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コルコダン公国(2)
視界の先に魔鳥が見下ろしてるのがわかった。追いかけてこないのを不思議に思うままなく、地へ落ちていく身体が柔らかな綿のような物体に包まれた。
「へっ……雲?」
ぷにぷにした感触が皮膚をくすぐる。妙に生温い暖かさがゼロを包み、穏やかに落下する。
「久しぶりじゃの、レオ。うんと大きくなったなぁ、別嬪さんになった」
「し、師範!?」
「はっはっは。あちらさんもワシが相手するのは避けたいようじゃな。まったく」
しゃがれた声がゼロの心を酷く安心させた。今まで張り詰めた気持ちが解かれて、意図せずに涙ぐむ。
「よしよし、頑張ったなぁ。もう大丈夫じゃ」
幼い愛弟子の姿を投影して、皺の深い小ぶりな手で子供をあやすように頭を撫でる。
「さぁ、他の人はすでに入ってある。行こう」