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追放される?

結構前に思いついたネタではあるのですが、なかなか打ち込む機会がなくてこんな旬の過ぎた時期(?)の投稿になりました。







「すまない。パーティから抜けてくれないか?」


 パーティで受けていたクエストが無事完了し、いつもの流れでそのままギルドから宿兼食事所で席に着き、少々気を抜いたところでリーダーから突然俺に対して告げられた言葉。

 俺としてはこのパーティは今まで居たパーティと違って居心地がよく、俺の職業に対する差別もなく仲間と助け合って上手くやってきたつもりだったのだが、どうやら違うようだ。


 ネクロマンサー、そう聞くと大抵の者が嫌悪感を示し拒絶する。拒絶されるだけなら別に問題はない。ネクロマンサーというだけで犯罪者のように扱われ、事件・事故が起こったときそこに俺が居ればまっ先に疑われる。無実で何もそのことに関係なくても投獄されたこともある。最近はそんなことは減ってきて大分生きやすくなってきたんだが。

 そうか、このパーティも駄目だったか。もうこのパーティほど良いパーティには巡り会えないだろうし、山にこもってひっそりと暮らしていこうか。俯き、そう考えていると


「君に問題があるわけではないんだ。」


「なら、どうしてか構わないか?」


 俺に問題がないのにパーティから抜けて欲しい? 顔を上げるとリーダーだけでなく仲間たちから真剣な眼で見られていた。いつもパーティから追放される時に向けられる嫌悪にまみれた眼ではない。


「正確には、抜けたフリをして欲しい。」


「抜けたフリを?」


「あぁ。俺たちは君を大切な仲間で家族だと思っている。ただ、この国の上層部はそう思っていない。君を汚物のように感じ、排斥しようという動きを見せている。」


 大切な仲間で家族。それは俺が今までどんなに欲しくても得られなかった言葉。ネクロマンサーだから俺に寄り添ってくれるのは死者たちだけだと思っていた。生者とは決して寄り添えることはけっしてないと諦めていた。汚らわしいと蔑まれ、犯罪者として扱われることが常であったこの俺を仲間として家族として認めてくれるのか。


「もう少しで、パーティのランクが上がる。そのために必要な貴族からの依頼実績ももう少し頑張れば溜まる。お前を排斥しようとする上位貴族もいるが、俺たちに理解を示してくれる貴族も中にはいる。その貴族たちに協力を頼んでいる。パーティのランクをもう一つあげることが出来れば、上位貴族も何も言えなくなる。」


「だから、しばらく身を隠してくれませんか? 貴方一人で行動していると貴族たちが何をするかわかったものではありません。」


「必ず、君を迎えに行く。だから。」


そう言うとリーダーは俺の両手を包み込むようにして取り、立ち上がった。


「待っていてくれないか。俺たちのことを。」


 まるで好きな人に告白するときのような熱のこもった真剣な眼。そんな眼を今まで向けられたことのない俺は戸惑い、俯き、言葉がつまる。


「君がいないと、駄目なんだ。君が居なくては駄目な身体にされてしまったんだっ!

 だからどうか、見捨てないで、捨てないでくれ! 何でもする!」


 食堂が一瞬にして静かになった。いや、ちょっと待て、これは、この状況は俺にとってよくない気がする。


「そうよ、貴方がいないと私たちは駄目なのよ! 貴方の居ないパーティなんて考えられないぐらいに離れたくないのよ! パーティから追放したフリをして別行動するっていうのも本当は嫌で嫌で仕方ないのよ! おいしい食事に快適な移動に睡眠、それがなくなるなんて考えられない!」


 先ほどまで黙って話しの行く末を見守って口を開かなかった治療師が騒ぎ立てる。

あ、あぁ、そうか、そういうことか。料理は凝り性なこととまともに食材を商ってもらえないこともあるから色々と勉強していて仲間が食料を買ってきてくれるようになってからはさらに色々試せるようになった。


 移動に関しては食事のいらないスケルトンホースを使役しているし、野宿する時は骨を使ってテントの代わりにドームを作り、簡易のベッドを作っている。骨で出来たドームは強く、多少のモンスターの攻撃ならしのぐことが出来るし、霊が宿っているのである程度の雑魚モンスターなら自動で倒す。


 今まで所属していたパーティではそんなことは一切しなかった。なんせ、殆どのパーティが俺に発言権を与えず、会話せず、命令し、俺が死んでも構わないといわんばかりに使い潰そうとしていた。けれど、このパーティは俺に発言権を当たり前のように与えて、俺を気遣い、ネクロマンシーを気味悪がるのではなく、そういう魔法・技術であると認めてくれた仲間だったから、それならと試したら好評だったんだが・・・そうか、そんなに快適な旅だったのか。


「君を知った俺たちは・・・もう、戻れないんだ。

 必ず、迎えに行く。だから待っていてくれ。」


「わ、わかった。ただ・・・この空気の中、その、食べるのか?」


 なんというか、居心地が非常に悪い。この場所から早く離れたい。が、リーダーは俺の手をがっしり両手で包み込んだまま離さないどころか、顔を寄せてくる。互いの顔が近い。


「今君をここで離したら逃げないかい?」


「逃げないから、その離れてくれ・・・・・・」


 その、周囲の目が辛いんだ。あの二人デキるの? とか、そういう声も聞こえてきて辛いんだ。リーダーが顔を近づけてからさらにそういう声が、会話が広がってるんだ。一見、イケメンが根暗そうに見える男に捨てないでくれとすがっているように見えるから仕方ないだろうが、そういう色恋沙汰ではない。が、周囲はその前の重要な会話をその殆どが聞いていないだろう。


「わかった。でも、逃がさないからな。」


 俺の手を両手で包み込んだまま座り、何事もなかったように食事の注文をしようとするリーダー。大事な仲間で家族だと言って貰えてついつい舞い上がってしまったが俺は早まってしまった気がする。何か、取り返しのつかないことをしてしまった気がする。

















「さて、あれから一ヶ月たったがそろそろ・・・・・・迎えが来るといいな。」


 そう呟きながらサラダを食む。あの後、連絡法法をパーティで取り決めて分かれた。その直後あのネクロマンサーはパーティから追放されたという噂が流れ始めた。そうなってくれないと困るのは困るのだが、その噂を聞くたびに胸が痛み、本当はパーティを追い出されたのではないだろうかと考えてしまう。しかし、半年は待つとリーダーには伝えた。それを過ぎても迎えがなければ俺は・・・・・・もう誰かとパーティを組むことはないだろう。


 食事を摂った後、俺は特に用事がないというか目立たないようにしなければいけないため宿へと足を向ける。


「もし、あなた。」


 後ろから女の声がしたが、俺みたいなやつに話しかけてくるような女はいないだろうと思いそのまま宿へと歩みを進める。


「もし、用事があるのは貴方です。」


 声がかかると同時に右手首を女に捕まれたので俺は振り返るとフードで顔を隠した女がそこにいた。何の用事だと声を出すよりも早く、女は懐から何かを取り出し俺の顔へ吹き付けた。


「しまっ・・・。」


「ふふふ、これで目的は果たされる。」


 消えゆく意識の中、女の声が聞こえた。リーダー、すまない。俺は貴方と会えそうにない。















「目が覚めたかしら?」


眼を覚ますとそこは知らない場所で、両手を柱に鎖でつながれて身体を柱に預けて足を投げ出して座るような体勢にされており、足にも鎖がつながっていてその先には俺では動かせそうにない鉄球がついていた。それも、ご丁寧なことに魔法使いの力の根源たる魔力が鎖を通じて吸い取られるだけでなく、魔力が体内で上手く循環出来ない状態になっていた。これでは魔力で身体を強化して強引に突破することは出来ない。身につけていたマジックアイテムもご丁寧に全て剥がされていた。


「何が目的だ。」


そんなこんな状況でも俺は絶望せず少しでも情報を相手から得ようと相手をよく見る。


「目的? 今の、この状況が私の目的よ。」


「何?」


 この状況が目の前の女の目的? 命を取るわけでもなく、魔力も吸われているだけで危険な魔道具につながれているわけではない。ただただ、俺の自由が一切ないというだけ。


「この状況を作るために、私は貴方を孤立させたの。貴方の職業が職業だったから思っていた以上に簡単だったわ。」


「お前・・・・・・貴族か。俺をパーティから追い出して殺さず拘束してどうするつもりだ。」


 少しでも相手から情報が欲しい。家族と言ってくれた仲間たちにもう一度再会するためにも。女は笑いながら俺の腹の上に馬乗りになり、顔を近づけてくる。


「待て、何をする気だ。」


「おかしな人、わからないの?」


 そう答えながらも女は俺の右耳を触りそこからゆっくりとあごに、首筋最後に鎖骨をなでて、そのまま手を上げて俺の顎を掴み持ち上げる。


「貴方が欲しいの。」


「何?」


「一目惚れだったの。どうしても、どうしても貴方が欲しくなって、どうすれば貴方が手に入るかずっと考えていたの。そうして、思いついたの。貴方を孤立させて、攫って監禁してしまえばいいって。私はこの国の王女。それとなく貴方が孤立するようにするのは簡単だったわ。」


一目ぼれ? まて、じゃあこの状況は


「後は、既成事実を作るだけ。一晩貴方とこの部屋に閉じこもるだけでもソレは達成される。でも、この状況なら貴方は動けない。そうよね。だって魔力を封じた上で弱体化のデバフの魔方陣を貴方の身体に私が直接、そう・・・直接描いたもの。間違えのないように。貴方を確実に手に入れるために。おかげで貴方の身体が意外と鍛えられていることがわかって嬉しかったわ。」


俺の顎を掴んだまま女の顔が近づいてくる。


「よせ、やめろ!」


「ふふふ、力入らないでしょう? 天井のシミを数えている間に終わるわ。

 さぁ、愉しみましょう?」


俺の口と女の口の距離がゼロになる直前、ばんっと大きな音が起こり複数人の足音が聞こえてきた。


「無事かっ!

 この、女狐がっソイツは俺の、俺の男だっ!」


俺を閉じ込めていたであろう部屋に飛び込んできたのはリーダーで女を押しのけ俺の頬に何度もぺたぺたと触れる。それよりも、俺の・・・・・・男とは?


「相変わらず無作法ね。まぁ、男女だから仕方ないのかしら。

 でも、残念。彼を縛る鎖と魔法を解除出来るのは私一人。

 今、彼を諦めて帰るなら特別に先ほどの行為許してあげなくもないわ。」


「うるせぇ! やるぞ、お前等っ!」


「あら、諦めないのね。いいわ、勝負に乗ってあげるわ。」


「必ず助けるから、ここで待っていてくれ。

 それと・・・・・・その、終わったら・・・・・・俺と・・・・・・」


そう言うなり、リーダーはゆっくりと俺と軽く唇を重ね、もう一度キス・・・・・・された。


「ソレは私のよっ!」


俺の顔の真横を鞭が飛んで部屋の壁をえぐった。


「いいや、俺たちのモノだ!

 すまない、アイツを倒してからゆっくりと話そう。

 それと、俺は男ではなく女だから安心してくれ。」


「援護するからあいつらを早く蹴散らしなさい。

 そして、這いつくばらせて目の前で彼を奪ってやるわっ!」


これは、どういう状況で、俺は一体どうすればいいのだろう。

魔力を吸われ、体内の魔力循環も乱された上で弱体化のデバフもかけられた俺は目の前で起きていることを呆然と見ているしかなかった。


「奪わせたりはしないっ這いつくばるのはお前の方だっ」


 

最期の方のシーンは書き直すかもしれないです。ちなみに、ゲーセンで待機時間中にカタカタ打ち込んでいました。

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