02-022.魔法少女と呼ばないで! らしいです!
前話の前書き書いた記憶がなくてビビる今日この頃
ザルツブルク大聖堂を出て、ドームプラッツに一通り目を向けてから別の広場に繋がる左右を見るティナ。
「さて。どちらに行きましょうか。お昼で何か食べたいものはありますか?」
「うーん。店に入って、という気分でもないからパンでも買って食べる程度で構わないかな。」
京姫は、目の前にある幾つかの露店の中に、ブレーツェルを売っているパン屋が目に入ったのだろう。珍しく、ブレーツェルのサンドウィッチも出している店舗だ。サンドウィッチは大抵アルターマルクトに店舗が出ているのだが、イベントの季節以外でこの広場に出てるのは少しだけ珍しい。
「ワタシもパンでイイヨ。サスガに包子売ってナイヨ。」
「ハルは、ばるかんがいい!」
「あら、バルカン・グリルのボスナが食べたいの? ちょっと歩くけど大丈夫?」
「うん! ぼすなすきっ! ハル、はしっていけるよ!」
「ボスナ? ナニヨ?」
「ボスナ…。ああ。ローゼンハイムにもあったな、そんな名前のホットドッグ。」
「バイエルンでも一部で販売してますから。元々はザルツブルク発祥の名物なんですよ。」
まだ、決めていない内から皆歩き始めた。ハルが食べたがっているので、自然と昼の食事が決まった体である。
レジデンツプラッツ通りを戻り、アルターマルクト通りに曲がらずクアフュルストシュトラーセをそのまま真っすぐ進んでウニヴェルシテートシュプラッツ通りへ。ヘルベルト・フォン・カラヤンプラッツ通りに交差する直前にある、外壁がピンク色をした建物のアーチ状入り口に入る。この入り口は、中庭を経由してゲトライガッセへ通り抜けが出来るショートカットでもある。
目的はショートカットではなく、その中庭にある。中庭に出ると、数は少ないが行列が出来ている小さな店舗があった。10平方メートルを遥かに下回るその店の名は、「Balkan-Grill」。どこも真似できないシンプルなカレー風味の特製スパイスが決め手であるソーセージ屋台だ。ドイツやエスターライヒなどのソーセージ屋台は、ソーセージとゼンメルと呼ばれる丸いパンが出てくる。テイクアウトにすると、その丸いパンにソーセージをはみ出た様に挟むのだが、ボスナの場合は専用のパンで一般的に知られるホットドッグ状の形になる。このホットドッグもどきをボスナの名称で販売したのが、バルカン・グリルである。
ポーク100%のウィンナー2本と、玉葱、パセリ、ケチャップ、辛子の4種類とスパイスを組み合わせたメニューが5種類。ボスナ専用で作られた白パンは注文時にパリッと焼き上げ、香ばしい匂いを漂わせる。おひとつ3.7EUR。
ハルはソーセージにはうるさいのだが、ここのウィンナーの味は好ましい様だ。先ほどから黙々とボスナを頬張っている。ちなみにメニューはオリジナルを選んでいる。玉葱、パセリ、スパイスの3種類。創業時のソースだ。
「スパイスとはカレーパウダーなのか。なんだろう、ありきたりな様でそうでない表現しきれない味だ。」
「もっとイロイロ入ってる思たヨ。パンとソーセージだけヨ。すごくシンプルヨ。だから引き立つネ。」
確かに美味しいが、ソーセージ、パン共にそれぞれもっと美味しいものもある。だが、シンプルなれど、どこも真似が出来ない味であり、また食べたくなる味なのだ。だからこそ長く食べられ続いている。ボスナ人気にあやかってウィーンや各都市、ドイツのバイエルン州などでもボスナが販売されており、美味しいのだが何かが決定的に違う。
「ソーセージが柔らかくてお味も良いのですが、やはりこの特製ソースとここだけのパンですね。この組み合わせがクセになるんだと思います。」
「ハルが恵方巻を食べてる様に見える…。」
「エホーマキ? ナニヨ? ソレ?」
ハルは喇叭を吹く様に、黙々とボスナを頬張り続ける。節分で縁起の良い方向を向きながら一言も発せず太巻きを食べきる地方儀式のひとつだ。
結局、最後まで食べきっていた。5歳児には少々多かったようで、お口を押えた小さな手のひらから、ケプリと可愛らしい音が出ていた。
来た道をまた戻ってきた訳だが、クアフュルストシュトラーセと交差するジークムント・ハーフナーガッセへ右折する。左手側の大きな建物が切れると広場がそこにあった。広場の奥には、アーチ状の入り口があり、宮殿の西側口となる。ここから入ると、隣の聖フランチスカーナ教会との連絡通路が近いが、そちらにはいかず、内部の階段を使い3階まで上がり、宮殿美術館に入る。
大司教の住居として1595年に着工された宮殿だが、他国の煌びやかな宮殿の様に全域に渡って豪奢な造りではない。宮殿としては実に質素なデザインである。しかし、それでも一般で目にすることのない世界である。
この建物、本来は拝観料金がかかる。しかし、ティナ、と言うよりブラウンシュヴァイク=カレンベルク家による文化・芸術施設への多大な寄附がなされており、その感謝として市内にある幾つかの施設に於いて当家に携わる者は一度に5名まで無料となる年間パスポートを配られている。残念ながらザルツブルク大聖堂博物館は対象外であったためヨーロッパ最大のパイプオルガンを間近で見ることは叶わなかったが。
長い階段を上ると、東西に長く伸びたホワイエに出る。この宮殿も中世建築であるため中庭を囲むように建っていることから、手近な所よりぐるりと1周する方針としたティナ。
まずは、直ぐ側にある衛兵の間「CARABINIERI SAAL」。閲覧可能な部屋としては最大の面積である。長さ50m、幅と高さ12mあり、白い壁とアドネット大理石の床、天井にはヨハン・ミヒャエル・ロットマイヤ製作のフレスコ画が彩を添え、この部屋からクロークルームがほぼ直結し、レストルームなどのアクセスも近い。シアタースタイルならば525人、円卓スタイルのディナーであれば396人を収容するキャパシティがある。この部屋のリース料金は1950EURである。
つまり、この宮殿、閲覧可能な部屋はイコール、レンタル可能であり、コンサートやイベント、ディナーなどに用いられることが多々あるのだ。
「広いヨ~~」
「きゃー」
花花が部屋の広さを見て駆け出し、ハルがその後を追って駆け出した。部屋の端に着いたと思えば反対方向に駆け出す。そしてまた折り返してティナの前で止まる。
「広いヨ!」
「ねぇね、ひろいよー!」
「はいはい、二人とも。追いかけっこ出来るくらい広いですが、お部屋の中なのですから走ってはダメですよ?」
「判たヨ!」
「はーい!」
「二人とも妙なテンションだな…。」
ハルの頭を撫でながら京姫は零すが、確かにハイテンションだ。体育館などの広さと違い、家の中にある広い部屋と感じているのではないだろうか。花花は取り敢えず走ってみたと思われる。ある意味いつも通り。
衛兵の間西側出口から隣の部屋へ移動する。宮殿の構造として、部屋は廊下で繋がっているのではなく、部屋同士が繋がり、一部に廊下変わりのホワイエがあるのだ。
皇帝の間「KAISER SAAL」540EUR。白い壁と天井、蔦をあしらい下部が小物入れとなったベンチが複数あるのだが、部屋の名前と一致する趣ではない。部屋の短辺にある密閉式ストーブも陶器ストーブに比べると全く飾り気もなく、武骨である。
「大叔の絵ばっかりヨ。あんまオモロくナイヨ。」
「皇帝の間なんだろ? それにしては質素というか簡素というか。」
「飾られている方々が皇帝だからですよ。」
壁に飾られた15枚の肖像画は神聖ローマ帝国皇帝や1804年以降に宣言されたエスターライヒ帝国の皇帝達である。当時、栄華を誇っていたハプスブルク家の面々である。だからこそ、仰々しく皇帝の間と名称が付いたのだろう。
お隣は緑の応接室「GRÜNER SALON」200EUR。宮殿内を自由に歩くことを許可されていない諸侯達が控える間であった。当時は緑色の部屋であったが、今では壁、天井とも白く塗られ、薔薇の装飾がなされている。そして、床は寄せ木細工。この部屋には近年のザルツブルク大司教の肖像が飾られている。
その隣が白の間「WEISSER SAAL」520EUR。壁も天井も全て白く塗られ、床は寄せ木細工。この部屋はフレスコ画などが無い替わりに、アレキサンダー大王の生涯を綴るレリーフが数多く彫られている。壁に埋め込まれた燭台、大きな円筒型の陶器ストーブ、調度品の類も白を基調にしている。バロック調の窓からは陽光が多く入る様に計算され、部屋全体が白く輝く。
「しろいおへやー。」
「この部屋、ティナのCMで使われてなかったか?」
「ソウヨ、見たコトあるヨ。」
「ええ。こちらとお隣の王座の間を使っています。」
この部屋は、ティナのスポンサー契約をしている下着メーカーであるAbendröteのCM撮影で利用している。地上波ではエスターライヒとドイツ南部を中心に、ネットと衛星放送ではヨーロッパ全土で目にすることが出来る。
そのCMで撮影された王座の間「THRON SAAL」540EUR。赤く織られた布地を壁紙に、天井にはヨハン・ミヒャエル・ロットマイヤ製作のフレスコ画。テティスの結婚をモチーフに描かれている。そして、部屋の東側には、ビロードの一人掛け椅子と、その背となる壁には若き日のエスターライヒ皇帝兼ハンガリー王であるフランツ・ヨーゼフ1世の肖像画が飾られている。床は寄せ木細工であり、落ち着いた佇まいを演出する。この部屋の西側にある白い扉はザルツブルク大学、および現ザルツブルク大司教の居住区画に繋がる。
「ソウ、ソウ。このイスにティナ座ってたヨ。」
「CMに映っていたこの部屋の白い置物、何だろうと思ってたが陶器ストーブだったんだな。」
「意外とご存じない方が多いですね。さすがに主流の暖房ではありませんから。」
「すとーぶ、あったかくないよ?」
ハルは、ホーエンザルツブルク要塞と同じ様にストーブに手をかざして首を傾げてこちらを見ている。ほんとだね、と京姫に頭を撫でられてご満悦な表情だ。
ストーブは手をかざす物であると躾けられている。子供が興味本位で触って事故に繋がることが多いため、物にはいきなり触らない様に教え込んでいるのである。
次の部屋は、画廊「BILDER GALERIE」300EUR。18世紀、ザルツブルク大司教であったフランツ・アントン・フォン・ハラクが70枚の絵画を展示したことから始まる。床はアドネット大理石とウンスターベルク大理石がチェッカー状に敷き詰められており、天井一面にヨハン・ミヒャエル・ロットマイヤ製作のフレスコ画。そして、画家アントニオ・ベドゥッツィのデザインを建築家のヨハン・ルーカス・フォン・ヒルデブラントが作成した暖炉が目玉となる。陶器ストーブではなく、彫像が乗った暖炉である。
画廊を出ると、ちょっとしたホワイエになっており、下へ降る階段も見える。そのまま進むと当時の寝室となる。赤のビロードの様な壁には、絵画とタペストリーが飾られ、寄せ木細工の床、白いフレームのベッドには壁と同じ布地で出来た掛け布団。北側の白い扉を開けると、蒼い応接間「BLAUER SALON」90EUR。そちらは8畳程度の小部屋で、蒼い壁になっている。小さなテーブルセットがあり、フレームは白だが椅子の座面などは蒼で統一されている。テーブルセットの背後には、蒼を基調としたタペストリー、窓の下には当時の金貨箱、部屋のコーナーに、猫足が付いた貴重品入れの葛篭。窓からはアルターマルクトが一望できる。
ハルが、たからばこだ!ときゃーきゃー騒いでいるのが微笑ましい。花花は箱を物理的に開錠しようとしているので京姫に襟を掴まれていたり。
東側の白い扉を出ると、書斎「ARBEITSZIMMER」(リース価格要相談)。南側扉の先は、キッチン設備が導入されており、ディナーなどはこちらで作られる。東側の白い扉をくぐれば、謁見の間「AUDIENZ SAAL」550EURなのだが、扉は解放されスタッフが忙しく出入りしている。入り口に積み上げられた機材を見ると何らかの撮影の様だ。謁見の間は、白い壁に大きなタペストリー、天井にはアレクサンダー大王をモチーフとしたヨハン・ミヒャエル・ロットマイヤ製作のフレスコ画、金細工や金メッキの調度類、模様が美しい寄せ木細工の床など、公式の謁見を行うに相応しい豪華さを持っている。そして、ルイ16世様式のソファと椅子は、アンリ・シャコブ製作で、現存する中で唯一完全なセット。
「うーん、何か撮影の様ですね。一番の目玉でしたのに。」
「まあ、仕方ないだろう。我々だってイベントや撮影で公共施設を貸切ることもあるしな。」
「通り抜けもダメかネ?」
「おへやはいれないー?」
意外と騒がしかったのだろう。中から様子を伺う人物が、こちらに気付いたのか声をかけてくる。
「ティナ!?」
「はい? あら、ロッテ。おひさしぶり。撮影はあなたのところだったのね。」
「あ! りーりーだ!」
「ひさしぶり。ハルも来てたのね。元気だった~?」
ロッテと呼ばれた女性は、ハルを抱き上げ両頬に親愛のキスを降らせる。ハルも頬へキスをお返しする。頬を頬でスリスリされてきゃっきゃと喜ぶ。
「ティナ。そろそろ紹介してくれないか。」
「あははは、私の格好、怪しいもんね! そりゃ誰なのか判んなきゃ安心できないわよ!」
「ウン、ナベかき混ぜそうヨ。ムラサキの泡でるヨ。」
彼女の格好だが、腿丈くらいまでの紺色をしたビロードのワンピース。縁はクロのレースとなっており、胸元が際立つ様に大きく開き、胸は寄せられている。赤い裏布を使っている様で、スカート部のスリットも深く入っており、時たまチラチラと裏地の赤と下着の紐だろうか、布が覗く。腰には歴史に出てきそうな古臭いベルトを斜めになる様に緩く締め、そのベルトに杖が挟んである。上部分にコブがある杖だ。そして、背中には蒼に近い紫の膝より下程のマントを羽織っている。首元で引っ掛ける様にマント留めの金のブローチが光る。マントの裏地はルーン文字が金糸で刺繍してある。ゆるくウェーブのかかった濃茶の髪に、少し垂れ眼の緑眼。ラウンド型の丸眼鏡をかけ、身長は150cmないのではと思われるほど低い。その代わりカップ65Dはあろうかと思われる胸を持つ。
頭にコートと同じ色でつばの広い帽子をかぶっている。その帽子の頂点はとんがっているのは予想されただろう。
「彼女は小等部の同級生で、リーゼロッテ・ウルリーケ・クローヴィンケルです。確かSDCを使ったゲームのチームに所属していましたっけ?」
「フフフ、そう。我こそは「Épée et magie RPG」競技のチーム「Blue Blood」所属、孤高の大魔導士! 二つ名【極彩色】のリーゼロッテよ! 私のことは、ロッテと呼んでよろしくてよ!」
「あ、ああ。私は京姫・宇留野だ。」
「あははは! オモシロイネ! 魔法少女ヨ! ワタシ、陳・透花ヨ! ヨロシクヨ!」
少し京姫が引き気味なのはロッテが醸し出した香ばしさに慣れていない生活をして来たからだろう。
そのロッテは。クルリとターンを決めた後、マントをヴァサッと翻し、腰に差していた杖を取り出す。軽く1回転後にコーンと床を突く。そして肩にかかった髪をファサッと左手で流し、その左手は親指と人差し指をピーンと伸ばして顔の前面、左目の下に来るように置き、右目を瞑る。身体は妙に斜めに傾いているがピーンと伸ばされている。そんな挙動をしながらアレな言動の挨拶をしたのだ。
ハルがクルリと回って顎に手をやり真似をしている。教育上余り芳しくないと思われるので早めに香ばしさは散らして於きたいところ。
「魔法少女はヤメて。大魔導士よ。」
「変身しないカ? ピカピカするヨ?」
花花は、学園が発売している3D格闘ゲームでティナのアバターが変身したのを思い出したのだろう。ロッテに至っては苦虫を噛み潰した様な顔をしている。どちらかと言えば黒歴史を掘り起こされた顔だ。
へんしん~?、とハルが不思議顔で花花とロッテを交互に見上げているのが印象深い。
久しぶりにあった旧友同士は話に花が咲く。お互い全く違う進路についたため合うことは殆どなく、偶に聞こえる噂話程度しか状況を把握できていなかった。日常生活に於いては、と注釈が入るが。
「Épée et magie RPG」競技とは、Chevalerie競技の前身である、アミューズメントアトラクション「Épée et magie」の派生で産まれた現実世界でRPGを行うアトラクションゲームである。Chevalerieと同様に「Système de compétition Chevalerie」をシステム根幹に持ち、ゲームに特化した設定を施してある。そのシステムを使ったゲームを総称して「Épée et magie RPG」競技と呼ばれている。同系のゲームはかなりの数が発売されており、ロッテ達はRTAやゲーム実況、イベントなどを数多くこなす有名どころのプロチームである。ティナ、ロッテ共々、ちょっと調べるだけで公的な情報は巷に溢れかえっているので互いの活動情報だけは知っていた。
「どうした、ロッテ。トラブルか?」
なかなか戻ってこない仲間を心配したのだろう。扉の向こう側からひょっこりと顔を覗かせる騎士風の鎧を纏った男性が現れる。
「ごめん、アーシュ。仕事だったの忘れてた。」
「忘れんなよ。で、そちらは? …いや、いい。聞くまでもない。」
アッシュと呼ばれた男性は居住まいを正し、キリリと挨拶を始めた。
「初めまして、騎士の方々。私は「Épée et magie RPG」競技チーム「Blue Blood」のリーダ、二つ名【聖騎士】、エリアーシュ・シェスタークです。以後、お見知りおきを。」
彼が正式な騎士の礼をしたことで、ところは違えど騎士は変わらないものだと感慨深いものを感じていたティナではあるが、いつもの嫋やかな笑みを浮かべて受け答えをする。
「ご丁寧な挨拶、痛み入ります。私は二つ名【姫騎士】、フロレンティーナ・フォン・ブラウンシュヴァイク=カレンベルクと申します。」
「私は二つ名【鬼姫】、京姫・宇留野と申す一介の武人でございます。」
「【舞椿】、陳・透花ヨ! 騎士以外の騎士、ハジメテ合うヨ!」
「ハルはねー、ミヒャエル・ジークハルト・フォン・ブラウンシュヴァイク=カレンベルクっていうの! 5さい!」
カーテシー、お辞儀、拱手とそれぞれ騎士として挨拶をする。ハルは片手をいっぱいに広げて5歳を主張している。
彼等「Blue Blood」は、初夏にリリースされるゲームのPV撮影に来ていたとのこと。ほぼ撮影も終わっているため、むしろ望まれて立ち会うこととなった。
紹介されたのは聖騎士、守護騎士、侍、斥候、僧侶と魔法使いであるロッテの6人パーティ。ゲームで言えばバランスの取れた構成だ。しかし、「Épée et magie RPG」と言うゲーム体系は、攻撃と防御を数値で計算する予定調和などはない。Chevalerieと同じシステムを使い、ファンタジー世界を現実に体現した遊戯ではあるが、その戦いは実戦だ。Chevalerieと比べればゲーム寄りのため難易度は低くなってはいるが、レベルを上げれば誰でも強くなる訳ではない。彼らは、どの様な職業ロールであったとしても全体の連携と個人の技量、最善の立ち回りを要求される謂わばスポーツ選手のチームなのである。
しかし、ゲームと言う遊戯である以上、プレイヤーの選り好みをする訳ではない。サッカーはサッカー選手でなければ出来ないと言うことはないだろう?それと同じだ。
「この部屋、ティナのCMで見たことある。」
京姫が呟いたのは、ティナの実家が経営する会社、Calenberg-Akustik .AGが発売するFLORENTINAシリーズのCMである。この煌びやかな部屋で撮影しており、ティナとしては本日の目玉として一驚きしてもらう筈だった。美味しいところは全て「Blue Blood」に持っていかれたのは流石に予測できないかっただろうが。
ティナ達は、武器を扱う際の指南などを少しばかり請われたり、普段は縁のない魔法発動システムを見せて貰ったりと、ちょっとした武術交流が行われたのだった。
「オモシロカタヨ~。ゲームの世界もたまにはイイかもヨ。」
「魔法のシステムは不思議だったな。腕の振り方で軌道を曲げるとか独特の技術があるんだな。」
「ぴかぴか、きれいだったね~。」
「ふふ、魔法が見れて良かったですね、ハル。」
うん!、と笑顔で答えるハル。
ロッテに見せて貰った数々の魔法を気に入った様だ。
帰り道で繋いだ手は終始、元気よく振られるのだった。
やっぱ効果あんまないねぇ↓
「ポイントを入れて作者を応援しましょう!」とかの欄にある「☆☆☆☆☆」
黒い星が★★★★★になるとウレシイですよ。
しかし、ブックマーク増えねぇなぁ。




