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53話 オレはもう、眠いんだ……

「ホリィ殿下。医局の復帰は、未だ?」

「ごめんなさいね。わたくし、やはり、夫の傍に居たくて」


 それに、今は貴方が長で、貴方達の時代よ?


 そんな風に微笑む御母君に、ハクラさん恐縮しまくり。


 ふんふん。

 ハクラさんって、御母君の後継者にあたるのね。

 御母君が、前の医局の管理者だったんだなあ。


 そういえば。

 生命医学の頂点、白の賢者、って異名あったっけ。


 離宮の塔に、ひとまず到着。

 先に到着してた家臣団が。

 離宮の中は、完璧にしてくれてる。


 オレ、もうへっとへとに、疲れたから?

 とりあえず、お風呂したいー。


「では、其れがし、これにて」

「こら。カイオン、君は謝罪なしで帰れる訳ないだろう」


 片膝ついたカイオンさんの、立ち上がり際。

 すかさず片耳掴んで離脱を阻止するハクラさんの、手際。

 さすが過ぎるっ。


 て、いうか。

 二人のやり取りずっと見てると?

 お似合い? っていうか。

 恋人同士、みたいな雰囲気が、ずっと?


「メテル姫、それだけはありません! 私がこいつとなど」

「あらぁ? それにしては、距離感といい言葉遣いといい」


 お。

 御母君の面白がりセンサーが、起動したぞ。

 狼狽しまくってるハクラさん、語るに落ちちゃってる。

 耳が。

 真っ赤なんだもん、可愛いなあ。


 だが、しかし。


「むっ? メテル姫、まだ、何か?」

「こっそり逃げようとしないの、男らしくないっ」


 そりゃ、ハクラさんがイジられてる隙に、忍び足したら。

 脇に居る、オレが気づきますよ。


 ていうか、まあ?

 一応オレ、この王宮じゃ王族の娘、姫なので。

 オレの前を抜けたとしても?


「その無礼者、手打ちして良いので?」


 ガチで殺気放ちまくってる、執事軍団の長。

 元王国騎士、セバスさんが控えてるわけだけども。


 と。


「せっ、セイヴァー・スタルナ・ドラグ様!?」


 はい?

 カイオンさん? 誰ですかね、それ?


「──カイオン。それは、旧名です。私は執事セバス」

「先代剣聖にして、王国最武勇ではないですか!」


 そんな人物は知らん、と言い張るセバスさん。

 なんか、凄い人物だったんだなあ?

 何事にもマイペースで動じなかった、カイオンさんが。


 興奮しまくりの、話しかけまくり。

 そして。

 顔を背けて煙に巻こうとしてるセバスさん。

 完全に、失敗しとりますな。

 カイオンさん、そういう手、一切通じなさそうだもんね。


 さて。

 ハクラさんは、未だ笑顔満面の御母君に、イジられ。

 カイオンさんは、セバスさんに迫りまくり。


 ──オレ、もう風呂っていいんじゃねえの、これ?

 そう思って、奥の部屋へ続く扉を、がちゃりと。


 ばこんっ!


「セバスさん、ボクの稽古の時間だよー!!」


 ぐぉぉ!?

 顔の真ん中に、縦に筋がっ!?!?


 扉を開こうとした瞬間に、可愛いサラムが飛び出してっ。

 い、いや。

 ここで騒げば、サラムが気にしてしまう。


 専属護衛のメイヴィスさんが、居ないから。

 久々に、羽根を伸ばしてるんだもんな。

 メイヴィスさんが離宮に居ない理由?

 防犯上の理由。


 身分差で、王宮に一緒に入れなかったのだ。

 普段は完全に忘れてるけど。

 セバスさん以下執事軍団に、侍女さんズ。

 全員、王侯貴族の子息女で、身元はっきりしてんだよね。


 なので。

 正確に言うと、身分差というか、身元確認書類不備。

 今頃、王宮のどこかの詰め所で、確認作業やってるはず。

 ああいう書類関係が時間掛かるのは。

 今も前世も、同じなんだなと。


 で。

 可愛い妹のすることだ。

 オレが、そっと我慢すれば済むこと。

 さあ、もう一度、扉を。


 すぱぁんっ!


「お母様っ、お話弾んでるから、クッキー持ってきた!」

「あら気が利くわねシルフィちゃん」

「シ、シルフィ姫まで!? 違うんですってば!」


 こめかみに直撃したドアにより。

 オレ、華麗によろめきドアの陰へ。


 くっ、これしきのことで、へこたれるものかっ。

 オレ、強い子なんだから!


 一瞬、あまりの衝撃に目に涙が浮かんだけど!!

 悲しいこともあるけれど、オレは元気ですっ!


 ばぁん!

 むぎゅぅっ!!!!


「きゅーっ、ぴっきゅー、ぴぃぴぅぴぴぃ!!」

「ピューイ。我配合の薬液、何故飲まず、逃走?」

「ぴっきゅぅ、ぴきき、ぴーぃ」

「良薬口に苦し。我の重んじる、格言」

「ぴーぃ、ぴっきゅいー」

「ピューイ。トカゲが泣いても、可愛くない」


 そんなことはないだろう。

 ピューイ、とても愛らしい顔出ちしてるじゃないか。


 ──そのピューイの全力の扉全開飛び出しで。

 オレ、扉の奥、まだ荷解きしてない荷物に、押し込まれ。


 ……ああ、もう。

 なんか。

 オレ、疲れたし。

 なんだか、とても眠いんだ……。




 ……オレが荷物の中から掘り出されたのは、翌朝だった。


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