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何か探しているの?

 この前きたときに自分の物はあらかた見終えた。


 お父様は、すでに見にきたか見にくるはず。


 お母様の物を見てみよう。


 これまで、お母様の物をじっくり見たことがなかった。衣服のみ、わたしが着用出来るものがあるかと見たくらいである。

 衣服や靴以外は、アクセサリー類も含めて見る機会がなかった。というよりか、なにか神聖な感じがして見ることが出来なかった。それは、お父様も同じような感覚を抱いていたのかもしれない。


 お母様が亡くなってからときを経ているのに、お母様専用の部屋の物はほとんど手付かずだった。


 お父様とそのことで話をしたことはない。


 お父様とわたしは、それぞれにお母様への思い出を大切にしたいとか壊したくないという想いがある。


 そのお母様の物を物色する。


 聖なる地に侵入するうしろめたい気持ちを抱きつつ、それでもこういう機会だからこそお母様に触れることが出来るというわずかな期待を抱きつつ、室内を見てみた。


 ほとんど手つかずの状態。クローゼット内に入り、わたしが衣服や靴を見てみた程度である。


 几帳面なお母様らしく、室内は整理整頓がされている。


 と、思い込んでいた。


 お母様は、病的ではないにしろお父様やわたしよりかはずっとずっと几帳面だったはず。


 が、室内は雑然としている。というよりか、だれかが荒らしまわったかのようにあらゆる物が散乱している。


 すくなくとも、わたしが見たときには物が床に落ちていたり倒れていたりということはなかった。


(お父様が荒らしたのかしら?)


 お父様もまた、この機会にお母様の物を持っていこうとしたとか?


 わたしもそうなのだから、それはおおいにありえる。


 だけど、ここまで荒らすかしら?


 と感じるほど荒れている。


 ふと、先日ここに来たときのことを思い出した。


 あのときも来なくていいのにヴァレールが来ていた。彼は、わたしとは別に屋敷内をうろついていた。わたしが自分の部屋にいるとき、彼は他のどこかにいた。というのも、自分の物をひとりで見たかったから、彼を部屋から追いだしたのだ。


 そういえば、同じ二階の違う部屋から大きな物音がしていた気がする。集中しているときに、何度も物音がしたので、イライラしたことを思い出した。


 その大きな物音は、なにかが落下したような音だった。


 たとえば、いま眼前にあるように、机の上からいろいろな物をはたき落したとか、コート掛けや姿見を倒した音とか……。


(ちょっと待って。では、彼はここでなにをしていたの?)


 ほんとうに彼がここで暴れていたかどうかはわからない。だけど、一度その可能性を思いつくと、もうそれしか考えられなくなるのがわたしである。


『なあ、探しているんだろう? おれが手伝ってやるよ。二人で探せばすぐに見つかるさ』


 彼は、たしかにそう言った。


 やはり、彼は「何か」を探しているというの?


 では、いったい何を?



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