表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/37

22.ギターの練習


バーベキューグリルを壊されて立腹していた美羽だったが、

智輝と唯が執拗にステータスを確認させたがるのに根負けしてとうとうステータス画面をひらいた。

航一郎が手刀で丸太をスライスして見せたのも大きそうだ。


「しろまどうし」

「美羽、これ握ってみて。どんな音がする?」

「唯、おまえの言い方なんかエロい……」

「智輝、黙って!」


美羽は大人しく唯に釣り竿をにぎらされている。もう何もかも諦めていると言った(てい)だ。


「んー、オモチャの刀の効果音みたいな……音」

「えー!私とおんなじ!そうびのところウォーターロッドってなってる?なにか魔法つかえる?」

「れいんふぉーる……ねえこれ、大丈夫なの?」


美羽が言い終わるか言い終わらないかのうちに大量の雨粒が半径2メートルほどの範囲に降り注いだ。

バーベキューテーブルも椅子もあっというまに水浸しになる。


「もう!なによ!だからイヤだっていったじゃないの!」


美羽が釣り竿を手放すとほどなく雨があがる。


私は、と言えば美羽が魔法を使う様子をあっけにとられてみていた。

美羽がここまで協力的なのは初めてではないか。


「もう!びしょ濡れじゃないの、私着替えてくるわ、唯、香菜、どうする?」

「私はあんまり濡れてないからこのままでいいや」

「私は着替えようかなー」


美羽と唯がそそくさと車に入っていく。


「香菜も頭くらい拭きなさいよ」


そういって美羽から渡されたタオルからは甘い花の香りがした。


「いやー、でもまさに剣と魔法の世界だなー、アガるわー」

「モンスターも出ないし召喚の儀式もないし城もないけどな」


「そういえば香菜ちゃん、ギター練習しなくていいの?航一郎、教えてやれよ」

「俺も教えられるほど弾けるわけじゃないんだけど。香菜、ギターもってここに座って」


航一郎にギターを教わっていると、10分ほどで智輝が飽きてきたのか唯と美羽に湖に行こうと声をかける。


「行くわ。同じ音を何度も聞かされて頭がおかしくなりそう!」

「美羽、言いすぎ~」


などと言いながら3人はそそくさと湖に向かってしまった。


「おっし!香菜、あいつらが戻ってきたらびっくりするくらい上手くなってやろうぜ」

「えー、指つりそう」


「……そうそう、左手でこの弦を抑えて……」


ギターを教わっているのだからある程度当然なのだが、航一郎との距離が近いことと時々指が触れることを必要以上に意識してしまう。

航一郎が一生懸命しゃべっているのに、ほとんど頭に入らず、なんだかボーっとしてしまう。


「香菜、まじめにやれー?」


ふざけた航一郎が私の頬を軽くつねる。


「ちょっとー!……なんか小学生の時みたいだね」

「ええ?俺こんなに背も伸びてイケメンになったというのに!」


おどける航一郎に笑って見せようとしたが、本当にその通りだったので上手く茶化すことができない。

楽しそうに目を細める航一郎が眩しくてなんとなく俯いてしまう。



「そ、そういえばさ、航一郎って美羽と付き合ってたの?」

「えっ?」

「さっき、唯が美羽と話してて。ショックだった」

「香菜、ショックって……どういう意味で?」


航一郎がいたずら心を含んでいるようなそれでいて真意を探るような顔になる。


「唯は知ってたのに、私だけ知らなかったんだって」

「なんだ、それだけ?」

「それに……」

「それに?」


航一郎の視線が熱い。


「……航一郎は、私のことを好きでいてくれてると思ってたから」


言うはずではなかった言葉がつい口から出てしまい困惑する。

小学校の時は仲良しだったし、そうだったらいいなと思っていただけだ。


航一郎にも予想外の返答だったようだ。


「え……そ……なっ!?」


動揺して耳まで真っ赤になっている。


「航一郎、かわいすぎかー」


さっきのお返しに航一郎の頬を軽くつねる。

いつかの晩に見た困ったような笑顔で、そっと私の手に触れる。


気が付くと私の唇は塞がれていた。

航一郎の体温を直に感じる。


不思議と驚きはなかった。

無意識にではあるがこうなるように航一郎を挑発した自覚はあった。

嫌ではないことを示すために航一郎の背中に両腕をまわす。


ギターを手にしてから、智輝に襲われた記憶がときおりフラッシュバックしていた。

どうしてもその記憶を上書きしたかった。


ずっとこうしていたかったが、私には大事な目標がある。

せっかく美羽までが魔法を使えるようになったこの周回なのだからどうしても全員で生き残りたい。


私が体を離すと、少しすねたような表情の航一郎がいた。


「……ギター、教えて?」


そういって航一郎の顔を覗き込むと、航一郎も立ち直ったようでニヤっと笑顔をみせる。


「っし、じゃあ、ここまで一人で弾けるところまでやって!」

「はぁーい」


そのあとは私が弾き間違える度に航一郎がわざと密着して弦を抑えさせようとするので、ギターの練習はなかなか捗らなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ