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ランニング  作者: たぬき
5/7

ランニング開始

私の名前は、橋塁能智はしるい のち39歳会社員で独身だ。


①ランニング開始時 身長165㎝ 体重75㎏ ウエスト96㎝ 中肉中背

 ラジオ体操が終わった。

 素晴らしい体操だった。


 なんせ、指先から足先まで意識をとばすことで、体全身を目向けから目覚めさせる。

 おっと、それだと、ラジオ体操は足先と指先の運動に思われそうだが、それは違う。

 手、足、肩、腕、背中、腹筋、背筋をまんべんなく動かす。

 そして、締めのジャンプ。


 飲酒の後に食べるラーメンのように・・・。

 食後に食べるデザートの果物のように・・・。


 それぞれの部分を最大限の呼びかけで、体に向かってたたき起こす。

 たたき起こされた、それぞれの部位は、それぞれがやみくもに主張する。


 そんな、バラバラな自分の体の一部分が・・・締めのジャンプを行う。

 それによって、バラバラがさらにバラバラになる。

 それからは人体の神秘だ。

 理由はわからないが、バラバラが気がつくと一つにまとまっている。

 から全体から押し寄せてくるそのみなぎるパワー。

 そして体をゆりうごかす手助けをしてくれる体温。


 これらが合わさることで、一つの生命体を、まとまりのある生命体へと押し上げてくれる。


 ああ・・・・これが準備体操なのか。


 小学校の時の行った準備体操

 あれは何だったのか?


 だらけた指先。

 だらけた体。

 だらけた足先。


 動かすことを拒否したすべての動作。


 その中に、生命の息吹を感じる事は一切なかった。


 そんな思いでがあるからこそ、今がある。

 今の、生命の息吹を感じることが出来るのは、そんな過去があったからだ。


 自分の過去は伊達じゃない。

 過去があり、現在があり、未来があるのだ。


 そして、今、自分の体は絶好調。

 これから走る為の準備は万全だ。


 さあ、こうしている間に、一歩を踏み出すのだ。


 ああ、左足がゆっくりと前に出る。

 まるでその動きがスローモーションのようだ。

 腹筋に始まり、太ももの筋肉が膝から下を押し上げる。

 そして、その後、つま先からゆっくりと地面に向かって沈み込んでいく足の裏。

 次第に、かかとまで力がこもって行き。

 気が付くと、ふくらはぎ、そして太ももへと力が返っていく。


 腹筋はその力を受け止めて、体の上部へと逃がす。

 しかし、逃がすだけでは、もったいないと上半身が抵抗するのだ。


 上半身で分散した力は指先から頭の先まで行くと、くるりとその力の方向を変える。

 変えられた力は何を考えたのか、そのまま体の中心へと向かう。


 体の中心はまるで聖母のように温かく、力を受け止める。

 そして聖母は受け止めるだけではない。

 その力を激しい力に変えてそのまま、腰へと戻すのだ。


 突然戻ってきた、力に腰は驚くこともなく、普通であるかのようにその力を太ももへとつなげるのだ。


 しかし、知っている。

 腰は、とてつもない状況に、半ば困難している。


 どうしていいのかわからずにやってきた力をまとめる。

 下からは、同じように力を上昇させてくる。


 なんと中間管理職の辛いどころだ。


 腰は、そんな中間管理職の行為を半ば無視するように太ももに丸投げをしていたのだ。


 腰はわからないと思っているが、体のすべてはそれを知っている。

 知っているが、腰に無理をさせるわけにはいかないからだの節々は、体全体で腰を援護するのだ。


 皆の強力をえた力は膝関節を越えて、ふくらはぎと戻り、そして、同じように、足首、つま先と続いていく。


 ああ、単純な一歩がどれほどの皆の強力をえていることか・・・・。


 世界で起こっていることが、すべてだとは思ってはいけない。

 体の中で起こっていることこそが、すべてなのだ。

 ・・・知らないが。


 そうして、偉大な1歩が踏み出される。


 1歩、そして、また1歩。

 これが繰り返される。

 初めては膝の負担を考えて、まずは歩行から行って行く。


 足をゆっくりと踏みかえると、正面からは風が流れてくる。

 ほんのわずかであるが、頬の横をうっすらと風が通り抜ける。

 十分温まったからだに、一筋のひんやりとした風。


 あああああああ、心地いい。


 これがランニングなのか。

 そうか、これが走るということか・・・。


 ・・・走ってないけど・・・。


 ゆっくりと、大地を踏みしめて玄関まで進む。

 その歩数5歩だ。


 自宅の玄関から自宅の門までの距離はそう5歩で到達する。


 神の頂に到達するか如く、その距離は遠く、儚い。


 もしも、この距離が夢や幻ならば、そう考えると末恐ろしくなる。


 しかし、今自分のほほを伝っている冷たい風は本物だ。

 ゆっくりと体は上下しても、その上下に完璧に合わせてくる風は本物だ。

 いま、体全身でランニングを感じている。


 ・・・・まあ、歩行だが。


 素敵だ。

 素敵な朝だ。


 まだ、夜はあけていないが、朝のとばりがゆっくりと開けていく。

 正面には、まだ、太陽は登っていないが、もうすぐ、見えるだろう。

 この門を開ければ、そこには、無限の世界が広がっている。


 何が起きるかわからない。


 生まれてから39年これまでなかった始めての経験をこれから行うのだ。


 そうだ、門を開く。

 これまでは、ランニングとは言っても、それはランニングの準備に他ならない。

 これからが真のランニングとなるはずだ。


 はじまる。

 これから始まる。

 真のランニングが・・・。


 俺は門を開けて、左右に広がる道を見た。


いかがでしたか?


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