行方
「さて。騎士団長こやつらはどうしようかの」
「陛下通常ならばこのまま牢獄送りにするところですが、、、」
「ほう?なにかあるのか?」
「はい。彼らを牢獄に入れたところで何も変わらないでしょう。きっとまた出てきて同じようなことをします」
こんな環境で育った彼らのことだ。もう普通の生活に馴染むことはできまい。がしかし
「ただ、ここに来るまで凄惨なスラム街を見て彼らにも少しチャンスを与えてあげたいです」
「ふむ。チャンスとは?」
「彼らを来月開催される剣術大会に出場させてみてもよろしいでしょうか?」
「だがあの大会は毎年死者が出るほど激しい。このような奴らに勝てるのか?」
「それが、、、」
腰の物に手を当てる。先ほどリーダー格の男の打撃を防いだ時か。少し傷が入っている。
「先程の戦いで私の業物がダメになりそうで。訓練生以上の実力は十分あります」
「そなたの業物を傷つけるとは中々よの。わかったそれではこの一件はそなたに一任する。まあ、余にも責任はある。よろしく頼むぞ」
「はっ!」
来月開催される剣術大会は20才以下の剣士最強を決める戦いだ。5人一組まで参加可能だ。
もちろん優勝パーティーにはそれ相応の席を用意する。
こいつらがここから這い上がってくるかは自分次第。
チャンスは与えた。
「さて。視察もここまでにするかの。スラムの実態を放置しておった余に責任がある。帰って対策を話し合おうか」
「はっ!」
伸びている三人を部下に縛り上げるように指示し、王宮への馬車に乗り込む。
「さてさて。おもしろくなってきたなーまさか俺の剣がやられるとは。これは一波乱ありそうだな」
自分の業物が傷つけられた悔しさよりも、こんなやつがまだ王都にいたのかと胸の鼓動を抑えるのが大変だ。
もしかしたらとんでもない物を発掘してしまったかもしれない。
騎士団長はまるで遊び道具を見つけた子供のような無邪気な心で彼らのこれからを想像した。




