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48話 おばーちゃんにも、ご挨拶

「サラムはフルートだろ?」

「うん。ボク横笛、気に入ったの」

「で、ウンディはグラスハープか」

「祖父より譲り受けし逸品。響き良し」

「シルフィ……、は、聞くまでもないよな」

「聞いてよめーちゃん!?」


 いやだって。

 音域の支配者。

 可聴域から非可聴域まで、音波を操る風の大精霊。

 そのオマエが、ボーカル以外に何やるんだ的な。


 なかなかに好評を頂いた、突発的精霊四姉妹大合唱。

 じーちゃんがばーちゃんにも聴かせたい、っていうので。


 いま、じーちゃんちの城内、音楽室で。

 じーちゃんの案内で、ひたすら楽器選びしている。

 オレの担当?

 パーカッション、つまりドラムで決定らしいよ。


 まあ。

 モノ考えずに、ひたすらリズムに乗って、叩くだけ。

 ぶきっちょなオレに、ぴったりの楽器だね。


 ……泣いてないやい。


「して、メテル? は未だ、素顔を見せぬのか」

「あー、御母君の許可がないと」


 不思議そうにオレの方を見るじーちゃんに、苦笑。

 親父殿と御母君は、揃って城内の親戚? 巡りへ。


 けど。

 オレだけ、未だに顔のベール剥がす許可が降りてない。

 なんでだ。

 シルフィ以下、姉妹は全員もうリラックスモードなのに。


 その。

 サラムとウンディをまとめて抱えたじーちゃん。

 超、ご満悦。

 孫が可愛い、って全身からオーラ出てますね。


 とてもお偉い貴族様で、超気難しい。

 御母君からはそう、聞いてたんだけど。


「寄る年波も厳しいでしょう、片方預かりましょうか?」

「若造が何を言うか。孫を抱く幸せを奪うとは、無礼者め」


 脇に控え、引っ込んでおれ。

 そんな感じで。

 笑顔満面で、セバスさんとやり合ってますけど。

 セバスさんと、あんまり歳、変わらないですよね?


 どうも、やり取りを見た感じ?

 若い頃からの付き合い、の様子。


「この方が悪ガキだった時節よりの付き合いですな」

「此奴、見てくれは真面目じゃが、中身は真っ黒じゃぞ」


 はいはい。

 お互い様、ってことで了解。


 普段は脇に控えて寡黙な有能執事。

 そんな感じのオーラで接してる、セバスさん。

 こんなに前に出て、あからさまに辛辣なのも珍しい。


 セバスさん。

 なんでも、じーちゃんが家督継ぐ前は?

 王国騎士で、じーちゃんの剣の稽古相手だったって。


「164戦164引き分けじゃったな」

「嘘はいけませんな? 私が一勝しましたでしょう」

「あれは家を出る若造に、譲ってやっただけじゃ」

「勝負は勝負、勝ちは勝ち、でございますよ」

「何ぃ? 何なら、やり直しても良いのじゃぞ?」

「腰曲がりの爺に勝利して、何の自慢になりましょうや」


 ……舌戦はセバスさんに分がありまくり、っぽい。

 まあ、じーちゃんも全然本気じゃないみたいだけども。


 そんな、やり取りの中で。

 オレ、すごく気になることがひとつ。


 ……。

 オレ、っていうか。

 サラム、ウンディ、シルフィ、妹三人と、思わず目配せ。

 全員で、こっくり頷く。


 でわ、僭越ながらっ。

 姉妹を代表して?

 長女のオレが、じーちゃんに、訊くことにしよう。


「で。あの。すっごく、気になってるんですけど」

「なんじゃ、メテルや?」


 にこにこ。

 そんな風に、穏やかに笑ってる、じーちゃんの隣に。

 ……『半透明に透けたご婦人の霊体』が。

 ずっと、微笑を浮かべて寄り添っている。


 オレら、最初からずっと気になっててですね?


「見えておるのか!?」

「はぁ。ばーちゃん……、ですよね?」


 じーちゃんの説明によれば。

 数年前に亡くなったばーちゃん、らしい。

 じーちゃんもセバスさんも、見えてはいないんだけど。

 じんわり温かみを感じるから、居るのは分かってたって。


 今、楽器選んでるのは?

 死んだばーちゃんの部屋で演奏予定だったそうで。


 ああ。

 じゃ、今ここにいらっしゃるのは。

 霊体かぁ。


 それなら。

 やることは、ひとつだ。

 軽く、シルフィに目配せ。

 ウチの姉妹で、いちばんの魔法達者。


「でわでわでわっ、そよぐ風の一陣、驚くなかれっ!」


 疑問符が飛び交ってる様子の、じーちゃんばーちゃん。

 寄り添ってる感じが、親父殿と御母君みたいで。

 こっちも、夫婦仲、円満なんですねえ。


 てな感じで、シルフィが、場の魔力を、くるりと一閃。

 ぴゅぅぅう!

 風のちび精霊が、爽やかな風を巻き起こす。


 と。

 きらり。

 最初は、煌めき。

 そして、穏やかな光が、周囲から寄り集まって。

 それが、確かな形を取って、姿を作る。


『あらあら、まぁまぁ。なんて不思議なんでしょう』

「お前!? 生き返った……、わけではない、のか」

『ずっとお傍におりましたわよ。相変わらず早合点ね』

「お前の憎まれ口も、懐かしいわ」


 さすがに、人間の霊圧は低すぎるから。

 抱き合うのは、無理か。

 でも、まあ?


 男泣きに泣いて突っ伏すじーちゃんと、セバスさん。

 ちょこんとしゃがんで、うんうん頷いてるばーちゃん。


 そういう光景を見てると。

 まあ、良かったね。

 そんな感じで、とても穏やかな時間が、過ぎてった。


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