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51話 医務室は大惨事

「いや、大事なく良かったですな」


 闊達に笑う王宮騎士さん。

 爽やかスマイルが、お似合いで。


「この慌て者。王妹ホリィ殿下の姫君を攫うなんて」


 と、頭を抱えていらっしゃるのが。

 この薬室の管理者、王宮薬室長のハクラさん。


 慌てん坊の王宮騎士さんに拉致られた、オレ。

 ハクラさん以下、たくさんのお医者さんが働く医務室へ。

 そして。

 身元が判明したら大騒ぎになり。

 とりあえず。

 人の少ない、薬剤整調用のこの薬室に避難することに。


 ハクラさん、切れ長の鋭い目つきな、お姉さんで。

 物腰から察するに、三十代くらい?

 この歳で王宮の薬室を任されるんだから。

 すっごい、出来る女性なんだろうなー、的な。


 で。


「申し遅れましたな。其れがし、名をカイオンと申します」


 王宮騎士カイオンさん。

 ぺこり、と一礼する様も、超優雅。


 こちらは、二十代過ぎくらいかな?

 言葉遣いとは裏腹に、かなりの若手。

 で、すっごい整った顔立ち。

 美男子、って言っても嘘ではないくらい。


 ほんとに。

 慌てん坊なところがなければ、もっと出世するんだろな。


「カイオンはこれで、剣に並ぶ者なき剣聖なのですよ……」

「……うわぁ。心中お察し致します?」


 こんな迂闊な人が、王国最強の剣士なんだってよ。

 剣士か。

 サラムと腕合わせしたら、どっちが強いんだろう?


 と。

 それはともかく。


「じゃあ、オレ、帰っていいですか?」

「メテル様におかれましては、少々お待ち頂けたらと」


 丁寧に言われたけど。

 ハクラさん、未だに大騒ぎ中の医務室を、ちらり。

 ──オレのせいじゃ、ないのにー。


 医務室で診察するっていうから?

 ぶつけた場所が、鼻なので。

 顔を隠してるベール、脱いでくれ、ってお願いされて。

 そしたら。


 オレの真正面に居たお医者さん、看護師さんたちが。

 ばたばたと倒れたり、腰抜かしたり鼻血吹いたり大惨事。


 なので。

 医務室の医療業務が、滞ってしまいまして。

 今、他所に出てた医務担当者が集合してるんだとか。

 診療交代したりとか、入院患者移したりしてるそうです。


 なんでだ!

 オレは至って普通の長女なのに!?


「ホリィ様もお歳の分からぬお美しい方ですが……、その」

「オレ悪くないしー……」

「いえ、悪いとは! しかし、人間離れしすぎというか」

「ぅぅぅ。そんなに醜いのかなあ」

「全くそのような! むしろ、逆です逆!!」


 うー。

 ハクラさんの必死な『お世辞』が、虚しい。


 まあ、でもっ。

 王宮の医務室と薬室は、堪能しましたのでっ。

 ……そろそろ、帰りたいんだけど?


「カイオン! 私と、メテル姫をお送りしろ!」

「かしこまった。では、メテル姫、お手を?」


 うおぉ。

 姫呼ばわりは、真剣にやめて欲しい。

 そして。

 片膝ついて手を差し出すカイオンさんが、まるで。

 物語の騎士みたいに、かっくいい。

 ……これで、うっかり早合点さんじゃ、なければねえ?


「しかし、未だ体調優れぬご様子? ここは、やはり」

「うひぇっ!? ちょっ、マジで下ろしてぇ!?」

「はぁ。メテル姫、この際ですし。……諦められては」


 何がこの際なのっ、ハクラさんっ!?

 ていうか、最後の小声! 聞こえてますってば!?

 この人、懲りずにまたお姫様抱っこしてるんですけどー!


「何、先程も申しましたが、羽根の如き軽さですよ」


 はっはっは。

 って、爽やかに笑わないで。

 そして、問答無用でオレを運び出さないで。


 オレ、左腕左足が、チタンの義手義足だから。

 ぜったい、普通の女性の数倍の体重あるんだけど。

 ほんとに、軽々と抱えられてしまっている。

 ううむ。


 紳士だなあ、凄いなあ、かっこいいなあ。

 そう、思ってしまうのは。

 決して、オレがお姫様ときめきプレイに目覚めたとか。

 そんな理由では、断じてないっ。


 シルフィやウンディが権能使って、覗いてる気がした。

 違うぞ!?

 オレは決して、そんな女の子っぽいことにはなってない!


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