僕の本質
「じゃあ、失礼しました。」
そう言ってアンジュさんの執務室を出た僕は、トムさんの勧めで水鳥の池って言う宿屋に泊った。
名前が結構洒落ているね。
マンティコアを一頭売却するだけで数ヶ月のんびりできるお金が手に入ったし、しばらくのんびりしようかな。
一人部屋の干したての臭いがするベッドにダイブして目を閉じれば、さっきアンジュさんに言われたことが頭に浮かんできた。
赤い人間の住む町と、赤い津波。
まとめるとこんな感じだね。
これが僕の深層意識なんだと思うとなんだか不思議だ。
僕が考察するに、
赤い人間=僕を構成する一個体
街=僕全体
津波=僕の本能
こんな感じなんだと思う。
僕の体表は肌色だし、目は普通の黒目だけど、一皮むけば真っ赤なんだよね。
普通の人間は血流で赤く見えるんだけど、僕は細胞レベルでしっかりと赤色に染まっているんだよ。
で、多分街っていうのは僕の全身。
この中で全員が手分けして生産と労働と消費を行っているからね。
僕の意識は領主的存在だ。
次に津波。
相手を寄ってたかって消化酵素を分泌し、飲み込む戦法は粘菌の十八番だ。
僕もそうなんだろうね。
どこかに自己拡大の本能が眠っていてもおかしくはない。
そして一般人によく見えるらしい、金、異性、酒
僕は一つの社会だから、強さへの衝動はあれど、繁殖の衝動は無いってことだね。
お金はさしずめ必需品を輸入するための交易品かな?
お酒は......消毒用アルコール? 一応カロリーを摂れるから食べ物?
ま、そこら辺の欲望が薄いのも納得だね。
でも、
睡眠欲はあるみたい。
おやすみ。
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