人生終了のお知らせ
日常
その概念は様々な要因で破壊される。
地震、台風、テロ、パンデミック、時には死亡というもので。
―――だが、
さすがにこのケースは想定していなかったなぁ......
と、冷静な頭で僕こと洞島 秀寄は思考する。
現在、僕の通っている高校の校舎には、どこぞの宗教キチガイの方達が絶賛立て籠もり中だ。
ロケランとか初めて見たよ。
現在僕のクラスにも三名黒い覆面をしたおっさんABCがアサルトライフルっていうのかな? ストックとちょっと長い銃身を持つ銃を構えて仁王立ちしている。
警戒されないように視線だけで周りを見渡してみれば、僕と同じように膝を付けて無抵抗の万歳ポーズを取らされているクラスメイト達。全員これから起きる事への不安で真っ青だ。
正直言って僕に不安はあまりないけど。
諸事情あってそこら辺の感覚がずれているんだから仕方ない。
そんなこんなでじーっとしていると、
「×××××っ!」
と、トランシーバーを持ったおっさんAが何やらアラビア語かなんかで叫び、
突然設置されるスマホと、構えられる拳銃。
......。
......あるぇ?
この状況からして誰かを見せしめに殺した動画をネットで拡散しようとしているのはわかるよ。
でもさ、
なんでその人身御供が僕なんでしょう?
僕は別に何も罪を犯さずまっとうな紳士として生きてきたつもりなんだけどなぁ。
ぼんやり考えながら拳銃を構えているおっさんAの指をジーっと見ていると、少しづつ力が入っているのがよくわかる。
ん?
抵抗しないのかって?
勿論するよ。
まだ死にたくないんでね。
一瞬で頭のスイッチを切り替える。
「×××××っ!」
そして執行的な合図が出た瞬間、引き金が引かれる寸前に僕の腕は跳ね上がった。
腕の骨を砕くことで減速した拳銃の弾は僕の頭蓋骨を砕けずに落ちる。
痛みはない。
知覚するのは左腕がしばらく使えないという情報のみ。
そのまま無事な手を最短距離で繰り出し、拳銃の銃身を掴んで下へ向ける。
と同時に思わず放された拳銃のグリップを使って思いっきり頭を払えばおっさんAはあっけなく昏倒する。
そのままおっさんAの襟をつかみ上げ、左に向ければ突き刺さってくる二方向からの銃弾の雨。
耐えられずにおっさんAは即死した。
勿論何発かは防げず、喰らってしまったが、中枢はやられていないので支障はない。
向こうがマガジンを交換している隙におっさんBへおっさんAの死体を投げつけ、もう片方のおっさんCには手近にあった机を投げつける。
迷わずおっさんBへ躍りかかった僕は、アサルトライフルを奪い取り、Bに向けて引き金を引く。
Bの頭部を破壊した所でおっさんCの方を向けば、
すでに発射された弾が突き刺さってきた。
頬に一発、左目に一発、胸に四発、腹部に二発だ。
結構重症だ。
背骨を撃ち抜かれたのか足に力が入らない。
が、僕は止まらない。
すぐに座り込んだ状態で片目だけで狙いを定め、引き金を引く。
それだけでおっさんCの頭も吹き飛ぶ。
「ふう......」
一先ず危険が去り、落ち着く僕。
ゲプッと音を立てて喉から吐き出される真っ赤な液体。
少し体液を失いすぎたな......。
まあ、治る......
あ、
そこまで来て僕は気づいた。
クラスメイト達の視線に。
重要器官をいくつも壊されてもなお平気そうに動き回っている僕への畏怖だ。
頭を撃ち抜かれたら流石に誤魔化せないし抵抗したけど、
これもちょっと誤魔化せないなぁ......
そう結論付けて無事なスマホを取り出し、電話を掛ける。
『どうした? 秀寄?』
「親父はここが占拠されたのはもう知ってる?」
『ああ、それがどうかした......まさか!?』
「ちょっとダメそうだ。介錯を頼むよ。」
『......第二フェーズに移行したのか?』
「まだ第二フェーズには行っていないけど、胃袋の穴から消化液が漏れだしている。左目も死んでるし心臓なんてとっくに壊された。」
『そうか......わかった。暗証番号は102067510だ。』
「了解。あの世で待ってるね。」
『ああ、じゃあな、息子よ。』
通話を切って、腕だけで学生鞄のところまで這いずり、取り出したケースに暗証番号を打ち込み開ける。
中に入っている注射器を取り出し、教室の床に座り込んで首に打ち込む。
注入された化学物質は全身の細胞に刻まれた自壊プログラムを発現、即座に全身で細胞単位の崩壊が始まる。
表皮からボロボロに崩れていく僕。
すでに全身の力が入らない。
全身から溢れだした体液の池へ倒れこむ僕。
崩壊した組織は一片も残さず漏れ出た消化液で分解される。
徐々に頭部も崩壊してきた。
目はもう見えない。
肺がないのだから喋るのももう無理だろう。
仕込まれたプログラムは洞島秀寄の肉体をこの世から完全に消し去って行く。
見えないはずの光が遠くに見える。
ああ、
死にたく、なかったなぁ......
特殊部隊が校舎へ突入したころには、洞島秀寄の死体はなく、赤い池だけが残っていた。
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