第1話 はじめての接触は大事、はっきりわかんだね
続きですわ!
ウマ娘の推しが多すぎて辛い
新世界暦1年1月1日──
《日本国 東京都 千代田区永田町 総理大臣官邸》
「よかったよかった、無事に落ち着いて」
穏やかな顔でおせちを食べるのはこの国の政治のトップ。
「これ見て良かったと思います?」
側で胃を痛めているのは、医薬が友達の人。
彼はテレビのリモコンを持つと、適当な番組を映し出す。
『ご覧ください、国会議事堂前では、母国が未だ見つかっていない人々がデモをしています』
『伊藤さん、政府はどのようにすべきだと思いますか?』
『先ず第一ね、食糧をどうにかしないといk…ブチッ』
すっと、官房長官からリモコンを奪って、電源を消す総理。
それを官房長官はジト目で見つめる。
「食料の確保が第一ですよ」
「オーストラリアが見つかったからええやん」
「思い出してください、近くにいる国を」
官房長官は資料を総理大臣に手渡す。
「えっと…イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、太平洋の諸島、インドネシア、シンガポール、フィリピン、ブルネイ、パプアニューギニア、スリランカ、台湾、グアムとハワイだね」
「ほとんどの国が食料自給率がやばいですよ」
「オーストラリアも自分の国の分だってあるし均等に分けないといけませんよ」
「………」
官房長官がそういうと、総理は某ロボットアニメの司令官のポーズを取る。
「官房長官…オーストラリアに賄賂を…」
「駄目に決まってんだろ」
「(´・ω・`)」
馬鹿なことを言い出した総理に官房長官ツッコミを入れる。
「まあ、今他に重要なことは自衛隊が見つけた島ですかね」
「ああ…2つあるんだっけ?」
すでに自衛隊の哨戒機によって二つの島が発見されていた。
官房長官は資料を取り出し捲りながら喋り始める。
「はい、先ず最初に見つけた島はこちらになります」
そういうと官房長官は資料を総理の目の前に置く。総理は資料を見ながら首を傾げる。
「我が国の北西1200kmの地点に確認できました」
「中世?」
「はい、ドラゴンのようなものも確認されています」
「ファンタジーだな。ふ~ん、外交官派遣すっか」
「国のようですからね、そうした方が良いと思います」
「そんで2つ目は?」
「これになります」
総理が写真を見ると、1900年レベルの都市が確認できた。
「こちらは我が国の南南東600kmの地点です」
「ほう…こっちも文明があるのか…」
「はい、港には戦艦も確認できます」
総理が資料を捲るとオライオン級戦艦のような艦が確認できた。
「うん、戦艦もあるのか。こっちも戦艦を出そうかね」
「『きい』ですか。護衛艦であったら至近距離は戦艦相手ではきついですからね」
「あと、ここの国は石油が確認できます」
「マ?」
「本当です」
官房長官が資料を捲ると石油コンビナートのような施設が確認できた。
「規模は不明ですが、石油を取り出せるほどの設備はあるようです」
「我が国より文明レベルは下のようなので、安全保障の代わりに石油の掘削権を入手できればいいですね」
「イギリスが検討してる奴でイニシアチブを取れるな」
イギリスは転移した国が確認できた時点で群島海条約機構の設置を検討していた。
群島海とは、イギリスと日本が決めたここの地域の名前である。
「2島には外交官を派遣するように外務省に伝えてくれ」
「わかりました」
こうして日本は異世界での第一歩を踏み出した。
◇◆◇
新世界暦1年1月2日──
《日本国より北東1200kmの海上 海上自衛隊第1艦隊第3揚陸隊所属しきしま型強襲揚陸艦『はつせ』》
「オロロロロロロロロロロロロロロロロロ」
「海に落としますよ」
甲板の脇で海にゲロを吐いているのは外務省の職員『日比谷誠』、日比谷にゲロではなく毒を吐いているのは同じく外務省職員の『佐藤隆氏』である。
「ウエッ…酷くないか佐藤くん。私は君の上司であるのだから…」
「馬鹿言わないでください。早く行きますよ」
「やだ!」
「テメェは3歳の子供か」
日比谷と佐藤は大学の先輩後輩であるので仲が良い。
「待て待て、考えてください佐藤くん。相手は北センチネル族もびっくりな凶暴な民族の可能性もあります」
「大丈夫ですよ、海自の護衛も着きますし、AV-8Bも着きます」
「そうか、うん、そうだな。私が世界初めての接触する外交官に選ばれたのならちゃんと仕事をしないといけないな」
「あっそれ違うみたいですよ」
「えっ」
「なんか相手が攻撃してきたとして外交官が殺されたとしても大丈夫なように適当な人を選んだそうですよ」
「うせやろ」
「あっ、もうすぐ時間ですね。特殊作戦任務部隊の皆さん宜しくお願いします」
「いやダァぁぁぁぁぁぁああ行きなくなぃぃぃぃぃいぃ」
「もういいから乗せちゃってください」
「ヤダイキタクナイヨーーー!!!」
「いいから早よ乗れや(真顔)」
「ヤダー!!」
「早よの…早よ乗れっ…早よ乗れやゴラァ!!」
「!?」
駄々をこねる日比谷を座席に座らせるとCMV-22Bは離陸して、一途島の方へ向かっていった。
◇◆◇
5分後──
《トルクオル皇国 東部諸侯サファエル家 諸侯都サフィスより南東2km》
「はぁ…はぁ…」
「男ならシャキッとしてくださいよ」
「うん…」
特殊作戦任務部隊の男たちに連れてかれて機内に押し込まれた日比谷は、『はつせ』を見つめていた。
「言葉通じなかったらどうすんよ」
「それは身振り手振りでやるんですよ。身振り手振りは世界共通です」
「えぇ…」
「島に入ります」
パイロットの声が機内に響く。機内に緊張が灯る。
「!レーダーコンタクト。12時方向」
「『はつせ』に救援を」
「いや、相手を刺激させない方が良い」
海自特殊作戦任務部隊第1群団第1連隊長の『望月大翔』一等海佐が救援を要請しようとするが、レーダーを探知したことで自我を取り戻した日比谷が抑える。佐藤は『落ち着けば有能なんだけどなぁ…』と考える。
「!?あれは…ドラゴン!?」
「ファンタジー世界にでも迷い込んだか?」
ドラゴンは近くに来ると手を振ってこっちに来いと挨拶しているようにも見える。
「ついてこいということか」
「哨戒しているやつに見つかって良かったな」
数秒後、眼下の景色を見ると、中世のような美しい都市が見えてきた。
「美しいな」
「イタリアの都市を思い出しますね」
数分後、広場のような土地の上空をドラゴンが旋回する。
「ここに着陸しろってことか」
「よし、望月1佐以外は待機で宜しくお願いします」
望月は相手が友好的だった場合用に第1種礼装(冬服)を着ていた。
「分かりました。お前ら聞こえたな、命令あるまで待機だ」
「「「はっ」」」
「行きましょう」
「緊張するな」
後部ランプが開き、外が見える。日比谷は日本人として初めての異世界の土地へ足を踏み出した。