灯油を買いに行ったらアイドルの彼女ができた
是非、最後まで読んでくれると嬉しいです!
「あ〜、寒い寒い。ストーブは.....給油.....だとっ!?」
12月24日。
世間ではクリスマスイヴなどと騒がれ、世の恋人や友達の居る人間がイチャコラワイワイする日の朝。僕、如月和也は、高校が冬休みに入ったこともあり、家でダラダラしていた。
一人暮らしで家族と死別した僕。今日はファミレスのバイトもシフトを入れていないし、朝からストーブの前でゲームでもしようと思っていた矢先、灯油が切れていることに気付いてしまった。
「いや〜、買いに行くのダルいわ。明日行こ」
玄関に置いているポリタンクの中の灯油も、先週あたりに使い切った記憶がある。
本格的な冬に入った今、朝から約15kgもするタンクを持って帰るのは面倒極まりない。それぐらいなら、この寒さを我慢した方がいいと思った。
節電の為に電源コードを抜いた、ただの布団がかけられた机と化したコタツに足を入れた僕は、何気なくテレビを点けた。
そこに映っていたのは、僕と同じ高校に通う本物のアイドル、『火咲夏鈴』の特集番組だった。
番組の見出しには、『関西生まれの超人気アイドル!』などと書かれており、その人気ぶりは僕でも知っているくらいだ。
『明日やろうは馬鹿野郎。この精神が私を作ったんだと思います』
『懐かしい台詞ですね! 私も覚えてます!』
古い台詞だな、と思った僕だけど、何故だか今すぐ灯油を買いに行こうという気が湧いてきた。
学校でも人当たりの良く可愛い火咲さんに言われたと思ったら、男子は例外無く動くことだろう。
「行くか。温かいダラダライフのために」
3000円をポケットに入れた僕は、中身が無くても1kgの重量を持つポリタンクを手に、家のすぐ近くにあるガソリンスタンドへ向かった。
外はクリスマスシーズンということもあり、ケーキ屋のクリスマスケーキの宣伝を聞きながら歩いていると、あっという間に着いてしまった。
「「すみません、灯油を.....え?」」
寒い中、元気に働く店員さんに声を掛けると、全く同じ言葉を発した人物が僕の隣に居た。
チラッと姿を見てみれば、僕より少し背が低い、155cmくらいの背丈に、麦の様な茶色い髪。そして視線を吸い寄せる、赤みがかったトパーズ色の瞳。
間違いない、火咲さんだ。
「え〜っと、先にどうぞ」
僕なんかが話しかけていい存在では無いのが分かっているが、1人の客として譲ってあげたい。僕の家は近いし、彼女も早く帰りたいだろうから。
「如月くん.....だよね?」
「え? あぁ、うん」
「やっぱり! 学校でいつも1人だから、気になってたんだ〜!」
無邪気にぼっちである僕を刺してくるとは、流石だ。
彼女は人当たりが良いとは言ったが、正確に言えば裏表が無く、正直な人なんだ。
「どちらから先に入れましょうか?」
「彼女からで」
「彼からで」
「え〜.....き、決まり次第また呼んでください」
何故だ。何故僕に譲ろうとする。僕の方が先に譲ると行ったではないか。何故素直に受け取らぬ!?
困惑した様子の店員さんも、白い息を吐きながら業務に戻ってしまった。少しくらい、助けてくれたっていいんだよ?
「火咲さんからでいいよ。僕、家近いし」
「ううん。如月くんからでいいよ? 私もお家近いし」
「いやいや、火咲さんだって早く帰りたいだろうし、先に入れていいよ」
「いやいやいや、如月くんだって早く帰りたいでしょ? お願い、如月くんから入れて!」
両者一歩も譲らぬ譲り合いに、遠目に見ている店員さんが微笑んでいる気がした。
「よし、こうしよう。ジャンケンで決めよう。それでいい?」
「いいよ。勝った方が先に入れるってことで。じゃあ、最初はグー」
「「じゃん、けん、ほい!!!!」」
僕、グー。火咲さん、グー。
「「あい、こで、しょ!!」」
僕、パー。火咲さん、パー。
「「あい、こで、しょ!!!!」」
僕、パー。火咲さんも、パー。
まぁね。まだこれくらいはあるよ。確率的に低いけど、2人でやるジャンケンならまだ出やすい方だから。
両者一旦の脳内作戦会議を終えると、すぐに試合が再開された。
「「あい、こで.....しょ!!!」」
今度は2人ともチョキを出し、4回目のあいことなった。
まだ。まだ81分の1を引いただけ。次で決めればこの戦いは終わる。
「「.....あいこでしょ!!」」
ダメだ。またあいこだ。今回はグーで被った。
おいおい、僕達は朝から何をやっているんだ? ジャンケンをするために外に出たんじゃない! ダラダライフを送るためにここに来たんだッ!!
そんじょそこらの人とは理由が違う。
僕は己の理想を掴むため、精神をすり減らしながら来たんだ!!!
「決めるよ」
「うん」
「「あい、こで.....しょっ!!!!!」」
僕、パー。火咲さん、チョキ。無事に火咲さんの勝利に終わった。
「くっ、第3プランで行けば続けられたのに.....!」
「火咲さん? とりあえず店員さん呼ぶよ」
「う、うん! ありがとう」
何故か物凄く悔しそうな顔をする火咲さんを横目に、僕は店員さんを呼び、ジャンケンの結果を伝えて火咲さんのポリタンクに灯油の給油ガンを入れ、彼女に手で持っておくように説明してくれた。
「くちゅん!」
ゴウンゴウンと唸る給油機の傍で待っていると、火咲さんが可愛くくしゃみをした。
「薄着だからだよ。風邪引いたら仕事に障るし、僕のジャケット貸すよ」
「あ、ありがとう.....ございます」
僕は着ているジャケットを火咲さんに掛けてあげると、彼女は恥ずかしそうに俯いてしまった。
やっぱりこんな男のジャケットなんか嫌だよな。もっと爽やかイケメンな人の方が、体感的に3倍は温かいよな。
そして火咲さんの分の給油が入れ終わり、料金を払い終えて次は僕の番だと言う時、事件が起きた。
「どうしよう如月くん。重くて持てないや.....」
「.....どうして持って帰れないのに買いに来たの?」
「うぅ、こんなに重いなんて思わなかったの! お母さんに頼まれて来たんだけど、今回が初めてだから.....」
引き摺って行けばタンクに穴が空くし、中身が灯油なだけに危険物だ。このまま彼女を帰らせれば、様々な事故が起きかねん。
「すみませ〜ん!」
「はい、どうしまたか?」
「ちょっと彼女を送っていくので、タンクだけ置いて行っていいですか? すぐに戻ります」
「分かりました。ではこちらで保管しておくので、戻られたらあちらの事務所に来てください」
「はい。ありがとうございます」
僕は店員さんにお願いすると、快くタンクを持って行ってくれた。優しいサービスに涙が出そうだよ。
「き、如月くん?」
「僕が持ってくから、家教えて」
「わ、悪いよ! 今お母さん呼ぶから.....」
「いいって。折角お母さんに頼まれたんだから、心配かけたくないでしょ? こんな時くらい、近くに居る人を頼りなよ」
「.....うん。じゃあ、お願いします」
両手を合わせてお願いする火咲さんに頷き、僕は約15kgのポリタンクを片手に持った。
普段から鍛えていて良かった。持って行くと言った矢先、フラついていたら目も当てられん。
「凄い.....力持ちだね」
「僕も仕事上、鍛えているからね。じゃあ、案内して」
「うん!」
僕のジャケットをちゃんと着た火咲さんは、僕の隣を歩いて案内してくれた。
道中、趣味の話になり、まさかの火咲さんもゲーマーだったことが分かり、少しテンションが上がってしまった。
一般ゲーマーでも分からないコアな作品を言った時、火咲さんがやったことがあると言ったその瞬間、僕は半年ぶりに最高の笑みを浮かべた。
「ふふっ、初めて笑ってくれたね」
「そ、そう? 割といつも笑顔な気がするけど」
「いつもは作った笑みだと私は感じるよ。教室の端っこで本を読んでるし、私が話しかけた時もお面を被ったように作った笑顔だもん」
「え.....話しかけてくれたっけ?」
「お、覚えてないの!? 毎日話しかけてるよ!」
「.....記憶に無いな。人違いじゃない?」
「違わないもん! 如月くんは私の.....私の.....」
途中で勢いが落ち、そのまま轟沈してしまった。
それにしても、学校での出来事に興味が無さすぎて、誰が話しかけているのかも記憶が無いな。
最後に家族以外とまともに話したのは、小学生以来だ。
「そういえば家を出る前、火咲さんの特集観てたよ」
「ほ、ホント? 嬉しいな.....」
うわぁ、全然嬉しそうじゃねぇ。切るカード間違えたな、こりゃ。
「私ね。アイドル辞めようと思うの」
「.....なんで?」
突然ぶっちゃけすぎでしょ!
帰り道に話すような内容じゃないし、僕が聞いていい内容でもないだろ!?
「歌って踊る素敵なアイドルに憧れて、何回もオーディションを受けてやっと合格したんだけど.....現実は違ってね。恋愛は禁止。配信も禁止。友達も選ばなきゃいけないし、歌いながら踊る存在でもなかった」
「そ、そうなのか」
「うん。私だって高校生だよ? 好きな人と付き合いたいし、活動のためなら配信もしたいし、友達だって沢山作りたい。なのに.....全部縛られる。だから、辞めるの」
適当に相槌を打ったが、僕はその全部の制限が無いにも関わらず、恋人どころか友達もいないし、誰かの光になれるような存在でもない。
唯一配信だけはしているけど。
「如月くんも仕事上鍛えてるって言ってたけど、何してるの?」
「プロゲーマー。体力作りと反射神経の向上のために鍛えているんだ」
「え! 凄い! じゃあ大会とか出たりするの?」
「するよ。丁度来週に年末の国内大会があるね」
「.....それ、もしかしてこれ?」
そう言って火咲さんが見せてきたスマホの画面には、今し方話した大会について書かれている、公式サイトだった。
あぁ、ガッツリ僕の名前が載ってる.....
「それだよ。火咲さんも知ってたんだね」
「勿論! あの特集番組でも言ってたけど、私ね、
この『K4zu』って人が好きなの!」
ゑ? それ、思いっきり僕なんだけど!?
待て、待ってくれよ。番組は途中までしか見てないから、そんな話聞いてないんだけど!
「そ、そそそ、ソッカー。勝テルトイイネ!」
「その反応.....もしかして本人?」
「いやいやいや全然? 違いますけど?」
「絶対本人じゃん! なんで気付かなかったんだろ.....もう!」
バレた。
ごめんね。普段は声とゲーム画面だけの配信で。こんなに普通の顔の人間とは思わなかったよね。生きててごめんなさい。
「如月くん、昔からゲーム上手だったもんね」
「む、昔から?」
「うん。小学生の時、一緒にゲームしてたじゃん」
.....ん? 確かに僕の記憶には、小学生の時、一緒にゲームをやった人が居たのは確かだ。でもソイツは確か、男だったはず.....
「お、覚えてない?」
横に振り向けば、後ろ髪を短く纏め、前髪を真ん中で分けた少年のような姿の火咲さんが居た。
間違いない、僕の記憶にある男の子の顔だ。
「.....思い出した?」
「うん。男だと思ってた」
「ひどい! 如月くんに言われてから女の子らしさを磨いて、果てはアイドルにもなったのに!」
「本当にごめんなさい」
まさか、火咲さんが俺の小学生時代の親友だったとは。
◇◆火咲夏鈴side◆◇
私は昔、女の子なのにやんちゃな性格をしていたせいか、友達が居なかった。
誰に話しかけても無視されて、次第に丸くなった私に対しても、誰かが話しかけてくれることも、話を聞いてくれることもなかった。
そんなある日、私は1人の男の子と出会った。
校庭の隅で1人で本を読んでいるその子の姿を見た時、私は無性に話しかけたくなった。彼の好きなものが知りたくて、彼の楽しいと思えることが知りたくて堪らなかった。
そして勇気を振り絞ってその子の傍に近付くと、彼はチラッと私を見た後、また本に視線を戻した。
『あ.....あの!』
『なに』
『好きなことは.....なんですか?』
『ゲーム。RPGからホラゲーまで、全部好き』
彼は私に目も合わせず、冷たく返した。
でも、私にとっては初めてちゃんと会話をしてくれた人であり、隣に居るだけで心がポカポカと温かくなった。
もっと知りたい。もっと話したいと思った私は、授業の休み時間を縫って、隣のクラスの彼に話をした。
そして何週間か経った頃、彼のお家でゲームをした。
2人で協力して進めるゲームで、私も彼もやったことがないゲームだったから、一緒に楽しめた。
その時、初めて彼は笑ってくれた。それも、私の目を見て。
その瞬間かな。私が彼を好きになったのは。
普段は冷たいのに笑顔は温かく、小さな私の変化にも気付いてくれた、気の利く優しい男の子だと知り、どんどんと私は恋に落ちていった。
でも、小学5年生になると、私は東京の小学校へ転校することになった。
理由はここに来て、私がクラスで浮いていることが発覚し、いつも1人で居ることが先生に、そして両親に伝わったからだ。
私は彼に別れを告げる間もなく、故郷の大阪を離れた。
そして私は、毎日毎日彼のことを想いながら過ごしていくうちに高校生になり、今や私の名前を知らない人は居ないくらいの有名アイドルにもなった。
アイドルを目指したのも、小学生の時、彼に言われた『歌が上手いね』の一言が全て。アイドルとなり、彼に見付けて貰いたい一心で打ち込んできた。
でも、現実は違った。
私はアイドルになんかならなくとも、彼を見つけることが出来た。私の光であり、傍に居ると心が温かくなる人。
彼の名前は『如月和也』
高校生になって、初めて初恋の人の名前を知った。
それからは人目も気にせず猛アプローチ。
せめて学校では高校生で在りたいと思った私は、友達作りよりも先に如月くんに話しかけていた。
そのせいかな。クラスではいつも1人の彼に話しかけているから、『あんな奴放っておこうよ』なんて言われ続けたのは。
私の行動を知った事務所の人が、『異性に話しかけるな』とか、『友達は慎重に作れ』とか言ってきて、思わず拳を握りしめたよ。
あの人は私の光。1人だった私を照らしてくれた、温かい炎のような人。
誰よりも負けず嫌いで、誰よりも一緒に居る人を想う、私の初恋の人。
そんな人に近付くなと言われれば、アイドルを続ける理由も無くなった。
だから私は、すぐに退職届を出した。
事務所のマネージャーから、果ては色んなスポンサーの人まで『辞めないでくれ』と言ってきたけど、あの言葉でアイドルとしての私は死んだ。
クリスマスイヴにやる特集番組は、私がテレビに映る、最後の作品。
だから是非とも、彼に見て欲しかった。最後まで。
そんな彼が今、私の隣に居る。あの時より背が伸び、ジャケットを脱いだシャツの姿の彼は、誰が見ても分かるほど鍛えている。
男らしくなった彼を見た時、私はまた恋に落ちた。
彼に抱きしめられたら、私は気絶する自信がある。
彼に愛を囁かれたら、もうそのまま死ぬ自信がある。
そう思える程に、彼は私を魅力した。
何気ない会話の一つ一つが楽しくて、非力な私に力を貸してくれる優しさが温かくて、ずっと一緒に居たいと思った。
もっとこの時間が続いて欲しいと思った。
だけど、もう私の家に着いてしまった。
さぁ、勇気を振り絞ろう。
あの日、如月くんに話しかけたように。
◇◆如月和也side◆◇
「ここか。意外と早かったな」
火咲さんと話していると、あっという間に家に着いてしまった。
どうにも彼女と話していると話題が尽きなくて、あれもこれもと聞きたくなり、もう喉がカラカラだ。
明日の配信の為にも喉は大切にしておかないとだし、タイミングが良いと言えば良いのかもしれない。
「あ.....あの!」
「なに」
しまった。喉を労りすぎるあまり、冷たく返してしまった。
違うんだ火咲さん。本当はもっと君と話がしたい。今のは間違いなんだ、許してくれ。
怒られる。そう思っていたが、火咲さんから告げられた言葉は俺の予想を遥かに上回るものだった。
「好き.....です! 付き合ってください!」
え? ちょっと、脳の処理が.....追いついちゃった。
「はい、勿論。もっと火咲さんと話がしたいし、もっと一緒に居たいと思いました。小学生の時は友達だと思っていたけど.....今日からは恋人として、一緒に居たいです」
な、何を言ってるんだ僕は! よくもまぁこんなに言葉が思い付いたな! 凄いよ! 自分で自分を褒めてあげたくなる!
いいのかな。返事はこれで、良かったのかな?
「えへ、えへへ。嬉しい」
僕のジャケットの袖で顔を覆う火咲さんを眺めていると、突然家のドアがガチャりと開けられた。
「あらあら、お家の前でカップルが誕生しちゃったわ!」
「お、おおお、お母さん!?」
「初めまして。夏鈴の母です。もしかしてあなたが如月和也くん?」
「はい。初めまして、如月和也です」
は、早い。親への挨拶が光の速さだ!
それにしても、この親にしてこの子ありというか、母親が美人だと産まれてくる子も美人なんだな。
火咲さ.....夏鈴さんとは違って、おっとりした雰囲気だ。
「あらぁ、いつも夏鈴から話は聞いているわぁ。それにしても.....あ、灯油! ごめんなさい、上がってちょうだい! しかもジャケットまで!」
「気にしないでください。僕がやりたくてやっているので」
そして家に上げてもらった僕は、お昼ご飯を一緒に頂き、温かいストーブの前で、暫く3人で話をしていた。
「如月くん。その、下の名前で呼んでもいい.....かな?」
「いいよ。じゃあこれからは夏鈴って呼ぶよ」
「う、うん.....和也、くん」
ああああぁぁぁぁぁぁあ!!!!! 死ぬぅぅぅ!!
ちょっとお話しして、『この雰囲気にも慣れてきたかな?』とか思ってたけど、やっぱりダメだぁ!!!!
ただでさえ可愛いと思った夏鈴が、更に可愛く、美しく見える。
これが.....恋!?
天国に居る父さん、母さん。和也という名前を付けてくれてありがとう。今この時ほど、この名前に感謝したことは無いよ。
「あら、もうこんな時間! 和也くん、そろそろ帰った方がいいんじゃない?」
夏鈴のお母さんがそう言うと、時計の針が午後7時を指していた。
「確かに。それじゃあ僕は、これで」
季節的にもう日が落ちているし、これ以上長居するのも悪いしな。もっと一緒に居たいが、ここはグッと我慢して家に帰ろう。
そう思って立ち上がると、夏鈴に袖を掴まれた。
「.....もっと一緒に居たい」
寂しそうに、上目遣いで言う夏鈴。
あんまり親の前でこういうことはしない方がいいんだろうけど、今だけは許して欲しい。
僕は夏鈴を抱きしめ、耳元で囁いた。
「これからは一緒に居れるから、大丈夫。大好きだよ」
「.....きゅぅぅ」
「おっと」
効果抜群.....どころかオーバーキルしてしまった。
あまりの刺激に気絶した夏鈴をお母さんに預けた僕は、最後に『お邪魔しました』と言ってから、家を出た。
そして帰り道。良い香りのするジャケットを着た俺は、自宅の前で立ち止まった。
「何か忘れている気がする」
家の鍵か? と思い、ポケットに手を入れると、そこには3000円が。
この3000円は何に.........あっ!!!
「そうだ。俺、灯油買いに外に出たんだ」
灯油を買いに行ったら、アイドルの彼女ができました。
息抜き短編でした!
最近はゲームのしすぎで書く時間が減ったので、リハビリも兼ねての今作! 中々上手くいった自信がアルマジロ。
たまには短編も良いなと思った、元短編嫌いのゆずあめでした。では、またどこかで!