第2話 国交を結ぶにはなんかしないとね
続きですわ!
新世界暦1年1月2日──
《トルクオル皇国 東部有力諸侯サファエル家 諸侯都サフィス 西側飛行場》
「飛行場のようだな」
「ワイバーンがいっぱいいますね」
日比谷・佐藤・望月の三人は西側飛行場に足をつけた。目の前にはパイロットの様な格好をした人々が三人を不思議そうに見つめている。
どうしようかな迷っているとある40代~50代ほどと思われる男性が前に出た。
「男性?」
「何かしら大層な服を着てますよ」
見るからに上位階級の服を着ており、周りには護衛の様な騎士も見える。
上位階級(暫定)の男性は、近くにいた騎士団の長の様な人からあるものを受け取る。
「真珠?」
「土台の上に大きい真珠を置いている様ですね」
三人が不思議がっていると、真珠が眩しく光る。
「!?」
「なんだ!?」
三人が不思議がっていると男性が話し始めた。
「ようこそ日本国の方々。私は第36代サファエル家当主、ルルカール・サファエル。爵位は侯爵だ」
貴族が現れたというより大きな衝撃が三人を襲った。
「「「言葉がわかる!?」」」
その言葉にルルカールと名乗った男は苦笑し、手を奥に見える城のような建物を指す。
「立ち話もなんだ。まあ、今のことを含めて城で話そうではないか」
その言葉に三人は起動し、MV-22の機内で待機していた特殊作戦任務部隊の隊員を呼び、ルルカールが呼んだ馬車に分散して乗り込んだ。
◇◆◇
5分後──
《トルクオル皇国 東部有力諸侯サファエル家領地》
「不思議だな」
「はい、どうやらあいつらはルルカールと名乗った男の言葉は認識できなかったそうです」
先ほど起こった不思議な事に、馬車の室内で三人が話す。
「と言うことはあの真珠のような機械で我々だけが相手の言語を理解できるようになったのか」
「他にも未知の国のようなものがあると聞いています。できれば持って帰ってみたいですね」
話をしていると馬車が止まり、ドアが開かれる。外には綺麗な中庭があり、目の前には中世ヨーロッパの城の様なものが見える。
「凄いな…観光客を呼び込めばかなり反響が凄そうだ」
「まずは国交を結ばないとな…行こうか」
前に来ていた執事についていくとある部屋に辿り着いた。執事がドアを叩き、声をかける。
「日本国の使者様方々、入られます」
「うむ」
重く高級そうなドアを開けると、中央の長机にルルカールと他数人が座っていた。
「ようこそ来てくださった日本国の方々。私は先ほども名乗ったが第36代サファエル家当主、ルルカール・サファエル。皇帝陛下から公爵の爵位を授かっている」
「こやつらは私の家臣だ。よろしく頼む」
ルルカールが名乗ったので、日比谷達も自己紹介を始める。
「日本国外務省に所属する日比谷誠と申します。今日はお招きくださりありがとうございます」
「同じく外務省の佐藤隆氏です。本日はよろしくお願いします」
「海上自衛隊特殊作戦任務部隊第1群団第1連隊長望月大翔1佐です。お二方の護衛を務めています」
三人が自己紹介をすると、ルルカールの側にいた家臣達が話し始める。
「やはり伝承通りか……つまり勇者はあの望月と言った軍人かね?」
「そのようだな、大佐の階級(皇国側では1佐は大佐と変換された)であるし顔も悪くない。姫様にピッタリだな」
「日本国……日の本の国か!まさか実在するとは…今まであの伝承を疑っていたが本当の様だな」
家臣の言葉に三人は首を傾げる、伝承と勇者という言葉に引っかかったのだ。
「(伝承?勇者?某ファンタジーゲームみたいだな)」
「(姫様にピッタリ?どういう事だ?)」
「あの…すいませんが、我々が貴方達の言葉を知ることができる理由と、その伝承について教えてほしいのですが…」
日比谷の言葉にルルカールはすまなそうに答える。
「おお…すまなかった。私から説明しよう」
「この国の名は『トルクオル皇国』。人口250万人、首都はトルコール。皇帝陛下、トルクオル36世様が統治しておられる」
「さて…伝承というのはこの国に伝わるある物語のことだ。物語の名は『トルストリウス伝説』」
「その内容はこうだ」
トルストリウス伝説 第7章
夜に皇国が光に包まれしほど、皇国は新たなる道を歩むならむ。日の本国といふ名の国が巽より来るならむ。
日の本国は皇国の盟友となるならむ。日の本は食料の代はりにこの国を豊かにするならむ。日の本国の使者は東部諸侯サファエルの地に、巽より鉄竜使ひうちいづるならむ。鉄竜には三人が乗りておらる。二人は使者に、この国と国交を結ばむとしくるならむ。一人は勇者に、皇都に来襲する魔獣同じく鉄竜に乗れる者どもと倒すならむ。勇者、サファエルの娘と婚約するならむ。
「このとおりだ。貴方達が来ることは既に知っていたのだ」
「はぁ…」
外交官達は安全そうに国交を結べると安心し、古代の伝承が古文に似ている事に首を傾げていたが、望月はそうでなかった。
「すいません…私結婚しなきゃいけないんですか?」
望月の問いにルルカールは答える。
「ああ、流石に娘の顔を知らなければいけないな」
「えっ」
「王にもう報告したが2日後に王宮でもてなすという事だ。その間娘に城下町を案内させよう」
「ちょ」
いきなり結婚させられそうになり、望月は日比谷に目を送る。日比谷はそれに頷きルルカールに声をかける。
「ルルカール殿、よろしいですか……」
「(日比谷さん…ゲロ吐きクソメンタルメガネ野郎だと思っていたが…いい奴だったか…)」
「我々の目的は貴国と国交を結ぶ事です。あと食料を分けて欲しいですが…」
「(よし、あと一押しだ!行け日比谷!)」
「うむ、我が国は植えた種は一週間で収穫できるぞい。望月君が結婚してくれたらどのくらいでも分けるぞ」
「是非とも望月さんと貴方の娘さんの婚姻の予定を立てましょう」
「おぃぃぃぃぃぃい!!!」
あまりのクルックルワイパー発言に望月が突っ込んだ後、会談は終了した。