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落とす人あれば拾う人あり
完結しないかもだし、完結したところで連載作品というほどのたいした文字数にはならないかもしれない作品。
連載作品に憧れるので投稿しますが、上記の理由でとても無責任な作品であること、お読みくださる方はご了承願います。
「あの、落とされましたよ?」
僕のメンタルを拾ってくれたのは、スーツ姿の若い女性だった。
一つ括りで髪をきっちりとまとめ、パリッとシワの少ないスーツの黒色が少し浮いて見える。
彼女には新卒者のような初々しさがあった。
「あ、すみません」
こういう時にもう幾らかでも気の利いた言葉を返せるといいと思うのだが、いつもぽつぽつと言葉を発するだけで人との会話が終わってしまう。
「あの、お悩みを、私でよろしければお聞きしましょうか?」
自分よりも明らかに年下だろう女性に相談するなんて馬鹿げている。
初対面。
ただの通りすがり。
話し相手を装った詐欺の可能性もある。
それなのに、僕の口から発せられた言葉は提案を受け入れる同意の言葉で、依頼の言葉だった。