77話 ほっといたらリズが拗ねてた
「メテルお姉様、私というものが有りながらぁ」
「いやだって、今回普通に公務だったし」
拗ねまくりの、リズ。
オレら四姉妹と同行の公務って、初だから。
結構、一緒に行動するのを楽しみにしてたそうで。
す、すまんかった。
王国第一王女だから?
帝国貴族と会ったり、皇族と対話したりとか。
公務で忙しいのかと思って、敢えて避けてたわ。
考えてみれば。
王都でも普通にお忍びで街を徘徊してた、リズ。
帝国領に、お出かけだからって?
行動が、簡単に改まるわけ、なかったわな。
「帝国南方にお忍びで出かけるぅ? ご一緒しますぅ!」
「あー、えーと。ほんとに、内緒でな?」
こっそり、滞在中の拠点から抜け出そうとしてたオレ。
リズ(と、お忍び護衛団)に、ものの見事に発見され。
ど、同行するに、至るっ。
「置いてったら、シルフィさんに言いつけるとこでしたぁ」
「マジでやめてね、おしおきが怖いんだから!?」
がくぶるっ。
ここんとこ、シルフィに知られるとマズい事溜めてるし。
マジ怒りされると、本当に怖いのだ。
メイド服で済まなくなったら。
……何されるか考えると、夜も眠れずっ。
「毎日10時間睡眠ってシルフィさん言ってましたよぉ?」
「寝られるときに寝る、それが健康の秘訣だ」
いいじゃねえか、下働きは継続してんだからっ。
オレ、権能で疲れないからして?
重労働系のお仕事には、うってつけだと思うんだよな。
……公爵家令嬢が下働きしてちゃ、まずいんだろうけど。
いやだって。
下働きでもしてないと、なんかいろいろ勉強させられ。
そっちの方が、イヤなんだもんっ。
で。
リズのお忍び馬車に同乗したので。
すすっと完璧に、拠点の正門真正面から通過っ。
うむ。
持つべきものは、友だねっ。
「友なんて。もっと深い関係ですよねぇ?」
「いや従姉妹以上になる予定はないぞ」
「ああんっ、メテルお姉様がいじわるですぅ」
こら。
御者台で滝汗掻いてる護衛さんたちを見ろ。
王様の一人娘が百合に走ったら?
世継ぎが、生まれないでしょっ!
「くすんくすん。養子でいいじゃないですかぁ……」
「本気で言ってるからたちが悪いんだよ、リズは」
言いながらも、しっかりオレの腕に抱きつきやがって。
──むにゅるりんっ。
相変わらず、十四とは思えないくらいの質量。
何食べたら、こんなに育つんだ一体?
「これでも、激務で痩せたんですよぉ?」
「確かに腰回りは締まってるけど。そうじゃなくだな」
「メテルお姉様も、結構あるじゃないですかぁ」
「こら、どさくさで揉むなっつの」
あふん。
先端が超敏感なので。
揉まれると、妙な声が出てしまう。
って。
なんで、リズの護衛さんたち一様に赤面してんですかね。
リズも。
赤面硬直するくらいなら、最初からやるなよ。
「こ、こほんっ。メテルお姉様の、意外な一面がぁ」
「揉まれたら声くらい出て当然だろうが」
「こ、声があまりにも艶っぽくてぇ……、はぁはぁ」
「おぃ。それ以上はアイアンクローの餌食だぞ」
全く。
まぁ姉妹のスキンシップに飢える気持ちは、分かるけど。
一人っ子だもんな、リズ。
と。
そうこうしているうちに。
滞在中の城を離れ、街道に。
そこで、紅の鎧装束な、騎馬武者団に囲まれる。
「敵襲ですかぁ?」
「いや、予定通りだ。コチョウ!」
窓を開け、一言。
先頭の小柄な武者が、騎馬を寄せて来る。
面頬を外すと、可愛いコチョウの顔。
「この先の駐屯地で、馬車を替えますので!」
「分かった、よろしく頼むぜ!」
うむ。
リズもオレもだけど、コチョウもお忍びなので。
紅武者軍団で、視察の名目で出て。
馬車を替えて、隊商に成り済ます予定なのだっ。
つ、ついでに……。
途中の街で、買い食いも出来たらなっ、などと。
い、いや。
だって、お米の国ですよ!?
ウン万年ぶりの和食、楽しみにしてたって、いいだろう!
「和食ですかぁ。リズも、結構好きですよぉ」
「そうか、じゃあ、TKGを試すときだな!」
「て、TKG??」
「TKGこそ、和食の基本にして至高!!」
熱弁を振るいつつ。
リズの馬車とコチョウ率いる紅武者は。
近在の駐屯地へ、並んで進行した。




