人外の証明
二回も遭遇したチンピラの腕を溶かして半日ほど。
フィーは漸く装備を整え終わった。
まだ小さいし、体力も無いと言うことで軽くて小さな小物や香辛料を持つ役になることも決まった。
最近までは肉をただ焼いたものか、生肉しか食べていなかったけど、これからはフィーもいるしね。
香辛料は少々高かったけど、ミスリル級の魔物を素手で殴れる僕からすれば問題ない範囲だった。
一瓶で宿の一泊以上するとは思わなかったけどさ。
というわけで宿に戻ろうとしたんだけど、
「あいつだ! あいつが俺の腕をッ!」
素直には帰してくれなさそうだ。
んー? どうしよ......
「あ、トムさん。」
ちょうどいいや。
「おお、ヒデじゃないか。......ずいぶんと注目を浴びているようだが、何かやらかしたのか?」
「かくかくしかじかで、この子を宿まで送ってくれる? 途中で変な人に絡まれないように。」
「......全く前半の内容が分からないが......嬢ちゃん、部屋は分かるか?」
「......。(コクコク)」
「わかった。任せろ。......ヒデ? お前もほどほどに戻ってきてやれよ?」
「もちろん。」
やっぱりトムさんはいい人だ。
トムさんならフィーを無事送り届けてくれるに違いない。
「ちゃんと戻ってくるから、良い子で待っててね?」
そう言ってフィーの頭を撫でる。
少し不安そうだけど、大丈夫そうだね。
さて、
「じゃ、よろしく。」
「任せろ。」
そうして僕らは別れた。
「やあ、何か用ですか?」
「てめぇ......俺の腕を返しやがれっ!」
「え? 僕は持ってないよ? あんたの腕とか要らないし。」
「あー、君? 挑発はやめてくれないか?」
チンピラの呼んできた衛兵さんに止められてしまった。
まあいっか。
「ところで衛兵さん? 僕になにかご用で?」
「む?」
なぜか硬直した衛兵さん。
「どうしたんですか?」
「君......最近トム達と一緒にいた。」
「あ、ヒデです。宜しく。」
「あ、ああ。俺は......マックだ。トムを助けてくれて感謝している。」
「いえいえ。」
「何話してんだよ!」
おっと、
いつの間にか和んでしまった。
「それで......すぐに終わりますか?」
「状況次第だな......今はまだわからない。」
そっか。
ま、いいや。
そして詰所まで連行される僕であった。
****
「......成る程。絡まれたのは二回目で、一回目は投げて気絶させたが、二回目は腕を......溶かしたと。......間違いないな?」
「はい。連れを強引に連れていこうとしたので。」
「因にだが......どういう風に溶かしたんだ?」
うーん。
難しい質問だね。
それはつまり僕が人外であることをカミングアウトするようなものだし。
でもこの世界には獣人が居るんだっけ。
じゃあいっか。
「......一回しか見せないからよく見といてくれる?」
そう言って左腕を掲げ、右腕の爪を刺す。
既に腕は魔力回廊で純粋な人間のそれへと変わっている。
よって無効化される筈の毒は浸透し、組織の結合を破壊していく。
結果的に僕の左腕は溶けるわけだ。
「まあ、こんな感じです。流石にもうしないよ?」
そう言いながら左腕に魔力を通し、再生を促進させる。
硬質の体組織が骨の代わりをすることで肉を張り、神経系を巡らせていく。
後はゆっくり骨へと置換されて行くだろう。
これ以上の質問はないよね? 流石に。
「......君は人間じゃないのかい?」
......もっと難しい質問が来たね。
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