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ランニング  作者: たぬき
3/7

準備運動

私の名前は、橋塁能智はしるい のち39歳会社員で独身だ。


①ランニング開始時 身長165㎝ 体重75㎏ ウエスト96㎝ 中肉中背

 そして、俺はドアの外に1歩を踏み出した。


 うぉぉーーまぶし・・・・くない。

 あれっ、俺の予想じゃ、朝日に照らされて神々しく走り出す自分をイメージしていたんだが・・・。

 この季節、まだ、初春では7:00は真っ暗ではないか。

 う~んこれは、出足をくじかれてしまった。

 くじかれたと言っても、それは比喩だから、実際に足をくじいたわけではない。

 とはいうものの、朝の7:00から始めると決めた以上は、それを覆すわけにはいかない。

 ジンクスが・・・・。

 ジンクスが・・・。

 しかし、まあ、なんだ。

 走り出せば日が昇る。

 そうすれば、朝日を存分に浴びてやろうではないか。

 朝日のシャワーで体全身ずぶぬれになるほどに受けてやろうじゃないか。


 それにしても、寒い。

 朝はこれほどまでに寒かったのか。

 いつもはエアコンの温度を28度まで上げて、ぬくぬくの状態で朝ごはんを食べていた。

 だから、これほどまでの寒さに気づくことは全くなかったように思う。

 太陽が出ていないこの寒さ。

 まさに、時代が開けるまえの、何かを待っているような静けさ。

 もしや、これは、俺の先々を祝うサプライズか何かなのか?

 もしや、天が俺に与えたもうたサプライズなのだろうか。

 いや、そうとしか思えないであろう。

 そう考えれば、心地よいといえ・・・・ないな。


 まあ、走ると決めた以上、この時間から走らなけらばならない。

 それは、俺に神が与えし試練にほかならない。

 そうして、この試練を乗り越えた先にあるものは・・・先だけに砂金ともいえなくもない。

 さあ、これから一歩を踏み出すのだ。

 世紀の1歩だ。

 人類がその1歩を月に刻んだように。

 アームストロング船長は言った。

 これは私の小さな1歩であるが、人類にとっての大きな1歩である。

 そう、この1歩はまさにそういう1歩と言っても過言ではない。

 さあ、踏み出すのだ。

 この1歩を・・・。


 おぉぉーーーとっ、忘れていた。

 スマートウォッチには走行時間、GPSを使用した走行距離、それに歩数が測定される。

 しかーーし、そのためには設定がいるのだよ。設定がね、明智君。

 忘れてはいけない。

 この記念すべき1歩を踏み出す前に栄光のスマートウォッチの設定をしておかないといけないのだ。

 それでは、このボタンを押す。ぽちっとっ

 よし、これで、準備万端、四暗刻マンガンドラドラだ。

 スマートウォッチの時間はしっかりと1秒2秒と時間を刻んでいる。

 これから、俺はこの足で歩数を刻んでいくのだぁぁぁ。

 この神の第1歩を刻む。

 さあ、この・・・・・・・・右!?左!?


 いけない、時間は過ぎていくのに、右足から出すか、左足から出すかを決めていなかった。

 どうする。

 どうするんだ。

 時間は刻一刻と過ぎていく。

 この時間を巻き戻すことは出来ないんだ。

 歴史を戻せないと、同様に、時間を戻すことはできないぃぃぃぃっ。

 しかたがない、ここは、決めてはいないが、とにかく、足を出さないといけない。

 迷うぞ、どちらの足を出すのか、迷うぞ。

 だが、決めるんだ。

 ここは男を見せるところだ。

 さあ

 さあ

 さっさあ


 決めた。

 左足からだす。

 ふぅぅ~。


 緊張の一瞬だった。

 異種格闘技戦の前哨戦のような戦いが、この右足と左足に繰り広げられたような。

 そんな、前哨戦の一瞬だった。


 勝った。

 俺は、この勝負に勝ったんだ。

 勝負に勝ち負けは必要ないというやつもいる。

 しかし、勝負に必ず勝ち負けが存在する。

 そして、俺は、この勝負に何とか勝利を収めることが出来た。

 長く・・・長くはないが、辛い・・・少しつらい、そんな道のりを越えた先にあるものは・・・。

 そう・・・・それは、勝利、つかの間の勝利であるとはいえ、そこにあるのは勝利だ。


 あぁぁぁぁぁぁ。

 天は私に勝利を使わしてくれた。

 勝利の天使を。

 私は捧げます。

 私の心のすべてをあなたに、あなたに捧げます。


 そして、この振り上げた左足を降ろしさえすれば、そうすれば、すべてはそこに導かれるのだ。

 勝利の名の元のに。

 ジャンヌダルクがその勝利の為に旗を振ったように、俺の左足は勝利に向かって撃ち進むのだ。

 さあ、これで・・・・これで決まる。

 足を・・・左足を降ろすのだ。

 この、冷え切った地面に・・・・・・・・・・!?


 冷え切った地面・・・冷え切った・・・・・冷え・・・・。


 しまったぁぁぁぁぁっ。


「YouTube」にあったではないか。

 ランニングの前には必ず運動が必要だと。

 そう、準備運動が必要なんだ。


 なぜ・・・なぜ・・・こんな大事なことを忘れてしまっていたんだ。

 いけない・・・禁断の園で禁断のリンゴに手をつけた。

 それほどまでに、禁断のいや・・・禁忌の技。

 ランニングの前には必ず準備運動が必要だったのにぃぃぃぃっ・・・・・。


 いかん、左足の1歩が地面に届いてしまう。

 この1歩は大事な1歩だ。

 決して、つけてはならない。

 つけては・・・・・な・・・ら・・・・な・・・・い・・・ん・・・だぁぁぁっ。


 ふぅぅ~。ふぅ~。ふぅ。

 間に合った。

 何とか大事な1歩を踏みとどまることが出来た。


 よし、そしたら、今から準備運動を始める


どうでしょう。


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