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スラムの英雄  作者: もも
20/22

2回戦

「さあ!本日の大注目カードの登場です!!昨日のゲームではお互いに一人で殲滅した両チーム!そして今日は双天流の継承者と謎の剣士の戦いだよー!今有利なのは双天流の方だがお兄さんはどうする!?」


会場の外では早速今日のカードの賭けが行われていた。

っていうか当事者なんだから賭けれないだろ。


「ちなみに予想はどんな感じなんだい?」


ここは通りすがりのお兄さんとして聞いてみることにした。

屋台のおっさんは新聞とにらめっこしたあと


「どうもなー相手の剣士が謎すぎるんだよな。ただヴァンラルテ家の騎士ということで、かなり信用されてるのもある」


なるほどねぇ。昨日はエレナが名前をただ継いでいるだけじゃないって見せつけたもんな。


「おっと!すまねぇ!他にも客がいっぱいだ!お兄さんも決まったら声かけてくれよー!」


人波に飲み込まれていったおっさんは既に他の客と取引している。

双天流買ったやつは絶対後悔させてやると強く決心し、控え室に向かった。



「ニコラスー試合前に緊張してるのか?」

「いや。どんな様子か見てきただけだ。緊張したって結果は変わらないさ」

「ニコラス、、、頑張って、」

「ありがとうリン。大丈夫だ。勝ち目がなかったら4人で行くつもりだったから」


わざわざ一対一にしてもらったのは当然勝ち目があるのと、騎士団長の息子と戦うには俺の剣士としての上達が欲しい。

どうせここで負けるようじゃ敵わないってわけさ。


「それじゃあ行ってくるよ」

「頑張ってくださいね!ニコラスさん!」

「おう!」


控え室を出て会場までの長い廊下をゆっくりと心を落ち着かせながら歩く。さてと今日も頼むぜ相棒。



「それでは!!!本日2回戦!!!!最初の入場は双天流正統継承者!!本日もその二刀で敵を細切れにするのか!?ジャン選手の入場です!」


「頼むぜー!俺はオルガンを倒せるのはお前だけだと思ってるんだよー!」

「そうだぞー!ここで躓くなよー!」


観客の熱い声援に応えるほど余裕なようだ。

なるほど。騎士団長の息子を倒すのが観客もみたいわけだな。


「続きまして!!昨日は剣すら抜くことなく終わってしまったがその実力はヴァンラルテ家のお墨付き。まるで死神のような立ち姿!今宵死神の手が振り下ろされるのか!?ニコラス選手の入場です」


いつから俺は死神なんて異名がついたんだ。

まあ、観客を喜ばせる重要性は昨日エレナから学んだからな。

俺も観客の声援に答えながらゆっくりと入場する。


「それでは本日2回戦!スタートです!!!」



ゆっくりと二人共剣を抜く。相手はいつもどおり二刀流だ。


「簡単に死なないでくれよ!!」


いきなりジャンの方から飛びかかってきた!

俺は軽く後ろへ流すが、どうも弱い。さては本命は次の刀だな。

俺はバックステップし距離をとり2撃目を打たせる前に引いた。


「やるな。それは囮。本命は2撃目だったのだがすぐ気づかれたな」

「そりゃどうも!!」


俺は先程のお返しに斬りかかる。

相手も防御に回ることなく打ち返してくるので、跳ね返し斬りつけようとしたのだが、右手の刀に防がれる。


「二刀流は変幻自在。二刀とも矛にもなれば、二刀とも盾になる。一刀しかない貴様では到底できぬ芸当よ」


なるほどなー。かなり厄介だな。


「それじゃあこれは見たことあるか?」


俺はそっと刀を鞘に入れゆっくりと近付いていく。

相手もかなり警戒している。勝負の最中に刀を鞘に入れるなんてもってのほかだ。当然そうなる。


「何がしたい?勝負をあきらめたか?」


俺は射程に入るまでゆっくりと近づき、射程に入るなり一閃。刀を抜き目にも留まらぬような速さで斬りつけたのだが、


「危なかった。どうやら警戒していて正解だったようだ」


ジャンは咄嗟に二刀とも盾にして俺の攻撃を防いだ。一刀で防ごうものなら刀ごと斬っていたのだがな。


「流石そこら辺の雑魚とは違って俺も楽しいよ」


再び刀を構え、向き合う。

飛び込むが防がれ、同時に攻撃も避けなければならない。

俺が劣勢になった所で二刀でこんどは斬りつけてくる。


「刀が一刀の時点で貴様は負けなのだ」 

「なるほどね。どちらの刀もそこらの剣士より強い。片手なのにな。そこまでなるのにした努力が目に浮かぶよ」

「ふっ。両方の刀を人並みに操れるようになってこそ双天流だからな」

「そうか。だけど一つ忘れてるぜ?刀は2本あっても本体は一つだけだ」


再び斬りつけるがこれもやはり二刀を使い防御される。

ここまでは当然計算済みだ。

俺は反撃の一打を素早く避け、再び斬りかかる。

流石にこれは一刀で捌くしかないが、ジャンは後ろに既に避けていた。


「なるほど。反撃の隙をついてきたか。しかしそれも対処できる」

「なぁ。一つ聞いていいか?」

「なんだ?」

「お前にとって刀とはなんだ?」

「双天流になくてはならぬもの。そして道を切り開くものだ」

「そうか。ならやっぱり負ける気がしねえよ」

「なんだと?」


茶番はここまでだ。様子見はやめ集中する。

俺にとって刀は相棒。生きていく上でのパートナーだ。

こんな芸当はお前にはできまい。


「空気が変わったな。俺も本気で行かせてもらう」


俺の雰囲気の違いを察し向こうも全力でくるようだ。

お互い最高潮にまで集中力を高め合い、次の一撃が勝敗を決することをなんとなくお互い感じていた。


「貴様との試合!中々楽しかったぞ!だが双天流には敵わぬ!これは貴様への手向けだ。双天流奥義【阿修羅】」


先程より一層激しく、大胆に。

まるで台風のような勢いの中、俺も突撃する。

二刀が同時に襲いかかってくる。隙を見て反撃しようとしても既に片方は防御の姿勢に入っている。

一方的に殴られる時間が続く。


「おー!!!双天流すげー!!これはあの兄ちゃん死んだだろ」


観客は派手な双天流に大興奮。

観客の後押しを受けジャンは更に加速する。

次第に俺のローブは少しずつ斬られはじめた。

そして飲みこまれるかのように数秒後。ジャンの刀は俺のローブを突き刺していた。


「こ、これは勝負あったかー!!!?」

「たしかにこれは勝負あったな」


騎士団長の言葉により、観客はより興奮の渦が大きくなる。

次第に土埃は収まっていき、二人の姿が見えて来るのだが、


「そのローブ高かったんだけどな。またエレナに買ってもらおう」

「貴様っ!!」


俺は無傷。ジャンの刀は俺にまったく届いていない。

寸前の所で見切り、ローブだけを斬らせるほど無駄なく避けていた。


「お前の二刀流はたしかにすごい。だが」


ゆっくりと刀を突きつける。


「刀は道具じゃないぜ?道は共に切り開くものさ」


刀と深く共鳴する。この状況でより強くなれた。感謝するぜ双天流。


「共鳴。我流奥義【刀身一体】」


深い闇のなかから、俺と刀が一体となり姿を現す。

ここは観客の声さえ届かない。俺の世界。

異物は排除する。


「舐めるな!!双天流は最強だ!!」


おそらく。観客からしたら俺とジャンの位置が入れ替わっただけにしか見えていないだろう。

だが、もう勝負はついている。


「ぐはっ!!」


まるで無人の野を歩くが如く。ジャンの斬撃の嵐を避け、一撃いれる。それだけだ。


「刀が見えなかった。俺には貴様と刀が一体になったように見えたが、、」

「そうだ。決して刀は道具じゃない。俺の血が通っている。この勝負どちらが刀を愛してるか。そんな簡単な勝負だっただけさ」

「見事、、、、」


ジャンは倒れ、静まり返っていた観客も再び熱狂する。


「しょ、勝負あり!勝者ニコラス!!」

「「「「おー!!!」」」」


勝者コールに素直に観客に応える。案外気持ちがいいものだな。


「騎士団長様!勝負の分かれ目はなんだったんでしょうか!?」

「うむ。双天流の奥義を寸前で交わし続けた時点で勝負は見えていた。ニコラスの方が刀に神経通わせていた事で大幅に双天流のスピードを上回った。要するに無駄のない美しい斬撃が勝負を決めた」

「なるほど!!それであの時、騎士団長は勝負ありと言ったのですね!」

「ああ」


流石騎士団長。見抜いていたか。まだまだ勝てそうにないな。

だけどまあ、今日くらいは勝利の余韻に浸かってもいいかな。


俺は観客の声援に応えながら、少し心地よい疲れと共に会場を後にした。



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