04-019.Duel予選と見習い達。 Das Qualifying für Duel und Lehrlinge.
2156年10月13日 水曜日
朝八時半。屋外DuelコートにDuel参加者を集め、開会式が執り行われていた。現在の気温は八度と少々肌寒いが、日中は十四、五度と比較的暖かいため屋外で競技を実施するのである。
屋外Duelコートは通常時二十四面のコートが敷設されているが、最大で三十二面と、屋内大スタジアムと同等のコートを拡張出来る。客席上部にはインフォメーションスクリーンが四十基設置されており、内四基は特大サイズだ。客席数も四万五千席あり、屋内大スタジアムと比べても規模は大きい。
早朝にも関わらず既に客席は埋まり、大型のインフォメーションスクリーンが設置されている各スタジアムや共有野外座席などにも人が溢れている。皆、Duelの部開会式とトーナメントの組み合わせ発表を見るために早くから集まっているのである。
今、この場で最も人目を引いているのはルーである。観客だけではなく、会場に居合わせる騎士からも視線が飛んできている。元よりメイド服姿をもの珍しがられていたが、先日の森林戦で更に注目を集めた。ギリースーツ姿と森に消える戦闘スタイル、そして強烈な印象を残した銃弾避け。その異質さは、騎士が持ち合わせていないものだ。故に衆目から好奇の目を集め、騎士から警戒の視線を浴びせられている。
しかし、そんな視線も何処吹く風で、全く気にも留めていないルーは平常運転だ。
「おー、ナンか鎧がいっぱいです。みんなピカピカピカって目が痛いです」
見渡す限り騎士に溢れている中、大会初日の開会式と同じ感想を述べるルー。鎧の反射が眩しいようで目をショボショボとさせている。
騎士の装備は鎧だけとは限らない。その鎧も見映えや可動範囲を優先で造られていたり、華々しい色合いで塗装されていたりと、騎士達は思い思いの装備で身を飾る。
目立つと言えば、羽根つき幅広帽にメタリックピンクの鎧と、下腹部は二本のリボンのみと言うテレージが大抵真っ先に報道のカメラへ収められる。ヴリティカなどはシルク製の原色が鮮やかなサリー姿であり、独特な雰囲気を醸し出し視線を集める。同様に、黒を基調に金糸模様の入った、ミニスカTorero matador姿のマグダレナも目立つ。今回は、薔薇をあしらったカチューシャではなく、闘牛帽での参戦だ。
身体のラインにピッタリと貼り付いた、マイクロミニスカ極深スリットチャイナドレス姿の花花。両脇のみ草摺が付いた胴丸に篠籠手と篠臑当、下腹部は剥き出しでビーチバレーのような競技用ローライズパンツ姿の京姫など、会場を見渡せば目を引くデザインの装備者を見つけることは容易い。
「ルーちゃん、今日は可愛いメイドさん姿で出るんでですね! 森みたいな服は着ないんですか?」
そう言葉をかけたベルは、墨染めの着流しに袴姿だ。腰の角帯には大小二本差しで、一見すると浪人風。足元は墨染めの足袋と草鞋である。
「コソコソスーツは森ん中専用なのです。コソコソ出来んトコだと仮装大会になるです」
「葉っぱ魔人はハロウィーンみたいでした! Süßes oder Saures‼ 私、マルチパンもらうとウレシイです!」
使い込まれていると一目で判る鎧を纏ったハンネが、シャリシャリ、カチャカチャと金属音を賑やかに立てながら天然系会話術でベクトルを明後日方向へ。
「私はボッシュボルがいいです! アムステルダム駅のご近所で売ってるパンネクックも捨てがたいですよ!」
「ルーはポファチェス食べさせろです! 粉砂糖にチョコソースたっぷりです!」
そして、何時の間にか食べたいお菓子の話題に摺り替わっている。
「三人共、話があらぬ方向に逸れてますよ?」
ラウデがやれやれと、会話の軌道修正しようと試みる。が、ハンネが会話に巻き込んだ。既に妹三人組は、話の発端が何だったのか意識外の様子。
「ラウデは、どんなお菓子がいいですか?」
「え? 私ですか? そうですねレープクーヘンですか。地元に通年で売ってる店がありますから」
ふいに話を振られたのでつい答えてしまうラウデ。この辺りの受け答えから話を自然に舵取りする術は、テレージアにまだまだ敵わないところだ。
ちなみに。レープクーヘンは、クリスマス定番のお菓子である。ラウデの実家があるニュルンベルクでは件のお菓子を一年中楽しめる老舗店舗がある。
「はい、皆さん。開会式が終わって仕舞いますわよ? この後、すぐに組み合わせの発表ですから見逃してはいけませんわ」
パンパンと手を叩き、妹組の注意を引くテレージア。発散した会話を軌道修正して、これから大事な発表があると誘導する。はーい、と妹組から素直に返事が返って来る様子は、引率のお姉ちゃんに引き連れられた子供達である。
時間は九時になったところだ。中央のインフォメーションスクリーンへトーナメントの組み合わせ枠が表示され、コンピュータの乱数配置により決定していく。この場に集まった騎士は固唾を飲んで見守っている中、トーナメントの枠がどんどん埋まっていく。
乱数計算で全ての配置は瞬間的に決定しているのだが、徐々に表示させるのは実際に試合をする騎士と観客へ向けての演出である。
「ルーの名前はどこにあるですか! ヒトの名前いっぱいすぎでワカランです。メンドイので帰るです」
「ルーちゃん、帰るのは早いですよ! まだ始まってないですから!」
インフォメーションスクリーンに背を向けて帰ろうとするルーの腕を捕まえ、説得を試みるベル。ルーは、帰るですー、と駄々っ子の様相だ。
「今帰ればティナから特訓と言う名のお仕置きが始まること請け合い」
「うぐぅ」
ポロリと小乃花が呟いた一言で、サボった後々のことを想像したのだろう。観念して組み合わせ枠の表示に向き直るルー。トーナメントの枠が全て埋まり、細胞給電式コンタクトレンズ型モニターに当人の第一回戦組み合わせが通知される。
「ダレと遣るか連絡くれるならヌックヌクのとこでオヤツしてたのにです……」
「ルーや。様式美は大切ヨ」
「いや花花、様式美って……。ブロックに誰が居るかで戦法は変わるだろ」
花花が何処ぞの先人風にどうでも良いことを然も勿体なさ気に語っているが、即座に京姫が突っ込みを入れる何時もの光景。
ほへーそうなんです?と、ルーは大して興味を抱いていないのが直ぐ判る御座なりな相槌を打っている。
本来、騎士ならば同じブロックに誰が居るのかを確認し、対策を練ったりするものだ。しかし、ルーは騎士の名を列挙されても殆ど判らない。むしろ、相手の情報がない状態で戦闘に入ることを前提として鍛え上げられており、誰と当たろうが何時も通りに戦うだけである。根本的に騎士とは対峙する相手に対して捉え方が違うことを表した一幕である。
冬季学内大会第一部の目玉とも言えるDuelの部予選がこれから始まる。今回も出場枠三百六十名が埋まっており、三日間かけて四つの勝ち抜きトーナメントから其々ベストエイトを決定する。
学園四年生から六年生までの上級生組がAグループに括られた第一、第二トーナメントへ割り振られる。学園新入生から三年生までの下級生組はBグループで用意されている第三、第四トーナメントが対象だ。各トーナメントは九十名を八つのブロックに分け、ブロックの勝者八名がベストエイトとなり、四つのトーナメントで合計三十二名が、翌週に開催される冬季学内大会第二部Duelの部本選へ進めるのだ。
尚、上級生と下級生を明確にトーナメントを分けるのは、純粋に騎士としての完成度を考慮して、である。だが、下級生でもベストエイトにまで勝ち進められる能力があれば、上級生達とも戦えるレベルに踏み込んでいると判断される。この学園のDuelは、運や偶然が入り込む余地などない技量を持った騎士が集まっているからだ。
新入生を含む下級生組でも、過去の実績と技術の評価により、上級生組のトーナメントに組み込まれる。春季学内大会のティナなどが最もな例だ。今大会では下級生組である京姫や花花などが上級生のトーナメントに割り振られている。本選のベストエイトどころか、順当に行けば決勝まで絡むだろうとChevalerieの番組や評論家などからも予想、と言うより期待の声が幾つも上がっている。彼女達の場合、日本の全国大会や中国での下克上イベントなど、強烈なイメージを視聴者に与えたことで、より注目を浴びているのだ。
第一回戦の開始時刻は九時半。二十四面の試合コートで其々五試合を一日で熟すスケジュールである。自分の試合時間まで休息を取る者や、競技者控室で装備を換装しに行く者などが会場を後にする。参加者の内、百二十名は二回戦のシード枠に割り振られており、試合は明日であるため同じく退場して行く。
その一方、最初の試合に出場する騎士などは、アップを始めて居たりと、人の流れも相加わって場は賑やかである。
「うゆ? ルーは第四トーナメント会場、五番コート第三試合ってかいてあるです。どこいきゃいいです?」
先ほど通知された試合組み合わせをたどたどしい手付きで視界に表示させながら、ルーは素朴な疑問を口にする。ARコンソールで通知の詳細を表示すれば場所などの案内図も見られるのだが、如何せんルーはこの手の装置を殆ど活用しないため、まず人に聞くのが標準行動だ。
「ルーさん、屋外Duelコートの図面です。この場所が試合コートになります」
ラウデがMRで図面を空中に表示させ、ルーの試合コートを教えている。ほら、あの場所ですよ、と実際のコートを指差す。ルーは、おーありがとうです、と感謝の言葉を口にし、示された先へ手で額に庇を造り件の場所を確認している。斥候術が無意識レベルで発動するので、一目見れば場所を覚える。感想は「ふーん」の一言だけ。興味なさ過ぎです、と、姫騎士さんがここに居ればこぼしていただろう。
「どうやら全員ブロックが別のようだな。当たるとしたら本選か」
「私のブロックにはエイルがいるわ。勝ち進むにはかなり厳しいわ、厳しいのよ」
「あら、マグダレナさんとエイルさんは共に二回戦のシード枠ですから、順当に進めば三回戦で対面するのですわね」
京姫が話すのは、上級生組のトーナメントについてだ。マグダレナは同じブロックにエイルが居たことで難しい顔をしている。テレージアが二回戦のシードを口に出しているが、ここにいる京姫、花花、小乃花、そしてテレージアとマグダレナは過去実績から二回戦のシード枠に割り振られた選手だ。実際、試合をするのは明日からとなる。
上級生組が今日試合をしないと聞いたルーは、ずーるーいーでーすー、とブチブチ言っていたが、テレージアに窘められる光景に微笑ましく目を細められるまでが通常通りである。
――学園校舎正面玄関前噴水広場
大会中は、校舎正面玄関前の噴水広場に電子工学科のアバターショップが開店している。このショップは開店時間が十時からで、更新したアバター販促のため、アバターの元となった本人が購入者へ手渡しするサービスが定着している。
販促担当の騎士は朝九時半にショップブースへ召喚され、販促ミューティングに参加する。一日の販売スケジュールを最終調整するのだ。アバターの更新内容が装備に関わる場合、騎士装備にて販売店員になる風潮。
姫騎士さんの場合、六月の攻城戦イベントで新調したMysArg Rüstungと騎士服、専用武術プログラムが新販売となる。販促要員として、朝からフル装備でショップブースへ訪れている。
「ウルスラ、私の耳がおかしくなったんでしょうか。用意されている商品の数をもう一度お聞かせ願いますか?」
「ん~? じゃあもっかい言う的~。予約限定の姫騎士フルセットが六千、エロスーツが一万、MysArg Rüstungが一万五千、Kampf Panzerungが五千、初期装備が三千かな?」
それ以外にWaldmenschenの高位歩法を再現する武術プログラムがダウンロード販売されている。予約限定の姫騎士フルセットには武術プログラムが含まれ、唯一の店頭販売となる。
「やっぱり単位がおかしいですて! 全部合わせると四万近いじゃないですか!」
「へーき、へーき。本選合わせて五日もある的~。昨日一昨日で本人手渡し無いのに新しいのが三千くらい出てるって聞いてるよ~」
ウルスラの軽い一言には聞き逃せない単語があった姫騎士さん。
「いえ、待って下さい。サラッと仰ってますけど、私がDuelの期間中は店頭販売に駆り出されると聞こえるんですが」
「うん、そだよ~。装備は日ごとに交換してくれるとウレシイ的~」
「何気に拘束時間がえらいことになるんですが……。そんなに売れるんですか? 四万弱が」
「去年は透花の武術プログラムセットが二日で一万二千捌けた的。それ考えると、今回は足りなくなるかも知んないね~」
「ええー……」
ウルスラから聞きたくなかった回答を受けて明らかにテンションが急降下するティナ。
昨年の冬季学内大会では、花花専用武術プログラムと格闘用アバターを店頭販売限定セットで用意したのが一万二千個。二日にかけて花花がヒーヒー言っていたところを姫騎士さんも、大変そうですねー、と冷やかしに訪れたものだ。
「都合五日も鎧を装備しっぱなしなのはどうかと。私の鎧、一日中装備する前提じゃない金属製もあるんですが」
花花の時は完全に他人事だったのが、自分に振り被って来たので渋い顔をしながら愚痴をこぼし出す姫騎士さん。今はショップが開店直前。既に逃れることは出来ない段階なので、せめてブチブチ言って気を紛らわせることにしたようだ。
「そこはバカスカ新技術出しまくったティナが自業自得的~。アバターチームの夏季休暇を返せって詰め寄られるレベル~」
「ぐぬぬ」
姫騎士さんが要塞攻略イベントやエスターライヒの選手選考会で公にしまくったWaldmenschenの高位歩法を含む特殊な身体運用は、ティナ専用の武術プログラムを制作するに至った。電子工学科のアバターチームは降って湧いたヘビーな案件に、夏季休暇を返上して先週ようやくリリースに漕ぎつけたところだ。その原因となった姫騎士さんは、やらかした自覚はあるようで反論出来ずに唸っている。
結局、閉店までミッチリと購入者への手渡しサービスに勤しむのだった。
Duelの部予選一日目は、ルー達下級生組も全員勝利を収め、幸先の良い走り出しであった。
「おねーさま、勝ちました!」
「テレージアさま、一回戦は無事に勝利しました」
「二人共、おめでとう。試合は楽しめましたかしら」
はい、と元気よくテレージアへ返事をするハンネとラウデ。二人は連れ立って試合結果をテレージアへ報告に来たのだ。
この第一試合でハンネとラウデは、テレージアの従騎士として過ごした一年間の成果を披露した結果となった。
テレージアの技術はドイツ式武術を元に、家伝流派で特殊進化したものだ。それを従騎士の二人へ教えたところで、簡単には身に付くものでもなく、むしろ彼女達が鍛錬した技術を壊すことに繋がる。
ならばと、剣技の教導を切り捨てた。彼女が一年を通じ教導したのは基礎である。それも、身体の使い方を重点に教え込んだ。体軸を揺らすことなく安定させる姿勢、身体の連動と抜き方による力の取り出し方、関節の可動範囲拡大と速度の向上。気配の読み方と呼吸法などだ。
武術の土台となるのは身体の使い方だ。身体運用が向上すれば、自ずと元から持っていた技も冴える。更に新学年に入ってからは、テレージアがルーの鍛錬に協力したことで、その鍛錬を教導する面々からルーやベルと一緒にハンネとラウデも実戦に基づく技術などを面倒見て貰ったのだ。繰り返し身体に馴染ませて来た基礎と技術が繋がり、実戦で出せるようになったと証明された試合だった。テレージアも妹達が着実に成長しているところが見られ、頬を緩ませている。
同じく下級生組のベルも、危なげなく勝ちを掴んだ。僅か数年で流派上位に組する技を学ぶに至った一種の天才である彼女も、前回の春季学内大会よりも更に加速度的な技量向上をしている。そして今回は面白要素まで合流した。
「小乃花さん! にゃん月殺法その壱、にゃんこだましが出せました!」
「うむ、それは重畳。然し焦りは禁物。一つずつ解し、精進すべし」
妙なコントを繰り広げる小乃花とベル。ベルは至って真剣なのが困ったものである。
つい先日、小乃花がでっち上げた「にゃん月殺法奥義」の巻物を伝授されたベルは、技を身に付けようと真面目に鍛錬していたのである。謎の奥義十か条の一つを覚えたらしく、何と実戦で使ったのだ。しかも、必殺技名を口にしながら。
なんちゃって奥義ではあるが、浮身――脚裏から頭頂部まで関節含め脱力し不安定の中で安定させる――を中心とした身体操作の法で構成されており実用性が無駄に高く、普通に奥義と変わらぬ技になっている。新陰流兵法を修行中のベルに合わせて、刀術に馴染み深い浮身が基本なのだ。
ちなみに「にゃんこだまし」は、居着きをさせないよう肘を伸ばす状態で一段目の横薙ぎを仕掛け、肩甲骨を回し頭上で刀を旋回させ続ける螺旋の剣である。一段目は相手を崩すためのフェイントだが、二段目以降はドイツ式武術の「はたき切り」を想起させる軌跡を取る。
「にゃん月殺法の道のりは長いです!」
フンスと意気込むベル。新陰流兵法の奥義を学び始めているところに、怪しげなにゃん月殺法も覚えさせて良いのか甚だ疑問ではあるが。
閉店後のアバターショップ。後片付けと翌日スケジュールの軽いミューティングを終え、長時間の拘束から解放されたティナの元にルーがトテトテとやって来た。午前中の試合後ではなく、この時間にやって来たのは、間違いなくショップを手伝わなくても良いタイミングを狙ったのだろう。
「姫姉さまー、勝ちましたですー。ルーはやれば出来る子なのですよ」
「はい、よく出来ました。どうでしたか、初めて試合会場に立って」
ティナは褒めて欲しそうに寄って来たルーの頭を撫でながら、Duelの所感を聞く。
うひひ、と嬉しそうに笑みを浮かべるルーは、子犬のようだ。
「ルーは出来る子なのでナンも問題ないのです。相手の身体さわれないから時間かかってメンドイくらいです」
「ふむ、そうですか。騎士との戦いにまだ慣れていないでしょうから高位歩法術よりも、バインド時に臍下丹田を使った動きが合ってるやもしれません」
うーん、と唸るルー。その様子に口元を綻ばせながらティナは言葉を続ける。
「相手の力を抜いて裏に回り込めますし、ついでに崩しも入れられます。まぁ高位者には対応されますが」
少し考えこんでからルーは顔を上げてモソモソ話し出す。
「姫姉さま。ルーは受け抜き苦手です。そんならもう一本のメスでサクサクするのです!」
「あら、体術だとちゃんと出来るでしょう? 腕を掴まれて丹田使った移動と抜き投げは得意じゃないですか。アレと同じ身体の使い方ですよ?」
ティナが言ったのは、護衛術で有効になる身体の使い方だ。臍下丹田が鍛えてあれば、相手に腕をしっかり掴まれた状態でも臍下丹田を中心とした移動や動きで、力を掛けることなく投げを打ったり体勢を崩すことが出来る。特に日本の古武術などに多い技法だ。
「ふぬー、うぬー……よくワカランです。それよりお腹減りました! とりあえず食堂のシペツィエルメニューをパクつくのです!」
「はいはい、仕方ないですね。私も昼はゼリー補給食しか食べていないですから、ちゃんと温かいものをいただきましょうか」
早くいくですー、とティナの背中を押して校舎一階にある食堂へ進むルー。
試合のことよりも、食い気の方が先に立つのだった。




