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26.反省会


「レベルが上がってる」


店の外に出てようやく落ち着いたため、さっそくステータスを確認する。

レベルが46になっていた。

ジャンプ鮫を倒したときにレベル43まであがったのはハッキリと覚えている。

最後に確認したときはいくつだったかが思い出せない。


それよりも、気になることがあった。

「せいなるおとめ」のスキルが消えているのだ。

そのかわりになのか「こもりうた」のスキルが増えていた。

確認すると敵味方関係なくランダムに昏睡させるスキルのようだ。


店内でステータスを確認したときに、たしかにステータス表示が減っているような違和感を覚えていた。


「おっ?レベル?俺42に上がってる」

「私も44になってるー」

「俺……46なんだけど」


ジャンプ鮫を倒した時にはとどめを刺したら経験値がはいると思っていたが貢献度なのだろうか。

美羽はどうだったのだろう。

確認しようとするとすでにキャンピングカーに戻ってしまっていた。



「結構ショボい敵だったな」

「智輝、やられてたじゃん。美羽に直してもらうまで腕ブラブラだったよ」

「いやそこまでやられてはいなかったろ」


「でも、智輝くんの言う通り、そんなに強くなかった気がする」


唯のあの強力なウォータカッターでもたいしてダメージを与えられなかった豚マスク男のことを思い出していた。


「だよね、香菜ちゃん。ボス戦にしてはあっけなかったよな」

「確かになー、防具とか武器とかもっと充実させたいよな」


よい流れになっている、とは思う。

それでもあの豚マスク男に勝てるかどうかはよくわからない。


「あのね、反省会……しない?」


恐る恐る切り出してみる。


「反省?」


智輝が嫌な顔で聞き返す。


「反省っていうか、あの、将棋の感想戦みたいな……あっ!授業でやったでしょ、PDCAサイクル!」


「PDCA……聞いた覚えあるけど全然おぼえてない。なんだっけ」

「Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)でしょう」


いつの間にかキャンピングカーから降りてきた美羽が呆れたように説明をする。


「そう!それ!智輝くんがケガをしたのも、あの豚のコックに近づきすぎたからでしょう?モップを先に発見できていれば、もっと距離をとって安全に攻撃できたんじゃないかって?」


「えー、それって私が勝手にドア開けたのが悪かったってこと?」

「……いや、あれはさすがに唯がわるいだろ」


「誰がわるいとかを言いたいわけじゃなくて、それでいったら私も釣り竿をもって出ればよかったし……、マラカスみたいにバフがかけられる道具も本当はあったし……」


しどろもどろになっていると、航一郎が意図を汲んでくれたようだ。


「たしかになー。俺のスキルにカウンターがあるんだから、智輝よりも俺が前に出るべきだったよな」


「智輝くんが切られたあとにすぐ、唯が声かけして美羽がヒールつかったの、すごくよかったよね」

「後衛のが襲われそうになったのは、ギター鳴らしすぎてヘイトがたまったのかもな。俺も智輝も攻撃態勢じゃないときは、ギター控えてもいいかも」

「たしかにな。あーあ、もう一回やりてーなー」


「もう一回?敵がもう一回でてくればいいってこと?」

美羽が化粧ポーチからスティックタイプの美容液を取り出す。


「これで、できるんじゃないかしら? ……リポップ」

「……」

「……」


薄青い光が舞うものの何も起こらない。


「発生地点で使わないとダメとかじゃないか?」

「たしかに」

「もう1ラウンド行こうぜ!」


盛り上がる航一郎と智輝に美羽が冷ややかに告げる。


「私、あんな臭いところ、もう絶対に行かないわよ?」

「美羽ちゃん……頼む。ちょっと行ってポップさせたらもう出てくれていいから」

「倒すまで出られないじゃないの!? せっかくシャワー浴びたのに、また臭くなっちゃうでしょう!」


あの短時間でシャワーを浴びて化粧直しまでしたとは、すごいな美羽の美に対する執着は。

そのおかげで化粧ポーチをチェックしてくれたのだろうから感謝しかないが。


「じゃあさ、こういうのは?」


唯が美羽から化粧コットンをもらいそこに美容液をたらす。


「美羽、さっきのまたやって」

「? リポップ?」


化粧コットンから薄青い光が漏れている。


「これ、急いで倉庫に置いてきてみて!!」


そんなことができるわけないと思ったが、どうやら成功したらしい。

魔法を持ち運ぶなどという発想ができる唯におどろく。


「さすが、ゲームやったことがないだけはある……」



外に残った美羽を除いた4人は無事にファミレスに閉じ込められた。


「あー!釣り竿!マラカス!!車からとってきてないのに」

「さっきもなくても倒せたから大丈夫だろ。それより香菜は、ギター鳴らす回数抑え目でやってみて」

「盾はおなべのフタよりもフライパンの方が頑丈じゃない?」


そんなことを言いつつ倉庫に突入する。

豚のコック(ブッチャー)はさっきと同じように調理台の向こうで香菜たちを待ち構えていた。


『反省会』の効果もあって今回は智輝も無傷で倒すことができた。

また包丁が手に入るかと思ったが、奪った包丁は戦闘終了とともに消滅していた。


「レベルアップはしなかったな、レベルあがるまでやろうぜ!」


3回目は唯に釣り竿を持たせ、私のペットボトルマラカスで攻撃力アップも追加する。

一撃で倒せたからか、唯のレベルだけがあがった。


結局メインで攻撃する役割を変えたりとどめをさす時に交代をして、4人全員がレベルアップしたのは10回ほど戦闘した後だった。


「ごめ、なんか私ふらふらする。お腹がすきすぎてもう限界かも……」


智輝と航一郎はまだまだ続けたがったが、唯が音を上げたのをきっかけにキャンピングカーにひきあげることになった。


「もう、あなたたちそんな臭い体で車に乗り込んでくるつもり!?」


美羽に激怒されながら順番にシャワーを浴びたときにはすっかり陽が傾きかけていた。

さすがにファミレスの駐車場で火をたくわけにもいかないので、車を移動する。


私にとってはおなじみの湖のそばの平地だった。

ここに来てしまえばいつ豚マスク男に襲われてもおかしくない。


それでも、テントを立て夕食の支度をする。

唯は

「ご飯できたら起こして……」

と言い残してキャンピングカーのベッドで眠り込んでしまった。


美羽は爪が痛むからと言ってコーヒーを淹れるくらいしか働かない。

男二人はテントを立てるのに忙しくしているため缶詰など簡単なものを用意した。


「そういえば、耳栓になるものってなにかないかな?」


食後のコーヒーのタイミングで切り出してみる。

屋外で飲むというスパイスを差し引いても美羽の淹れたコーヒーはかなりの美味しさだった。


「耳栓?」


こもりうたのスキルで味方も眠ってしまうことと、耳栓で防げるかもしれないことを説明する。


「コットンとか、ティッシュとかはどうかなー?」

「100円玉でも耳栓になるって聞いたことあるな」

「私は旅行のときはいつでも持ち歩いてるわよ?」


美羽はそういって耳栓を2セット取り出す。

予備の分は唯がつけることになった。


念のため耳栓で睡眠状態が回避できるか試してみることになり、

美羽と唯は耳栓をし、航一郎と智輝は100円玉、私はコットンで耳を塞ぐ。


「じゃあ歌うね」


ちゃんとした耳栓をしていた美羽と唯には歌は聞こえず、睡眠のステータスにもならなかった。

100円玉の耳栓は効果が薄いようで何度か繰り返すうちに二人とも眠ってしまう。


コットンの耳栓だった私は眠ってしまい、美羽の魔法でステータス異常が治ることも試すことができた。


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