第3話 上陸作戦
続きですわ!!
おハーブお嬢様の口癖が一般生活にも支障を及ばしておりましてよ
ちなみにこの小説は『第一次「異」世界大戦』という作品に影響をモロ受けています
新世界暦1年1月4日午前8時ー
《日本国 千代田区永田町 内閣総理大臣官邸 総理大臣執務室》
総理大臣の朝は早い。朝7時50分には通勤し、執務室に座る。
総理の側では政務担当首相秘書官が今日のスケジュールを総理に説明している。
「今日の予定は、この後8:30からアメリカ大使と会談、その後にフランス大使、ドイツ大使、イタリア大使です。これで午前の予定は終わりです」
「大使との会談ばっかりやんけ…アメリカ大使はどうせ『本国の位置知ってる?』って聞かれるだけだけど、仏・独・伊大使は『ロシアが侵攻してきたら対処してくれない?』って聞かれるだけでしょ、俺知ってる」
ヨーロッパ大陸は、先日定評があるイギリス空軍が、ボーイング E-3D早期警戒管制機とイジャーKC.2/KC.3空中給油兼輸送機を全機飛ばして偵察したところ、英国本土の真北3600kmにインドを発見。通信が繋がった事で、ユーラシア大陸の国と連絡が取れることになったのである。通常任務?知らない子ですね
そこで、イタリア・フランス・ドイツは軍を駐留させている日本とアメリカに何かあった時、自衛隊と米軍が参戦してくれないかと打診してきたのである。
当初は断ったのだが、中々にしつこかった。
その時、扉が勢いよく開かれ、内閣官房長官が現れる。
「おお、どうした?あとドアは静かに開けようね」
「総理!大変な事が起きました!!」
心底慌てた様子の官房長官に首を傾げながら、総理はコーヒーを飲む。
「そんなに慌てるなよ。何があった?北朝鮮が核撃った?」
「そんなの比ではありません!詳細不明の武装勢力が北海道白糠町に上陸!!艦砲射撃と爆撃によって多数の死傷者が出ているとのことです!!」
その言葉に、総理は飲んでいたコーヒーを政務担当首相秘書官にぶっかけ、叫ぶ。
「コーヒー飲んでる場合じゃねぇ!!」
「アッツ!アッツ!」と言っている政務担当首相秘書官を他所に、総理と官房長官は事態を把握するために、2日ぶりに危機管理センターに向かって行った。
◇◆◇
新世界暦1年1月4日午前6時──
《日本国 北海道 白糠町 釧路警察署白糠交番》
「あ~寒いっすねぇ~」
「転移したと言っても経度が変わっても緯度は変わらないし温度はそのままなんだよなぁ…」
交番の奥の部屋のコタツでのんびりしているのは、福島巡査と川島巡査長。
「二人とも出身は県外だっけ?後これお茶」
「そうです…北海道は寒いって聞いてたけどこんな寒いって聞いていませんでしたよ…ありがとうございます」
こたつの上にお茶を置いたのはここの交番の責任者の斉藤警部補。ここの交番所長である。
「転移した時はみんなピリピリしてたから交番も大忙しだったが、落ち着いたから暇で良いな」
交番の4人の内で真面目に仕事をしている大橋巡査部長がペンを回しながら答える。
大橋は元陸自であり、それも精鋭中の精鋭のまた精鋭、陸上自衛隊特殊作戦群第1特殊作戦部隊零作戦分遣隊に所属していたが、交番の皆には陸自にいたとしか伝えていない。イラクでの怪我で除隊した後、交番に努めている。
「すいません…誰かいますかぁ?」
「はーい」
その時、外から声がかかり、近くにいた大橋が答える。
ドアを開けると、40代ぐらいの男性が立っていた。確か漁港の副責任者とかだった筈だ。
「どうかしましたか?」
「いや~すいやせん。漁師の連中が『沖合に軍艦がいっぱいいる!』って騒いでいましてね、私も見たんですが本当に居てね」
「『海上自衛隊の船じゃろ』って言っても『海自にあんな船はいない!!』って一点張りで…そこで警察の方々に説明してもらおうって…」
「はぁ…なるほど」
ロシアが無くなったとテレビで言っていた為、自衛隊が出てくるなど早々無いはず、と考えて首を傾げるが、行ってみなければわからない。
交番の中に入ると、斉藤警部補に声をかける。
「警部補…どうしますか?」
「う~ん、陸自にいた大橋君が適任だから行っておいで。僕たちも確認してくるから」
「助かります」
パトカーのキーと双眼鏡を取り、外に出る。副責任者を助手席に乗せて、漁港に行く。
着くと、堤防に人が集まって海を見ている。
「ほ~ら、あんたらが言うから警察さんに来てもらったで、解説してもらったらさっさと家におかえり」
「だから本当に自衛隊の船じゃないけに!!信じてけれや警察さん!!」
「はいはい、今見るから待っててね」
興奮状態の漁師を宥めてから双眼鏡を覗く。堤防の上に立って双眼鏡を覗と、沖合の戦艦が見えた。
「戦艦…だと!?何故ここに……!??」
海上自衛隊には戦艦が3隻いる。
『きい型戦艦』の『きい』『ひぜん』と『とさ型戦艦』の『とさ』だ。
両方とも良く特殊作戦の際、艦砲射撃をしてもらったから艦影は覚えている。
だが、双眼鏡に移る戦艦はどう見ても両艦の形とも違う。
背を冷や汗が流れた時、後ろの漁師の声が聞こえる。
「何だあれ?プロペラ機?」
「曲芸飛行かいな?」
双眼鏡を上にやると、第2時世界大戦時のレシプロ機が見えた。
そして、機の下方にあるのは──爆弾。
レシプロ機が急降下体制に入った瞬間、大橋は大声で叫ぶ。
「伏せろぉぉおぉぉぉぉぉぉお!!!!!!!!」
皆、ポカンとした顔になるが、何人か危険を察知したのか伏せる。
上空をプロペラ機が通った瞬間、海岸が爆発した。
「うわぁあぁぁぁぁあ」
「なんだぁぁぁああ!!????」
「爆撃だ!!」
素早く周囲を見回すと、伏せなかった人間も被害はないようだ。
すぐにまた堤防から顔を出すと、敵戦艦から火が上がった。
その光景が意味するのはただ一つ。自分もソレで木っ端微塵にされるテロリストを何人も見た。
艦砲射撃──
「耳を手で覆って伏せろぉぉぉぉぉ!!艦砲射撃が来るぞ!!!」
今度ば大部分の人物たちが状況を理解したのか、大橋の指示に従う。
そのまま砲弾は『ドンドンドン』という射撃した音と同時に着弾し、周囲に破壊を生み出す。
「うぉぉおぉおお」
「ひぃぃぃぃぃい」
爆発の熱風を感じ、周囲を見渡すと市街地から煙が上がっているのが見えた。
消防署と出てきた交番の方角にも煙が上がっていた。
「すぐにここから避難を!!海からは出来るだけ離れて山の奥へ行き、根室市の方角へ!!」
「家族はどうするんや!!」
「携帯で連絡してください!お辛いですが、自分の命を守るのに専念してください!!!」
「山には道がねぇべ!!!」
「車は衝突の危険性があるので出来るだけ使わないでください!!」
漁師たちを逃すと、パトカーの無線をとる。
「至急、至急。白糠2より本部へ、未確認敵対武装勢力が沖合に展開!!上陸しようとしている。至急自衛隊の応援を要請する!!」
『…本部より白糠2へ、状況は正確に報告せよ』
「だから、軍隊が上陸しようとしてんだ!自衛隊を要請しろ!!」
そう言って無線を切って、第1特殊作戦部隊零作戦分遣隊の時の部下が、確か幹部になっていたのを思い出す。
その相手に送る為、スマホで写真を取り、メッセージアプリ、LOADで写真を送る。
それが終わったらパトカーのエンジンをかけ、ランプを鳴らしながら市街地に入る。
交番のあった方角に行くと、交番は見るからに破壊し尽くされていた。
「クソッタレ!!」
敵軍に悪態をつくと、山に潜伏するために彼は走り始めた。
◇◆◇
新世界暦1年1月4日午前7時──
《日本国 北海道 白糠町より南2kmの海上》
「くそっ!どうなっているんだ!!」
前部・後部に連装砲2基ずつを配置された、籠マストの戦艦の艦橋で一人の男が叫ぶ。
戦艦はアメリカ海軍が第2次世界大戦前に建造したビック7の一角、『コロラド級』に似ている。
「本来あるべきではない陸地が現れるなど…どう言うことだ…」
「分かりません。ですが、本国からは『昨日0時より全ての海外州、在外公使館との連絡が途絶』との報告があり、その後我々が未知の土地を発見したと送信したら『未知の土地はスルトミウル第五帝国の土地の可能性が高い。上陸作戦は続行』と…意味がわかりません」
一人の男── アルトニウス帝国海軍第358上陸任務部隊指揮官『ウィリアム・K・ゴンザレス』中将が頭を抱える脇で、同じく第358上陸任務部隊主席上級作戦参謀長『ジョン・アシュラフ』大佐が話す。
彼らの母国、『アルトニウス帝国』は同じ世界の覇権国『スルトミウル第五帝国』と100年にも及ぶ大戦争、『100年大戦争(仮称)』を続けており、今回彼ら第358上陸任務部隊の目的は、争っている領土、『フォルカール大陸』でアルトニウス帝国軍が劣勢であり、劣勢を打開するため、スルトミウル第五帝国の首都、『スルトリウス』の目の前に強襲上陸し、フォルカール大陸にいるスルトミウル軍を少しでも分散させ、出来れば首都を占領し、この戦争に終止符を打つ予定だった。
だが、4日前に濃霧が艦隊の周りを覆い、晴れた瞬間星の位置が変わった事で大混乱になった。
本国に連絡がつき、一旦は上陸作戦は中止と伝えられたが、昨日、大地を見つけたと報告したら上陸しろと命令が来た。
ウィリアム中将は危険を犯すのが嫌いな所謂『穏健派』であったため反対したが、第358上陸任務部隊上陸陸軍指揮官『ジェームズ・デヴィッド・アームストロング』少将らを筆頭とする『急進派』が上陸を主張し、本国からの命令もあったことから上陸することになった。
「中将、命令と有れば仕方ありません。上陸をすべきです」
「そうだな。全軍に通達、上陸開始せよ」
「はっ」
数分後に、後方にいる第358上陸任務部隊空母機動艦隊から発艦した『ロルスロット攻撃機』が爆弾を目の前の海岸に爆弾を投下する。
堤防が破壊され、ミリタリーマニアが見れば『SBD ドーントレス 』を思わせる『ロルスロット攻撃機』や『TBF / TBM アヴェンジャー』に似ている『フィラル雷撃機』、『F4F ワイルドキャット』と瓜二つの『アイリカルス戦闘機』が住宅街上空を乱舞する。
数分後、またもや『コロラド級』に似ている『ムスリードル級戦艦』、『ムスリードル』と『フォルストール』、『テネシー級戦艦』に似ている『ヒラストリカルド級戦艦』の『ストリード』、『レキシントン級巡洋戦艦』を思わせる『マリスト級巡洋戦艦』、『ラリストリーム』の、40cm砲、35.6cm砲が火を吹く。
海上からの砲撃は精度が悪い為、市街地にも数発が落ちる。ウィリアムは無抵抗の市民を虐殺するのを心の中ですまないと思いながらそれを見つめる。
海上では、200にも及ぶ上陸用舟艇が前進し、海を割る。
「(何故だ?この変な予感は…?)」
ウィリアム中将は、変な予感を感じながら、陸軍上陸部隊が海岸に上陸するところを見つめていたのであった。