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46話 オマエの生涯はまだ続くだろう

800ポイント超えましたぁー、ありがとございましゅっ!(噛み噛み。

「ぴゅぅ。ぴぃー、ぴぴ」

「……ピューイ。我はこっち。そっちはめーねぇ」

「ぴゅぅい? ぴぴぃ??」


 ……ペット、でいいのだろうか、あれは。

 人間サイズまで縮んでしまった、四足の水竜。

 のっぺり、つるりん。

 そんな形容詞がお似合いの、真緑のちびトカゲ。

 が。

 ウンディの前で、器用に正座させられている。


 生物学の権威な、御母君に念入りに毒袋を除去されて。

 ウンディの従者的な位置に収まった、この結末。


 ええ。

 毒竜討伐に乗り出した、我々でしたが。


「生物学的には、希少生物なのよ? 保護よ、保護保護っ」

「はぁ。それでよろしいのでしたら」


 御母君が、そのように仰いましたので。

 まあ、オレとしては倒しても倒さなくても、どちらでも。

 元々、ウンディが言い始めたことだしな。


 ほっとくと、周囲の有機物を、無作為に取り込んで。

 周囲に精錬された猛毒を撒き散らす、正真正銘の災害獣。

 ……らしい、んだけど?


「この仔は悪くないわ。周囲に毒素がなければいいのよ?」


 御母君が無毒化の手法を心得てたもので。

 今、『ピューイ』と名付けられた、水竜の幼生は。


「ピューイ。お手」


 はしっ。


「そこに手を置くのは姉。いつからピューイは我が姉に?」

「ぴゅぅぃいい!? ぴーっ、ぴゅっ、ぴぴーぃ!?」


 怒りで妙に流暢に喋ったウンディを抱えあげて、苦笑。


 ……いや、まあ。

 ピューイの体格的にね?

 アタマに前足を置きたくなる気持ちは、分からなくも。

 毒素を徹底的に身体から抜いて、縮んだとは言っても。

 超のつく大型犬サイズだし。


 ていうか、あの二十メートルサイズでまだ幼竜で?

 成竜になると、軽く百メートル超えるって。


 具合悪そうにしてたのは、精霊力不足。

 ウンディが毒素を浄化するために、水精霊を使役してた。

 ……もんだから、水竜が吸収する魔力が不足したらしい。


 ──いま、とてつもなく元気なのは、そりゃそうだ。

 地水火風四大精霊の精霊力、直受けだもんね?

 元気に大きく育てよ、ピューイ?


 竜種って言っても。

 こうして改めて見ると、大昔からあまり進歩してない?

 確か、空を飛ぶ竜と、飛ばない竜で二種類ずつ居たっけ。


 この竜は、翼がない種類みたいだ。


 ──ほんとに世界最強生物の、竜なんだよな、おまえ?

 オレらを主人と認めたからかもだが。

 お座りとか伏せとか、妙に堂に入ってないか?


 そんなこんなで。

 我々家族に、ペットが一匹、増えました。


「鱗が生え変わったら、抜けた鱗を廃棄したり!?」

「元が毒竜だから、念の為、研究所送りになるわねえ?」

「一枚、一枚だけでも!? あっ、そっと拾ったりは!?」

「一応、我が家の持ち物だから……、窃盗になるわよ?」


 セラさん。

 あの逞しさは、冒険者でなくても大成しそうな。


 さて。

 ピューイを一行に加えたオレら。

 峠を下り、一路、御母君の実家へ。


 峠を下ってる最中から、もう、その城は見えてた。

 王都に続く道を、少し山陰に逸れた、脇道。


 斜面の岩盤に一体化した、トゲトゲの塔がたくさん。

 山麓の正門からとぐろを巻くように、山の周囲を通路が。

 途中にたくさん、大きめの要塞がいくつも。

 村や街と、軍事要塞としての城が一体化しているようで。


 砲塔の横に、洗濯物たくさん。

 見張り塔の下に、住民の広場や、市場?

 軍民共同といえば、聞こえはいいけど。

 傾斜地に建っている関係上、道から丸見えな光景は。


 カオス。

 それに尽きる。


 城は護るは易し、攻めるは難し。

 攻勢は守勢の三倍を要す。

 なんて、城攻めの難しさは語られるけど。

 あそこまで、徹底的に山ごと完全要塞化してると?


「ふふっ、難攻不落の白蛇城よ。一度も落ちたことないの」

「落ちる以前に、岩盤くり抜いて山と一体化してますよね」

「ネタばらししなくてもいいじゃないの、貴方ぁ?」


 おぅおぅ、相変わらず仲睦まじい。

 馬に蹴られる前に離席したい、のだが。


「さあ、綺麗におめかししなきゃね、メテルちゃん?」


 今度は御母君だけでなく、メイド衆までが周囲を。

 ていうかシルフィ、さり気なく混ざってんじゃねえよ。

 ……その豪華ドレス、可愛いぞ? 貴族令嬢に見える。


 あれ?

 ちび二人も、色違いでお揃い?


 え、待て待て。

 まさか、今からオレも、同じのを、着るのか?


「あの。王都に着いてから社交界デビューでは?」

「王都以前に、おじいちゃんとおばあちゃんにご挨拶よ?」


 まさか、ここまで来て素通りはダメよ?


 なんて、言われて。

 ああ。

 しまった。

 親父殿と御母君が生まれてる、ってことは。

 当然、それぞれにご両親がいらっしゃるわけで。


 貴族の名家で公爵家な御母君の、父母。

 つまり、オレら四姉妹の、祖父母になるお方々。

 無論ながらっ、そちらも貴族家で。


「ね? 気が重い理由が分かったでしょう、メテルさん」


 アンタ、それ言うためだけにここに居たのかい、親父殿!

 曲がりなりにも妙齢の娘の着替えだぞっ。

 とっとと、出てけー!


 ……いや、まあね?

 十分に理解しましたよ。

 とほほ。


 そんなこんなで。

 数時間もかけて。

 オレ。

 どこに出しても恥ずかしくもない、ってメイド衆太鼓判。

 一見、貴族の令嬢に仕立て上げられてしまいましたとさ。


「ヤバすぎでしょ……、令嬢っていうより、女神……」

「はい?」

「あー、喋っちゃダメ! 神々しすぎる!?」

「御母君、それは無理ってもんでしょう?」

「うわ、うわわ、ヤバイヤバイヤバイ……」


 とりあえず鼻血は拭きましょうよ、御母君。

 ほら、周りのメイドさんも手伝って。

 こら。

 みんなして、一緒になって噴出吐血しないの。

 どこの闘技場だ、ここは。

 床のあちこちに血溜まりがいくつも。


 オイ。

 シルフィ、お前も調子に乗ってオレを飾ってただろ。

 何とかしろ。


「我が生涯にッ、一片の悔い無し……!」


 風の大精霊なオマエの生涯は、まだまだ続くっつーの。

 オレの着替えを手伝った女衆、全員悶絶してやんの。


 どうすんだよ、この惨状?


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