表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/200

80話 妹愛は、国境を超える

「コチョウはー、メテル殿下と魔法練習してるのではー?」


 びびくぅん!

 と。

 コチョウの肩が、はっきりと震えるのが見えた。


 そういえば。

 身体強化、教わる予定だったんだけど。


『両手を取って、お互いの魔力を送り合って循環』


 という練習方法を取るらしいので?

 ──オレという精霊の魔力を送ったら。

 レイドさんっていう、失敗前例もあるし?

 人間のコチョウがどうなるか判らん、という理由にて。

 練習断念、せざるをっ。


 シルフィ開発の、精霊力系の身体強化はあるから。

 困りはしないけど、覚えたかったなあ。


 で。

 漂着民が収容されている、港の砦。

 元々は、港湾管理官の旧館で予備施設、無人だった。


「緊急避難場所として残してあったのですけどもね」

「カゲツ殿下っ、えいえい英断っ。さすが軍務総督ぅ」


 優雅に笑うコチョウの姉君、カゲツ殿下と。

 よいしょがさりげない、ウチの次女。

 なんだよォィ、妙に気が合っちゃってんじゃねえか。


「王国第一王女と、うちの長女が揃って行方不明だからぁ」


 お鉢が回って来たのよっ、ってシルフィが。

 ──ご、ごめん?

 公務の予定、把握してなかったわ。


 オレとリズが居なかったら、地位が一番高くなるんだな。

 むしろ、お前が全部回れば?

 能力、知識、対応力的に、全部完璧だと思うんだけど。


 とか思ったら。

 じろりっ、と睨まれて。

 ふと、困ったように笑う、後ろのカイルくんと目が。


 あ。

 そうか、デート中だったんだな。

 そりゃ邪魔して悪いことしたなあ。

 って、いうか?


『どこらへんまで進んだのだね。具体的に』

『何も進んでないないないっ!?』


 今度はシルフィの背が、びびびくんっと。

 ショートパンツスタイルの足に、ローヒール。

 活動的スタイルは、浜辺なこの港町によく合ってる気が。


 そして、愛し合う男女が手に手を取り?

 浜辺で、一夜を過ごし……。

 熱く火照った身体を、お互いに重ねて……。


『かいかいカイルとそんなこと、しないもぉんっ!?』

『──別にカイルくんとお前の話だとは、一言も?』

『!?』


 にこやかに表面上はカゲツ殿下と視察するシルフィ。

 その肩や背中が、裏の精霊通信に反応して、震えるのが。

 いや、面白いぞ次女よ。

 いじり甲斐、ありまくりだ。


 だが。

 いじり甲斐と言えば。


「今日は重大な日だからって、楽しみにしてたわね」

「はっ、はい。その通りで」

「だから軍務代わってあげたのにね」

「姉上のご配慮、有り難く」

「着物、何着も選んであげたわよね? 見せた?」

「いっ、一着だけ……」

「どうだったの? 可愛いコチョウの話、聞きたいわ」


 ……あっちもあっちで、結構いじられてんなー。

 あちらはカゲツ殿下の方が上手らしい。


 妹いじりって、姉の特権ですよね?

 なんて想いを込めて、コゲツ殿下を見やると。

 くすりと笑って、軽いウィンク返してくれたので。

 姉同士の妹可愛がり信念は、国を超えて繋がるらしい。


 王国と帝国の絆は、今後数十万年、安泰ですね!

 その頃、人類が存続してるかどうかも知らんけど!!


 つって。

 視察が奥へ、下部へ進むにつれて。

 理由いろいろつけて、随行員が減り。

 最深部へ進む頃には?


 王国から、オレ、シルフィ、リズ。

 帝国から、カゲツ姫、コチョウ。

 護衛たちとも、ここで一旦お別れ。


 ここから先は、正真正銘、帝国の軍事機密。

 王族以外は、ほぼ立ち入れませんのことよ、と。

 それくらい、帝国では……。


『精霊力を、自在に操る』


 っていう、漂着した亜人種を重要視してる証明かなと。


 ──オレら四姉妹が、四大精霊だと知ったら?

 環境破壊してでも、惑星改造を願いそうだなと。

 なので、一応、内緒ちぅ。


 砂漠気候って。

 その地域で生きる人間には、不便だらけだもんねー。


 ……そりゃ、やれば出来ちゃうけど。

 惑星の気候っていうのは、複雑に絡み合っていて。


 例えば太陽発電。

 一見、エコに見えるけど。

 地面に降り注ぐはずだった太陽光熱の一部を奪って?

 上昇気流の生成を、阻害しているから。

 長期的に見ると、一帯の気候を乱していることに。


 結果として?

 巡り巡って暴風雨を呼んだり、逆に雨が減ったり。

 被害に遭うのは、その地域外の人だろうけどね。


 風力発電も、本来吹き抜けるはずだった風力を奪う。

 すると?

 どこか遠くで気流が変化して、逆に暴風を生んだり。


 つまり。

 気流、海流、地熱っていうのは。

 複雑に絡み合って、現在の惑星気候を構成しているから。

 軽々しく、大々的にいじるべきではない、ということ。


 ──オレは別に、困らないけど。

 天変地異の全てに対応できるほど?

 今の人類って、強いわけじゃないからなあ。


 そういうことで。

 帝国が、精霊をどう、扱おうとしてるのか。

 それは。

 四大精霊を崇拝する王国としては、重大関心事。

 という、名目で。


 ぜったい、ウンディが関わってんだから?

 ここで待ってりゃ、あいつ、きっと現れるぜ!

 と、思ってたんですけども。


 ──あいつの気配、半径数キロ以上、反応ないし。

 あ、あるぇ?


 ともかく。

 漂着民本人に、会ってみよう。

 そうしよう、そうしましょうっ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

──少しでも面白いと思ったらっ。評価ボタンを押して頂けますと、感謝感激でございますっ。──


小説家になろう 勝手にランキング

+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ