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クレストVSテオ

お待たせしました、本編更新です!

ばったばったと薙ぎ倒されても尚起き上がり続ける兵士達の戦いは、正に死闘を繰り広げていると言っても過言ではないだろう。

しかしクレストとテオの鍛錬もまた、それに匹敵するものを見せるのだった。

ルーヴェリアが兵士を相手にスパルタ教育を行っている一方で、クレストによるテオの鍛錬も宿舎裏の鍛錬場で行われている。

テオ「よろしくっす」

クレスト「うむ」

2人は約10mほど距離を置いて睨み合った。

クレストの武器は…

テオ(て、鉄球…!?しかも棘までついてる…モーニングスターってやつじゃないすか!下手したら死にますよ俺!)

表情からその心情を看破してか、クレストは言った。

クレスト「なに、当たらなければ怪我もしませんからな。全力で避けてくだされ」

では、行きますぞ!と、困惑で隙だらけのテオに向けて鉄球が降りかかる。

だが、前方にばかり注意してはいられない。

何故なら、突出してきたクレストが鉄球がテオの下に届く前に彼の背後に躍り出てその拳を叩きつけようとしたから。

鎖のない方へ回避するしかないがこの速度じゃ間に合わない。

瞬間的に脚力に魔力を集中させて思い切り飛躍する。

その背後の地面は鉄球によって抉られていた。

もし身体強化せずに避けていたら、回避が間に合わず直撃していただろう。

テオも「俺もやられっぱなしは性に合わないんでね!」

着地前に腰に提げていた曲刀二振りを抜いて、着地点を狙って放たれた鉄球を躱しながら高速でクレストに肉薄していく。

狙うは、首…!!

左右から迫る曲刀を、クレストは両腕のガントレットで防いだ。

まずい、とテオが思った時には遅い。

凄まじく速い蹴りが腹部に刺さりテオは吹っ飛んでいく。

背をついたテオが見たのは、お前の負けだなと笑う姿のクレストではなく。

容赦なく降りかかる鉄球。

テオ(クソジジイ…!)

テオは痛みを堪えてその場から一度左に回転し鉄球の着地点から身を逸らすと、脚力と痛む腹筋を利用して立ち上がる。

軽く血を吐いて、横から殴りかかってくる鉄球を瞬間的に身体強化を加えた足で蹴り飛ばして跳ね返す。

クレスト「魔術は苦手と言っていたはずだが?」

テオ「それを練習させんのがおっさんの目的なんじゃないっすか」

余裕を見せているものの、実際は割と満身創痍だ。

多分内臓はやられていて、自分は治癒魔術を使えないのでこの戦いはもうじき自分の負けで終わる。

結果は見えているが、それでは納得できないし修行にもならない。

なら魔力での身体強化を内臓に向けて修復を促す。治癒魔術ほどじゃないが致命傷が更に悪化するのを防ぐことくらいは出来るはずだ。

クレストは鉄球を振り上げ、再度テオに向けて降り下ろし、自分もまた、同時に彼の元へと走る。

テオ「同じ手は食らわな…!!?」

鉄球は普通、弧を描いて落ちるもの。

なら今自分がいるところより後ろに落ちるはずなのに、あろうことかそれは真上から降ってきた。

重力、あるいは速度上昇の魔術…!!

更に後ろか?前か?左右はダメだ。

ならば。

跳躍して鉄球を足がけにクレストに正面から斬りかかる。

首の一撃を防がれるなら、軽傷を負わせてダメージを蓄積させることができれば!

テオは素早い連撃を浴びせて、しかし正確に鎧の隙間を縫って切り付けていく。

鎧から血が滲んだ。

だが腕を切り落とせるほどの攻撃には至らない。刃がそこから先に進まないのだ。

ならば、両手を曲刀から離して頭を狙って回し蹴りを浴びせ、背後に回りながら片方の曲刀を回収。更にクレストの背を蹴ってダメージを蓄積しつつ、もう片方の曲刀も回収して正面に向き直る。

これなら…!

クレスト「いけると、思ったのかね?」

直後テオの背後に凄まじい衝撃が走った。

骨の軋む音、いや、砕かれる音が認識できる。

敢えてテオの後ろに落としておいた鉄球を引き戻したからだ。

衝撃で前のめりになったテオの左肩に、右脇腹に、そして左大腿に強烈な拳の連撃を受け、テオは立つことさえも出来なくなってしまった。

テオ「お、おっさん、規格外じゃ、ないすかね?」

血反吐を吐きながら問うたが、その顔面に容赦のない蹴りが入る。

クレスト「鍛錬場では手合わせの相手を味方と認識してはいけませんぞ。敵はあくまで敵、殺すべき相手と認識しなされ。ほら、立ち上がらなければまた鉄球が降りますぞ」

それは本当に不味い。動かなければ押しつぶされて圧死は必然。

痛む体を必死に動かして鉄球を避けながら、最速で頭を回転させる。

どうしたらあれに刃は届く。

この際自分の痛みなんてどうでもいい。

何か、何か方法は。

あの鎧だ、鎧さえなければ、防具さえなければ心臓を刺せる。

テオ(こういうの、本当苦手なんすけど…ね!)

脚と拳に精一杯の魔力を込めて鉄球の追撃を振り切り、クレストの胸部のプレート目掛けて拳を突き立てる。

ぴくりともしない。

それどころか、こちらの手が使い物にならなくなってしまった。

骨が粉々になってしまったのだ。

痛みに悶えた隙を、老騎士は見逃さない。

顎に強烈な膝蹴りをお見舞いし、後方に飛んだところで攻撃圏内に入った鉄球を使って横に吹っ飛ばす。

呻き声すらあげられないまま地面に叩きつけられたテオにこれ以上の抗戦は不可能、撤退を図るべきだが、もしここが戦場のど真ん中だとしたら逃げ場はない。

導き出された答えは、トドメという名の追撃。

だが、ここで諦めては騎士の名折れだ。

諦めてたまるものか!

曲刀を交差させて防御の体制をとる。

全力でそこに魔力を注ぎ、衝撃緩和の魔術もかけた。

出来ることは最大限やったはずなのに。

クレストの拳一つで曲刀は飛散し、胸元に酷く重たい一撃がクリティカルヒット。

衝撃緩和の魔術だって最大限使ったはずなのに…。

意識の遠のくテオに、クレストは言った。

クレスト「私の背後が砦、つまり君の自陣である。生き延びたいならば走れ。救護兵が待っているぞ」

こんな状態でどう走れと。

登頂まで半日はかかる山岳を1分で駆け上がって倍の速度で駆け下りてゴールまで走り続けろと?

無理だ…。

クレスト「諦めるのか?守るべきもののある騎士が、諦めるのか?魔族の戦いはこんなものでは済まないぞ。私の数十倍は強い魔物がそこら辺を彷徨くようになる。それを1人で片付けられなければいけない。お前は守るべきものを見捨てるのか?」

守りたいもの…真っ先にシーフィの顔が浮かんでくる。

あの娘を生涯をかけて守ると誓ったのに、こんなところで、それもただの鍛錬で死を宣告されるのか?そんなのは御免だ。

テオは内部が半壊した体を無理矢理にでも立ち上がらせた。

テオ「諦め、ない…っす…!」

自分ができる最速の方法で、最速が出る魔術で、この際体の崩壊は気にしなくていい、生きてさえいればいい。

砦に向けて走り出す。

クレストはふっと笑って鉄球を鎖ごと放り投げる。

すると、テオが辿り着く前に砦の入り口は塞がれた。

でもまだ、上に道がある。

体の限界まで魔力を放出して鉄球を、壁を登り始めたが、外壁の上に到着した途端、先回りしてきたクレストに叩き落とされてしまった。

疲労の蓄積か、体の限界か、それとも頭を打ったせいなのか、意識が朦朧として視界もぼやける。

気配的に、クレストが自分の目の前に立ったことは分かった。

その後、地面にヒビが入るほどのとんでもない衝撃が腹部を貫いて、テオの意識は途絶える。

クレスト「下級相手ならまだしも、それ以上との相手は厳しそうですな。王妃にもご協力をいただいて魔術の鍛錬も組み込むとしましょうか」

死体のように動かないテオに治癒の魔術を施し、砦内に常備されたベッドへと寝かせる。

自分が規格外なのも理解している。

でもここまでに至らなければ、魔族とは戦えなかったのだ。

テオにも、別の方向で構わないから互角に戦える力を身につけてほしい。

後一歩、後一歩足を進める事ができれば。

そんなことを考えながら、ルーヴェリアの攻撃でほぼ死んでるような状態の兵士達が運び込まれ、治癒の魔術を施される様子を眺めていた。


同じ頃、国王、王妃、そして第一王子ヴィリディスと宰相2人で魔族襲撃について話をしていた。

このことを民に周知するべきなのか、否か。

宰相1「余計な不安を掻き立てるのは良策とは言えないかと。戦争は遠地に留めるよう尽力し、穏やかな暮らしを続けるのが一番良いと思われます」

宰相2「私は反対です。魔族の襲撃はいつどこで起こるか予測不能な今、何の備えもなしに襲撃されてしまえば混乱を招き、犠牲者が増えるだけでしょう」

2人の意見は正しくもなく、間違ってもいない。

ヴィリディス「でも、昔一緒に戦ったとされる北西諸国には現状を伝えて再度協定を結ぶべきだよね。シーフィもアルゼトに嫁いだことを鑑みると、防衛体制すら整ってない状態で交戦開始はどうかと思うよ」

それもそうだ。攻め込んでくるのはあちらのタイミング、万全な状態でいなければ多くの犠牲者が出てしまう。

王妃「魔族との戦いの歴史は、多くの民にとってほぼおとぎ話のそれに近い状態です。老齢者からかつてこんなことがあった、と話をされて現実で起こったらどうなるかを考えることができないほど、この国は平和に安定してしまった。普遍が崩れた時の混乱は、統治の乱れや反発を引き起こし、更なる被害に繋がる可能性が高いのではありませんこと?」

今のところ、伝えない方が良いという意見が一つと、伝えるべきという意見が二つ。

余計な心配はかけさせない方がいいのは確かだ。それが不平不満を呼んでしまう場合もある。

だが戦力強化も必要になるこの状況で、何を理由に兵士を募るのかという問題もある。

心の備えは、あった方がいい。

国王「であるならば、魔族との交戦があった、のではなく、出現を確認したと流すのはどうだろうか。自分達が続けている生活が恒久ではないことに危機感を募らせ、その後交戦があったことを発表すれば……それは抗争に備える必要があると民達が心して取り掛かってくれるはずだ」

両者の意見の間をうまくついたつもりだが、どうだろうか。

気の弱い自分は、こういう時強気に出ることができない。

そのことを腹立たしく思いながらも、数分間の沈黙に耐えた。

宰相1「……まずは出現の情報のみを出すことで、すぐに抗争が始まるという不安感を消しつつ…」

宰相2「……いつかは起こるかもしれないという心構えをさせる…」

ヴィリディス「そして抗争が始まる前に、避難場所といざとなった時の支援についてしっかり説明しておけば、少しは安心できると思うよ」

王妃はふむ、と考えてから言葉を発する。

王妃「であれば、避難場所は地下農工場か、或いは最終防衛地となるこの城でも良いでしょう。広いのでいくらでも受け入れられます」

そこには宰相が反対をした。

宰相2「地下農工場は食料補給線の確保に必要ではありますが、魔族の破壊力は凄まじく、簡単に破壊されてしまう可能性がございます。考慮するならば、この城内でしょうな」

国王はこほんと、一度咳払いをし、この話をまとめる。

国王「まずは出現のみ情報を開示、その後抗争となった旨と共に、万が一の避難先はこの城で、食料や必要な衣類、生活必需品についても可能な限り支援すると触れを出す。と、その方向性で良いのかな?」

他4人は頷いた。満場一致だ。

そして最初の触れはその後すぐに民達に開示され、ヴィリディスは護衛騎士のケインと共に北西諸国に戦闘面における協定を結びに出立していった。

王妃「大丈夫、大丈夫よ貴方。50年前も激戦ではあったけれど、先人が乗り越えてくれたおかげで今の私たちがある。だから今度だって、私達が次代に繋ぐことが出来るはずだわ」

宰相達の去った静かな玉座の間で、王妃は国王を気遣う。

王を名乗っていても所詮は人間でしかない。

心の弱さは人並みだ。怖いのも無理はない。

外交先から政略婚で嫁いできはしたが、王妃という立場になる以上、彼女は国も国民も、そして国王も支えると、この地に降り立ってから覚悟を決めている。

国王は頷くことしかできない。

嫌な予感しかしないのだ、さっきからずっと、生々しい何かが身体中を這うような気持ち悪い感覚がしていて、どうしたらいいのか分からない。

王妃はそっと、ため息をついて国王の頬に唇をつける。

急な出来事に国王は瞬間的に彼女を見た。

王妃「大丈夫。大丈夫です陛下。私がついています。宰相も、騎士団だって、この国を守るために動いている。貴方が道を誤るなら私が正す。だから安心して下さいな」

曇りなきガーネットの瞳に、抱いていた不安がかき消されていくようだ。

守られてばかりなのは少々体裁も悪いので、国王はこう返した。

国王「ありがとう。君のような優しく、強く、勇敢な女性に出会えて私は幸せ者だ。その想いに違えぬよう、私も死力を尽くしてこの国を守ろう」

彼女はくすっと笑う。

王妃「それで死ぬのもいけませんからね?2人で生き抜いて、この国の辿る最善の行末を見守りましょう」

国王はそうだな、と頷いた。

【おまけ】アドニスの日記


まさか、日記を書いてる途中に眠ってしまうなんて思わなかったよ。

驚いた…。

でも本当、不思議な夢だったな。

いつの日だったっけ、変な男の人に僕の夢や願いは叶わないって言われた時みたいな。

ふんわりしてるのに、要所要所はちゃんと覚えてるんだ。

特に、あの声。

水のせせらぎに乗って聞こえてきたあの声は、誰のもので、一体誰に向けられたものだったんだろう。

気になるけども、そればかり気にしてても仕方ないよね。

今日は師匠が魔術で作り出した師匠の幻影と手合わせをしたよ。

なんかすごく大変だった。

でも絶対勝てるようになるんだ。

兵士たちの士気もすごく上がってるし。

そういえば、父上が大臣達と何か話してたな…魔族の再来を民に伝える…とかなんとか…

不安を煽ってどうするんだろう。

でも、なんの前触れもなくやってくるよりは、いいのかなぁ…

国政についても、もっと勉強しなきゃな。


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