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同級生の氷河さんの前世は僕の飼い猫だった様です 〜懐かれていないと思っていたら、ただのツンデレ娘だった件について〜

作者: 近藤ハジメ


 俺の学校には氷河つららと言う、とんでもない美少女がいる。


 釣り目っぽくて目付きも鋭いく、身長が高くすらっとしていてスタイルも良い。男子が大好きなおっぱいもでかい。


 ただ基本的に男子には塩対応で、サッカー部のエースやイケメンの先輩が告白しても断られたらしい。

 仲が良いのは一部の女子だけで、彼女達経由で繋がりを作ろうとする男子諸君は完全にシャットアウトされてしまう。


 そして半年ほどで男子達による不戦協定が結ばれ、彼女にアタックするのは禁止になった。学年が変わって初めて同じクラスになったが、彼女に告白するのは一人か二人しか見ていない。

 そのどちらも一年生で、その後に親衛隊にしばかれているのを見た。


 つまり、彼女は男子が触れる事を許されない高嶺の花なのだ。


「ジー……」


 そして、そんな氷河さんに睨まれてるんだが、俺って何かしましたかね? 何かの間違いじゃないのか?


「ジー……」


 いや、思いっきり見てた。

 鋭い視線だから余計に睨まれてるみたいで、背筋がゾクゾクする。


「お前ら今日はさっさと帰れよー、俺も帰れねーから」


 相変わらずこの先生はぶっちゃけるな、

もう放課後か。今日は時間が過ぎるのが早かった気がする。

 さて、今日は好きなアニメがやる日だ。

 さっさと帰ろうと鞄に荷物を詰める。ちなみに教科書は学校に置いて帰っている。重たいし、どうせ勉強なんてしないからな。

 その時だ、俺の机に影が出来た。誰かが机の前に立っているのだろう。


「あの、柊さん」


 顔を上げると氷河さんが立っていた。

 柊? ふむ、誰の事だ?


「貴方です、柊香流さん」

「あ、俺?」


 そう言えばこのクラスに柊は俺しかいなかった。

 だが一体俺に何の用事だろうか。今まで一度も話した事も無いし、面倒事に巻き込まれるのは御免だからなるべく関わらない様に振る舞ってきたはずなんだが。


「今日の放課後、少し時間を貰っても良いですか?」


 一呼吸置いて氷河が言った。


「ふぇ?」

「は?」「え?」「まじで?」


 俺を含めて、この教室にいたクラスメイト全員から呆けた驚きの声が漏れる。

 な、なんだ、その


「まじかー」

「いやいや、あり得ねえだろ」

「でも氷河さんって女の子としか遊んでるの見た事ないよ?」

「って言う事は?」

「いや、でも、柊だぜ?」


 おい、周りのクラスメイト達よ、酷いことを言うな。俺もそう思うけどよ。


「ダメ、ですか?」


 うるうるとした目で言われる。


 やばいやばいやばい。どうするのが正解なんだ?

 ①断る。論外だ。そんな事をしたら、氷河神への背信行為として親衛隊に抹殺されてしまう。

 ②何の用事か聞く。馬鹿か、女の子に誘われた時は用事を聞いたらダメだ、とあのダメな担任が言ってた気がする。

 ③了承する。何の用事か分からないが、氷河さんの誘いだ。断るよりも了承してしまえば、親衛隊を刺激する事も少ないと思われる。

 これが一番無難か。


「モ、モチロンイイヨ」

「良かったです。では一緒に帰りましょう」

「え?」

「すぐに準備して来ますね」


 い、一緒に帰るの?






 いつもは注目なんて浴びない下校の時間、俺はいつもの千倍は視線を感じていた。

 それは隣を歩く氷河のせいだ。


「ちっ、何であんな奴が」

「俺も狙ってたのによ」

「氷河さん彼氏出来たのでかな?」


 彼らは妬み辛みを殺気に変えて、視線と共に送って来た。視線で背中がチクチクと痛いが我慢して歩く。


 そんな事よりも隣を歩く氷河の方が問題なんだ。


 いつもは何者も寄せ付けず、近付く者は皆殺すと鋭い視線を放っていた氷河だったが、今はやんわりとした空気が漂い、明らかにいつもとは違う。

 それこそ、彼氏と歩いているかのようなーーーー。


「……いや、有り得ないか」


 あの氷河さんが俺を好きなんて有り得ない。

 もしあったとしても、俺が親衛隊に殺される。


「何が有り得ないんですか?」


 不思議そうに見上げて来る氷河さん。女子にしては身長が高い氷河さんだが、流石に男子の俺よりは背は小さい。そのせいで上目遣いになって、軽くダメージを受けるが耐えた。


「いや、何でも無いよ。それよりもどこに行くんだ?」

「静かな場所でお話ししたいので、公園に」

「了解だ」


 そのまま少し歩いて、学校から離れた人気の無い公園に入った。

 公園なのに人気が無いのもどうかと思うが、この公園には高い木が生い茂っていて太陽の光があまり入らず、いつも薄暗いのだ。

 だから子供用の遊具があっても、子供が遊びに来る事はほとんどない。

 大抵は老人の散歩コースになっている。そのせいなのか、かなり離れているはずだが公園の外の車の走行音がやけに大きく聞こえた。


「えっ、と…………」

「…………」


 公園のベンチに座ってから十分が経ったが、沈黙が続いていた。

 氷河さんは俯いたままだったが、意を決したかの様に話し出した。


「あの、柊さん。信じてくれないと思いますが、聞いてくれますか?」


 何を言われるのかと俺も不安になって身構える。

 氷河さんも深呼吸をして呼吸を整える。

 そしてバッ、と顔を上げて、と俺を見上げて言った。






「私、つららなんです」






 ん?


「知ってるよ、氷河つららだろ?」


 もしかして、俺が氷河さんの名前も分からない馬鹿だと思っていたのか?

 いや、流石の俺でも人の名前はちゃんと覚えてるって。


「ち、違います、猫の方です」

「え? 何でそれを柊さんが知ってるの?」


 俺は昔、「つらら」と言う猫を飼っていた。グレーの毛並みが美しい猫だった。残念ながら俺が中三の時に病気で死んでしまったが、今でも「つらら」の写真を待ち受けにしている。それくらい大好きだったから。


「だから、私が猫のつららなんです!」


 珍しく氷河さんが声を荒げた。


「いやいや」

「むう、やはり信じてくれませんか」


 否定すると不満そうに頬を膨らませる氷河さん。なにそれ可愛い。

 すると下を俯いて何やらぼそっ、と呟いた。


「…………中学一年の秋、桜木さん」

「っ!!?」


 何故、それを知っている……!?

 俺の初恋くろれきしは誰も知らないはずなのに!


「…………机の上から二番目の引き出し。ベッドの下、それとクローゼットの冬服ボックスの中」

「ちょ、待て待て待て!!」


 次々の神の本の隠し場所を言い当てる氷河さんを慌てて止める。


「何でそんなのを知ってるんだ!!?」

「私がつららだったからです」

「いや、つららにだって見せた事ないぞ、そんな事!」

「だって柊さんはいつも部屋の扉を開けたまま学校に行ってましたから。簡単に忍び込めましたよ」


 た、確かに俺は部屋の扉を開けていた。つららはいつも俺の部屋に入って来て、学校から帰って来るとベットの中に潜り込んでいる事も多々あった。

 時々クローゼットの中に入っている事もあったが……。


「まさか、本当につららなのか…………っ!?」

「そうですよ、御主人様」


 目を細めてにこりと笑う氷河さんの姿が猫のつららと重なった。


「やっと信じてくれた」


 そう言うと氷河さんがこつん、と俺の肩に頭を乗せて来た。その重さに懐かしさを感じる。


 昔はもっと小さかった。

 俺があぐらを組むとその上に小さな身体で乗って来て、顎の下を撫でると喜んだっけ。


 ただそれもたまに乗って来るだけで、一週間に一度乗ってくれれば良い方だった。


「御主人様、大丈夫ですか……?」

「あれ? おかしいな、何で……」


 氷河さんが心配そうな顔で覗き込んだ。


 自然と俺の頬に一筋の涙が流れていた。

 その一筋の涙が塞き止めていたのか、次から次へと涙が溢れ出て来た。


 氷河さんに抱き締められた。


「氷河、さん……?」

「御主人様、私の胸で泣いて下さい」

「でも」

「私はつららですから。昔の様に」


 そうだった。

 俺が泣きたい時はつららを抱き締めて泣いていた。

 ああ言う時だけはつららは逃げずにいてくれた。

 

 俺が何度涙を流してもつららは頬を舐めて慰めてくれた。


 ああ、ダメだ。もう限界だ。


「つらら、つらら!」

「はい、私はここにいますよ」

「ごめんな、ごめんな! 俺がちゃんと病院に連れて行って、ちゃんも栄養に気を使ってーーー」

「はい、はい」


 俺が何度も謝って、つららがずっと慰めてくれた。







 それから三十分くらい、ずっとつららの胸で泣いていた。

 女の子の前であんなに泣くなんて、恥ずかしくて赤面して来た。


「氷河さん、ごめんね」

「いえ。むしろ嬉しかったですよ」

「お詫びに何でも聞くよ」

「飼い猫として当然の事ですよ」


 氷河さんが柔らかく微笑んだ。

 こんな姿、親衛隊や学校の連中が見たら卒倒するレベルに可愛い。


「ところで気になったのですが、どうして氷河と性の字で呼んでいるんですか?」

「いや、だって、いくら前は俺の猫だったとしても今は学校一の美少女だし……」


 氷河さんに理由を説明すると「むう」と頬を膨らませた。

 そして何を思い付いたのか、僅かに口角を上げて言った。


「私の胸、御主人様の涙のせいでびちゃびちゃになってしまいました、どうしましょう……」

「うぐっ」

「お詫びにつららと呼んでください」

「待て、それはお詫びなのか?」

「何でも、と言ったのは御主人様でしょう?」


 実際、氷河さんの胸元は俺の涙で濡れていた。

 自分で言う事を聞くと言った訳だし、約束は守らないとな。

 すぅ、と深く息を吸って呼吸を整えてから言った。


「つらら」

「はいっ」


 つららは名前を呼ばれただけで嬉しそう笑った。








「ところでどうして同学年で転生してるんだ? だって、つららが死んだのって俺が中三の時だったはず…………」

「それは神様の力です」


 ご都合主義の漫画かよ。

短編なので終盤は簡単に書きました。反響次第で連載版も投稿する予定です。皆さん、高評価などよろしくお願いします。



ここまで読んでいただきありがとうございます。作者のモチベーションアップに繋がるのでブックマークや高評価、感想などよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 猫らしい甘え方が琴線にふれました、可愛い。 お幸せに、と思いました。こういうシチュ大好きです。
[良い点] クールビューティなつららちゃんが香流くんの亡くなった飼い猫が転生した姿なのが驚きでした。その上素敵ですね! [一言] 香流くん、つららちゃん。これからもお幸せに!
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