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71話 帝国民と、初接触

「うわすごい」


 王国の南方に広がる、大砂漠。

 精霊だった頃は、ここまで広々とはしてなかったような。


 広範囲の砂丘は、巨大なミミズっぽい魔物、砂虫の棲家。

 砂漠の中で、どうやって獲物を感知してるか?

 振動に、超絶に敏感なのだ、こいつ。


 だから。

 移動中は、わざと馬車から離れた場所で。

 大きな音を立てたり、大騒ぎしたり。


 そうやって、一定の距離で、砂虫を敢えて呼び出し。

 退治しながら、進行する。

 そういう手順の、最中。


「GYURURUWAAAAWOOOOMUMUMU」


 ……どこから声出てんだ、こいつ?

 オレの目の前には、巨大な砂虫さんが。

 砂から巨大な頭を出して、オレと対峙している。


「めっ、めーちゃんっ、それ近寄らせちゃ、ダメっ!!」


 はっはっは。

 オレは仮にも、大地の大精霊。

 この程度、敵にもならんだろ。

 っていうか。

 シルフィ、お前だって、別に負けるわけないだろうに。


「かたかたかたっ、形がもうダメなのっ!!」

「メテル姉、汁くっつけたらえんがちょー!」


 おおぅ。

 我が姉妹らは、繊細だなあ。

 改めて、砂から頭を突き出してる巨大な砂虫を。


 地上に出てる分だけで、六メートルはあるか?

 てことは、地中の分が倍と仮定して。

 十二~十八メートル?

 今まで出会った魔物の中で、水竜以外じゃ最大だなあ。


 全身はぬめぬめ粘液に覆われて、ぼたぼたと滴っている。

 その頭の先端には、目鼻もなく。

 円筒状の口の中に、幾重にも重なる無数の歯が見える。


 なるほど?

 飲み込むだけで、中で獲物はごりごり削れちゃうわな。

 生物って、上手いこと進化するもんだなあ。


 と。


 ずずぅん!!

 オレを狙って頭を叩きつけた動作で。

 周囲の馬車が、軽く跳ねた。

 あっぶねーな、オイ。


 オレの後ろには?

 セバスさん以下、護衛の兵士たちが展開中。

 使節団の皆さんは、馬車に乗ったまま。


 ずっと後ろの方にいた、騒音出してた護衛の皆さん?

 慌てて、先頭のオレの方に、駆け戻り中。

 まさか、騒音無視して先頭に出てくるとわ、ってとこか。


「何だよ、オレの精霊力に反応しちゃったかー?」

「GYUUUOOOOWAAAA!!!」


 当たりっぽい。

 なんか地面から変な感触するな、と。

 馬車から降りて、散策して良かった良かった。


 ──侍女さんズが張り切って、おめかしてくれたドレス。

 飛散する砂でじゃりじゃりにしたから、後で怒られそう。


 面と向かって苦言、はないけど。

 食事に、オレの嫌いな人参とピーマン増やすんだよな。

 地味ーに、侍女さんズ、酷いです。


 さて。

 上からぼたぼた降って来る、よだれみたいな体液。

 砂がしゅうしゅう、と煙を吹いている。

 これは、強酸っぽいな?

 酸化液は親父殿が、錬金術の研究によく使うから?

 一匹くらい、捕まえて帰ったら喜ばれそうだけど。


「ぜったいぜったいぜったい、イヤ! 退治して退治!!」


 次女が猛烈に嫌がってるから。

 ダメだなお持ち帰りは。

 ううむ。

 どうしたものか。

 まさか、国境超えてすぐに、こんなお出迎えがあるとは。


 と。

 ぴゅぅぅぃぃぃ……んんん、どすっ!

 飛来音からの、重たい刺突音。


 目の前に何匹も頭を出していた、砂虫たち。

 身を捩らせて、大きく暴れ出す。

 はいはい、護衛さんたち下がって下がってっ。

 なんか、遠くから?

 ぶっとい、矢の雨が降って来てますっ。


 んんん?

 あれは、騎馬かな?

 砂の上って、悪条件下なのに。

 バカでかい弓を引いた騎馬武者が、何人も。

 なんか、上下非対称の変な形の、弓。

 和弓か、あれ?


 飛んで来る矢は、黒光りする鉄製。

 尾羽根の効果なのか、きゅるきゅると回転している。

 それが、暴れ回る砂虫たちに、全弾命中。

 どんだけの弓の達人揃いなんだ、しかも、全騎が。


 その中でも。

 一際目立つ、先頭。

 全身を紅の装束で固めた、鎧の武者。

 あれは、どうやら女性っぽい。

 砂煙を背負って、オレら使節団の周囲に、到着。

 すぐに、全周を取り囲んでくれる。


 砂虫の集団が放つ異臭が、かなりの臭いだけども。

 ぱっ!

 と、全騎馬が一斉に放った、白い粉。

 周囲に舞うなり、砂虫が慌てて砂に潜って、逃げ出す。

 虫除けの粉か何かなのかな?


「王国使節団と、お見受けした!」


 はい、そうです。

 帝国の、お迎えさんでしょうか?


「我ら、帝国近衛! 第三皇女、コチョウが歓迎します!」


 コチョウって、胡蝶かなあ?

 いやね?

 黒髪を結ってる、中学生くらいの女の子なんだけど。

 頭の後ろで、長い髪を蝶結びみたいに、結ってるから。

 なんだか、東方っぽい雰囲気なんだな、帝国って。


 ごくり。

 もしかして。

 お米が、あったらとても嬉しいな?

 期待してしまう、帝国民との初接触でした。


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