屋敷2
「おいニコラス!ニコラス」
「ん?あぁケビンかすまん」
どうやら俺は寝てしまっていたようだ。
こんなことスラムでもあまりなかったのにな。
「ニコラスさん大丈夫ですか?」
「うん。まあちょっと無茶しちゃったけど休んだから大丈夫」
気を物凄く使ったのでぶっちゃけまだ気怠いがさっきよりはマシだ。
「ご飯食べた模擬訓練しようぜ!訓練の成果が出てるかもしれねぇ!」
「おう。わかった」
昼飯を手軽に済ませて初日の庭に集合する。
お兄さんがいってた常に開放というのはまだ難しいが、戦闘で使う程ではなければ薄っすらと気を張ることならできる。
スラムでは常に危険と隣合わせだったのでもう慣れっこだ。
「じゃあチームはどうするよ?俺とニコラスは分かれるとして」
「そうだな。初日と逆で俺とリン。ケビンとエレナでいこう」
「おし!じゃあエレナさんよろしく!」
向き合い、俺の合図で試合スタートだ。
まずはケビンに斬りかかるのだが、違和感がある。
ケビンにとって意識が向いていない場所がはっきりわかる。
今は頭上だ。これなら
「おおっ!ニコラスめっちゃ鋭くなってるじゃん見えねえよ!」
ケビンの盾を縫うように斬りつけるが、いかんせん向こうは鉄球で鍛えている。ちょっとやそっとじゃびくともしないが、、、
リンをケビンの視界に入らないように誘導していく。
あとは俺の鞘を蹴ってリンが頭上から攻撃するのだが、
「、、、!」
リンが飛ぶのを躊躇った。それもそうだ。エレナの矢がリンが数秒後にいたであろう場所を通過していったのだ。
「おっ?ラッキー!」
しまった!筋肉バカのケビンにリンもろとも押し出される。
そして背後にはいつの間にか矢が地面に数十本突き刺さってる。このまま押されれば俺達は足場を失う。
いや、でもリンなら!
「リン!俺が一瞬だけ止める!エレナを頼む!」
「わかった!」
足場の悪い場所に差しかかったところでケビンの突撃を止めるため刀を地面に差し、一瞬だけ前進するのを止める。
すぐにケビンは刀を倒してくるのだが、既にリンはバックステップして足場の悪い矢を伝い、エレナの方に向かっている。
しかしエレナもそう簡単には近づかせてはくれない。
まるでリンの進む方向はわかっているかのよう矢を打つ。
これでは中々近づくことが出来ない。
一方俺はケビン相手にやっと距離を取ることができたものの、刀を失ってしまっている。
そういえば初日エレナが矢を武器にして近接戦闘していたのを思い出し一本引っ張り、集中する。
気を使うから避けてはいたのだが、仕方がない。
「開放だ」
先程は部屋いっぱいに充満していいたので気が付かなかったが、今はこの庭を覆い尽くす勢いだ。
突っ込んできたケビンだが、まるで俺の手のひらの上で踊っている感覚だ。この殺気の中は俺のすべての感覚が通っているようだ。
斜めに踏み込み、突進を回避し勢いそのままにケビンを後方に投げる。
エレナを次はしようと思ったのだが、弓を上に構えている
これはどういうことだ?
「ずっと私が練習してきた技!【五月雨】」
まるで矢が雨のように降り注ぐ。なんてスピードだ。
集中していなかったらやられていただろうが、俺は降って来る矢が手にとるようにわかる。リンは逃げることが出来ずに矢が当たってしまったが、俺は冷静に刀を回収しエレナの首に突きつける。
「これで終わりです」
「くっ!あれが全部避けられるなんて」
「すげーなニコラス今のどうやったんだよ?!」
「いやーなんとなく?」
「あれは代々私の家に伝わる【影打ち】です。お兄様以来です。見たのは」
どうやら俺のしていたのはあの幽霊お兄様から教わった【影打ち】というらしい。
影というのは中々いい名前かもしれない。
「すげーなニコラス!お前ならやっぱりやると思ってたよ!」
「ニコラスさん、、一体どうやって、、」
「う~んとエレナの光と闇について考えてたんだ。俺には闇の方があってるかなと思ってやってみたんだ」
お兄様のことを言うわけにはいかないので、少しだけ嘘を交えながら説明する。
「実は騎士団長の息子はニコラスさんとは逆の光です。これは二人の衝突が見てみたいです」
そうなのか。やはり父親似なのだな。
「また、休んで訓練を再開しよう。皆凄い上達してきたからこのままなら本当に勝てるかもしれない」
「「「おー!」」」
地下の修行が俺達一人一人を着実に強くしていってくれていたのを確認出来たので満足だ。
明日からも積極的に潜ろう。