2回戦へ
「皆さん申し訳ありませんでした」
「全然。むしろスッキリしたからいいです」
「おう!最高に気持ちが良かったな!」
「かっこよかったです、、、!白羽の魔女」
「そ、それは!」
どうやら観客がかなり彼女の事を気に入ったらしく、異名がつけられたのだが、白羽の魔女。白羽の矢とは古代、神からの生贄に選ばれた者に向くとされており、彼女に狙われれば逃げることはできないという意味らしい。
お似合いだとは思うけどね。
「もう!からかうのはやめてください!それよりも次の対戦相手が決まる試合が次ですから観戦しましょう!」
俺たちはあの戦いの後、軽く汗を流し会場の観戦席に来ていた。次の対戦相手が戦うらしいので偵察だ。
「こちらも一人で参加のようです!あっ!この方は!」
「知ってるんですか?」
「はい!双天流の跡取り候補ですよ!二刀流なのが大きな特徴です!」
なるほど。それで自信があって一人で参加というわけか。
相手は5人だが大丈夫だろうか。かなり自信満々なようだが。
「5人相手はちょっと大変そうですね」
「じー、、、」
「な、なんなんですか!?」
エレナは先ほど5人相手にして瞬殺してたのによくそんなこと言えるな。白羽の魔女とかあだ名までつけられてるくせに。
恥ずかしくなったのか双天流のやつを指さす。
「あの人は双天流の跡取り候補。名前をジャンといいます。たぶんあの人が次の対戦相手になると思います」
「双天流ねーかっこいい名前だね」
結果はエレナの言うとおり簡単に双天流が勝った。
二刀流の良さは防御と攻撃が両方同時に行えること。
死角なしといったところか。
「なあ、次の対戦。俺一人でやらせてくれないか?」
「ニララス!?どうしたんだ?!エレナの影響か?」
「違うって」
純粋に俺はこいつとタイマン張りたい。
だから恥ずかしそうにこっちを見るのをやめてくれエレナ。
お前に憧れたわけじゃない。
「単純に俺とどっちが強いのか。比べてみたいんだ」
「う~ん俺も出番欲しいなぁー」
ケビンがちょっと不満そうだが大丈夫。準備はしてある。
事前に対戦表を見てケビンの脅威になりそうな相手を見つけていた。っていうかケビンにしか任せられない。
「この前の試合にな。チーム名にノースサウスっていうのがあったんだ。要するに北と南だ。どういうことかと思ってみてみたらな。ほんとに北から南に進軍してるだけなんだ。
タンクがあまりにも強烈で作戦どころじゃなくやられていたんだ」
チーム名通り、2メートルあまりある怪物が北から南へと歩いているだけ。ただそれだけなのだ。
相手は止めることもできず負けていく。こんなの相手してられない。まるで巨象に飲まれる蟻のようだ
「なんてタンク冥利に尽きるんだ。俺はそいつとやりてぇ!」
「そうだろ?だから温存しといてくれ」
「ああ!わかった!」
あんまり頭が良くないケビンを説得し、残るはエレナのリンなのだがどうやら賛成してくれるようだ。
「僕はニコラスに任せるよ」
「私も人のことを言える立場にありませんので」
これで決まりだ。久しぶりだなこんな感情は。スラムで強敵とやりあって以来だ。
俺は高鳴る鼓動を抑えながら、明日の対戦に思いを馳せた。