大会
大会当日。
俺たちは運営に預けていた武器を受け取り、会場まで向かっていた。
どうやら武器には刃の部分に特別な加工をしているらしく斬れないようにされているらしい。
それでも脳天に振り下ろされれば割れるだろうが。
既に会場では一試合行われているようで、外まで歓声が漏れている。なんでも盛り上げるためにわざわざ実況と解説に騎士団長を用意しているぐらいだ。
(おい、あれってヴァンラルテ家じゃ、、、)
(バカ聞こえるだろ。いくら落ちとはいえ貴族なんだからな)
昨日からこの調子でエレナのメンタルが心配だが、彼女は何も聞いてないかのごとく普通に、いやむしろいつもより気高く歩いてるようにも感じる。
「皆さん。私は大丈夫です。優勝すればいいのですから。むしろ嬉しいですよ?お家再興できた際には黙らせれるのですから」
そうか。彼女にとってあれぐらいの誹謗中傷など日常茶飯事だったんだろうな。あの年で覚悟を決めて頑張れるのは凄い。俺は2年後は何してるだろうな。
「僕、、緊張してきちゃった」
「安心しろリン!俺が全部跳ね返してやらー!」
心配症のリンと超楽天家のケビンで心の均衡が保てているみたいだ。
この二人が訓練生にもなってないような相手に負けるわけがないだろう。
そして会場につくと警備に身分証を見せ、選手の控え室に行けた。
どうやら対戦相手はすでに逆のゲートで準備しているらしい。
俺たちの出番まで5分前。
そんな時にゲートの脇に立つ警備兵が話しかけてきた。
「ヴァンラルテ家のご令嬢でしょうか?」
「はい。私がそうですが何か?」
「実は、、私は先の大戦で一般兵として参加したのですが、その節はお兄様とお父様に大変助けて頂きました。お礼を言わせてください。ありがとうございました」
「いえ。お兄様もお父様も当然のことをしただけです。ただ、、、今は素直に受け取ります。こちらこそありがとうございます」
「い、いえ!あっ、、、戦場でのお兄様の口癖はご存じでしょうか?」
「お兄様が?う~んなんでしょう?」
「俺の妹は世界一可愛いんだからなです笑」
珍しくエレナが照れている。これは恥ずかしいよな。あの幽霊がお兄さんならたしかに周りにも言ってそうだが、、、
「ありがとうございます。お兄様ったら、、、」
「今日は頑張ってください!応援しております!」
「はい。ありがとうございます」
ここに来て温かい言葉を貰えるのがどれだけ嬉しいことか。
エレナのしようとしていることに間違いはない。お家を再興させることで、お兄さんとお父さんを安心させてあげるんだ。
ここで会場のアナウンスが入る。
「それでは!続きまして今大会注目の選手の入場です!
ヴァンラルテ家の跡取り!武のヴァンラルテの異名を取り戻すことができるでしょうか!?チームヴァンラルテ!」
先程より会場のボルテージが上がっていくのが控え室からでもわかる。
「さあ、皆さん行きましょう!」
ドーム型の会場には観客がびっしりと埋まっている。
そのほとんどがエレナに夢中だ。
「おっしゃー!いっちょかますか!」
「ちょっと、、ケビンはすごいなぁー」
エレナを先頭に入場。会場からエレナの姿が見えるとボルテージは最高潮に達していた。
「続きまして!こちらは訓練生候補!試合前の意気込みは「堕ちた貴族に負けるわけにはいかない」です!」
中々挑発的な事を言ってくれるじゃないか。
会場はブーイングやおもしろ半分で盛上げる声に分かれている。
「おっと。ヴァンラルテ家はいつから女が跡取りになったんだ?ハッハッハッハッ!」
「おっと。所詮訓練生もどきが貴族に関わらないほうがいいですわよ?」
相手の挑発にもしっかりと返す。
これには相手の顔面も真っ赤だ。
「皆さん。一つだけお願いがあります」
「なんでしょう?」
ゆっくりとエレナは躊躇いながらも決心したように
「この戦い。皆さんは後ろで座っててくれませんか?私一人で終わらせます」
「わかった。けど心配、、、ないよな。あの程度なら」
「はい。任せてください!」
エレナの言う通り俺たちは試合開始直後に座ることにした。
相手は5人だがカスが集まった所で対して変わらない。
ここはエレナに任せるとしよう
大会が始まるのでなるべくちゃんと書きたいという思いから昨日派中々投稿出来ずに申し訳ございませんでした。しかし今日からバシバシ投稿していくのでお楽しみにしていてください。