いからな」
ルーヴェリア「承知しました。お任せください。報告は以上です」
駐屯地に戻ります、と背を向けて歩き出す背に、王妃が声をかけた。
王妃「くれぐれも無茶はしてはいけませんからね。動向を探るにしても、週に一度は休息として帰城するのですよ」
ルーヴェリア「……場合によりますが、善処します。では」
玉座の間から出、彼女は目の前にあった窓を開き、背後の見張り兵に
ルーヴェリア「閉めるのは任せました」
と言って飛び降りていった。
兵士1「あ、ちょ、ここ3階……ああ…」
兵士2「しかももう居ねえ…」
ぱたりと窓を閉め、鍵をかけてまた配置につく。
兵士1「あれじゃ人間か疑われても仕方ないよな」
兵士2「だな…でも、すごく頼りになる良い人だと思う。行動はまあ、、あれだけど」
兵士1「激しく同意だ」
時刻は間も無く夕暮れ時。
夜が訪れれば魔族が活性化する時間だ。
警戒は怠れない。
現地に戻ったルーヴェリアは、地図を片手に遠見の魔術で帝国領方面の監視を始めるのだった。
一方で、黒雲垂れ込める帝国領中央都の城内でも戦況報告が行われていた。
帝国にはもう人間の生き残りは1人もいないため、完全に支配下に置かれているようだ。
というより、拠点化、あるいは魔界化していると言っても過言ではない。
雷鳴が度々轟く中、魔王側近の魔女が口を開いた。
サーシャ「戦況はどう?」
傾げた首の動きに合わせ、長い黒髪が揺蕩う。
優雅な見た目とは裏腹に、琥珀の双眸は同僚を射抜くような眼差しで見つめていた。
ノクス「小手調べ程度だったが、ありゃもう別次元だね。数ヶ月前の雑魚から僕たちの脅威にまで成長してやがったよ。まあ僕からすれば死体が増えて大満足って感じだけど」
サーシャは軽く腕組みをしながら続きを促した。
サーシャ「交戦開始からどの程度で全滅に至ったのかしら」
ノクス「大体1時間くらい。多分もうちょっと早かったんじゃないかな」
そんなにも人間の方は力をつけていたのか、と素直に感嘆する。
ノクス「まあでも人数はそんなにいなかったかな。アルゼトの方とラシェクスの方は。多分あっち側から潰していったほうが早そうだ」
するとそこへ、今まで静観していた者が口を開いた。
白く透き通った柔肌に、水色を帯びた銀の長髪。頬には淡い虹色に輝く鱗のような模様が浮かび上がっている。
これが七将が1人、祖龍セレシュバーンだ。
セレシュバーン「なら私が行こう。殲滅は早いうちに行ってしまった方が戦線が少なくなって戦いやすくなる。死体が増えればノクス、お前も嬉しいだろう?」
サーシャ「具体的にはどうするつもり?」
セレシュバーン「ラシェクスを背後と大海側から潰す。案ずるな、セラフィナが居なくても海竜が居るからな。水中深くに潜ませ、開戦後街を襲わせる算段だ」
ノクスはにやりと笑った。
ノクス「じゃーその間の引きつけ役は僕が任されたよ。今回よりちょっと大きめの規模で中央から攻めれば、騎士団はそっちの戦闘で忙しくなるだろう?その間にセレシュがラシェクスを潰せば……」
全てがうまくいくだろう。
雷光が七将二人と魔王側近の顔を一瞬だけ照らし出す。
その笑みは美しくもあり、醜悪でもあった。
【おまけ】ある日の▓▓▓▓
あの頃は、魔界全体を統一するために忙しい日々を送っていた。
当時の魔界は上層と下層に分かれていて、上層は魔界の王と呼ばれる者が、下層は四方貴族と呼ばれる者達が納めていた。
二つは相容れない存在だったが故に、対立し血を流すことも少なくはなかったんだ。
各種族の中立と協定で成り立っていた上層と、人間の住む世界から攫ってきた奴隷達をどれだけ家畜の餌にしたか、従えているかで力の優越を決めていた下層。
私は下層から這い上がり、上層に身を置くことのできた唯一の存在だった。
だから下層に生きる奴らの在り方が許せなくて、その理屈を根底からひっくり返したくて、魔界の統一化を図るために戦争という手段を取ったんだ。
数多の血が流れた末、元凶となる奴隷商人達を処罰し、四方貴族を傘下に入れた。
それから暫くして、東の貴族からの連絡が途絶えたんだ。
気になって出向いてみたら、あちこちに散らばった血が街中を染めていて、何かあったことだけは確かにわかった。
だが死体は一つも見当たらなかったから、何が起きたかはわからなかった。
そして辿り着いた邸で唯一の生き残りを見た。
その子はかつての私で、この惨劇を招いた悲しい存在だった。
手を差し伸べずになんて、いられなかったんだ。




