97話 大浴場、完成
「じゃ、メテル姉! 大浴場、作ろうよ!!」
「ほほぅ? 詳しくお話、聞かせて貰おうか」
前回は見逃した、妹たちの入浴姿。
大浴場、末妹と二人っきりで堪能出来るんですね?
いや、これは体目当てではなく。
崇高な、妹の成長確認ですよっ。
──いや。割と本気で?
以前より、別人ってレベルでめっちゃ育ってるから。
いっぺん詳しく確認したいのは、ある。
特に。
たわわに実りまくってる、その胸の果実とか。
「だっ、だってディーがあんなだから、つい気合入れて」
気合入れて何したんだよ一体。
え、大胸筋鍛えた?
ああ、土台の底上げか。
アンダーバスト的な。
鍛えたおかげで、全身の精霊力がこなれたのかね?
本来的には、全員、オレそっくりになるはずなので。
何しろ、オレの分身みたいなもんだからな。
で。
ほう、今、握力も膂力も、結構なレベルで鍛えてると。
まあ、オレには勝てないだろうけどな。
「えええ? やってみなきゃ、判んないかもだよ?」
「オレ、握力数トン、膂力は数百トン以上あるんだぞ」
「!?!?」
まあ。
地属性限定だけどな。
両腕に生やした単一金属の棍棒。
オレのメイン武装。
縦横無尽に振り回せるのも、地の権能のおかげだ。
何しろ、地属性に関しては重さを感じないもんで。
ただし。
たまにうっかり調整失敗して?
金属ドアのドアノブ、握りつぶしたりしてるんだけども。
だから。
お部屋や出先の金属ドアノブが、急に新品になってたら。
うっかりオレが握り潰し錬成したんだと理解して欲しい。
「そういえばメテル姉のお部屋、いつもドアノブ新品」
「さあ大浴場作るんだったな、場所はどこにする?」
過去は振り返らないんだオレはっ。
寝起きの調整はデタラメなので常習犯だとか?
細かい点は、指摘しちゃダメだぞ。
で。
大浴場。
当のドワーフさんたちも、妙にノリノリになり。
「伝説の、混浴などは」
「オレは別にいいけど」
「やだよボク!? 姉妹以外に見せたくないもん!!」
男女別で決定され。
とりあえず、オーガ族の溶融炉そばに作ることに。
溶融炉の排熱を利用して?
炉に隣接する壁面に、水を通して温める方式。
並べた金属管に水を通して、金属ハブで繋ぐ感じ。
ハブの繋ぎを調整すれば、お湯の温度を調整出来るなと。
ここは細工が得意なドワーフが技術を見せてくれるって。
細工っていうか?
そもそも、加工技術全般に秀でてるのね。
機械工学とか導入したら、凄いもん作りそうな気配。
オレ?
完成品についての知識は前世でたくさん知ってるけども。
どうやって作るか、についてはドシロートです。
蒸気機関車の原理っていうか?
ピストンエンジンくらいは、原理知ってるけどね。
「なかなか面白い知識をお持ちで? 図解して頂けますか」
「ああ、後でいいなら」
ドーリンさん、めっちゃ興味しんしんですやん。
ていうか、ドワーフ全般が技術系に興味あるんだって。
専門家が居るなら?
適当に原理やアイデアだけ教えれば?
試作、実現してくれるかしらん?
クーラーとかビデつきトイレとか?
結構、現代日本の技術で、この世界でも出来そうなもの。
魔法も利用できるし、意外と多い気がしてる。
まあ、それは後の楽しみに取っておこう。
とりあえず今は、浴場作成に、集中っ!
「うーん。ウンディがいれば楽だったんだけどな」
「あ、ディーはもう、水は引いてくれてるんだよー」
なんですと?
それは、話が楽だが。
地下都市だから、どこから水利取ろうか悩むとこだった。
ふんふん?
武器の鍛造で必ず水は使うし?
坑道掘削でも排水設備は必要になるから、ってことで。
ウンディが、精霊力と魔法の組み合わせを駆使して。
地下水の揚水ポンプを各立坑に据え付けてくれてるって。
水の精霊力利用方式なので。
動力、無制限らしい。
準備万端じゃないですか、オイ。
それならば。
水流水圧が、結構な負荷に耐えるから。
いっぺん天井付近に揚水して、掛け流しでいいかな?
「あ、メテル姉、ボク、作って貰いたいのが」
ウォータースライダーですかい。
ウンディに頼めばすぐやってくれただろうに。
「だってディー、ぜったい子供っぽいってバカにするし!」
オレから見たら、二人ともお子様だよ。
ウンディだって、未だにおねしょ癖、治らないしな。
「え、いいこと聞いた! 帰ってきたらやり返す!!」
その手のアレは、ウンディに一日の長があるから。
ぜったい反撃されるから、やめとけー?
と、思わなくもないが。
君らの姉妹喧嘩は、じゃれてるだけだし。
野暮は言わないでおこう。
やり込められて、オレに泣きついて来るまでがデフォ。
と、そうこうしてるうちに。
大浴場は、オーガとドワーフの共同作業で。
ででーんと、完成したのでした。
「これは、いい試みですな!」
と、ドーリンさんもにっこり。
坑道から上がって、自宅の廃坑に戻るまでの途中に浴場。
一仕事終えて、帰路の途中でひとっ風呂。
汗を流して、体を休めて。
生活習慣に組み込めば?
コレひとつで清潔感が根付くってわけじゃ、ないけども。
なかなかに、良いんじゃないですかね。
やっぱり。
お風呂は、いいものですよ。
日本人の、魂だからね。
「それで、大精霊様のお社は、どこに作れば?」
「いやだから、オレは定住しないって……」
ドーリンさんとサラムに、押し切られ。
オレ。
大浴場のそばに、ついでに建てられた神社っぽい社に。
お祀り、されることになりましたとさ。
──拝んでも、ご利益ねえぞマジで、オレ。




