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57話 探した知り合いは、牢屋にいました

「で。なんでお前がついて来たかな」


 珍しく、オレ、単独行の予定だったのに。

 シルフィ、ウンディ、サラムの妹たち。

 それぞれ、自分を信奉してる精霊殿に行ってんだよ。


 固体として精霊力宿してるのは、大地だけのはずだけど。

 それぞれに霊殿が建ってるくらいだから?

 なんか、関わる品物があるかも、って考えでな。


 シルフィも単独だけど。

 ウンディには親父殿が、サラムには御母君がついてった。

 二人はまた別に、それぞれで用事あるそうな。


 一応、親父殿も御母君も、国のお偉いさんだから?

 物々しい護衛とかついて、行列になってたな。


 ウンディとサラムの行き先、水霊殿と火霊殿。

 そっちは、目立たずに精霊殿入るのは無理だろうなー。


 あと。

 自分たちが、どんな祀られ方してるのか、興味津々で。


 だって、地の大精霊な、オレの場合?

『慈愛と豊穣を司る、愛の大精霊』

 とか言ってたもん、司祭のラスティが。


 ……聞くなり、噴出してたな、シルフィ。

 あいつ、自分がそんな話になってたら?

 笑いすぎて悶絶するんじゃないんだろうか。


 で。

 現在、王都、中央広場にて。

 オレの隣に、しれっと居るわけですよ。

 頭まですっぽりフード被った、地味ローブ姿のリズが。


「お姉様とお忍び行、リズ、どきどきしますっ!」


 お前、第一王女殿下だろうが。

 見ろ。

 周囲一帯に、私服な護衛の騎士さんたちが、大量に。


 全力で普通の人モードになりきろうとして?

 どこかしら浮いてるのは、ご愛嬌か。


 だって。

 屈強な筋肉が、腰に剣差したまま大道芸。

 精悍な女子が、背中に剣背負ったまま八百屋の売り子。


 あれか、剣は騎士の魂だったりなんだりするんだろうか。

 だから、手放せない的な。

 周囲の民衆がすんげえ遠巻きにしてるのが、また。


「リズ、こっそり、お城抜け出して来ましたぁ!」

「全力で失敗してるんだけどな」

「……? 護衛さん、誰も居ないですよぉ?」

「そうだな、そういうことにしとこう」


 視線の端で、騎士っぽい男女数人が頭下げてるから。

 王女殿下のお守り、大変ですね皆さん。

 ……何人居るんだ?

 視界に入るだけでも、軽く十人くらいいるぞ。


 っと、とにかく。

 リズの目的は知らんが?

 オレの目的は、地霊殿。

 ……って。

 地霊殿って、どこだよ?


「リズがご案内、差し上げますわぁ!」

「なんで道知ってんだ?」

「あら、リズは大地の精霊殿の巫女ですわよぉ」


 え?

 神官僧侶って、精霊力を感知できるんじゃないの?

 下位司祭なラスティだって、オレをそれで発見してたし。


「……?? 精霊力って、何でしょう?」

「ああ、王女だから肩書きだけか……」


 天然入りまくりなリズが、やたら腕に絡んで来るに任せ。


 ──偶然通りがかった道案内に出会い。

 ──偶然通りがかった行商に、食事と飲み物を頂き。

 ──偶然通りがかった馬車に乗り。


「このネタは、どこまで引っ張るんだろう……」


 びくぅっ!

 頑張って扮装してる騎士さんたちが、一斉に背筋伸びた。

 ううむ。

 リズが気づいてないから、いいのか?


 ぐっ!

 さり気なく、親指を立てておく。


 皆さん、ほんっとーに大変そうなんだけど。

 苦笑しながらも、割と嬉しそうなのは。

 リズ、家臣にめっちゃ好かれてんだな、君。


 にこにこ、にっこにこ。

 天真爛漫にくるくる表情変えて、何にでも興味持つリズ。

 うん。

 オレも、何でもしてやりたくなるよ?

 従姉妹のおねーさんとして。


「あっ! メテルお姉様? 大僧正は、要注意ですよぉ?」

「んぁ? なんだ要注意って」


 ふきふき。

 お茶飲みながら急に話すから、顔に飛んでんじゃねえか。

 なんで、布巾で顔ぽんぽん触るだけで赤面してんだよ。

 目を閉じて唇突き出すな、そういうんじゃねえよ。


「はっ!? メテルお姉様の魅力に、めろめろでしたっ」

「そういうお世辞要らないから。要注意って、何をだ?」

「ああん、ほんとなのにぃ。──大僧正は、ですねぇ」


 むむむっ。

 美少女は顔をしかめても美少女なんだな。

 小脇に抱えてベッドに放り投げたい可愛さのリズだ。

 おっと。

 それはともかく。


「女癖悪い神官って……。それ、破戒坊主じゃねーか」

「大地の地霊殿は、王都では最大勢力なのでー」

「勢力大きすぎて、手出し出来ない奴か。なんだかなー」


 リズがそれに気づいてる事実と。

 周りの護衛さんたちが、急に不機嫌になった感じから。


 リズ、手出しは行かないまでも。

 危ない雰囲気になったこと、あるんじゃねえのか?


「それですっ! ぜったい、二人っきりはダメですよ!?」


 お姉様は、一人の身体じゃないんですからっ!

 とか、おい。

 妊婦みたいな言い方はよせ。


 オレの身体は、オレのもんだ。

 ──左側半分くらいは、親父殿の素材混じってるけど。


 と。

 妙に豪華な馬車の、大きな窓の外に。

 ひと目でそれと解る、巨大な霊殿が、見えて来た。


「あっ。今日はお忍びだからぁ、一般入場門ですねぇ」

「普通でいいよ、普通で」


 どうやら道を間違えたらしく?

 豪華な坂道から、妙に細い脇道に入って。

 一般門の方へ、仕切り直し。

 馬車って馬が引いてるから、バックできないのね。


 と。

 なんか、聞き覚えのある、声が。

 微かに、聞こえて来たんだけど?


「この精霊力の波動は、メテル様ではございませんか!?」


 いや、声、小せぇ。

 どこから伝わってんだ?

 ……建物の角、石畳の境界に、空気穴っぽい管があるわ。

 ちび地精霊くんたちが増幅しなきゃ、絶対聞こえない。

 て、いうか?


「その声。もしかして、ラスティか?」

「感謝します! 一の使徒、ラスティにございます!」


 誰が一の使徒だ。

 と、いうか。


「そのラスティが、なんで地下に居るんだ?」

「精霊の実在を信じぬ不心得者に、投獄されまして!」


 ……オイオイ。

 脱獄ミッションが、強制開始されたんですけど。


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