54話 従姉妹はオレに、メロメロだ
ちょっと切りのいいとこで切れなくて、久しぶりの3000文字超えですー。
※2020/01/13追記:メテルとシルフィのイメージカラーを入れ替えました。
「姫君、ご機嫌麗しゅう」
「まあ、なんてお綺麗な衣装」
「妹様方も、愛らしいわ」
んー。
あちこちで、妹達が、大人気だ。
社交界の、パーティ会場に、出陣中。
王宮の大広間で、立食パーティー。
招待客は?
王都貴族に、近隣諸侯と上級軍人騎士さん方。
それに、親父殿と御母君の人脈繋がりで、魔道士ギルド。
叔父上のお見合い関連でも、各有力貴族のご子息たち。
オレら精霊って、四大精霊殿で祀られてんだよな?
精霊と人間が婚姻とか、結べるものなのかね?
まあ。
そこら辺の法律や宗教は、詳しいこと知らないけど。
っていうか。
妹が結婚とか、お姉ちゃん許しませんよ!?
まずは、オレに勝ってからでなければっ!
今んとこ、親父殿以外には負け知らずだけどっ!!
それは、ともかく。
ついでに、オレら四人の初お披露目、ってことで。
兼ねてからオレらが魔術や武芸に優れてる、って風評で。
冒険者ギルドの上級クラスな面々も、会場に居るそうだ。
で。
御母君に連れられた、我が最愛の妹、三人が。
あちこちで紹介兼ねて、大量の出席客に、挨拶回り中。
──御母君に教えられた通り、全力で笑顔してるけども。
見るからに、疲弊してんなー、的な。
……ふふふ。
人をおもちゃにした、罰だ、ふはははは。
お行儀良く、振る舞って?
たっぷりと、苦戦するが良い。
オレですか?
確かに、姉妹お揃いで、超絶に着飾られは、した。
色違い、四色。
オレ=黄。
シルフィ=緑。
ウンディ=蒼。
サラム=紅。
加えて、御母君が白で、親父殿が黒。
六人揃って、ロクレンジャイ!
……語呂、悪すぎだろう。
巨大ロボットが居ないから、ボツだな。
四人プラス御母君で、五人分のお揃い、ドレス衣装。
それぞれにバリエーションあって。
全体的なモチーフは同じだけど、形状は同じではない。
ミニスカートだったり、スリット入りだったり。
上着羽織ってたり、肩出ししてたり。
割と、見てる分には可愛かったり綺麗だったりで?
結構、姉妹の姿を見てると、にやにやが止まらない。
けども。
オレの場合。
左半身の義手義足を、隠す必要があるから。
下は足元まである、フレアひらっひらのロングスカート。
上は左腕をすっぽり覆う、厚手のショール。
正直言えば、重いし歩きづらくて仕方がない。
そんな衣装なので。
どっかり腰を据えて、挨拶に来る人だけに会ってる感じ。
どこで?
ふふふ。
挨拶回りが、いちばん少なそうな位置取り。
──叔父上、ご配慮ありがたぅ!
玉座の、隣だっ!
「ふむ。メテルはまた、顔を隠すのか」
「なんか、素顔晒すと、耐性ない人が倒れるって御母君が」
「私はそうは、思わんがなあ」
ぺらり。
至近距離で、オレのベールを軽くめくる王様。
素顔の目が間近で、叔父上の猛禽類ぽい鋭い視線に絡む。
親父殿や、カイオンさんとかにもそうだったけど。
どうも?
男性には通じづらいらしいのね、オレの目って。
吸血鬼の魅了眼? みたいなことになってるそうだ。
目線で他人の心を射抜く、みたいな?
言われてみれば。
他所の街でも、女性の失神者、出したことあるし。
耐性のない女性は、確かにヤバイのかも。
そういうことで。
御母君の挨拶回りに、オレは不参加。
挨拶回りっていうか?
あれは、いろいろな策謀の根回しらしい。
ぉぉ、政治の世界は怖い、怖い。
追従してるシルフィを、尊敬しちまうよ。
で。
「メテルに釣り合う相手が、カイオン程度しか居らんでな」
「カイオンさんはハクラさん一筋だから、無理ですよー」
「うむ。初耳であった。愛する男女は引き裂けんからなあ」
ふふふふふ。
はっはっは。
顔を見合わせ、叔父上と、オレ。
不敵に笑う。
うむ。
御母君が、というか、女性陣が?
色恋事の話題にハマる気持ち、すごく理解できた。
自分の身近な相手がそうなってるほど、楽しい!
邪魔する気なんかサラサラないけど、応援したい!!
そして。
他人を権謀術数で陥れるのは。
とても、気持ちの良いものじゃのう。
越後屋、その方もワルであるのう。
越後ってどこだよ。
それ以前に、この世界に越後屋みたいな店、あるのかよ。
ハクラさん?
なんだか、カイオンさんが朴念仁すぎて。
ツンデレが全然、通じてないぽかったので。
王様の周囲から、認識を固めておきましたっ。
心置きなく、ツンデレ続けて下さいませっ。
……当人達、この場には居ないんだけどね。
このパーティ準備の疲れで倒れた人、続出したそうで。
ハクラさんは戦場のように忙しくなった医務室でお仕事。
カイオンさんは、普通に腕の立つ警護騎士なので。
この部屋のすぐ外、扉の前で警備してる。
そんな感じで、想い合う二人は仕事で引き裂かれている。
……想い合うように仕向けるって、なんか。
ちょっと、楽しくなってきたっ。
そんなわけで。
妹たちを嫁に出す気なんか、あるはずもない、けど。
王様が出したお見合い案件込みの、社交界パーティ。
当初の心配とは、大きく異なり?
妹たちが、照れたり恥ずかしがったりしてる、様子を。
一段高い、玉座周辺から見下ろしているのだったっ。
……ただ。
いろいろと、問題も発生しておりまして。
まあ、親父殿はいつものごとく。
会場入りするなり、さっさと姿隠しの魔法で。
もはやどこに居るんだか、分からないんだけども。
王国最大の辺境伯っていう、超のつく有力者。
が、いきなり姿消してどうする、みたいな。
それはともかく。
双子な妹、ウンディとサラム。
軍人さんらしき一団に囲まれて、ちょっと困ってる。
御母君が連れ帰った、天才双子! みたいな扱いらしい。
御母君と親父殿の高名が知れ渡ってるのもあるけども。
あんな風に、他人に評価されて質問攻めなのは、珍しい。
それに。
それぞれ杖や剣握って説明を頑張る姿は、微笑ましいね。
あと。
珍しく、二人とも照れながらも積極的に話してるから。
普段、自分をあまり表に出さない、双子。
たまにはこういう場で?
同じ志向の人に触れ合うのも、いいんだなー、って。
シルフィ?
あいつは話を聞かないからな。
……いや。
シルフィの場合。
あいつ、男慣れしすぎてる、っていうか。
遠くの方に、ゆっくりと動く、人の塊。
あれが、シルフィを中央に置く、貴族のせがれの大集団。
──ないはずの胸を、あの手この手で寄せて上げて。
魔法のような手法で、ちゃんと谷間が出来ている。
胸元はかなり広くV字に開いて、首で巻いて留めてる。
背中はばっくり腰まで開いて、肌色率がすげえ。
その腰は腰帯で、スカートの両側はスリット入り。
スカート、って言っても、既に前後二枚に分かれた布。
そのスリットスカートは艶かしく生足の両足に絡んでる。
家族の女性陣五人の中で。
いちばん大人びた、やらしい衣装。
こらっ。
横からひもぱんつ、ちらっと見えてんじゃねえか。
ああいう衣装で魅力アピってるの、見ると。
普段オレに、悪女呼ばわりしてる癖に?
あいつも、こういう場だと。
女の魅力、全開にするんだなあ、と。
綺麗っていうか、もう、うつくしい、んだけどさ?
清楚な幼女然としてる御母君と並ぶと、威力半端ねえ。
実際、そこら辺の貴族のせがれがなびくの、解るしね。
妖艶とまでは言わないけど。
あいつの人好きのする笑顔に。
抵抗出来る男は、そう居ないだろ。
風精霊で、世界中を知ってるから、知識も豊富で。
前世経験か、話術も巧みで。
やすやすと身体を触らせたりはしないけど?
特に年上の男性に甘える策謀は、見事としか。
作り笑いの種類は、もう少し増やした方がいいと思うが。
顔にぴったり貼り付けてるの。
オレら家族から見たら、バレバレであるっ。
……人波に完全に隠れて、ほぼ見えないけど。
御母君の入れ知恵で、人脈作ってるのかもしれない。
恐ろしい子っ、シルフィさん!
「メテル様ぁ、お楽しみぃ、ですかぁ?」
「ぁー。楽しんでるが。君は、呑み過ぎなんじゃないかね」
むにゅりん。
めっちゃ豊満な胸と、尻が。
カウチに寄りかかってるオレの上に。
ゆっくりながら、のしり、と乗って来る。
オレの倍はあるんじゃないだろうか、両方とも。
なのに、背丈はオレより低く、シルフィと同じくらい。
反則爆乳美少女である。
片手には、ワイングラス。
ばりばりに溢れまくってるけどな。
どんだけ呑んだんだか、全身、割と赤い。
そのまま放置するわけにもいかないので。
オレ、片腕で、彼女の肩を抱いて、位置を保持。
周囲から、ほぉっ……! みたいな声が上がる。
ううむ。
困ったな。
オレには、そういう意図はないんだけど。
「きゃぁっ、私、メテル様のぉ、ものになっちゃぅぅ!」
「ならねえから。ていうか、正気に戻れ、リズ」
「ぁぁぁん、メテル様に、愛称呼ばれて感激ぃぃ!」
あー、もう。
酔っぱらいは、手が付けられねえ。
オレの上で、乱れに乱れまくってる、十四才の少女。
エリザベータ、愛称リズ。
これが、王様の、一人娘にして愛娘。
つまり。
オレの、従姉妹だ。
「私、身も心も、メテル様に捧げますぅぅ!」
「要らねえから。叔父上も、ぎょっとした眼を向けないで」
あのね、従姉妹よ。
君が立派な旦那さん持たなかったら?
国が、潰れちゃうからさ。
そこんとこ考えてあげないと、叔父上が、困るでしょ。
て、いうかだな?
オレ、女性にばっかり人気出るの、なんでなんだよ!
女の子は好きだが、こういう好かれ方は、ちょっと!?
──オレは、百合は詳しくねえんだよぅ。




