50話 そして、オレは攫われた
900ポイント突破しましたぁっ!
ありがとございまするっ!!
「ぉぉお? でけぇー」
と。
ひたすら驚くオレ。
王都に着いた、第一声でした。
しつこく引き留めるじーちゃんばーちゃんを振り切り。
姉妹四人に親父殿と御母君、ようやくの到着なのだ。
精霊のオレらが離れると、ばーちゃんの姿が消えるので。
じーちゃん的には、ずっと居て欲しかったみたい。
まあ、そういうわけにも行かないんだけどね。
オレらにも、目的があるわけだし。
でもね、じーちゃん?
姿が見えないだけで、ばーちゃんは傍に居るんだよ。
一応、シルフィと御母君と親父殿が、共同で?
ウィジャ板みたいな意思疎通ツールを作って置いて来た。
けどまあ、帰りもまた寄るので?
おばーちゃんの艷姿は、それまで我慢して下さいな。
それは、ともかくとしてっ。
いやほんとに、こんな大きい人間の街、初めて見た。
この世界での話だけどね。
前世で言えば、練馬区くらいだろうか。
そう考えるとなんだか?
王都の中央にででーんとそびえる、王宮。
練馬区役所に、見えて来たりしたりしなかったり。
いや、高さはともかく敷地面積は、数倍はあるかな?
グレイパレスがある親父殿の街の、三~四倍はある。
比較的古い歴史があるのか、家々や城壁の壁は古い。
土精霊くんたちに尋ねると、だいたい千年ほど前の築城。
なるほど歴史ある王都っていうか。
この王国って、そんなに前からあったんだなあ?
千年前っていうと。
サラムの癇癪癖が、収まってきたくらいか?
「い、今はおとなしいもんっ、ボク!」
今も昔も、変わらず可愛いぞ、サラムは。
──なんで、全開で真っ赤になるんだよ。
まっすぐオレの目を見るんだ、ほら。
「めーちゃん、それいじめに近い。自分の美貌を理解して」
「いやオレ普通……」
「我思う。めーねぇと対面、暴力だと知るべき」
全員で顔背けられた。
なんでだ、くそぅ。
なお。
オレの今の姿は、男装女騎士プラス、目隠しベール。
目を合わせるっていうか、目線が行方不明なんだけど?
「「「目線以前に、顔を合わせるのがもう至難」」」
姉妹三人で口を揃えるんじゃねえよ、ちくせぅー!
で。
そんな大きさの、でっかい王都だけど。
街を歩き回ることはなく、そのまま馬車ごと王宮内へ。
護衛でついてきてくれた、セラさんたち。
そちらは、ここで一旦お別れ。
後で行く用事があるので。
地霊殿の様子見、を頼んでおいた。
あと、迷宮で別れたっきりな、ラスティの動向も。
あんだけ忠誠心高かった、ラスティ。
あれっきり連絡途絶えてるの、なんか不自然に感じる。
で。
御母君が現国王の妹、王妹ということで。
城内に専用の居室っていうか、塔を持っているそうだ。
というか、王族専用の御用門があって。
そちらを通過して、一般と隔離された別棟へ入った。
今は、オレら家族のみで。
馬車から降りて、長い長い通路を上がっている。
天井、マジで高ぇー。
今、通路を歩いているのは。
こういう面子で帰還したよ、って周知の意味合いだって。
馬車を降りてから、結構な距離をのんびりと歩くのは。
王宮の方でも、まだいろいろ歓迎準備があるんだってさ。
一ヶ月も前から、王都、王宮に行くって連絡してるのに。
この期に及んでもまだ、何か準備してる、っていうのは。
──社交界デビューだとか?
オレにとっては不吉なイベントの、前触れみたいで怖い。
「さあ、上ばかり見てないのよ、おのぼりさん」
ふっ。
上なんか見なくたって。
オレの権能なら、全周視界ですよ御母君っ。
と。
ごんっ!
「おっと、悪い。大丈夫かお嬢さん?」
「ふぇ、らいじょうぶれふ。ひたたた」
視界あちこちに飛ばしてたら。
思いっきり、鎧の騎士さんに鼻からぶつかってしまった。
転移視界の使用中は、周囲よく見えてないからな、オレ。
ていうか、王族専用通路、って言っても。
普通に、王宮内を警護してる王宮騎士さんたちとか?
文官らしきお役人さんが、たくさん行き交ってる。
よそ見しまくってた、オレが一方的に悪い。
ご、ごめんなさいっ。
「顔か? 美少女の顔に傷でも残ったら大変だ、どれ!」
「ひぁっ!? いえ、だ、大丈夫ですので?!」
こ、これが女性陣羨望の!?
白馬の騎士の、お姫様抱っこか!!
……いや、オレ、別にお姫様じゃないんだけど!
白馬っていうか、白銀の鎧騎士さんだけど!!
「って、ちょっ、平気だから、下ろしてぇ!?」
「なに、女性の体重など羽根の如し! 医務室はすぐだ!」
「メテルちゃん? 道に迷わないようにねー」
後で様子見に行くから、ってにやにやしまくりの御母君!
それは無理!
天下御免の方向に不自由な長女だから、オレ!
っていうか、誰か助けろ!?
みんなして、生暖かい目で見送るなー!?




