スポブラくらいは
『勝手にしろ……!』
俺の言質を引き出して、大虎は勝ち誇った。ただ、その時の、
「やりぃ~っ♡」
って声を上げた時の表情が、なんだか少しだけホッとしたような感じに見えたのは、俺の思い違いなんだろうか……?
で、とにかくこうして大虎が俺の部屋に居つくことになった。本当に忌々しいが、
「まあまあ、代わりに専業主婦やってやっからさ♡ 学校行ってっから専業じゃねーけどw」
とこいつが言ったとおり、料理と家の掃除と洗濯は大虎がやってくれた。しかも、初めに出したハンバーグは、けっこう、美味かった。てか、こいつ、<料理上手>ってほどじゃないとしても、それなりに料理はできるし、掃除も洗濯も、普通にできた。
「お前…家事とかすんだな」
こいつが俺の部屋に居ついて三日目。風呂やトイレがやっぱりそれなりとはいえ掃除されてるのを見て、俺はついそう口にした。大虎の作った豚の生姜焼きを食べながら。
「あ~。まあ、その辺はね……家でやらさ…やってたから」
少し目を泳がせつつそう応えたこいつに、俺はまた何とも言えない気分になった。
『家でやらされてた』
って言おうとしたよな? 確かに。
『実の父親が<ディーノ246GTティーポM>に乗ってた』
とかいう言い方をしてたこととも合わせ、相当<訳あり>な家庭環境だと見た。少なくとも俺の長女よりかは格段に複雑な家庭だとな。
だからって同情するつもりはない。俺はあくまでこいつに脅されて仕方なく住まわせてやってるだけだ。家事をやってもらってる代わりに。食費とかは全部俺持ちだけどな。
ただ、毎日、学校には行ってるらしい。んで、
「でさあ、さすがにもう四日、同じパンツ履いてるし、一応、洗ってエアコンの風に当ててて乾かしちゃいるんだけど、パンツとブラ、買っていいかな? 百均のでいいしさ」
とか言い出した。
「……まあ、そんくらいなら」
まさか『百均のでいい』とか言い出すとは思ってなかったから、俺もついそう返事して、
「ほれ、これで買ってこい」
二千円を出して炬燵の上に置いた。
「サンキュー♡」
でも、パンツはともかく、
「ブラなんか、百均に売ってんのか?」
俺が思わず口にすると、
「あ~、だっせえのだけど、スポブラくらいは売ってんよ。二百円で」
と応える。
「ふ~ん……」
適当にそう相槌をうったものの、この手の女が百均のスポーツブラで済ますか? とは思ったな。実際、こいつが今、身に着けてるのは、それなりにフリルとかの付いた<らしい>ブラジャーだったはずだしな。
ちなみに、こいつは今、俺が渡したスエットの上だけ着てる。上だけで太ももの真ん中くらいまでは来るし、下はウエストがガバガバ過ぎてとまんねえから。