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94話 人間辞めちゃったらしい

 宴もたけなわ、盛り上がりまくってますねー。

 ……みんな、がぶがぶ呑みまくってるんだもんなあ。


 四種族で、いちばん多いのがドワーフさん。

 体型、ずんぐりむっくり。

 いちばん背が高い人でも、百五十センチないのでわ?

 その代わり、ビヤ樽体型、というか。

 力こぶの太さが、オレのウェストくらいあるんですけど。

 筋肉の権化、って感じ。


 余興に興じてるんだけど。

 内容も、大ハンマー振るったり樽を持ち上げたり、って。

 筋肉無双の種族と認識しました、ハイ。


 数が少ないのはエルフかな?

 シルフィの前世で、庇護種族なんだっけ。

 男女ともに線が細いんだけど。

 果物や木の実とかばっかり食べてる感じ?

 でも果実酒呑んでるし、いいなぁ。


 全体的に優雅な感じで、余興も音楽奏でたり、歌ったり。

 好奇心旺盛っぽくて、まるっきりシルフィみたいだ。


 中間くらいの人数が、オーガの人たち。

 でも、こちらは女性がいなくて、みんな男性。

 確かサラムの前世だよな?

 火の加護持ち種族。


 その名の通り?

 額の両脇に、二本の角がある鬼さん。

 割と筋肉質な人が多いんだけど。

 全員、腰に帯刀してるのが目立ってる。

 質実剛健、武人! って感じ。


 でも。

 余興で兜割りとか藁束切りとかやってるの見ると。

 サムライ、みたいな印象強いなあ。

 衣装はなんか、チャイナ服みたいなのなんだけどね。


「ママちゃんと食べてる? これとこれも美味しいよ!」

「エル? 君はオレにどんだけ食わせるつもりなのだね」


 いや、いくらでも食えるっちゃ食えるけど。

 親父殿を傍らに、……監視つきで、お腹にエルを抱え。

 エルがひたすらオレに物食わせるもんだから。

 オレ、もう軽く十数キログラムくらいは食ってるかと。

 人間なら無理だぞ、こんな量。


 ほぼ未調理、切っただけな野菜と果物だけ、なんだけど。

 全部、世界樹から採れた作物、らしく。

 この世の美味、全てここに有り、みたいな?

 全部の食べ物が、そのままで既に絶品。


「ママに食べて貰いたくて、頑張ったの!」

「そかそか、エルはいい子だなあ。オレ、超嬉しいよ」

「ほんと!? 良かったぁ!!」


 返す返すも。

 完全に存在を忘却していた、などと。

 迂闊に言ったら?

 この満面の笑みが、瞬時に絶望に変わるんだろな。


 ──絶対に、内緒にしよう!

 そう、オレは固く心に誓った。


 と。

 広場に歓声が響いて、そちらに視線を。

 人波がさぁっと割れて、拍手喝采。


 ん? なんだろ??

 と、思ったら。


 ものすごく際どい、露出度全開なチャイナドレスの、娘。

 が。

 たたたたっ、と広場の中央に走り出て来た。


 うーん?

 なんか、見覚えある気がするんだけど。

 般若面で顔を隠していて、見えない。


 ただ。

 額の中央に、真っ赤な角があるので。

 ああ、オーガの女性なんだな、と分かるのみ。


 その、娘さんが。

 腰と背中から、二本の刀を抜刀して。

 その場で、剣舞を始めた、んだけど。


 あるぇ?

 あの刀、なんか強烈に見覚え、あるような。


 って。

 その剣舞が、また凄まじい練度。

 軽く舞ってるように見えるのに。

 剣の切っ先から、ぴぅっ、ぱぁん! なんて音が周囲に。

 明らかに、剣速が音速超えてますよね?


 周囲に居るオーガの男性が、ときどき果物を投げる。

 それを空中で、すかかかっ、と鬼の速度で切り刻む。

 果物は地面に落ちずに、皿の上に積み上がる。


 また下らんものを切ってしまった、って言って欲しい。


 それくらい、見事な剣舞だった。

 終焉。

 両手に一本ずつ構えた刀を、翼みたいに広げて。

 そのまま、優雅に片膝立ちで、礼。

 思わず、拍手してしまった。

 いや、凄いもの見たな、と。


 そしたら。

 急に、娘さんが幼くなった感じで?

 納刀するなり、ぴょんぴょんって、両足揃えて跳ねて。

 なんだか、微笑ましく。


 って。

 その娘さんが、オレに向かって走り寄って来るんだが。

 これは?

 おひねりタイムでせうか。


 ええと。

 小ぶりな胸の谷間に、お札差すんだっけ。

 お札っていうか、野菜と果物しかないんだけども。


「メテル姉、おはよう!」

「──は?」

「あっ、面着けたままだった!」


 面を取ったら、見慣れた顔。

 いや?

 顔貌は、だいたい一緒なんだけど。

 ちょっとどころか、かなり大人びたな?


 以前は年齢不相応に、幼かったけど。

 今は、歳相応というか。

 それは、いいんだけど。

 以前と、大幅に異なる点がひとつ。


「サラム? お前、どうした?」

「あのねっ、ボク、オーガになったから!」


 そう。

 最愛の末っ子、サラム。

 その額には、紅い角が伸びていた。


 ──君、人間辞めちゃったんですか?


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