61話 若返った人がいろいろ元気だった
「な、ぴったり合ってただろ?」
「間違えなさすぎて、レイドさんの方向感覚が怖い……」
何が怖いんだよ!
って、怒られました。
うえぇ。
だって。
「小道と小部屋挟んで通り曲がって裏道進んだだけだろ」
「布袋に詰め込まれた状態で、それを把握出来てるのが」
精霊のオレが言うのも何だけど。
人間技じゃねえっす。
レイドさん、牢屋を何回か移動してるらしいんだけど。
ズタ袋に詰め込まれて、他人に担がれて移動してるのに?
移動した場所、全把握してやんの。
前衛なのにマッピングも出来てしまう、とは。
……ああ、だから、迷宮でもソロ出来ちゃうのかあ。
一人で潜ったら確実に迷子になるオレとは、大違いだ。
「あの、おふたりとも。そろそろ、こちら、大丈夫ですよ」
「──それを大丈夫と言っちゃうか」
「仕方ありませんでしょう!? 布地がないんですよ!!」
叫んだのは、ラスティ。
でも、ここは地下だ。
慌てて、抱きすくめて口を塞ぐ。
レイドさんの案内で、危なげなくラスティと合流。
途中で何人か看守とかに出会ったけど?
ああいうのは、オレら冒険者の障害にはならないさ。
──。
殆どレイドさんが、あっという間に無力化したんだけど。
くそう、オレだって?
いつかきっと、E級より上になってやるぅ。
で。
オレの腕の中にいる、ラスティの姿はといえば。
ぎりぎり胸と尻を覆っているだけの、ビキニ姿。
「女なら衣服を剥いでおけば、逃走しないという処置で」
「それはそうなんだけど、何か腹立つな」
何か羽織るモノを貸してやりたいのは、山々だが。
──生憎と、オレの方も布面積は似たりよったり。
地下で、バニーガールとビキニ少女が、二人。
「お前ら、俺の後ろを歩けよ?」
はいっ。
分かってます、レイドさんっ!
点々と続く鼻血の跡を辿るように、レイドさん先頭で。
……若返るって、いろいろと元気になっちゃうんだなあ。
「てか。ラスティの捕まった理由って」
「精霊の認定について教義解釈してたら、背教者ですよ?」
「うーん、それは酷いけど。にしても、いきなり過ぎね?」
だって。
曲がりなりにも、冒険者でランク得てるラスティが。
地方から王都まで、精霊に関する情報を持ってきたのに。
問答無用で、牢屋にぶちこむ、なんてなあ?
「私、以前から大僧正のやり方に疑問を呈していましたし」
「女性の扱いや、積年の恨みとか?」
「女性侍祭の衣装って、もっと可愛い系があっても」
「そっちかよ、ぉぃ」
ラスティは割と?
男女問わず、愛に関するお悩み相談、得意らしい。
ふうん?
オレ自身は、経験ないけど?
……やっぱり、そっちの経験も、豊富なのかなあ?
「はぁはぁ……、メテル様、そのような身なりも、素敵で」
「そうだったお前もそっち系だった」
完全に忘れてたよ。
アイアンクローで、ラスティの頭を鷲掴み。
激痛が走ってるはずなのに?
くぐもった、歓喜の声が聞こえるのがヤバイ。
「一応、脱獄の真っ最中だ、静かにな」
「「はぁい!」」
見ろ。
レイドさんに、怒られちゃったじゃないかっ。
……と。
そうだった、このまま、脱出しちゃまずいんだ。
「地霊の大岩? を、見つけるのか?」
「そうです。多分ですけど、レイドさんにも関係あるかと」
「俺にも?」
うむうむ。
多分、憶測だけど。
迷宮でレイドさんが若返った理由って。
シルフィが、濃縮された精霊力を分けたせい、だから。
同じように?
超絶に濃縮された精霊力を持ってる、地霊の大岩。
その波動が、この王都の地霊殿のどこかに、存在してる。
それを。
レイドさんが更に、影響受けてるんじゃないかな?
「おいおい、その話だと」
「レイドがこのまま王都に居続けると、更に縮む?」
「ラスティ、当たりだ。見つけて、どうにかしないとな」
ぐっ。
親指立てて、合図。
そういうことで。
セラさんが向かってるはずの、大僧正のお部屋に?
合流ミッションに、変更だっ。
──セラさん、なんか妙にノリノリだったからな?
変なこと、してないといいんだけど。