Episode1-1
「ふぅー、今日も仕事終わったー!」
僕、神田 漣はいつも通り仕事を終えて帰宅しようとしていた。そしてその途中いつものように幼馴染みに呼び止められるんだ。
「れーんー!一緒に帰ろ?」
「いいけどさ、他に一緒に帰ったりとかする人いないの?」
「そういう漣だって私以外にいるの?」
「うげ、それ言われたら何も言えないけどさ」
「でしょ?ほら、一緒に帰ってあげてるかわいい幼馴染みに感謝しなさい!」
「……いつもありがと、凛」
「……こちらこそだよ、漣」
正直に言う、僕はこの幼馴染み、群道 凛華の事が好きだ。でもその気持ちは胸の奥にしまっている。それは彼女の身体に理由がある。
「今日も病院だったんでしょ?どうだった?」
「んー、あんまり良くはなかったかなぁ」
「そっか……」
「でも私にはRainさんがいるから!」
「……そうだね」
「漣も始めたら?みんカラ」
「僕はいいよ」
「ちぇーっ、漣と一緒に歌いたかったんだけどなぁ」
「気が向いたらね?」
「いいもんね!私はRainさんに名前も覚えてもらってるんだから!」
「それは良かったね」
「うん!じゃあ……また明日ね!」
「うん、また明日」
こうして凛華と別れた僕は一人暮らししているマンションに帰ってきた。ここから僕の、いや俺の活動が始まる……
私、群道凛華は漣くんと別れて自宅に戻るとすぐ、スマホでみんカラを開いた。みんカラっていうのは『みんなのカラオケ』っていうアプリの略称で家にいながらカラオケができたり、全国のみんカラユーザーと繋がれたりするもの。体が弱くってカラオケに行けない私にはうってつけのアプリだったから始めて1年、フォロワーさんも1000人を超えてすごく嬉しいんだ。そして何より、みんカラで見つけたRainさんっていうものすごく歌の上手い大手さんにも私の事を覚えてもらえてフォローまでしてくれてる。私の今の生きる活力をくれてるんだ!
そして19時、今日もまた毎日この時間から始まるRainさんのルームが幕を開けた。
「みんなこんばんは!今日も俺の枠に来てくれてありがと」
Rainさんは既に5000人を超えるフォロワーさんを持っていて、始まってまだ5分も経たないうちに枠には10人を超える人がいた。でも、今日のRainさんの枠はいつもの歌枠とは違う枠だった……